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雑誌目次

雑誌文献

臨床泌尿器科54巻11号

2000年10月発行

雑誌目次

綜説

腎細胞癌有転移症例の治療

著者: 冨田善彦

ページ範囲:P.829 - P.839

 腎細胞癌は,小さく(4cm程度までの),腎に限局する場合には根治的腎摘除により良好な予後が期待できる。しかし,転移を有する症例では,化学療法,放射線療法に抵抗性であることもあり,死亡することがほとんどである。一方,自然寛解や免疫療法による長期完全寛解例の報告もあり,腫瘍の性質に基づいた治療が必要である。

手術手技 基本手技・22

陰茎全摘除術・陰茎部分切除術・鼠径リンパ節郭清術

著者: 郷司和男 ,   荒川創一

ページ範囲:P.841 - P.848

 陰茎癌に対する陰茎全摘除術・陰茎部分切除術および鼠径リンパ節郭清術について概説した。陰茎全摘除術では陰茎根部で,陰茎部分切除術では腫瘍中枢端より2cm離して陰茎海綿体を切断する。尿道を再建する際に将来狭窄をきたさないように尿道に縦切開を加え扇形に拡げ,会陰部あるいは陰茎皮膚と縫合することが重要である。鼠径リンパ節郭清術では,厚さ約1mm程度の皮下脂肪を皮膚につけるように心がけることが,術後のflap necrosisを予防するのに重要である。

コメント

著者: 中川昌之 ,   金山博臣

ページ範囲:P.849 - P.851

 陰茎癌は他の泌尿器科悪性腫瘍に比べるとその頻度は高くないが,予後は必ずしも良くない。そしてその根治には手術療法が重要な位置をしめている。したがって初期治療としての陰茎全摘除術,陰茎部分切除術,リンパ節郭清術の手術手技を習得することは予後改善の上からも重要である。本号で紹介されている郷司和男先生の手術解説はそのポイントが詳細かつ明確に述べられており非常に参考になるものである。われわれもほとんど同様の手術法を行っているが,陰茎全摘除術,陰茎部分切除術について若干の工夫を含めわれわれが行っている方法について紹介したい。
 まず,術前には鼠径リンパ節腫脹のある症例では骨盤部CT検査やMRI検査で転移巣の検索を進めるとともに,感染によるリンパ節腫脹をリンパ節転移から鑑別するためにわれわれも抗菌薬投与を4〜6週間行っている。

セミナー 小児泌尿器科学の最近の話題・4

小児の包茎

著者: 杉多良文 ,   谷風三郎

ページ範囲:P.853 - P.855

 小児の包茎の管理・治療方針に関してはいまだ統一された見解がなく,論議のあるところである。近年報告された文献から,最近の包茎に関する知見を述べ,最後に現在のわれわれの包茎に対する管理方針を紹介する。

症例

肘と後腹膜に多発した良性神経鞘腫

著者: 荒木勉 ,   中嶋千聰 ,   高橋志郎 ,   鈴木潮人 ,   東福要平

ページ範囲:P.857 - P.859

 患者は32歳の男性で,左肘腫瘤と左腰痛を主訴に入院した。DIP,腹部超音波,CT,MRIにて左水腎症とともに後腹膜,両側腸腰筋内,骨盤内に計4つの腫瘤を認めた。左肘と後腹膜,骨盤内の腫瘤を摘出した結果,いずれも良性神経鞘腫と診断された。神経鞘腫が四肢と後腹膜に多発した非常に稀な症例と考えられた。

前立腺粘液癌の1例

著者: 角野佳史 ,   小泉久志 ,   野田透

ページ範囲:P.861 - P.863

 症例は69歳,男性。排尿困難を主訴に当科を受診した。触診にて前立腺は肥大症様,PSAは正常範囲内であった。尿閉となりTUR-Pを施行,その病理は粘液産生を伴う高分化腺癌であった。画像診断上,stage A2であり,前立腺全摘術を勧めたが,患者の同意が得られなかった。75歳時,尿路感染に起因する敗血症により死亡した。剖検にて,膀胱・直腸へ浸潤する前立腺粘液癌とその肝・骨転移を認めた。

