icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床泌尿器科54巻7号

2000年06月発行

雑誌目次

綜説

新規に腎移植を行う際の準備・問題点と対応

著者: 力石辰也 ,   星野孝夫 ,   岩本晃明

ページ範囲:P.511 - P.517

 新規に腎移植を開始する施設においては,経験のある医師が常駐し,周到な準備を行うことによって,概ね問題なく腎移植を行うことができる。実施前の準備,術中・術後の問題点と対応について解説した。

手術手技 基本手技・18

副腎摘除術

著者: 簑和田滋

ページ範囲:P.519 - P.524

 副腎はGerota筋膜に覆われた後腹膜臓器であり,その上端,横隔膜直下に位置する。したがって,手術においては高さの確保がポイントとなる。小腫瘍ではできる限り低侵襲的に胸膜を保護し,大きな腫瘍では十分な横隔膜の切開を行う。周囲臓器に取り囲まれた副腎の手術においては解剖学的な位置関係を把握するとともに,個々の症例に最も適したアプローチを選択することが重要であり,こうした観点から要点を述べた。

コメント

著者: 渡辺泱 ,   真崎善二郎

ページ範囲:P.525 - P.527

 蓑和田 滋先生の「副腎摘除術」という手術術式の論文に,コメントを依頼された。通読してみて,私が永い間かかって「これがいい」と思っていた術式とほとんど変わらないのに,むしろびっくりした。昔から外科の教室では,同じ大学でも科が違うと全然術式が変わってしまうというのに,この同一性は不思議である。副腎の手術は,やりやすいようにと努力していると,自然に同じやり方となってしまうのだろうか。
 だから,この論文のどこが違うとか,どこをこうしたらとかいう意見は,私にはない。したがって,著者が触れていない,公式の手術書にはあまり出てこない,副腎手術のコツといったようなものを,いくつか追加しておこうと思う。くだらないことかも知れないが,手術の実際面ではこういう知識も役に立つことが多いだろう。

セミナー 泌尿器科領域における在宅医療・5

泌尿器科医療における医療連携

著者: 森口隆一郎

ページ範囲:P.529 - P.532

 医療連携は最近,地域の中核病院や大学病院が盛んに取り組み始め,地域医療の仕組みに大いなる影響を与えるようになってきた。しかし,その問題点としては,患者を集めるため,紹介率を上げるためなど,病院サイドに立った医療連携であり,地域における泌尿器科医療の医療連携とはスタンスが異なる。地域により芽生える医療連携は,患者を一生涯を通じて診ていきたいという「かかりつけ医」の立場からであり,今回は私が行っている医療連携について紹介した。

原著

前立腺全摘除術における膀胱尿道非縫合48例の検討

著者: 宍戸悟 ,   菊川忠彦 ,   寺本好告 ,   竹内賢 ,   万波誠

ページ範囲:P.535 - P.537

 前立腺全摘除術において,膀胱尿道吻合にまったく針糸を使わない"balloon cathetertraction anastomosis"法を試みた。術後合併症として48例中1例(2.1%)に尿失禁がみられ,48例中18例(37.5%)に尿道狭窄がみられた(吻合部狭窄は29%)。しかし,これらは尿道ブジーあるいは内視鏡的切開で治癒できた。術中,もしも膀胱尿道縫合が困難なときは,本法は有用であると思われた。

症例

骨髄移植後にみられたアデノウイルス尿路感染による両側尿管狭窄

著者: 田近栄司 ,   森下裕志 ,   山本肇

ページ範囲:P.539 - P.541

 25歳,男性。急性リンパ性白血病にて骨髄移植を受けた。発熱にて内科に入院した。超音波にて両側水腎症を認めたため,当科に紹介された。膀胱鏡では出血性膀胱炎の所見であった。尿中ウイルス検査でadenovirus type 11が同定された。両側W-J尿管カテーテルを留置し,腎不全は軽快した。両側尿管狭窄に対して,左経尿道的尿管切開拡張術を施行し,右経皮的尿管切開拡張術を施行したが,右尿管は完全閉塞となっていたため,右尿管回腸全置換術を施行した。

慢性関節リウマチに続発した膀胱アミロイドーシス

著者: 田中俊明 ,   笹尾拓己 ,   三宅正文

ページ範囲:P.543 - P.545

 症例は65歳,女性。慢性関節リウマチにて10年前より治療を受けていた。肉眼的血尿が持続し当科を受診した。膀胱出血を認めたため経尿道的電気凝固術および生検を行った。病理組織所見はAAアミロイドーシスであり,慢性関節リウマチに続発した二次性膀胱アミロイドーシスと診断した。

