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雑誌目次

雑誌文献

臨床泌尿器科52巻3号

1998年03月発行

雑誌目次

特集 泌尿器科領域における分子生物学の臨床応用:診断編

膀胱癌の分子生物学的診断—尿中剥離細胞および摘出組織を用いた膀胱癌の分子生物学的診断

著者: 金山博臣 ,   横田欣也 ,   香川征

ページ範囲:P.183 - P.192

 近年,泌尿器癌においても分子生物学的研究が活発に進められ,発癌や浸潤転移のメカニズムに関わる遺伝子・分子が明らかになり,分子生物学の臨床応用も可能になりつつある。特に膀胱癌の診断においては,非侵襲的な分子生物学的膀胱癌診断や分子生物学的悪性度診断への応用が期待される。われわれは,尿中 離細胞におけるテロメラーゼ活性測定を用いた癌診断の臨床応用について,また摘出組織を用いたRT-PCR法によるMMP-2・TIMP-2・MT1-MMP遺伝子発現定量による悪性度診断の臨床応用について検討を行い,有用性が示唆された。今後,膀胱癌における分子生物学的診断の臨床の場への導入が期待される。

前立腺癌の分子生物学的診断—分子生物学的手法による前立腺癌の病期診断と予後予測

著者: 赤倉功一郎 ,   古谷雄三 ,   伊藤晴夫

ページ範囲:P.195 - P.203

 前立腺癌の病期診断や予後予測に役立てる目的で分子生物学的技術が応用されるようになった。末梢血液中や骨髄,所属リンパ節中の癌細胞を証明するために,前立腺特異抗原(prostate specific antigen:PSA)のメッセンジャーRNAをRT-PCR(reverse transcriptase-polymerase chain reaction)によって検出することが試みられている。アンドロゲンレセプター遺伝子中のCAGおよびGGC反復の数と前立腺癌の発症の危険度や進行度が関連すると報告された。また,アンドロゲンレセプターのステロイド結合領域の遺伝子変異がアンチアンドロゲン除去症候群の原因の1つであることが示唆された。

腎細胞癌の分子生物学的診断—分子生物学的手法による腎細胞癌の発生予測と生物学的悪性度評価

著者: 冨田善彦

ページ範囲:P.207 - P.212

 腎細胞癌では他の悪性腫瘍に見出された遺伝子異常はいずれも普遍的なものではなく,免疫化学的に血清中に検出されうる特異的な腫瘍マーカーが存在しないために,分子生物学的診断の応用範囲は狭いといわざるをえない。本稿では,発生の予測(発生リスクの検討)に利用できると思われるVHL遺伝子,c-met遺伝子,また腫瘍の生物学的悪性度の評価に関係する可能性のあるいくつかの分子について述べる。

尿路結石症の分子生物学的診断

著者: 山手貴詔 ,   梅川徹 ,   井口正典 ,   栗田孝 ,   郡健二郎

ページ範囲:P.213 - P.221

 現在,分子生物学的手法は様々な分野で応用され,幾つかの疾患では病因解明の目覚ましい成果を挙げている。尿路結石症の分野でも,最近盛んにその手法が取り入れらるようになった。シスチン尿症,APRT欠損症,Dent病などに伴う結石症に関しては,その診断として責任遺伝子が解明されている。尿路結石の約9割を占めるカルシウム含有結石の研究でも,オステオポンチン,カルプロテクチン蛋白のin situ hybridiza-tion法を用いたmRNAマッピング,アンチセンス法を用いたDNAレベルでの特異的抑制などが行われ,結石形成過程での重要性が証明されてきている。本稿では,現在報告されている結石症診断に関する分子生物学的研究を紹介する。

尿路感染症の分子生物学的診断

著者: 佐久本操 ,   松本哲朗

ページ範囲:P.223 - P.227

 微生物の診断における分子生物学(遺伝子工学)の応用は近年急速に進められている。尿路感染症においては,分離培養が困難および時間を要する性感染症の起炎微生物の同定や,尿路結核でその応用が進んでいる。耐性菌の分子生物学基礎的研究では,耐性菌の耐性メカニズムや出現の原因究明がなされ,臨床の場で,尿路感染症に対して抗菌薬の適切な使い方がなされるようになってきた。

