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細菌バイオフィルムの基礎と臨床
著者: 小林宏行1
所属機関: 1杏林大学第一内科
ページ範囲:P.361 - P.371
文献購入ページに移動細菌バイオフィルム形成は感染症難治化の要因として重要な因子である。このことは単に抗菌剤の殺菌性に抵抗するのみならず,本来は生体側防御機構の重要な因子であるマクロファージや好中球との強い干渉作用を示さないことにもよろう。結果的には局所における細菌の生息圏形成という適応形態と受けとめられる。
細菌バイオフィルムが生体に及ぼす影響は次の2つが考えられる。ひとつはバイオフィルムからときとして遊離されたfloating型菌の他の部位への付着による感染症の発生。この場合,floating型菌は抗菌剤に対する反応性が良いため殺菌されることが多く,したがってこの時点で新らたに発生した感染巣は修復され,症状も寛解する。しかしながら,その母体となるバイオフィルム型菌は薬剤抵抗性のため生残し,また感染反復を呈する。すなわち,バイオフィルムに特徴的にみられる感染の反復と慢性化である。
もうひとつは,細菌バイオフィルムの基質となるアルギネートによる免疫反応である。つまり,生体側に抗アルギネート抗体が産生され,気道末梢部でみられる抗原抗体反応とし,過剰な抗原による免疫複合体の産生とそれに基づく組織破壊である。このような免疫系に基づく組織障害は現在のところびまん性汎細気管支炎において実証されている。
最後に,アルギネート産生系に及ぼす14員環・15員環マクロライドの有用性の機序についても記した。
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