下大静脈浸潤が疑われた後腹膜平滑筋肉腫

著者: 古家琢也 ,   北原竜次 ,   橋本安弘 ,   川口俊明 ,   高橋信好 ,   鈴木唯司

ページ範囲:P.865 - P.867

 症例は69歳,女性。主訴は頻尿。腹部超音波検査にて右後腹膜腫瘍を指摘され,CTでは腎の上方に下大静脈を著明に圧排する腫瘍が認められた。内分泌学的検査では異常は認めなかったが,下大静脈浸潤を伴う右副腎癌と診断し,腫瘍および右腎,右副腎,下大静脈の一部を合併切除した。組織学的には後腹膜腔に発生した平滑筋肉腫と診断され,他臓器への腫瘍の浸潤は認められなかったため,術後補助療法は施行していない。

上顎洞に転移した腎細胞癌

著者: 中西良一 ,   大森正志 ,   平石攻治 ,   竹内紳一 ,   堤健

ページ範囲:P.869 - P.871

 72歳男性の腎細胞癌の上顎洞転移を報告した。鼻・副鼻腔への腎細胞癌の転移は稀であり,本邦での報告は自験例を含め42例目である。受診時の症状として,鼻出血が圧倒的に多い。転移部位の症状が先行し,原発巣が発見される症例も半分近く存在する。今後,鼻・副鼻腔は腎細胞癌の転移部位として考慮する必要がある。

下大静脈に腫瘍血栓を認めた腎盂腫瘍

著者: 田中渉 ,   清水弘文 ,   友政宏 ,   飯泉達夫 ,   梅田隆 ,   田中文彦

ページ範囲:P.873 - P.875

 症例は73歳,男性。貧血精査中に腹部CTで右腎腫瘤が指摘された。MRIで下大静脈内腫瘍血栓が認められ,右腎腫瘍T3b NO MOの診断で根治的右腎摘除術および下大静脈腫瘍血栓除去術を施行した。病理組織学的診断は移行上皮癌であった。下大静脈血栓を伴う腎盂腫瘍は極めて稀であり,本症例は本邦報告8例目に相当する。

経直腸的超音波ガイド下に経尿道的切除術を施行したミュラー管嚢胞

著者: 藤本清秀 ,   岸野辰樹 ,   林美樹 ,   雄谷剛士 ,   川上隆 ,   平尾佳彦

ページ範囲:P.877 - P.879

 患者は60歳,男性。主訴は排尿障害。前立腺は小鶏卵大,表面平滑,圧痛はなく,経直腸的前立腺超音波(TRUS),MRIにて移行領域正中に直径2cm大のミュラー管嚢胞を認めた。TRUSガイド下に嚢胞壁および前立腺切除術を施行し,排尿状態は著明に改善した。排尿障害を伴う小さなミュラー管嚢胞に対して,TRUSガイドを併用することで経尿道的手術を安全に施行することができた。

腎平滑筋肉腫の1例

著者: 山田徹 ,   根笹信一 ,   藤広茂

ページ範囲:P.881 - P.883

 患者は,45歳,女性。右側腹部痛にて当院を受診した。右腎腫瘍を認め右腎摘除術を施行した。病理学的に腎平滑筋肉腫であった。補助化学療法としてADIC療法(ADR,DTIC)を2コース施行した。腎平滑筋肉腫は1年生存率約60%,5年生存率約50%と予後不良であるが,長期生存の報告もある。本症例は術後2年の現在,再発を認めていない。

画像診断

MRIにて偶然発見されたHutch憩室

著者: 杉本周路 ,   多田実 ,   賀屋仁 ,   滝本至得

ページ範囲:P.885 - P.887

 患者 3歳,男児。
 主訴 頻尿,尿失禁。

学会印象記

第15回ヨーロッパ泌尿器科学会(EAU)

