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雑誌目次

雑誌文献

臨床泌尿器科54巻12号

2000年11月発行

雑誌目次

綜説

JCウイルスの特徴とその感染様式—尿中JCウイルス亜型分類と人種との関連について

著者: 北村唯一 ,   杉本智恵 ,   余郷嘉明

ページ範囲:P.905 - P.914

 東大医科研の余郷嘉明グループと共同して,永年にわたり尿検体を採取し,尿中JCV亜型を調査してきた。その結果,おおよそのJCV世界地図はでき上がった。尿中JCVはHTLV1などの血液中に検出されるウイルスとは違い,検体が尿なので採取が容易であり,しかも非常に陽性率が高く病原性がないことから,HTLV1などよりも人種の移動の推定に適していると考えられる。残念ながら,JCVの病原性についてはPML以外には見出せなかったが,人種移動の推定の方向でJCVの活用範囲は広いと考えられ,今後,世界地図の完成を目指して努力したい。

手術手技 基本手技・23

腎移植

著者: 相川厚

ページ範囲:P.915 - P.922

 第一次移植は通常右腸骨窩に腹膜外で腎を移植する。生体腎は内腸骨動脈と腎動脈を端端吻合し,献腎移植は外腸骨または総腸骨動脈と腎動脈を端側吻合する。内腸骨静脈を結紮し,静脈吻合は腎静脈と腸骨静脈を端側吻合する。膀胱尿管吻合は膀胱内から新尿管口を作り,粘膜下トンネルを作成し,尿管を引き込んで,4点縫合する。移植腎の被膜切開を行い,血流再開後1時間して生検を行う。閉鎖式ドレーンを入れ閉腹する。

コメント

著者: 大島伸一 ,   鈴木孝治 ,   田中達朗

ページ範囲:P.923 - P.925

 腎移植の定型的な術式については相川先生が詳しく論説されており,つけ加えるところはないので,私の経験から特に注意している点について2〜3述べる。
 移植手術はgraftを十分に機能させるようにすることが目的の手術である。当然のことであるがgraftは十分な血流を得て機能する。したがって,腎移植の手術では術前にgraftをどの位置に,すなわち移植床をどこにし,どの血管と吻合するかを決定しなければならない。移植床の決定には腎の大きさと手術を受ける人の体格を考慮し,移植された腎臓が十分に収納される場所を選ばねばならない。特に小児の場合には,腸骨窩が狭く大人の腎臓を移植して収納することが不可能な場合があり,術前にどの場所へgraftを収納するかの決定は重要である。移植床の決定は相川先生が述べているように,右の腸骨窩のほうが手術がしやすいので,右側を選ぶ術者も多い。しかし手術時のやりやすさに多少の差はあるにしても,それ以上の理由はなく,左,右に特にこだわる必要はない。移植する場所が決定されたら,吻合する血管と位置を決めなければならない。

セミナー 小児泌尿器科学の最近の話題・5

機能的排尿障害

著者: 柿崎秀宏 ,   飴田要 ,   松浦忍 ,   田中博 ,   小柳知彦

ページ範囲:P.927 - P.933

 小児の機能的排尿障害は頻尿,切迫性尿失禁,夜尿などの下部尿路症状の原因となるばかりでなく,尿路感染症や膀胱尿管逆流症など種々の尿路合併症の原因ともなりうるため,適切な評価方法によりその病態をよく理解し,病態に則した排尿管理を行うことがきわめて大切である。発育途上にある小児を対象とすることから,非侵襲的な検査を心がけるとともに,小児の発達に伴う機能的変化という側面にも配慮が必要で,長期的経過観察を怠ってはならない。

症例

陰嚢内神経線維腫の1例

著者: 中西良一 ,   二宮郁 ,   大森正志 ,   平石攻治 ,   熊谷久治郎

ページ範囲:P.935 - P.937

 67歳,男性。徐々に増大する圧痛のある右陰嚢内腫瘤を主訴に来院した。術中所見で,腫瘤は精巣・精索とは無関係であり,単純切除術を施行した。腫瘤は,壁側鞘膜より発生していた。病理組織では,神経線維腫と診断された。フォンレックリングハウゼン病に関連しない単独発症の陰嚢内神経線維腫は非常に稀であり,自験例は本邦7例目であると思われる。

