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雑誌目次

雑誌文献

臨床泌尿器科51巻3号

1997年03月発行

雑誌目次

綜説

前立腺肥大症におけるPressure Flow Study

著者: 山口脩

ページ範囲:P.183 - P.194

 Pressure Flow Studyでは,筋肉の収縮力学と尿路の流体力学に基づき,排尿筋の強さと尿道閉塞の程度が判定される.排尿筋に内在する収縮エネルギーの量が排尿筋の強さを表わし,排尿時のP/Qプロットからその値を計算できる.排尿後半のP/Qプロットの解析から尿道抵抗曲線が求められ,尿道閉塞の定量的評価が可能となる.これらの理論を基礎にして,Abrams/GriffithsあるいはSchäferのノモグラムがどのようにしてつくられたかを解説した.

手術手技 悪性腫瘍の手術・3

腎・尿管全摘除術

著者: 星宣次

ページ範囲:P.197 - P.201

 尿管腫瘍の摘除に際してはまず病変部への到達が必要である。尿管腫瘍の場合は腫瘍周囲をある程度剥離して,摘除可能と判断してから腎摘にとりかかるべきである。腎盂腫瘍,上部尿管腫瘍の場合は確実にリンパ節郭清を行うために正中切開で経腹的に到達する。リンパ節郭清範囲は,原発腫瘍の部位に応じて,腎盂・上部尿管,中部尿管,下部尿管に分けてそれぞれ近傍の所属リンパ節を郭清する。所属リンパ節転移を認める例は腎茎部までの郭清が必要である。

原著

尿道下裂および停留精巣症例にみられた染色体異常の検討

著者: 立木仁 ,   高木誠次 ,   伊藤直樹 ,   三熊直人 ,   熊本悦明 ,   塚本泰司

ページ範囲:P.203 - P.206

 尿道下裂や停留精巣においては時に染色体異常が認められる。そこで,尿道下裂および停留精巣症例においてみられた染色体異常について頻度および個々の核型について検討した。尿道下裂66例および停留精巣128例に対し,末梢血リンパ球培養による染色体分析を施行した。その結果,尿道下裂では性染色体異常が7.6%,常染色体異常が6.1%の計13.6%に染色体異常がみられた。正常変異核型は1.5%にみられた。停留精巣では性染色体異常が3.1%,常染色体異常が5.5%の計8.6%に染色体異常がみられた。正常変異核型は2.3%にみられた。これらの異常核型は多種多様であった。また,これらの外性器奇形の重症度と染色体異常の頻度との間に有意な相関性は認めなかった。

腎細胞癌における臨床病理像の重要性

著者: 住友誠 ,   中島淳 ,   大東貴志 ,   上野宗久 ,   実川正道 ,   赤塚誠哉

ページ範囲:P.209 - P.213

 腎細胞癌の診断にて手術を施行された34症例について,臨床病理所見の各因子の相関関係および各因子と非再発率との関係を検討した。腫瘍径と症状の有無は他の因子との相関性が高く,重要な臨床的因子と考えられたが,径4cm以下,偶発癌は乏血管像を呈する頻度が有意に高かった。単変量解析では,症状の有無,腫瘍径,病理学的病期,異型度,INFが再発危険因子であったが,多変量解析の結果,病理学的病期が最も重要な因子であった。偶発癌や径の小さい腫瘍の発見頻度の増加は,腎細胞癌の予後の改善に寄与すると思われるが,同時に良性腫瘍との鑑別が困難な症例の増加も予想され,正診率の向上への対策が急務であると考えられた。

症例

腎嚢胞と鑑別困難であった後腹膜嚢胞

著者: 市野みどり ,   中川龍男 ,   加藤晴朗 ,   村石修 ,   小川秋實

ページ範囲:P.217 - P.219

 側腹部痛を主訴に来院した72歳,男性。超音波検査で腎嚢胞と診断され,嚢胞穿刺とエタノール注入を行ったが,約3週間で再発した。手術を行ったところ後腹膜嚢胞であった。

急速な経過をたどったベリニ管癌の1例

著者: 荻原雅彦 ,   一條貞敏 ,   星暢夫 ,   鈴木孝行 ,   石橋啓 ,   山口脩

ページ範囲:P.223 - P.226

 症例は57歳,男性。右側腹部痛,発熱を主訴に当科を受診し,腹部CTにて右腎に内部構造を有する嚢胞性病変が認められ入院した。RPで腎盂腎杯の不整がみられ,腎盂腫瘍の診断で腎・尿管全摘除術を施行した。摘出標本で腎髄質から皮質にわたって結節状に増殖する充実性の腫瘍を認め,免疫染色を含む病理組織学検索にてベリニ管癌(乳頭状腺管型)と診断された。術後1か月に後頸部リンパ節転移出現,4か月後に癌性胸腹膜炎を併発し癌死した。

排尿困難を主訴とした大陰唇癒着症の1例

著者: 鈴木俊一 ,   井上克己 ,   吉田英機 ,   田村和司 ,   熊沢哲哉 ,   矢内原巧

ページ範囲:P.227 - P.229

 69歳,女性。排尿困難を主訴に来院。大陰唇の癒着を認め,腰椎麻酔下に癒着剥離術を施行。術後,排尿困難は消失した。本症は成人での報告は少なく,本邦では27例目である。