著者: 平野恭弘

ページ範囲:P.891 - P.892

 第15回ヨーロッパ泌尿器科学会(EAU)は,2000年4月12日から15日までの4日間,ベルギーの首都ブリュッセルで開催されました。会場となったThe Burussels Exhibition Centreは,郊外の万国博覧会会場跡に整備されたブリュッセルエキスポ公園の横にありました。メトロと呼ばれる地下鉄やプレメトロと呼ばれる地下にもぐる市電,それにトラムと呼ばれる地上を走る市電が網の目のように発達したこの街の移動には,自動車よりもこれら鉄道網の利用が便利なんだとホテルで聞き,早速,学会初日にガイドブック片手にメトロを乗り継ぎ会場に行きました。エントランスホールには,有名な小便小僧の模型がEuropeanAssociation of Urologyのロゴの入った手術着を着せられて飾ってありました(図)。排尿障害なく勢いよく放尿する小便小僧の姿は,まさにブリュッセルでの今回のEAUミーティングのマスコットとしてぴったりだと思いました。
 2日目から本格的に学会が始まりました。早朝のplenary sessionでは前日のハイライトをレビューしたあと,discussionや各種lectureがはじまります。最終日のplenary sessionで前立腺全摘除術の3つの術式,すなわち恥骨後式,経会陰式,それに腹腔鏡下手術のディベートが行われていました。

ミレニアムAUA(第95回米国泌尿器科学会)体験記

著者: 野々村祝夫

ページ範囲:P.893 - P.894

 今年のアメリカ泌尿器科学会(AUA)はジョージア州アトランタで,4月29日から5月4日まで開催された。アトランタというと思い出すのはコカコーラ,CNN,風とともに去りぬ,全米オープンゴルフなどであるが,会場のGeorgia WorldCongress Centerのすぐ隣にはCNNのビルがあり,昼の合間にCNNスタジオの見学ツアーを楽しむことができた。また,コカコーラの本社ビルでは世界各国のコカコーラを試飲することができた。さて,観光のことはこれくらいにして,学会そのものの印象を書くことにする。
 私は,1995年から毎年AUAに参加しているが,この学会はどちらかというと臨床家を対象とした学会であり,実際に臨床の場で頻回にお目にかかる前立腺癌,BPH,尿失禁などに関する臨床の演題が多くを占めるような印象がある。1995年に初めてAUAに参加したときと比べると,日本人の参加者もかなり増えてきた。今年はビデオの演題を含めて1,600題余りの一般演題のなかで,日本からの演題が100題近くみられた。日本からの演題は症例数の問題からどうしても臨床研究の演題は少なく,基礎研究の演題が多いようであるが,研究デザインをうまく工夫した臨床研究もいくつか目についた。今年は残念ながら,基礎研究部門での大きなブレイクスルーは特になかったように私個人は思う。

病院めぐり

東北労災病院泌尿器科

著者: 大沼徹太郎

ページ範囲:P.896 - P.896

 仙台市は,旧市街の北側に奥羽山脈から枝分かれした小高い丘が連らなり,数十年前まではその丘陵地帯が仙台市の北辺であつた。しかし現在は,その外側に新しい住宅団地が次々と造成され,人口の増加も著しい。
 当院は,その丘の上(台の原)に財団法人労災協会の東北労災病院として昭和29年に創設され,昭和32年に労働福祉事業団の設立とともに,同事業団東北労災病院となった。現在,当院は16診療科,病床数580床を有する総合病院として仙台北部地域の中核病院となっており,かつ各学会の専門医教育病院,臨床研修病院の指定を受けている。また,東北大学医学部学生の臨床実習病院として,常に医学部学生が研修している。

山口県立中央病院泌尿器科

著者: 岸弓景

ページ範囲:P.897 - P.897

 山口県防府市は,瀬戸内海の周防灘に面しており,そのほぼ中央を佐波川が流れています。佐波川流域には豊かな平野が広がつており,穏やかな気候にも恵まれて,古くから開けていました。大化の改新後から明治元年までは周防の国府が置かれ,日本最古の天満宮である防府天満宮も創建されています。俳人である種田山頭火の故郷としても知られ,市内の随所に多くの句碑が点在しています。また,防府の南,三田尻を中心とした沿岸一体は塩作りが盛んだった場所で,三大塩田の1つと称された地です。
 山口県立中央病院は,昭和24年,防府市に県立防府総合病院の名称で発足し,昭和28年に現在の名称に改称しました。その後,昭和30年に県立防府高等看護学院の併設,昭和42年に救急医療センターの指定,昭和43年に臨床研修病院の指定,昭和47年に都道府県立公立病院の指定,昭和50年に僻地中核病院の指定を受け,昭和58年に現在地へ移転しました。当院はベッド数525床であり,CCU,ICUも設置され,地域診療の拠点としての役割を果たしています。また,医局は17の診療科の医師85名で構成されており,山口大学を中心に長崎大学,鹿児島大学からの出向者で運営されています。

基本情報

臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

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