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雑誌目次

雑誌文献

臨床泌尿器科55巻1号

2001年01月発行

雑誌目次

綜説

レーザーを使用した泌尿器科手術

著者: 松岡啓 ,   野田進士

ページ範囲:P.7 - P.16

 泌尿器科領域においてレーザーの占める役割は大きい。特に内視鏡下手術では,細径の光ファイバーで伝送可能なレーザーは大きなエネルギー源となり,最小侵襲手術に最適な手段である。本稿においては,腫瘍(外性器,尿路上皮,前立腺),狭窄(上部尿路,下部尿路),結石(上部尿路,下部尿路)に分けて,現在までに使用されてきたレーザー手術について紹介した。結石を除くいずれの手術でも,基本的に使用されたのはNd:YAGレーザーであったが,吸収深度のより浅い,蒸散,凝固能力を有するHo:YAGレーザーの使用が結石を含む内視鏡下手術で増加しつつある。

手術手技 目でみる泌尿器科手術のポイント・1

腎摘除術

著者: 冨田善彦

ページ範囲:P.17 - P.26

 根治的腎摘除術の際には腎の剥離に先立って腎血管の処理を行うことが原則で,空腸左側での後腹膜切開による左腎動静脈,大動静脈間での右腎動脈の結紮・切離が有用であることも多い。また,腎上極の腫瘍の場合には,左側では膵・脾の,右側では肝の授動が有用である。

腎摘除術

著者: 門脇浩幸 ,   宮川征男

ページ範囲:P.27 - P.32

 根治的腎摘除術は,腎への到達法により経胸腹的,経腹的,経腰的の3つの術式に大別される。術式の選択に当たっては,主として腫瘍の大きさや腫瘍占拠部位,下大静脈腫瘍塞栓の有無などの因子が考慮される。本稿では,当科で施行している経腹的腎摘除術の手術手技について紹介し,その際の注意点を解説した。

腎摘除術

著者: 野村芳雄 ,   田崎義久

ページ範囲:P.33 - P.39

 腎悪性腫瘍に対する腎摘除術について,筆者らが頻用している腹部横切開による経腹腔的到達法を中心に概説した。本法は腹壁の筋層群を切開するため手術時間がやや長くなり,侵襲も大きくなる傾向があるが,かなり進行した症例にも適応できる。また,左右いずれの病変にも応用可能であり,何よりも手術野が広く展開でき,腎茎血管に直接到達でき,その処理が最も容易であり,リンパ節郭清にも有利であるなどの利点がある。

セミナー 泌尿生殖器におけるバイオマーカーの新展開・1

尿路上皮癌の新しい腫瘍マーカー

著者: 高橋悟

ページ範囲:P.41 - P.47

 膀胱鏡,尿細胞診は膀胱癌診断において今日なおgold standardであるが,侵襲性やsensitivityが十分でない点などの課題も多い。最近,尿を検体として非侵襲的に膀胱癌を検出するバイオマーカーの研究が行われ,そのいくつかはわが国でもすでに臨床使用が可能である。これらのバイオマーカーに共通する目標は尿細胞診と同等なspecificityを保持しつつ,より優れたsensitivityを実現することである。

座談会

尿路変向術の実際—私はこうしている

著者: 村井勝 ,   荒井陽一 ,   上領頼啓 ,   野々村克也 ,   橘政昭

ページ範囲:P.49 - P.63

 近年,尿路変向術においても,術後のQOLを重視した術式の改良が試みられている。しかもその種類は多彩で,今現在,第一線病院の泌尿器科医はどのような術式を採用し,どのような工夫を行っているのであろか。そしてこれから先,尿路変向術はどこに向かおうとしているのか。このたび本誌では,第一線でご活躍中の先生方にお集まりいただき,尿路変向術のコツとポイント,術後合併症などについて話し合っていただいた。

