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雑誌目次

雑誌文献

臨床泌尿器科51巻7号

1997年06月発行

雑誌目次

特集 泌尿器科領域の新しい画像診断

エディトリアル—泌尿器科領域の新しい画像診断

著者: 平松京一

ページ範囲:P.443 - P.443

 CTが画像診断に取り入れられてから,すでに四半世紀が過ぎようとしている。このCTの出現が,画像診断の世界を大きく変えてしまったといっても決して過言ではない。これに先立って開発されたUSならびに80年代より急速に普及したMRIの応用と相俟って,これら非侵襲性の画像診断は従来の常識を打ち破り,病変の存在のみならず病巣の質的診断とその進展範囲を明確に描出することを可能にしつつある。したがって,画像診断で最も重要な鑑別診断はもとより,悪性腫瘍においてはそのステージ診断をも把握することが非常に容易になってきている。
 これらの新しい画像診断の出現によって,従来より主流をなしてきた経静脈性腎盂造影をはじめとする種々の尿路系の造影検査や血管造影の役割は大きく変わり,診断のdecision treeにおける位置付けも変わりつつある。確かにこれまで血管造影検査でしか判定できなかった血管内への腫瘍の進展や血管自体の病変などは,MRアンギオ,CTアンギオ,またはカラードプラ法を含んだUSなどによって判定が可能になりつつあるし,尿路系全体の形態もMR urographyの手技により描出されるようになってきた。また,前立腺の診断においては直腸内コイルを用いた高解像力MRI検査によって前立腺の内部構造(内腺,外腺)が明瞭に描出され,これによって前立腺癌の診断が大きく前進し,経直腸USとともに大きな役割を演じている。

腎・尿路系における三次元CT

著者: 川俣博志 ,   隈崎達夫 ,   市川和雄 ,   林宏光 ,   市川太郎 ,   小林尚志

ページ範囲:P.445 - P.451

 高速らせんCTから得られる三次元CTは,通常の二次元画像に加えて多方向の形態診断,立体的位置関係の把握といった付加価値を提供し,腎動脈狭窄性病変のスクリーニングや小腎癌の術前診断などにおいて有用な臨床検査法となっている。また,新たに開発されたコーン・ビーム三次元CTは,きわめて鮮鋭で緻密な三次元画像を提供する新しい画像再構成法である。本稿では,腎・尿路系におけるこれら三次元CTの臨床応用とその有用性について述べる。

パワードプラ法による腎血流の評価

著者: 山田麗子 ,   平井都始子 ,   大石元 ,   徳野恵津子 ,   堀川典子 ,   今井幸子 ,   松尾尚樹 ,   打田日出夫

ページ範囲:P.453 - P.461

 超音波パワードプラ法は,新たなカラー表示法として注目され,すでに各領域において広く臨床応用がなされている。本法は血流速度や血流方向,ビーム方向に対する血流の角度に関係なくカラー表示が可能で,速度表示法では同定できない微細な血管血流も描出できる。本稿では,パワードプラ法による腎血流の評価が腎血管性病変ならびに腎腫瘍性病変の診断,移植腎の経過観察にどのように寄与しうるかについて,代表症例を呈示しながら概説した。

腎のMRアンジオグラフィー

著者: 湯浅祐二

ページ範囲:P.463 - P.468

 MRアンジオグラフィーは,急速に発展するMRI技術のなかでも臨床応用のための改良が確実に行われている領域であり,頭部だけでなく躰幹部へ応用される機会も多くなっている。MRアンジオグラフィーの方法としては,time-of-flight法,phase contrast法,造影剤による3次元MRアンジオグラフィーがあるが,いずれも腎血管系の検索では,それぞれの特徴を活かした応用が可能である。

MR urography

著者: 三浦弘志 ,   湯浅祐二 ,   平松京一

ページ範囲:P.471 - P.480

 Fast SE法(fast spin echo法)によるMR-U(MR urography)では,閉塞性変化のある尿路系を選択的に描出でき,IVP(intravenous pyelography)では解析困難な情報が得られる。また,造影剤を使用しないため.腎不全など腎機能障害を有する症例にも安全に施行でき,尿路系流出(排泄)障害の有無のスクリーニングに有用な検査法である。

