文献詳細
セミナー 臨床医のための生物統計学抄説・9
多変量解析
著者: 樋之津史郎1 大橋靖雄2
所属機関: 1東京大学医学部薬剤疫学教室 2東京大学医学部 健康科学・看護学科 疫学・生物統計学教室
ページ範囲:P.827 - P.832
文献概要
生存時間解析を行っている最近の臨床研究論文を読んでみると,Cox回帰花盛りである。生存時間解析において,柔軟でかつ既存のパッケージで手軽に利用できる多変量解析はCox回帰しかないこともあるが,十分に注意して使わなければならないことは他の解析手法と同様である。日本語で書かれた統計の本にあまりお薦めできるものがない中で,多変量解析についてはお薦めの本がある。「医者のためのロジスチック・Cox回帰入門」1)がそれで,読みやすい分量の中で,具体的な例(肝臓の領域)を用いて説明してある。この本は結果が「生存・死亡」などの二値データであるロジスティック回帰と,生存時間を対象としたCox回帰を扱っている。これが出版されたときは,「とてもわかりやすい良い本が出た」という印象を持ったが,臨床医の感想は「まだ難しい」というものであった。特に比例ハザードモデルは,その概念自体がわかりにくく,指数を使った説明に出会うと臨床医は拒絶してしまう傾向にあるように推察する。
そこで.今回のセミナーではできるだけ直観的な理解が可能な形でCox回帰について説明し,事例を通じて計算する際の注意点を述べておきたい。
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