馬蹄鉄腎に合併した腎細胞癌

著者: 窪田裕樹 ,   福田勝洋 ,   梅本幸裕 ,   最上美保子 ,   粟田成毅 ,   阪上洋

ページ範囲:P.546 - P.548

 64歳,女性。1997年9月4日,左側腹部痛の精査のため当科に紹介された。各種画像検査により,馬蹄鉄腎に合併した右腎腫瘍と診断し,9月24日に峡部離断術および右半腎摘除術を施行した。病理組織学的所見はRCC,G2>G1,pT2であった。本症例は,馬蹄鉄腎に合併した腎細胞癌では本邦33例目と考えられた。

後腹膜漿液性嚢胞の2例

著者: 元森照夫 ,   三原典 ,   川越伸俊 ,   中並正之 ,   松岡啓 ,   野田進士

ページ範囲:P.549 - P.551

 [症例1]は77歳,女性。他科疾患検査中に偶然発見された。[症例2]は44歳,女性。顕微鏡的血尿を主訴に来院した。いずれも超音波検査にて腎下極に接するように嚢胞様腫瘤を認め,CT,MRIにて後腹膜嚢胞が疑われ,精査および加療目的にて入院となった。入院後の諸検査にても後腹膜嚢胞を疑い手術を施行し,解剖学的位置を確認し,後腹膜嚢胞と診断し嚢胞を摘出した。術後の病理組織学的検討の結果においても後腹膜漿液性嚢胞と診断した。1例は内容液中のCA125とCA19-9の高値を認め,2例とも免疫組織化学的にはCA125の局在を認めた。

両側同時発生をみた精巣上体平滑筋腫

著者: 多和田真勝 ,   棚瀬和弥 ,   村中幸二 ,   守山典宏

ページ範囲:P.554 - P.555

 63歳,男性。左陰嚢内腫瘤を主訴に当科を受診した。触診上,両側精巣上体領域に腫瘤を触知した。血液検査などにて特に異常を認めず,両側精巣上体の良性腫瘍と診断し,両側腫瘍摘除術を施行した。病理組織学的検査上,平滑筋腫であった。両側同時発生した精巣上体平滑筋腫は,過去に本邦で18例の報告があり,自験例が19例目と思われた。

ヘパリンナトリウム膀胱内注入療法が有効であった難治性間質性膀胱炎

著者: 柏木文蔵 ,   森田崇弘 ,   富澤秀人 ,   柴田康博 ,   深堀能立 ,   山中英壽

ページ範囲:P.556 - P.557

 症例は48歳の女性。尿失禁,残尿感,頻尿,排尿後疼痛を主訴とし,他医にて様々な治療が行われたが効果が認められず,当科を紹介された。ヘパリンナトリウム連日膀胱内注入により著明に症状は改善し,O'learyらの提唱する間質性膀胱炎シンプトムインデックスおよびプロブレムインデックスにおいても改善を認めた。退院後も治療を継続し,経過良好である。

尿道膜様部の前立腺上皮性ポリープ

著者: 小野隆征 ,   鳥本一匡 ,   上甲政徳 ,   平田直也 ,   百瀬均 ,   丸山博司

ページ範囲:P.558 - P.559

 症例は53歳,男性。尿道出血を主訴に当科を受診した。尿道鏡にて尿道膜様部に乳頭状腫瘤を認めたため,経尿道的腫瘤切除術を施行した。腫瘤切除には,外尿道括約筋の損傷を避けるために上部消化管用のスネアを用いた。病理診断は,前立腺上皮性ポリープであった。術後20か月を経過した現在,再発を認めていない。

座談会

泌尿器科医が直面している諸問題—臨床,研究,教室運営

著者: 郡健二郎 ,   平野恭弘 ,   藤岡知昭 ,   根本勺 ,   翁長朝浩 ,   菊地栄次

ページ範囲:P.561 - P.572

 多忙を極める日々の中で,臨床と研究をどう両立させていくのか,教室運営にまつわる問題点をどう克服していくのかなど,泌尿器科医が直面している課題は多い。また,若手医師は日々どのような悩みを抱え,臨床能力を向上させるためにどのような工夫を行っているのか。このたび本誌では,第一線で活躍中の指導医・若手医師にお集まりいただき,泌尿器科医が直面している諸問題につき,様々な角度から自由にお話し合いいただいた。