前立腺疾患のMRI—直腸内コイルによる診断

著者: 杉村和朗

ページ範囲:P.483 - P.489

 MRIは,前立腺癌の診断において重要な役割を果たしつつある。特に直腸内コイルを用いた画像は、非常に詳細な解剖学的あるいは病理学的所見が得られるため,診断に果たす役割が期待されている。しかし最近では,MRIによる前立腺癌の病期診断において,直腸内コイルは必ずしも期待されたほど役立っていないとする報告が多い。本稿では,前立腺癌の診断における直腸内コイルの有用性と限界,今後の展開について解説する。

手術手技 悪性腫瘍の手術・6

膀胱全摘除術

著者: 平塚義治

ページ範囲:P.491 - P.498

 膀胱全摘除術と,それとともに行う骨盤リンパ節郭清術は,浸潤性膀胱癌の重要な治療法である。したがって,この手術を安全にかつ確実に行うことは泌尿器科医にとって習得すべき必須の事項である。その主なポイントは,骨盤の豊富な静脈叢からの出血のコントロール.膀胱前立腺後面と直腸間の剥離にあり,さらに最近は勃起神経温存,新膀胱形成のために神経血管束,尿道を損傷なく剥離することも要求されている。本稿では,筆者が行っている術式,工夫点,注意点について述べる。

原著

膀胱結石に対する体外衝撃波結石破砕術

著者: 小島祥敬 ,   安積秀和 ,   安藤裕 ,   窪田裕樹 ,   永田大介 ,   吉村麦 ,   安井孝周 ,   郡健二郎

ページ範囲:P.501 - P.504

 1991年から1996年までに当施設で経験した膀胱結石41例中5例に膀胱切石術を,26例に砕石用膀胱鏡による膀胱砕石術を,10例に体外衝撃波結石破砕術(ESWL)を施行した。膀胱切石術群と膀胱砕石術群ではほとんどの症例で麻酔を必要とし,何らかの術後合併症を認めた。これに対してESWL群では麻酔を必要とすることは少なく,術後合併症もほとんど認めなかった。また10例中5例で1回治療,2例で2回治療を行い,残り3例はESWL施行後に胱膀砕石術を追加した。ESWLは侵襲が少なく効果的であり,胱膀結石に対しても積極的に行われるべきだと思われた。

症例

腎杯憩室破裂

著者: 岸本大輝 ,   三宅範明 ,   福川徳三

ページ範囲:P.507 - P.509

 症例は左側腹部痛を主訴として来院した26歳の男性。DIP検査で左腎杯憩室破裂が疑われたため,逆行性腎盂造影を施行し腎杯憩室破裂を確認した。腎盂・腎杯内圧の減圧を目的とし,尿管ステント留置を行った。尿管ステント留置後,尿の腎外への溢流は減少し,尿管ステントは約1か月後に抜去し得た。

透析患者に発生した出血性腎嚢胞の3例

著者: 山下登 ,   榊原尚行 ,   松ヶ瀬安邦 ,   篠島弘和 ,   森田研 ,   松浦忍

ページ範囲:P.511 - P.514

 後天性多嚢胞性腎疾患を有する長期透析患者に発生した出血性腎嚢胞を3例経験した。保存的療法にて1例は治癒したが,他の2例は出血のコントロールがつかず腎摘除術を施行した。うち1例は透析中の出血性ショックとなったため,緊急手術を要した。出血性腎嚢胞は,後天性多嚢胞性腎疾患の合併症として悪性腫瘍,感染症とともに重要であり,症状出現の場合には早急な対応が重要であると考えられた。