臀部皮膚転移から発見された腎癌

著者: 三方律治 ,   今尾貞夫 ,   深澤立 ,   鈴木基文

ページ範囲:P.939 - P.941

 70歳男性が,半年間続く右臀部皮膚腫瘍の切除を受け,腎細胞癌の皮膚転移と診断された。その後,画像診断で左腎癌および右肺転移と診断し,左腎摘除術および右肺下葉切除術を受けた。病理組織学的には腎細胞癌とその転移であった。本例は皮膚転移から発見された潜在性腎癌の本邦25例目に相当する。

職業性と思われる膀胱癌患者が多発した一家系

著者: 奥木宏延 ,   斎藤佳隆 ,   中田誠司 ,   高橋溥朋

ページ範囲:P.943 - P.945

 膀胱癌患者が多発した一家系を経験した。本家系は父親が染色工場を経営していた。父親が膀胱癌と前立腺癌の重複癌,子8人中3人が膀胱癌であった。そのうち,父親と子2人が染料を扱う職業に従事しており,職業性膀胱癌と考えられた。

嫌色素細胞性腎癌の1例

著者: 国枝学 ,   山内薫 ,   井内裕満 ,   橋本博 ,   金子茂男 ,   八竹直

ページ範囲:P.947 - P.950

 患者は64歳の女性。発熱,食欲低下のため内科を受診した。超音波検査にて右腎に腫瘤を認めたため当科に紹介となった。腹部CTで右腎にわずかに造影される腫瘤を認めたので,右腎細胞癌と診断して根治的腎摘術を施行。腫瘍割面は淡褐色で,腫瘍細胞は豊富な胞体の網状を呈し,渡銀染色,コロイド鉄染色に陽性,サイトケラチン陽性,ビメンチン陰性であった。この所見から嫌色素細胞性腎癌と診断した。4年6か月が経過したが再発の兆候は認めていない。

画像診断

動脈塞栓術後,腎膿瘍と穿刺ドレナージ部に皮膚浸潤を生じた腎細胞癌

著者: 山中優典 ,   斉藤久夫 ,   津久井厚

ページ範囲:P.951 - P.953

 患者 70歳,男性。
 主訴 体重減少。

ディベート 超音波ガイド下前立腺生検術

前立腺生検は果たして6針で十分か—6針で十分という立場から

著者: 木村剛 ,   木全亮二 ,   秋元成太

ページ範囲:P.955 - P.961

 系統的前立腺生検において癌を効率よく検出する方法について,癌の好発部位と関連させて概説した。また,いわゆる"extensive biopsy protocol"を初回生検として行う意義があるか否かを検討した。Hodgeが超音波ガイド下の標的生検よりも系統的生検のほうが優れているという報告を行ってから10年以上が経ったが,当時の超音波画像と比較し,現在の画像は質的にも技術的にも進歩している。当科において施行している超音波パワードプラ法下標的生検による前立腺癌診断の成績を紹介し,その利点と現状での問題点を示した。

前立腺生検は果たして6針で十分か—6針で十分という立場から

著者: 長谷川友紀

ページ範囲:P.963 - P.969

 前立腺癌の超音波ガイド下生検では,針数増大とともに診断率増加が期待される。診断技術の評価は,直接的には死亡率減少を検証することによってなされる。早期の前立腺癌,病理学的gradeの低い前立腺癌では,特定の治療方法がほかに比較して有効であるとのコンセンサスは得られていない。針数増大によりもたらされる診断率増加が,患者の生存予後改善に寄与するか否かは明らかにされていない。被験者全員に7針以上を行うべきであるという十分な根拠は存在しない。今後優先して明らかにすべき課題としては,(1)前立腺癌の病期,組織形,患者属性に応じた治療方法の明確化,(2)針生検の適応の明確化と6針で陰性の場合のフォローアップのルールづくりである。

