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雑誌目次

雑誌文献

臨床泌尿器科50巻1号

1996年01月発行

雑誌目次

綜説

生物統計学入門序説—泌尿器科領域を例として

著者: 樋之津史郎 ,   大橋靖雄

ページ範囲:P.7 - P.17

 臨床医も,ある程度の統計学的手法に関する知識を身につけることが必要である。現在,統計手法の使い方についての解説書はいろいろあるものの,前提としている仮定や,結果の解釈などについてはあまり詳しく述べられていない。そこで,なぜ統計手法を用いるのか,統計手法を選択する際の注意点,検定・推定,p値などの基礎的概念について簡単に解説した。また,標準偏差と標準誤差の違い,ログランク検定と一般化ウイルコクソン検定の違いについて仮想データを含む例を示して解説した。

座談会

泌尿器悪性腫瘍を考える

著者: 井坂茂夫 ,   鳶巣賢一 ,   三浦猛 ,   秋元成太

ページ範囲:P.18 - P.31

 秋元(司会) 今回は泌尿器悪性腫瘍について,現状と問題点,将来展望,さらには夢でも結構ですのでお話いただきたいと思います。

手術手技 日帰り手術・1

日帰り手術の適応と問題点

著者: 谷風三郎

ページ範囲:P.33 - P.36

 現在わが国では日帰り手術はあまり一般的とは言えないが,患者や家族の肉体的,精神的苦痛の軽減,入院費の削減などの利点があり,今後徐々に一般化するものと考えられる。われわれは独立した日帰り手術ユニットを有しており,小児泌尿器科領域では精巣固定術をはじめ種々の小手術を安全に行えているので,その適応と問題点について報告する。

セミナー 泌尿器科に役立つ心身医療・4

老年期の心身医学

著者: 上村誠 ,   青葉安里

ページ範囲:P.39 - P.44

 心身医学は,本来すべての医師が修得するべき常識的な医療であり,医師は常に身体疾患に影響を及ぼす可能性のある精神心理学的背景に配慮する責務を有する。老年期の心身症の特徴は性格心身症より現実心身症が多くなること,ストレス状況として複合喪失体験があること,ストレス耐容性が環境によって大きく左右されること,向精神薬投与においては加齢に伴い代謝能力に著しい個人差が出現することなどである。

原著

前立腺肥大症と経尿道的前立腺電気蒸散

著者: 西村泰司 ,   阿部裕行 ,   伊藤博 ,   池田一則 ,   岡史篤 ,   吉田和弘 ,   秋元成太

ページ範囲:P.47 - P.50

 Kaplanらにより1995年4月に発表された経尿道的前立腺電気蒸散による手術法は,従来のTURの電極を4列の畝を持つ回転型円筒状とし電力を約25%増量したに過ぎないが,従来のTURのみならず側射レーザーファイバー前立腺切除術に対しても優れた点がある。1995年4月からの28症例における筆者らの経験においても,1)出血がきわめて少ない,2)1〜2日以内に留置カテーテルを抜去できる,3)直ちに症状の改善がみられる,4)レーザーによる治療に比し安価,などの利点が認められた。また原法よりさらに高い電力を用い,手術台を約7度頭側上位とし膀胱瘻を置く方法で筆者らは手術時間を短縮できた。本法はハイリスクの患者にも安心して行える有用な手術法と思われる。

症例

腎脂肪肉腫の1例

著者: 宮崎淳 ,   岩崎明郎 ,   石川悟 ,   太田智則 ,   塚本定 ,   高橋敦

ページ範囲:P.51 - P.54

 46歳,女性。左側腹部痛を機に発見された後腹膜腫瘍。CTスキャン,MRI,血管造影によって左の腎脂肪肉腫が疑われ,腎を含めて後腹膜腫瘍摘出術を行った。病理組織学的検索の結果,高分化型脂肪肉腫と診断された。腎脂肪肉腫としては自験例が本邦25例目に相当した。

腎嚢胞と鑑別が困難であった石灰化腎細胞癌

著者: 簗田周一 ,   小野寺昭一 ,   仲田浄治郎 ,   吉越富久夫 ,   鈴木康之 ,   大石幸彦

ページ範囲:P.55 - P.57

 53歳男性。主訴,腹痛。KUB上,右腎上極に直径約6cmの球形の石灰化像を認めた。CT上,石灰化した腎嚢胞が疑われたが,充実性の部分を伴い,腎細胞癌も否定できず腎摘出術を行った。病理学的には充実性部分に腎細胞癌を認めた。石灰化を伴う腎癌は硝子変性をきたしている場合が多く,術中病理診断では腎癌を同定できない場合がある。中心が均一で石灰化が周囲に限局している症例以外は腎癌に準じた治療を施行するべきだと考えられた。

腹腔鏡下生検が有用であった後腹膜線維症

著者: 濱崎務 ,   長谷川潤 ,   沖守 ,   木村剛 ,   秋元成太 ,   本田了

ページ範囲:P.59 - P.62

 60歳,男性。主訴は無尿。薬剤の使用歴はない。超音波検査にて両側水腎症を認ぬ,尿管カテーテル挿入不可能であったため,経皮的に腎瘻を造設した。順行性腎盂造影では仙骨の高さで両側尿管の狭窄,内側偏位がみられた。腹部CTでは仙骨前面に尿管を巻き込んだ腫瘤を認め,病理組織診断を得るため腹腔鏡下生検術を施行した。病理組織学的に,特発性後腹膜線維症と診断した。ステロイド療法後1年4か月経過した現在,再発を認めていない。

