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雑誌目次

雑誌文献

臨床泌尿器科55巻12号

2001年11月発行

雑誌目次

綜説

前立腺炎症候群

著者: 池内隆夫

ページ範囲:P.1075 - P.1087

 前立腺炎症候群とは,従来の前立腺炎の概念に加えて,前立腺周囲や骨盤内臓器における有痛性の関連疾患をも包括した新しい概念である。前立腺炎の診断法や治療法,効果判定の基準に関しては細菌性前立腺炎ではほぼコンセンサスが得られているが,慢性非細菌性前立腺炎や前立腺痛ではいまだに確立していないのが現状である。最近の動向として,診断の簡略化を摸索して2検体分割採取法が考案され,NIHが診断法と重症度評価の方法について世界的な統一を目指して,新しい分類法と症状スコアを提唱した。そこで,前立腺炎症候群の病態解明および治療法に関する最近の研究成果を示しながら,NIHの新しい提案の臨床的有用性について述べる。

手術手技 目でみる泌尿器科手術のポイント・11

膀胱尿管逆流症の手術

著者: 中井秀郎 ,   浅沼宏 ,   宍戸清一郎

ページ範囲:P.1089 - P.1096

 われわれの施設で行っているPolitano-Leadbetter法の手技の実際を記述した。膀胱尿管逆流症(以下VUR)の診断年齢の低下に伴い,乳児期に積極的にVUR防止術を行う機会は増加している。小さな対象に対し高い成功率を達成するためには,ひとつひとつの手術手技の繊細さと正確さが要求される。その具体的ポイントは,術者が集中すべき視点を意識した図を用いて説明した。

膀胱尿管逆流症の手術

著者: 高橋悟

ページ範囲:P.1097 - P.1103

 通常膀胱尿管逆流症の治療には尿管膀胱新吻合術が行われるが,その目的は通過障害を起こすことなく,確実に逆流を防止することである。そのためには,1)吻合後の尿管屈曲,狭窄を防ぐ,2)十分な長さの粘膜下トンネルを作成することが重要である。一方,最近内視鏡下尿管口粘膜下コラーゲン注入が考案された。良好な長期成績を得るためには追加注入が必要な場合もあるが,低侵襲という長所を有する。

膀胱尿管逆流防止手術の要領

著者: 妹尾康平 ,   山口孝則 ,   鯉川弥須宏 ,   相島真奈美

ページ範囲:P.1105 - P.1112

 膀胱尿管逆流防止手術の最も肝要な部分は,膀胱壁から尿管を剥離し,膀胱底に粘膜下トンネルを掘削し,遊離した下部尿管をトンネル内に埋設する手際にある。Cohen手技とGlenn-Anderson手技におけるこの部分の手技上のポイントを述べた。

セミナー 泌尿器科領域における形成外科的再建手術・5

Axial Cutaneous Flapsを用いた再建手技

著者: 林明照 ,   丸山優

ページ範囲:P.1113 - P.1123

 外陰・会陰部皮膚は,外陰部動脈と内陰部動脈の皮枝が血管網を形成し,縦方向に軸性をもった血行形態を有している。これら皮枝を茎とするaxial cutaneous flapであるexternalpudendal artery flap,vulval flap,perineal flapによる再建とstepladder法,expansion法などの工夫について記述した。同部は特殊な機能が混在し,形態的にも複雑な三次元構造であるため,薄く柔軟性に富み,color,texture matchのよい近隣の皮弁は,機能,整容両面で質の高い再建を行ううえで有用である。

原著

前立腺癌の治療開始直前におけるPSA倍加時間

著者: 中田誠司 ,   高橋溥朋 ,   竹澤豊 ,   小林幹男 ,   松本和久 ,   古作望 ,   川島清隆

ページ範囲:P.1127 - P.1131

 前立腺癌の治療開始直前のPSA倍加時間(PSA-DT)を算出可能であった31例を経験し,他のパラメーターとの関係について検討した。治療前のPSAは指数関数的に上昇すると考えられた。PSAが上昇24例(77.4%),横ばい6例(19.4%),最初は横ばいで途中から急上昇1例(3.2%)であった。上昇24例でのPSA-DTは3.4〜65.8か月まで分布し,平均24.3±18.5(S.D.)か月,中央値20.8か月であった。PSA-DTと診断時年齢の間には差はなかった。PSA-DTが24か月以下の群で,病期D,低分化腺癌の占める占める割合が高かったが,有意差はなかった。また,PSA-DTが24か月以下の群で観察開始時のPSAが10ng/ml未満の占める割合が高く,逆に治療直前のPSAが15ng/ml未満の占める割合が低かったが,ともに有意差はなかった。前立腺癌死したのは3例で,そのPSA-DTはそれぞれ3.4か月,5.1か月,途中から急上昇であった。PSA-DTはかなり広範に分布し,これが癌の悪性度,予後を反映している可能性がある。PSA-DTが治療方針を立てる上で,一つの判断材料になり得ると思われた。

