文献詳細
日本泌尿器科臨床史・24
文献概要
男子生殖腺(性腺)の学術用語は,1953年に日本解剖学会が精巣と決めてからもう40年になる。これは当時すでに生物学領域で用いられていた精巣を人体にも適用したのである。種のいかんを問わず,同様の構造と機能を有する臓器は同一の名称で呼ぼうということになって,睾丸を除いたのである。ヒトの生殖腺を,より科学的に精巣と呼称することを提唱し,自著『生物学小引』のなかで精巣を用いたのは,日本における性科学と性教育の先駆者であった山本宣治(1889〜1929)である。それはなんと1921年のことであった。
日本解剖学会による用語改訂にもかかわらず,睾丸はしぶとく医学界に残った。病理学会,それにこの臓器を臨床と研究の対象とする泌尿器科がなかなか改めようとしなかった。しかしながら,日本泌尿器科学会のなかに用語委員会が設けられ,学際的な学会ではすでに精巣が多用されている現実をふまえて,精巣を正式の用語とし,慣習的に用いられてきた睾丸を括弧内に付記するかたちで用語集を発行していらい(1990),学会や論文の題目から睾丸は急速に消えはじめ,精巣が圧倒的に多数を占めるに至ったのである。そうなった背景には次のようなことが考えられよう。
日本解剖学会による用語改訂にもかかわらず,睾丸はしぶとく医学界に残った。病理学会,それにこの臓器を臨床と研究の対象とする泌尿器科がなかなか改めようとしなかった。しかしながら,日本泌尿器科学会のなかに用語委員会が設けられ,学際的な学会ではすでに精巣が多用されている現実をふまえて,精巣を正式の用語とし,慣習的に用いられてきた睾丸を括弧内に付記するかたちで用語集を発行していらい(1990),学会や論文の題目から睾丸は急速に消えはじめ,精巣が圧倒的に多数を占めるに至ったのである。そうなった背景には次のようなことが考えられよう。
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