小さな工夫

腹腔鏡用外筒管穿刺時の腹壁吊り上げ法

著者: 小松和人 ,   並木幹夫

ページ範囲:P.573 - P.574

 腹腔鏡用外筒管は現在,開腹にて直視下でまず最初の1本を挿入し,内視鏡観察下に残る外筒管を穿刺することが多いと思われる1)。この外筒管を穿刺する際,腸管などの腹腔内臓器の損傷が最も危惧されるところであり,特に未経験の初学者をトレーニングする立場の大学附属病院などでは,安全に外筒管を設置することがまず最初の課題となっている。特に腹壁と腹部内臓の距離が短い場合には,慎重な上にも慎重な操作が求められる。
 十分な気腹圧を保つことが1つのポイントではあろうが,これは同時に全身合併症の危険性を増すことになり,必ずしも勧められる方法とはいえない。皮膚の小切開後,皮下組織や筋膜を十分に鉤で剥離することも勧められるが,これもやり過ぎは筋組織の挫滅を招き,また炭酸ガスの洩れも懸念されるところである。

病院めぐり

神奈川県立厚木病院泌尿器科

著者: 鈴木正泰

ページ範囲:P.576 - P.576

 神奈川県のほぼ中央,丹沢山塊東の霊峰,阿夫利の峰大山を望む相模川右岸に厚木市があります。神奈川県立厚木病院は,昭和26年10月,病床過疎地区における医療対策の一環として,6科51床で開設されました。その後,県央地区での厚木病院の役割は徐々に大きくなり,それに伴い施設の整備,拡張が繰り返され,昭和60年7月には現在の370床まで増床されました。現在は15科で,臨床研修指定病院,エイズ治療中心的受入病院,災害医療拠点病院など数々の役割を有する地域中核病院として機能しています。
 泌尿器科は,昭和40年4月に開設されました。当初より,東京慈恵会医科大学から泌尿器科医が派遣され,週2回の非常勤体制で診療を行っていました。しかし,泌尿器科診療の需要増加に伴い,昭和47年7月から1人常勤体制となり,入院手術を本格的に行うようになりました。さらに,昭和50年代になり厚木市を中心とする県央地区の人口増加が著しく,一方,近隣に泌尿器科専門医が少なかったため,1人常勤では対応しきれなくなり,昭和56年からは2人常勤となりました。

国立下関病院泌尿器科

著者: 市川哲也

ページ範囲:P.577 - P.577

 下関市は本州の最西端に位置し,人口は約27万人です。源平の合戦で有名な壇ノ浦や,日清講和条約が締結された春帆桜など史跡に富んでいます。九州との架け橋,関門橋があり,瀬戸内海と玄界難に挟まれた風光明媚な都市でもあります。また,食べるものとしては河豚(地元ではフクと言います)の本場として有名で,遠く関西,関東からも,その味を求めて来関されるそうです。
 国立下関病院は,明治24年に赤間関病院として創設(当時の市名は赤間関市)され,明治27年に下関要塞病院,明治39年に下関衛い病院,昭和11年に下関陸軍病院と改称され,昭和20年に厚生省に移管されて国立下関病院となった歴史のある病院です。平成7年には国立病院としての創立50周年記念式典が盛大に行われました。

交見室

学術用語としては「性器」でなく「生殖器」が正しい

著者: 友吉唯夫 ,   島博基 ,   守殿貞夫

ページ範囲:P.581 - P.581

 「泌尿性器腫瘍」とか「泌尿性器先天異常」といったように用いられている「性器」という表現について,ひとつの見解をここに提出します。
 結論を先に記しますが,英語のgenitourinary tumorsやgenital organsをこのように呼称するのは適切ではなく,「泌尿生殖器腫瘍」とか「生殖器」といわなければならないと,ここに私たちは主張します。

基本情報

臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

76巻13号(2022年12月発行)

特集 これだけは知っておきたい! 泌尿器科診療でも活きる腎臓内科の必須知識

76巻12号(2022年11月発行)

特集 ブレずに安心! 尿もれのミカタ

76巻11号(2022年10月発行)

特集 限局性前立腺癌診療バイブル―このへんでキッチリと前立腺癌診療の“あたりまえ”を整理しよう!