男性不妊症および性分化異常の分子生物学的診断

著者: 並木幹夫 ,   高栄哲 ,   野田透

ページ範囲:P.229 - P.238

 男性不妊症および性分化異常に関わる遺伝子異常について概説し,現在臨床の場で行われつつある遺伝子診断の実際を一部紹介した。男性不妊症では,精子形成に関わる遺伝子AZFが最も注目されているが,1993年以後,RBMやDAZがAZFの候補遺伝子として報告された。われわれが単離を目指している新規AZFも含めAZFは複数存在するらしく,これらの遺伝子の欠失の有無を調べる診断が一部で行われているので,そのPCRプライマーを列記した。性分化機構はほぼ解明されており,それに関わる遺伝子SRYやアンドロゲン受容体遺伝子などの塩基配列も決定している。実際に臨床の場で遺伝子診断は行われているので,症例を呈示しながらその実際を紹介した。

手術手技 小児泌尿器科手術・3

巨大尿管に対する手術

著者: 島田憲次 ,   細川尚三 ,   東田章 ,   森本康裕

ページ範囲:P.241 - P.250

 巨大尿管に対する治療法の選択は,超音波を用いた尿路疾患スクリーニング検査の普及とともにこれまでとは大きく変化しており,拡張が高度の症例でも長期間にわたり腎機能に変化がみられないことが多い。手術に際しては尿管を縫縮する尿管形成術の原理と適応をよく理解し,術後の狭窄とVURの発生を防止する必要がある。特殊な型として中部尿管狭窄があり,術中に尿管蠕動をよく観察し,尿管端々吻合術の適応も考慮する。

セミナー 合併症をもつ患者の術前・術後の全身管理・5

糖尿病

著者: 須加原一博 ,   杉田道子

ページ範囲:P.251 - P.257

 糖尿病を合併する手術患者は,年々増加している。糖代謝や脂質,蛋白質代謝異常に加え,全身性の血管病変を合併し,周術期の大きなリスクファクターの1つである。糖尿病患者の手術に際し,その病態生理と手術などのストレスによる代謝系増悪の理解,疾患の程度や合併症の把握,周術期の血糖管理,栄養補給,感染症対策などの必要性を概説した。

症例

傍尿道自家脂肪注入が有効であった骨盤骨折に伴う全尿失禁

著者: 一柳暢孝 ,   松村剛 ,   石丸尚 ,   酒井邦彦

ページ範囲:P.259 - P.261

 44歳,女性。交通外傷による骨盤骨折のため全尿失禁となった。内服治療に反応しないため,下腹部の自家脂肪を用いた傍尿道注入療法を3回行ったところ,蓄尿機能の改善をみた。

画像診断

卵殼状石灰化を示した腎腫瘤

著者: 栁沢温 ,   井上善博

ページ範囲:P.263 - P.265

 患者 64歳,男性。
 主訴 頻尿。
 家族歴・既住歴 特記することなし。
 現病歴 1996年12月,当科外来受診時,腹部超音波検査で左腎に周辺部石灰化をともなう腫瘤を認めたので精査を行った(図1)。
 現症・検査所見 身長166cm,体重53 kgと痩身である以外,理学的所見,血液、尿検査に異常を認めなかった。CT(図2,3,4),MRI(図5,6)にて嚢胞化した腎細胞癌を否定できず,1997年3月に左根治的腎摘出術を行った。なお,主訴は自然に消失していた。
 病理所見 石灰化した厚い線維性被膜で全周を包まれ,懐死組織を入れた径7cmのほぼ球状をした嚢胞であった。内壁の一部には血管上皮を思わせる細胞が存在した。嚢胞の起源は,断定できないが,いわゆる良性出血性腎嚢胞と診断した(図7,8)。

米国泌尿器科事情・7

米国の泌尿器科レジデント制

著者: 篠原克人

ページ範囲:P.266 - P.267

 6か月にわたって自分のことばかり書いていて,タイトルである米国の泌尿器科事情はどうなっているんだという声があると思います。そこで今回から,米国の泌尿器科周辺にまつわるお話をしようと思います。
 よく,トレーニングはいつ修了したのかということを聞かれます。私のいた北里大学ではレジデントの期間がはっきりしていたので,この場合はこれが終わればトレーニングは修了したといえるでしょう。しかし,一般的にいつトレーニングを修了したかという時を聞かれて,はっきりいつと答えられる読者の方は少ないのではないかと思います。人によっては,医師の世界は一生トレーニングだ,などという人もいるでしょう。

基本情報

臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

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