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画像診断
術前診断が困難であった腎盂扁平上皮癌
著者: 奥谷卓也1 安本博晃1 林睦雄1
所属機関: 1たかの橋中央病院
ページ範囲:P.973 - P.975
文献購入ページに移動主訴 全身倦怠感。
家族歴・既往歴 特記すべきことなし。
現病歴 1997年2月,全身倦怠感のため近医を受診し,血膿尿を指摘され,当科を受診した。初診時DIP,腹部超音波検査にて左腎上極に腫瘤性病変が疑われたため,5月22日に入院となった。
入院時現症 腹部理学的所見に異常なく,体温は37.7℃であった。
入院時検査成績 血液一般では白血球11,000/mlと高値であつたが,血液生化学では異常値を認めなかった。C反応性蛋白は2.5mg/dl(LTO.5)とやや上昇していた。尿検査所見では血膿尿を認めた。尿細胞診はclass Ⅱ〜Ⅲであつた。
臨床経過 入院時の逆行性腎盂造影,腹部CTなどの画像所見と尿路感染症の存在から,急性限局性細菌性腎炎(AFBN)を疑い,除外診断の目的を兼ねて,10日間抗生剤を投与した。この間,37℃台の微熱とC反応性蛋白の軽度上昇は変わらなかった。化学療法後の腹部CTで左腎の腫瘤病変に縮小傾向はなく,同時期の腎動脈血管撮影では血管に乏しい腫瘤陰影を認めた。MRIでも腫瘍の確定診断は得られなかつた。
以上の経過および画像所見から腫瘍血管に乏しい腎細胞癌が最も疑われたが,腎良性腫瘍,腎盂腫瘍なども念頭におきながら経腹的腎摘除術・大動脈周囲リンパ節郭清術を施行した。
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