原著

前立腺癌診断におけるMRIの有用性の検討

著者: 飯山達雄 ,   橿尾智賀夫 ,   北島清彰 ,   香西哲夫 ,   佐竹宏文 ,   阪倉直樹 ,   吉田大輔 ,   藤原良将

ページ範囲:P.65 - P.69

 当科における前立腺癌30例,非前立腺癌20例,計50例を対象に,body coilによる骨盤MRIでの前立腺癌診断能を直腸診,経直腸超音波と比較しながら評価した。MRIの正診率は76%,経直腸超音波(TRUS)は72%で両者の前立腺癌の診断能はほぼ同等であった。また,前立腺癌病巣におけるMRIの所見は局所的な低信号部分を示す典型例は少数であり,内部構造の変化を認める場合が多かった。MRIは,癌の存在についてTRUSと同等の診断効率を望める一方,総合的に局所,骨盤腔全体を評価できる利点を有し,前立腺癌診断に有用と考えられる。

症例

感染性結石を伴い奇異な形態を呈した膀胱憩室の1例

著者: 高田剛 ,   妹尾博行 ,   平井利明 ,   武本征人

ページ範囲:P.71 - P.74

 患者は63歳,女性。左腰背部痛,肉眼的血尿を主訴に当院内科を受診した。左尿管結石を指摘され,当科を紹介された。KUBで骨盤内石灰化陰影の配置が変化していることに気づき,精査したところ,石灰化内容を伴う膀胱憩室を認めた。膀胱憩室摘除術を施行。憩室は数珠状につながった3つの小室に分かれ,先端の第3小室の入口部はpin-holeとなり奇異な形態を呈していた。さらに憩室内には小結石と白色粘液が混在していた。

著明な高カルシウム血症を呈した副甲状腺腺腫

著者: 青柳貞一郎 ,   名嘉栄勝 ,   宮地系典 ,   早川邦弘 ,   石川博通 ,   畠亮

ページ範囲:P.75 - P.77

 患者は49歳女性。全身倦怠感を訴えて来院し,尿路感染症の疑いで当科に紹介された。血清カルシウムが20.5mg/dlと著明に上昇しており,PTH-intact802pg/ml,PTH-C8.1ng/ml,HSPTH8,000pg/mlと副甲状腺機能亢進症であった。骨所見に異常はなく,画像診断で左側副甲状腺に4×1cm大の腫瘤を認めた。癌を疑い周囲組織を含め切除を行ったが,組織学的には均一な主細胞性腺腫で悪性所見はなく,術後は全ての値が速やかに正常化した。

膀胱移行上皮癌孤立性異時性脳転移の1例

著者: 石山健人 ,   後藤博一 ,   富田雅之 ,   鈴木英訓 ,   大西哲郎 ,   大石幸彦

ページ範囲:P.79 - P.81

 患者は70歳,女性。浸潤性の低分化型膀胱移行上皮癌(TCC,G3,pT2)で動注化学療法および放射線療法を施行後,約15か月経過して左半身麻痺が出現した。頭部CTで右前頭葉に孤立性の腫瘍を認め,腫瘍摘出術および術後放射線療法を施行した。摘出標本の病理組織診断は膀胱移行上皮癌脳転移であった。脳腫瘍摘出後,約33か月経過した現在も再発の兆候を認めていない。

特異な経過をとった造影剤アレルギーの1例

著者: 小田昌良 ,   森直樹 ,   垣本健一 ,   原恒男 ,   小出卓生

ページ範囲:P.83 - P.85

 症例は23歳の女性。反復する腎盂腎炎の原因精査のために施行したDIPで,造影剤投与20分後に呼吸困難が出現した。ステロイド投与により症状は消失したが,その後も同様の症状が3回あり,そのたびにステロイド投与により回復した。造影剤アレルギーとしては特異な経過と思われたので,若干の文献的考察を加え報告した。