76巻10号(2022年9月発行)

特集 男性不妊診療のニューフロンティア―保険適用で変わる近未来像

76巻9号(2022年8月発行)

特集 前立腺肥大症(BPH)の手術療法―臨床現場の本心

76巻8号(2022年7月発行)

特集 泌尿器腫瘍における放射線治療―変革期を迎えた令和のトレンド

76巻7号(2022年6月発行)

特集 トラブルゼロを目指した泌尿器縫合術―今さら聞けない! 開放手術のテクニック

76巻6号(2022年5月発行)

特集 ここまで来た! 腎盂・尿管癌診療―エキスパートが語る臨床の最前線

76巻5号(2022年4月発行)

特集 実践! エビデンスに基づいた「神経因性膀胱」の治療法

76巻4号(2022年4月発行)

増刊号特集 専門性と多様性を両立させる! 泌尿器科外来ベストNAVI

76巻3号(2022年3月発行)

特集 Female Urologyの蘊奥―積み重ねられた知恵と技術の活かし方

76巻2号(2022年2月発行)

特集 尿路性器感染症の治療薬はこう使う!―避けては通れないAMRアクションプラン

76巻1号(2022年1月発行)

特集 尿道狭窄に対する尿道形成術の極意―〈特別付録Web動画〉

75巻13号(2021年12月発行)

特集 困った時に使える! 泌尿器科診療に寄り添う漢方

75巻12号(2021年11月発行)

特集 THEロボット支援手術―ロボット支援腎部分切除術(RAPN)/ロボット支援膀胱全摘除術(RARC)/新たな術式の徹底理解〈特別付録Web動画〉

75巻11号(2021年10月発行)

特集 THEロボット支援手術―現状と展望/ロボット支援前立腺全摘除術(RARP)の徹底理解〈特別付録Web動画〉

75巻10号(2021年9月発行)

特集 今こそ知りたい! ロボット時代の腹腔鏡手術トレーニング―腹腔鏡技術認定を目指す泌尿器科医のために〈特別付録Web動画〉

75巻9号(2021年8月発行)

特集 ED診療のフロントライン―この一冊で丸わかり!

75巻8号(2021年7月発行)

特集 油断大敵! 透析医療―泌尿器科医が知っておくべき危機管理からトラブル対処法まで

75巻7号(2021年6月発行)

特集 前立腺肥大症(BPH)薬物治療のニューノーマル―“とりあえず”ではなくベストな処方を目指して

75巻6号(2021年5月発行)

特集 躍動するオフィスウロロジー―その多様性に迫る!

75巻5号(2021年4月発行)

特集 前立腺癌のバイオロジーと最新の治療―いま起こりつつあるパラダイムシフト

75巻4号(2021年4月発行)

増刊号特集 泌尿器科当直医マニュアル

75巻3号(2021年3月発行)

特集 斜に構えて尿路結石を切る!―必ず遭遇するイレギュラーケースにどう対処するか?

75巻2号(2021年2月発行)

特集 複合免疫療法とは何か? 腎細胞癌の最新治療から学ぶ

75巻1号(2021年1月発行)

特集 朝まで待てない! 夜間頻尿完全マスター

74巻13号(2020年12月発行)

特集 コロナ時代の泌尿器科領域における感染制御

74巻12号(2020年11月発行)

特集 泌尿器科医のためのクリニカル・パール―いま伝えたい箴言・格言・アフォリズム〈下部尿路機能障害/小児・女性・アンドロロジー/結石・感染症/腎不全編〉

74巻11号(2020年10月発行)

特集 泌尿器科医のためのクリニカル・パール―いま伝えたい箴言・格言・アフォリズム〈腫瘍/処置・救急・当直編〉

74巻10号(2020年9月発行)

特集 令和最新版! 泌尿器がん薬物療法―手元に置きたい心強い一冊

74巻9号(2020年8月発行)

特集 泌尿器腫瘍の機能温存手術―知っておくべき適応と限界

74巻8号(2020年7月発行)

特集 これが最新版! 過活動膀胱のトリセツ〈特別付録Web動画〉

74巻7号(2020年6月発行)

特集 小児泌尿器科オープンサージャリー―見て学ぶプロフェッショナルの技〈特別付録Web動画〉

74巻6号(2020年5月発行)

特集 高齢患者の泌尿器疾患を診る―転ばぬ先の薬と手術

74巻5号(2020年4月発行)

特集 ここが変わった! 膀胱癌診療―新ガイドラインを読み解く

74巻4号(2020年4月発行)

増刊号特集 泌尿器科診療の最新スタンダード―平成の常識は令和の非常識

74巻3号(2020年3月発行)

特集 泌尿器科手術に潜むトラブル―エキスパートはこう切り抜ける!

74巻2号(2020年2月発行)

特集 いま話題の低活動膀胱―これを読めば丸わかり!

74巻1号(2020年1月発行)

特集 地域で診る・看取る緩和ケア―泌尿器科医として知っておくべきこと

icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら