文献詳細
セミナー 臨床医のための生物統計学抄説・2
検査データの解釈
著者: 大橋靖雄1 樋之津史郎2
所属機関: 1東京大学医学部 健康科学・看護学科 疫学・生物統計学教室 2東京大学医学部薬剤疫学教室
ページ範囲:P.831 - P.835
文献概要
"When doctors meet numbers"という粋な論文がある(Berwick et al(1981))1)。サミー・デービス・Jrに"Boy Meets Girl"という楽しいレコードがあるが,こちらはそれほど楽しい出会いではなく,医師が定量的な数値情報をどれほど理解し臨床に活用できるかを調べるために,ハーバード大学で考案された試験Self-Assessment Questi-onnaire(SAQ)の結果を分析した論文である。対象は医学生,インターン・レジデント,実務担当医,教育あるいは研究に携わる医師(academic physicians)の4群であり,主な結論は,①頻繁に使われる重要な単語(たとえばP値,後述の偽陽性率)においてさえ統一された理解がされていない,②統計的あるいは定量的な推測の重要な原理(たとえば平均値への回帰,中心極限定理)が理解されていない,③定量的なデータに支持されない結論に飛びつく傾向がしばしばある,④全体としての成績は卒業以降の年数と逆相関し,とくに実務担当医の成績が他の群と比べ悪い,といったものであった。おそらく日本でも同様であろう。
このSAQから二つの質問を抜出してみよう。読者は回答を試みられたい。
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