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雑誌目次

雑誌文献

臨床泌尿器科54巻9号

2000年08月発行

雑誌目次

綜説

泌尿器科領域における自律神経再建の現況

著者: 木原和徳

ページ範囲:P.669 - P.676

 損傷された自律神経の再建は,泌尿器科領域では1991年ラットを用いた陰茎海綿体神経の再建が報告され,続いて1998年にはイヌの下腹神経,ラットの骨盤神経の再建が報告された。再建は切断端吻合もしくは神経移植によりなされ,いずれも良好な成績が報告され,再建された神経内を通る各種のシグナルも同定された。1999年これらの動物実験の成果に基づき,前立腺全摘時に切除された神経血管束部に腓腹神経を移植する試みがなされ,勃起機能が温存されることが報告された。さらに後腹膜リンパ節郭清において腰内臓神経の欠損部に陰部大腿神経を移植して射精機能を温存する試みも始められている。泌尿器科領域では多くの臓器がその機能を果たすために神経支配を必須としているため,今後自律神経の再建が臨床上のトピックスになるであろうと想定される。

手術手技 基本手技・20

尿路変向術(neobladder)

著者: 堀江重郎

ページ範囲:P.677 - P.683

 膀胱全摘術後の尿路再建法として,腸管を利用した新膀胱形成術が普及し,適応も拡大しつつある。今回は初めてneobladderの手術をされる先生方を対象に回腸を利用するStuder法に準じた形成法を解説した。本法は比較的新膀胱のデザインが簡単で,回腸導管造設の延長上にくる術式と考えている。

コメント

著者: 山田泰之 ,   岡田裕作

ページ範囲:P.684 - P.687

 回腸を利用した自然排尿型の代用膀胱としては,ほとんどがHautmann法あるいはStuder法を利用されているのが現状である。私はHautmann法の煩雑さを解消すべく,CameyⅡ法を積極的に行っている1)が,堀江先生のStuder法も非常にシンプルな膀胱形成法で利点の多い術式と考えられる。本論文では共感を覚える部分が多く,ほとんど追加する点はないが,若干のコメントをさせていただいた。

セミナー 小児泌尿器科学の最近の話題・2

小児の尿路感染とVUR

著者: 山崎雄一郎

ページ範囲:P.689 - P.696

 小児の尿路感染では初感染でVURをはじめとする尿路奇形を見逃さないことが重要である。そのために尿路感染後に行うべき画像診断はエコーとVCUGのふたつである。VURを認めた場合,初期治療の原則は年齢,VURの程度にかかわらず予防的抗菌薬投与である。外科治療を選択する場合,現時点で推奨できる術式は観血手術による膀胱内再建法もしくは膀胱外からのextravesical detrusorrhaphyと考える。

原著

上部尿路閉塞に対するダブルJ尿管ステント留置の臨床的検討

著者: 尾本和也 ,   高野徳昭 ,   此元竜雄 ,   黒田憲行

ページ範囲:P.697 - P.701

 尿管通過障害でダブルJ尿管ステントを留置した51症例,63腎について水腎症の改善の有無,無効症例の原因,留置後の合併症を検討した。水腎症の改善した腎は78%であり,22%の腎でステント留置が無効であった。その原因としてステント側孔から粘膜や凝血塊や病変がステント内腔に入り込むことによると思われるステント閉塞,排尿障害が示唆された。悪性疾患による尿管通過障害のほうが良性疾患のそれと比較して水腎症の改善率が低く,悪性疾患による尿管通過障害に対しては側孔のない尿管ステント留置を検討すべきと考えた。合併症は尿路感染,血尿および膀胱刺激症状が認められた。

両側尿管結石症例における治療法の検討

著者: 弓削文一 ,   千野健志 ,   山中弥太郎 ,   賀屋仁 ,   山崎利彦 ,   小林堅一郎 ,   小野昌哉 ,   山口健哉 ,   岡田清己

ページ範囲:P.703 - P.706

 両側尿管結石に対するESWLを中心とした治療方針を確立するため,1994年6月から1999年5月までに経験した20症例47結石を対象に検討を行った。初診時に腎機能障害例を25%に認めた。結石完全排石率は80%で,治療中重篤な合併症は認めなかった。砕石困難の原因として結石サイズ,水腎症の程度が関与しており,ESWLの治療のみで砕石困難な場合,TULによる内視鏡手術への変更が必要であった。一方でin-situ ESWL治療の有効性が示された。適応は両側水腎症が中等度以下,結石サイズが10mm前後でIVUで結石以下の尿管描出が見られれば片側尿管結石と同様に考え,ESWL単独治療を試みて支障なしと考えられた。

