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増刊号特集 前立腺疾患'96 前立腺肥大症 治療法の選択と実際・薬物治療
薬物治療をめぐるcontroversy
著者: 保坂義雄1 河邉香月1
所属機関: 1東京大学医学部泌尿器科
ページ範囲:P.79 - P.82
文献購入ページに移動前立腺肥大症の治療薬に従来からある製剤に加え,5α—リダクターゼ阻害剤が登場しつつある。現在治験段階であるが有効性が期待されており,作用機序の異なる薬剤の開発は薬物療法の進歩に他ならない。1989年に塩酸プラゾシンがα—ブロッカーとして初めて前立腺肥大症に伴う排尿障害に適応が認められて以来の新しい展開である。また,前立腺癌の治療に既に使われているLH-RHアゴニストも副作用が少なく,前立腺肥大症での効果が十分に考えられる。これらに以前からある黄体ホルモン剤を加えると,薬物療法でも相当に良好な治療成績が得られるようになるものと予想される。この他,従来より使われている植物エキス製剤,アミノ酸合剤,漢方薬等による軽症例の治療を併せると薬物治療の幅が格段に広がり,それだけきめ細かな対応ができるようになり得る。しかし,選択の幅が拡がる分だけ,どういう基準でどのような薬剤治療を行ったらよいかを示すガイドラインの必要性が今まで以上に高まってくる。ここに投与プロトコールと効果判定をめぐる議論が改めてなされる理由がある。折しも国際的な統一基準を作成しようとの動きが現実のものとなり,すでに議論が始まっている。本稿でその一端を紹介しておきたい。
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