前立腺生検は果たして6針で十分か—6針以上必要とする立場から

著者: 赤倉功一郎 ,   石原正治 ,   伊藤晴夫

ページ範囲:P.971 - P.975

 前立腺癌の診断や治療方針の決定には経直腸的超音波断層法ガイドドの無作為系統的生検が有用である。前立腺左右両葉の尖部,中央部,底部から1針ずつ採取する6分割生検が標準的とされるが,さらに外側peripheral zoneの生検を追加すると癌検出率を向上させることが期待できる。したがって,前立腺横断面積の広い中央部においては外側peripheral zoneと内側部位とを生検し,ほかは標準的方法に準拠して合計8針の生検を行うことが推奨される。生検所見を治療方針決定や予後判定の因子として用いる目的においても,このように前立腺の各部位からなるべく均等に組織を採取する意義は大きいものと考えられる。

前立腺生検は果たして6針で十分か—6針以上必要とする立場から

著者: 松本和将 ,   頴川晋

ページ範囲:P.977 - P.981

 前立腺癌の確定診断法として超音波ガイド下に体系的6箇所生検法を施行することが多い。しかし,臨床的には非常に疑われるにもかかわらず,癌を検出し得ない症例に遭遇することがままある。この一因としてサンプリングエラーの可能性が上げられ,より効率よく確実に癌を検出するために様々な生検方法の検討がなされてきた。生検の大目的は,癌の診断による何らかの恩恵が期待できる者での効率よい早期発見である。PSAがグレイゾーンかつ直腸診で異常所見がないといった症例,6箇所生検を施行したが陰性であり,どうしても癌を否定したいなどの症例の場合,種々の条件を勘案したのちに通常の6箇所生検に加えた追加生検の適応を考慮すべきである。

病院めぐり

仙台市立病院泌尿器科

著者: 今井克忠

ページ範囲:P.982 - P.982

 この原稿を書いている今,街は大変な賑わいをみせています。毎年8月6日から8日までの3日間は,全国的に有名なあの仙台七夕祭りなのです。何か月も前から,市民が手作りで準備した美しい吹流しのトンネルを,大勢の観光客がそぞろ歩きしています。
 仙台市は平成元年4月に政令指定都市に移行し,昨年5月ついに人口100万人を突破しました。また,来年は藩祖・政宗公の開府400年の節目にあたります。これら多くの仙台市民の健康増進と福祉向上のために,仙台市立病院が果たさなければならない役割はますます膨大なものになってきていますが,地域の中核病院としての自覚を持ち,その機能を果たすために職員一丸となり日夜努力しています。

市立岸和田市民病院泌尿器科

著者: 森本鎭義

ページ範囲:P.983 - P.983

 大阪府の南部,和泉山脈と大阪湾に挟まれた泉州地域に岸和田市は位置しています。関西国際空港に近く,病院の上階からは,天気のよいときは大阪湾の彼方に神戸や明石大橋を望むことができます。古くは城下町として栄え,荒々しい祭りとして全国的にも有名な「だんじり祭り」は岸和田を象徴するものです。
 市立岸和田市民病院は,前身の岸和田市立病院から昭和36年に改称され,平成8年に現在の新病院に移転しました。移転に伴い新病院では設備,スタッフが充実され,病床数は350床と中規模病院ではありますが,きわめて密度の高い医療を行っています。外来診療は19科があり,うち内科は7部門に分かれています。平成11年度の統計では,外来患者数の1日平均は1,650名,病棟における年間病床利用率97.5%,平均在院日数15.5日,手術室での年間手術件数は3,607件でした。人口約20万人を擁する岸和田市の文字通りの基幹病院として,また急性期疾患を扱う病院として位置づけられ,市医師会との連携も密で,地域医療室を設けて患者紹介の窓口としています。

基本情報

臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

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