症例

珊瑚状結石を伴う腎血管筋脂肪腫

著者: 満純孝 ,   橋本紳一 ,   湯澤政行 ,   菊地敬夫 ,   村石修 ,   徳江章彦

ページ範囲:P.707 - P.709

 歩行中の転倒を契機に肉眼的血尿が出現した48歳の女性が腎外傷を疑われ入院した。精査後,右腎の珊瑚状結石,血管筋脂肪腫,水腎症と診断し右腎摘除術を施行した。腎血管筋脂肪腫の自然破裂の報告は多いが外傷による破裂の報告は少なく,珊瑚状結石を合併した腎血管筋脂肪腫の本邦報告例はこれまでにない。

精索脂肪腫の1例

著者: 菊野伸之 ,   浦上慎司 ,   滋野和志 ,   椎名浩昭 ,   井川幹夫

ページ範囲:P.711 - P.713

 症例は63歳の男性。2週間前からの左陰嚢上部腫瘤を主訴として1999年6月18日に当科初診。左鼠径管内に無痛性の石様硬,拇指頭大の可動性腫瘤を触知した。超音波断層法,CT,MRIにて左精索内に脂肪成分を有すると考えられる腫瘍が認められ,悪性腫瘍の可能性も否定できず,同年7月19日に左精索腫瘍を摘出した。腫瘍の病理組織学的所見は脂肪腫であった。

尿管腫瘍との鑑別が困難であった腎・尿路結核

著者: 山本広明 ,   大園誠一郎 ,   雄谷剛士 ,   趙順規 ,   山本雅司 ,   平尾佳彦

ページ範囲:P.715 - P.718

 症例は44歳,男性。主訴は右腰背部痛。腹部超音波検査にて右水腎症を指摘され,当科受診。画像診断にて上腎杯が造影不良な右水腎症と右尿管上部および下部に狭窄を認めた。下部の尿管狭窄部の尿管鏡下生検にて,管腔様構造内にhyperchromaticな核をもつ細胞が索状に配列し,移行上皮癌を否定しえず,右腎尿管全摘除術を施行した。病理組織にて悪性所見は認められず,腎および尿管に結核性変化がみられ,腎・尿路結核と確診した。

気腫性膀胱炎を伴った膀胱自然破裂

著者: 湯浅譲治 ,   山崎多佳子 ,   佐藤信夫 ,   箕輪良行 ,   上原敏敬

ページ範囲:P.719 - P.721

 56歳,女性。主訴は腹痛。ショック症状にて当院救命センターを受診した。画像診断より,気腫性膀胱炎を伴った腹腔外膀胱自然破裂と診断した。全身管理と尿道カテーテル留置,ドレナージを行ったが,死亡した。予後良好とされている気腫性膀胱炎でも,診断が遅れると致命的であるため,早期発見,早期治療が必要である。

画像診断

尿管癌のMR Urography

著者: 飯山達雄 ,   橿尾智賀夫 ,   北島清彰

ページ範囲:P.723 - P.725

 患者 62歳,女性。
 主訴 左側腹部痛。

嚢胞形成を伴った前立腺癌

著者: 仲野正博 ,   三輪好生 ,   蟹本雄右

ページ範囲:P.727 - P.729

 患者 77歳,男性。
 主訴 腹部膨満感,血便,頻尿。

小さな工夫

ミニラパロトミー恥骨後式前立腺全摘除術のための試作リトラクター

著者: 三股浩光 ,   野村芳雄

ページ範囲:P.731 - P.732

 恥骨後式前立腺全摘除術におけるdorsal vein complex(DVC)の処理は,前立腺・膀胱を圧排して前立腺尖部〜膜様部尿道に緊張を加える点が重要である。われわれは第1助手が初心者であっても容易に前立腺尖部〜膜様部尿道を展開し,良好な視野を得ることができ,しかも10cm以下の皮膚切開でも使用できるリトラクターを考案した(図1)。
 体位は骨盤高位の開脚仰臥位とし,恥骨直上より10cmの下腹部正中切開にてRetzius腔を展開し,まず両側閉鎖リンパ節郭清を行う。ついで内骨盤筋膜を切開し,恥骨前立腺靭帯を切断後に,肛門挙筋をlateralpelvic fasciaより剥離する。リトラクターの先端をDVCを挟むようにかけ(図2A,B),第1助手が軽くリトラクターの手前部分を押さえると,膀胱や腹膜に包まれた腸管を頭側に圧排できる。術者と第1助手は前立腺・膀胱の圧排のため左手を操作腔深く挿入する必要がなく,しかも前立腺のlateral pelvic fasciaと肛門挙筋の間にスペースをつくれるため,ミニラパロトミーでも前立腺尖部の良好な視野を得ることができる。DVC処理は直針状の1-0 catgutを尿道前壁と一緒にθ状運針で結紮する(Tech Urol5:104-105,1999)。DVCと尿道を切断してからリトラクターをはずし,以後は通常の開創鉤を使用する。