画像診断

特異なCT像を呈した腎オンコサイトーマ

著者: 栗崎功己 ,   原田勝弘

ページ範囲:P.517 - P.519

 患者 51歳女性。
 主訴 左腎腫瘤の精査。
 家族歴 特記すべきことなし。
 現病歴 8年前より高血圧症で当院内科で通院治療中であった。1993年6月に行った腹部超音波検査で左腎に腫瘤を指摘されてCT, MRIを施行。左腎腫瘍を疑われて当科紹介,6月24日に入院した。
 入院時現症 血液一般検査,血液生化学検査,尿検査に異常を認めなかった。
 手術所見 左腎腫瘍の診断で,1993年7月9日に左腎全摘除術を施行した。割面は血性粘液様内容を含む嚢胞様腫瘍で,腎実質とは被膜で境界されており,明らかな腎実質への浸潤は認めなかった。色調は暗赤色であった。
 病理診断は,大型で好酸性顆粒状の胞体を有する異型の乏しい腫瘍細胞が小腺管形成性ないし索状に増殖されており,腎オンコサイトーマと診断された。

小さな工夫

精管・精嚢造影時におけるブルドッグ鉗子による中枢側精路への造影剤逆流防止

著者: 大橋正和 ,   石川博通

ページ範囲:P.522 - P.523

 男性不妊診療において,精路の異常や精路通過障害の有無を明らかにする目的で施行される精管・精嚢造影1)は,精巣生検とともに日常的な検査である。本検査のコツは,指先で精管をしっかりと保持し,その直上の皮膚を切開し,精管を周囲組織を含んだまま精管鉗子で保持することにつきる。そして,剥離・露出された精管に24Gエラスター針を末梢側(膀胱側)に向かって挿入し,造影剤を注入する。その際,時として中枢側(精巣側)精路が逆流した造影剤により描出されることがある(図1)。
 この精路中枢側への造影剤の逆流は,精路内圧を上昇させ.精路を破綻させ,ひいては新たな医原性精路閉塞を生じさせる危険性があり.好ましいものではない。乏精子症例に対して本検査を施行し,検査後の精液所見が検査前より悪化した例はなかったという報告がみられるが2),日常診療において合併症は最小限にとどめたいものである。

病院めぐり

浦添総合病院泌尿器科

著者: 宮里実

ページ範囲:P.526 - P.526

 医療法人仁愛会浦添総合病院は昭和54年12月25日に設立された。沖縄県那覇市の隣りの浦添市に位置し,空港からも30分と交通の便も良く,設立当初から浦添・那覇地区の基幹病院として地域医療の中核を担ってきた。診療科目は22科で,各種の専門外来も開設している。病床数は総数302床で,入退院コーディネーターにより緻密なベッド稼動を行っている。医師も55人を数え,1日の外来総数も1,000人を越える。常勤医以外のローテーションはほとんどが琉球大学医学部附属病院からであり.内科,外科はそれぞれ岡山大学,福岡大学から研修医を受け入れている。
 泌尿器科は設立当初から2名体制で,平成元年から日本泌尿器科学会専門医制度による研修施設に認定されている。平成5年からは琉球大学医学部附属病院からローテーション1名を受け入れ,医長である島袋善盛先生と2名体制で診療に当たっている。

松阪中央総合病院泌尿器科

著者: 丸山良夫

ページ範囲:P.527 - P.527

 松阪は"松阪牛"で全国的に有名であるが,蒲生氏郷,本居宣長などが活躍した歴史の町でもある。また,南北に長い三重県のほぼ中央にあり,海は伊勢志摩,熊野に近く,背後には秘境の名にふさわしい大杉谷,大台ケ原などの山塊が迫まり,仕事にも遊びにも申し分のない土地である。
 この地に松阪中央総合病院は1961年7月1日に一般病棟132床,結核病棟80床の計212床で発足し,泌尿器科も常勤1名で同時に開設された。1975年に胸部外科,1985年に麻酔科,1987年に神経内科,1989年に精神神経科を新設し,現在16科,489床で地域の中核病院としての重責を果たしている。1977年には厚生省より臨床研修病院の指定を受け,現在7名の研修医を受け入れており,常勤医と合わせて57名で日常の診療に当たっている。1961年以来,数度の増改築を重ねてきたが,当院も築後36年となり施設の老朽化,また患者さんの入院生活の快適性という点で問題が生じてきており,本年4月1日に,掲載の写真のごとく新病院に移転した。

基本情報

臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

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