増刊号特集 泌尿器科画像診断
Ⅵ.メディカルエッセイ
画像診断と原発性上皮小体機能亢進症
著者:
小出卓生1
所属機関:
1大阪厚生年金病院泌尿器科
ページ範囲:P.48 - P.48
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原発性上皮小体機能亢進症の診断は,ご存じの通り血清カルシウムの上昇やPTHの上昇と随伴諸症状に基づくものである。泌尿器科領域では,再発性尿路結石症や多発性尿路結石症の原因精査の過程で血清カルシウムの上昇などに気づくと,もしかして上皮小体機能亢進症ではないかと血が騒ぐ。上皮小体機能亢進症の非侵襲的術前画像診断法としては,頸部超音波断層法,CT,シンチグラフィーとせいぜいMRIを行い,腫大した上皮小体の部位診断を試みる。しかし,上皮小体は「小体」と呼ばれるにふさわしく,正常上皮小体はきわめて小さく,ときに機能亢進を惹起する腺腫の大きさといっても知れた大きさに過ぎないこともままならずある。生化学的,臨床的には立派な上皮小体機能亢進症患者においても,画像診断による術前部位診断が腫大上皮小体を描出できないことは少なくない。いや,描出されるのは半数くらいかも知れない。
ここで,手術的治療を逡巡し経過観察に持ち込みたくなる泌尿器科医の気持ちは大いに理解できるが,手術を避けては上皮小体機能亢進症の是正をはかる方法は今のところない。腫大上皮小体の部位情報なしに行う頸部手術はstressfulでもあり,上皮小体手術の真骨頂でもある。かつて超音波もCTもなかった時代に上皮小体手術を開拓した恩師の手術から盗みとったノウハウを駆使して,腫大上皮小体の検索を行うときの期待感と不安感が上皮小体手術の醍醐味かもしれない。