フルニエ壊疽の1例

著者: 住友誠 ,   宮嶋哲 ,   中島淳 ,   実川正道

ページ範囲:P.63 - P.65

 脊髄損傷にて下半身麻痺となり,自己導尿していた38歳の男性が意識障害にて緊急入院した。臨床所見と画像診断よりフルニエ壊疽および腎後性腎不全と診断し,全身麻酔下に両側腎瘻造設および下腹部から会陰部にかけて切開排膿および洗浄を施行した。本症例においては糖尿病および脊髄損傷後の下半身麻痺が発症の誘因となっていることが示唆された。

尿閉を呈した無菌性髄膜炎

著者: 深貝隆志 ,   石原理裕 ,   船橋健二郎 ,   内藤善文 ,   丸山邦夫

ページ範囲:P.67 - P.70

 46歳男性,尿閉,発熱を主訴に来院。髄液検査,血液検査の結果より単純ヘルペスウイルスによる無菌性髄膜炎と診断された。尿道バルーンカテーテル留置後,保存的治療にて経過観察した。尿閉の原因は膀胱内圧測定,他の泌尿器科学的所見より排尿筋・尿道括約筋協調不全の存在が疑われた。治療には塩酸タムスロシンが有効で,第61病日に自排尿可能となった。

帯状疱疹による尿閉

著者: 湯浅健 ,   椋本一穂 ,   吉田玄 ,   友吉唯夫

ページ範囲:P.71 - P.73

 29歳男性。主訴は排尿困難。保存的治療を行ったが,第7病日に完全尿閉となり入院した。入院時現症にて右臀部に有痛性の集簇する水疱性皮疹を,また髄液検査にて単核細胞の増加などの異常を認めた。以上より帯状疱疹による神経因性膀胱と診断し,アシクロビルおよびステロイド剤の投与を行った。第15病日には正常の排尿状態に回復した。

画像診断

MRIで描出されたS状結腸膀胱瘻

著者: 久保寺智 ,   丸山修 ,   小松秀樹

ページ範囲:P.77 - P.79

 患者 71歳女性。
 主訴 頻尿,排尿時痛。
 既往歴 高血圧症,胆石症。
 家族歴 特記すべきことなし。
 現病歴 1994年10月中旬より頻尿,排尿時痛が出現し近医を受診。膀胱炎と診断され,種々の抗生剤,抗菌剤を投与されるも改善無く,同年11月11日当科を紹介され受診した。
 初診時現症 身長155cm,体重42kg,血圧160/85mmHg。胸腹部理学的所見に異常は認めなかった。
 膀胱鏡所見 膀胱内腔の左半分以上を占拠する,非乳頭状で表面に壊死物質の付着した腫瘍を認めた。
 入院後経過 膀胱腫瘍の診断で11月16日当科に入院となった。画像診断(図1〜5)より.膀胱とS状結腸の両者に連続性に腫瘍が存在し,S状結腸膀胱瘻が形成されていることが確認された。経尿道的膀胱腫瘍生検,大腸内視鏡によるS状結腸腫瘍生検で,病理組織学的に両者から同一の高分化型腺癌との結果が得られたため,S状結腸癌膀胱浸潤によるS状結腸膀胱瘻形成と診断した。12月15日泌尿器科外科共同で,S状結腸切除および膀胱部分切除により腫瘍を摘出した。病理組織学的には腫瘍は高分化型腺癌であり,大腸癌取り扱い規約に従うと,stage IIIa,根治度Aであった。経過は良好で,化学療法を施行後現在外来経過観察中である。

交見室

脳死と安楽死,他

著者: 勝岡洋治

ページ範囲:P.85 - P.87

 「自死した著者の次男は脳死状態に陥った11日間の脳死状態のなかで父親は,さまざまに息子と来し方に思いを馳せる。息子の肌は艶があり生き生きとしている。死には,自分がどのような死を迎えるかという一人称の死と,アフリカで百万人が餓死しても昨日と今日を変らず過ごすような三人称の死がある。医師にとって患者の死は,いかに熱心に治療しようと三人称の死だ。人生と生活を分かち合った肉親との死別は二人称(あなた)の死である。脳死判定が即,臓器移植であるならば,こうした二人称の死と受け入れる時間が抹殺されてしまう。」──読売新聞,読書欄より。
 「自分が痛みを伴い,治る見込みがなく,死期が迫った状態では,"単なる延命治療をやめた方がいい""やめるべきだ"を合計すると75%。また,植物状態になったとき,"延命治療をやめるべきだ"が80%に及んでいる。20歳以上の男女5,000人についての調査である。日本人には,自分の死について,割り切った考えを持っているようにみえる(略)。お前はどうか,私は,多分,修羅場を演ずると思う。他人に迷惑をかける。旅の恥はかき捨てという。今度の旅は一番長い旅である。かき捨てる恥も大きい。最近,病名の告知がはやっているようだが,迷惑な話だ。

基本情報

臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

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