学会印象記

第95回米国泌尿器科学会(AUA)

著者: 星宣次

ページ範囲:P.733 - P.735

 平成12年4月29日から5月4日までジョージア州アトランタにて開催されました。AUAにはほぼ毎年参加しているが,今年のAUAの印象を述べさせていただきます。
 State-of-the-art-lecturesの中からMount SinaiMedical CenterのDroller教授がMolecular markersin diagnosis of carcinoma of the bladderと題するlectureを行った。NMP−22,hyaluronidase,telomerase,BTA Stat,BTA Trakなどの尿中markerは再発や進展の早期発見に有用となる可能性があるが,膀胱鏡や細胞診などの従来の検査法がなくなることはない。これらのマーカーは個々の症例の治療経過の十分なガイドとはなっていない。

病院めぐり

公立昭和病院泌尿器科

著者: 當真嗣裕

ページ範囲:P.736 - P.736

 公立昭和病院は,武蔵野の面影の残る小平市の北東部に位置し,ケヤキ並木の美しい旧青梅街道に面しています。当院は,小金井市・小平市・東村山市・田無市・保谷市・東久留米市・清瀬市・東大和市・武蔵村山市の9市により昭和4年に北多摩郡昭和病院(伝染病棟,内科)として創設され,昭和47年に公立昭和病院に名称を変更しています。昭和50年に総合病院として認可され,周辺地域の人口および患者数の増加に伴い,昭和61年に一般病床520床,伝染病床50床に増床しています。現在は1日の平均患者数は1,700人と多く,外来は常に混雑しています。21の診療科が救急医療,高度先進医療を行い,多摩地区の中核病院としての機能を果たしています。また,昭和61年に臨床研修指定病院となり,現在31人のレジデントが各科で研修を受けています。
 泌尿器科の開設は昭和52年2月,東京医科歯科大学より高木健太郎先生が初代医長として赴任されたことより始まります。当初は常勤医1人と非常勤医2人で診療に当たっていましたが,昭和53年より常勤医2人体制となりました。高木先生は当院での泌尿器科の基盤をつくられさらに発展させ,昭和57年7月に東京医科歯科大学泌尿器科助教授に就任されました。(現在,多摩老人医療センター部長)。代わりに石渡大介医長が赴任し,泌尿器科診療の充実がはかられました。

公立陶生病院泌尿器科

著者: 伊藤浩一

ページ範囲:P.737 - P.737

 公立陶生病院は名古屋市近郊,瀬戸物で有名な愛知県瀬戸市にあり,1936年に当時わずか35床で設立されました。現在は瀬戸市,尾張旭市,長久手町の出資による公立陶生病院組合立の病院であり,県下公立病院中第2位の病床数739床を擁して,尾張北東部の中核病院として活動しています。厚生省の研修指定病院でもあります。昨年末にはICU,周産期センターを含む新病棟が竣工しました。診療園には,上記3市町とともに名古屋市,春日井市,豊田市の一部,さらに岐阜県多治見市などが含まれます。職員数は約940名,うち医師は約120名であり,1日当たりの外来患者数は約2,400名になります。病院全体のレベルが比較的高いところにあることもですが,各科の連携,そして地域との連携がかなりスムーズにいっていることが,当院に勤務する者の誇りでもあります。
 泌尿器科の沿革をみると,病院の設立と同時に皮膚泌尿器科として診療が開始され,1969年には泌尿器科と皮膚科が分離されました。しかし,常勤医師には恵まれず,当時から瀬川昭夫先生(前 愛知医科大学教授,逝去),深津英捷先生(現 愛知医科大学教授)が,また1981年からは近藤厚生先生(現 小牧市民病院副院長)が中心となって診療を支えてこられました。

基本情報

臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

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