画像診断

尿膜管癌と鑑別が困難であったS状結腸癌膀胱浸潤

著者: 上井崇智 ,   徳永卓 ,   登丸行雄 ,   北浦宏一

ページ範囲:P.87 - P.90

 患者 7O歳,男性。
 主訴 肉眼的血尿,頻尿。

学会印象記

第5回アジア泌尿器科学会

著者: 奈須伸吉

ページ範囲:P.92 - P.93

 2000年8月27日より8月30日の4日間,中国北京市で第5回アジア泌尿器科学会が開催されました。大分からは,大分医科大学の野村芳雄教授と私が参加し,1年ぶりに中国を訪れました。8月の北京は酷暑(〜40℃)と覚悟して行きましたが,幸い朝晩は半袖では肌寒いほどで,残暑の厳しい大分市よりずっと快適でした。
 この学会は,1990年に福岡市で第1回大会が開かれてから2年毎に行われているまだ新しい学会です。今回は地元中国を始め,インドネシア,シンガポールなどの東南アジア,韓国,インド,中東の国々などからアジア人が集まり,さらにヨーロッパやロシアからも多くの人が参加し,大変活気のある学会でした。しかし隣国で開催されたにもかかわらず,日本からの参加がなぜかあまり多くはありませんでした。

病院めぐり

岡山赤十字病院泌尿器科

著者: 大橋輝久

ページ範囲:P.94 - P.94

 岡山赤十字病院は昭和2年5月に日本赤十字岡山支部病院として創設され,昭和58年4月に救命救急センターを開設,そして昭和60年5月に現在の場所に移転しました。病床数は500床であり,泌尿器科の病床は15床と少ないため,長期間入院を要する集学的治療が必要な症例は,車で5分と近い岡山大学医学部附属病院にお願いすることもあります。
 現在スタッフは副院長の近藤捷嘉,部長の大橋,常勤医師の秋山道之進の3名で診療を行っています。外来診療は毎日2診で行っており,1日の平均外来患者数が約70名以上と,患者さんには申し訳ない忙しい外来となっています。火,水,金曜日の午後は検査日に当てており,尿流動態検査および前立腺超音波検査を主体に十分な時間をとって患者さんに説明するように心掛けています。

東京都立墨東病院泌尿器科

著者: 三方律治

ページ範囲:P.95 - P.95

 東京都立墨東病院は東京都墨田区にあり,錦糸町駅から徒歩約10分のところに位置する病院です。伝染病院の本所病院と総合病院の墨田病院とが合併して1961年に東京都立墨東病院となりましたが,当初は皮膚泌尿器科として診療していました。1967年に先代の部長広瀬欽次郎先生が着任されて泌尿器科として独立し,1970年には今尾貞夫現医長が就任され,このほかに大学から医員が出向するという常勤医3名での診療体制となりました。
 1985年11月1日に外来診療棟が改築され,これに合わせて先代部長の後任として私こと三方が正式通知から2日間という慌ただしさで着任しました。1986年には入院病棟の改装が完了し,泌尿器科は皮膚科,眼科,形成外科との混合病棟を使用していましたが,奇妙なことにこの病棟には便所がなく,患者さんは隣の病棟の便所を借りて用を足していました。

交見室

座談会「泌尿器科医が直面している諸問題」所感

著者: 荒木徹

ページ範囲:P.96 - P.96

 本誌54巻7号に掲載された上記座談会では率直な意見交換が行われており,清々しく拝読しました。ただ一点,危惧を感じましたのでコメントします。若い先生のお1人が「先輩医は忙しいので尋ね難い。同級生には聞きやすく,どの程度できるかをみて刺激にもなる」とおっしゃっていた点です。
 これはレベルが低い。遠慮なく先輩に—所属チームのみならず,全国あるいは世界中どの国のドクターにでも—教えを乞うべきです。そうして自分の力量を上げることが患者に優れた医療を提供できることになり,これを躊躇することは患者に対して申し訳ないことであると理解するべきです。

基本情報

臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

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