多発性骨転移を来したCEA,CA19-9産生膀胱移行上皮癌

著者: 釜井隆男 ,   當眞嗣裕 ,   増田均 ,   石渡大介

ページ範囲:P.231 - P.234

 67歳,男性。浸潤性膀胱腫瘍に対し動注化学療法後,膀胱部分切除術を施行。移行上皮癌,Grade 3,pT3b pNO MOであった。術後FAP療法(5-FU,THP-ADM,CDDP)を3コース施行,以後局所再発や遠隔転移を認めなかった。術後15か月目に後頸部痛と腰痛が出現し,骨シンチにて全身骨への異常集積像を認めた。血清CEA,CA19-9値の上昇がみられ,免疫組織学的検索にて膀胱の原発巣と骨転移巣がCEAとCA19-9で陽性に染色された。

膀胱部パラガングリオーマの1例

著者: 増田広 ,   大貫隆久 ,   町田昌巳 ,   牧野武雄 ,   柴山勝太郎

ページ範囲:P.235 - P.237

 症例は66歳,女性。無症候性血尿を主訴に来院。17年前より高血圧の既往があるのみで,入院時現症,検査所見に異常は認めなかった。膀胱エコー,骨盤部CTスキャン,膀胱鏡の諸検査により膀胱粘膜下腫瘍と診断し,粘膜下腫瘍核出術を施行した。病理組織学的所見は膀胱パラガングリオーマであった。腫瘍の再発,転移の報告もあり,今後の十分な経過観察が必要であると思われた。

顆粒球コロニー刺激因子産生腎盂移行上皮癌

著者: 山本巧 ,   羽鳥基明 ,   田中俊之 ,   蓮見勝 ,   鈴木孝憲 ,   山中英寿

ページ範囲:P.239 - P.243

 症例は61歳,男性。主訴は肉眼的血尿,発熱,全身倦怠感。精査により右腎盂腫瘍と診断し,右腎尿管全摘術およびリンパ節郭清を施行した。病理組織学的診断は移行上皮癌,Grade 3,pT4 pN2 M0であった。術前高値であった白血球数は再上昇し,血清顆粒球コロニー刺激因子の高値と,腫瘍組織に顆粒球コロニー刺激因子産生が証明された。肺,骨転移がみられ,術後31日目に死亡した。

巨大水腎症に発生した腎盂扁平上皮癌

著者: 小島聡子 ,   武田英男 ,   佐藤信夫 ,   上原敏敬

ページ範囲:P.245 - P.247

 症例は62歳,男性。1990年,肉眼的血尿を主訴に当科受診。左腎盂尿管移行部狭窄症に伴う左巨大水腎症と診断し,手術を勧めるも拒否。その後通院せず。1996年3月,肉眼的血尿が頻回となり再受診。CTにて左腎盂に広範に拡がる腫瘍を認め,左腎尿管全摘術を施行。病理診断は腎盂扁平上皮癌であった。巨大水腎症に発生した腎盂癌は稀であり,自験例は本邦26例目と思われた。

画像診断

経直腸的超音波上で低エコー領域を呈した前立腺末梢域内の肥大結節

著者: 大堀理 ,   須山一穂 ,   内田豊昭

ページ範囲:P.249 - P.250

 患者 68歳,男性。
 主訴 前立腺癌精査目的。
 既往歴・家族歴 特記すべきことなし。
 現病歴と経過 1982年,他医にて排尿障害のため経尿道的前立腺切除術を受け,病理学的検索では切除組織は前立腺肥大であった。その後,1986年に近医にて直腸診上,前立腺に硬結を指摘され,1988年までに計5回の前立腺生検を受けたがいずれも良性であった。
 1988年,当院に紹介され受診した。直腸診上,右葉に硬結を触れ,経直腸的前立腺超音波では直腸診上の硬結と同部位と思われる右前立腺末梢域(peripheral zone)に突出した低エコー領域を認めた(図1)。血清PSA値は16.3 ng/mlであった。超音波ガイド下に生検を施行したところ,Gleason score 6(3+3)の腫瘍を検出され,1988年8月,根治的前立腺全摘除術を施行。全摘標本の腫瘍地図では前立腺全体に散在する腫瘍を認めたが,直腸診や超音波で疑われた部位は末梢域内の前立腺肥大結節であった(図2)。その後,1996年8月に至るまで再発を認めていない。

交見室

前立腺肥大症の診療において気になる二,三の問題/腎の「中極」

著者: 伊藤秦二

ページ範囲:P.256 - P.257

 長年前立腺肥大症の診療に携わってきている間に,気にかかる問題がいくつかあります。そのうちの二,三を挙げて,諸賢の御批判を仰ぎたいと思います。
 1.残尿感は前立腺肥大症の症状か
 残尿感はしばしば前立腺肥大症の症状に入れられます。IPSSの項目にもその筆頭に挙げられています。しかし,厳密にいってこれは肥大症の症状でしようか。そうではなく,肥大症に随伴する前立腺炎(必ずしも細菌感染によるものではない)の症状ではないでしようか。少なくとも前立腺肥大症の症状の中では筆頭ではなく,末席におかれるべき症状と思います。少なくともfixed elementではなくvariable elementによる症状でしよう。何故こんなことにこだわるかといいますと,残尿感は確かに前立腺肥大症の患者の来院の直接の動機になることの多い症状ではあるけれども,たいていは前立腺炎に対する薬物療法で短時日で消失するものであり,患者はこれさえ消失すれば大いに不安や苦痛から解放され来院しなくなるケースも多いからであり,したがって残尿感が主訴の場合,その前立腺肥大症には外科的治療の選択にとくに慎重でなければならないと考えるからです。

基本情報

臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

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