症例

陰嚢内侵襲性血管粘液腫の1例

著者: 新保正貴 ,   桜山由利 ,   阿部拓 ,   高沢博

ページ範囲:P.1133 - P.1135

 症例は37歳,男性。徐々に増大する無痛性の陰嚢腫大を主訴に受診した。陰嚢内に手拳大,弾性硬の腫瘤を触知した。画像検査では周囲への明らかな浸潤は認めなかった。陰嚢内腫瘍と診断し,腫瘍摘除術を施行した。摘除標本は9×8×5.5cm,重量は175gであった。病理診断は侵襲性血管粘液腫であった。侵襲性血管粘液腫は血管増生,再発,局所浸潤を特徴とする稀な良性腫瘍であり,自験例は本邦36例目にあたり,男性例としては14例目であった。

腎偽腫瘍を伴ったサルコイドーシス

著者: 田沼康 ,   木村慎 ,   酒井茂

ページ範囲:P.1137 - P.1140

 31歳男性に発症したサルコイドーシスの1例を経験した。サルコイドーシスにおいて腫瘤形成性の肉芽腫性腎病変の合併はきわめて少ない。本症例ではCTおよびMRIにおいて特徴的な肉芽腫性病変を呈した。確定診断には生検が必要と考えられたが,腎腫瘤の部位およびリスクを考慮し施行しなかった。MRIでの腎病変に関する報告は検索し得なかった。今後も厳重な経過観察が必要と思われた。

術後10年目に肺転移をきたした膀胱移行上皮癌

著者: 伊達庸二 ,   高井計弘 ,   和田恵 ,   田中勲 ,   増田亮 ,   武村民子

ページ範囲:P.1141 - P.1143

 症例は83歳,男性。1988年根治的膀胱摘除術,回腸導管造設術施行。病理診断は移行上皮癌,G2>G3,pT3b,pNOであった。1997年早期胃癌にて幽門側胃切除術施行。1998年7月,血痰を認め,胸部X線検査,胸部CTにて右下肺野に腫瘤陰影を認めた。原発性肺癌の術前診断で,8月24日右下葉切除術,胸壁合併切除術を施行した。病理診断は移行上皮癌であり,10年前の膀胱癌の肺転移と考えられた。

尿管部分切除術を施行した限局性尿管アミロイドーシス

著者: 水野隆一 ,   中島淳 ,   佐藤全伯 ,   向井万起男 ,   村井勝

ページ範囲:P.1145 - P.1148

 症例は58歳の女性。左背部痛を主訴とし,静脈性尿路造影にて左水腎症ならびに左尿管狭窄が認められ,精査・加療目的にて当科に紹介された。画像所見より良性疾患による尿管狭窄が疑われたが,尿管腫瘍を完全には否定できず,左尿管部分切除術を施行した。迅速病理検査にて悪性所見を認めず,尿管端端吻合を施行し,左腎を温存した。病理組織学的検査および全身検索により,限局性尿管アミロイドーシスと診断した。

画像診断

後腹膜に発生した悪性リンパ腫

著者: 細川幸成 ,   黒田昌男 ,   宇佐美道之

ページ範囲:P.1149 - P.1151

 患者 48歳,女性。
 主訴 後腹膜腫瘍精査。

急性腎後性腎不全により発見された馬蹄鉄腎

著者: 鈴木一実 ,   西澤秀治 ,   森田辰男 ,   徳江章彦

ページ範囲:P.1153 - P.1155

 患者 47歳,男性。
 主訴 左側腹部痛。

マルチスライスCTが診断に有用であった左尿管異所開口

著者: 西畑雅也 ,   森田照男 ,   藤永卓治

ページ範囲:P.1157 - P.1159

 患者 31歳,女性。
 主訴 尿失禁。

病院めぐり

東京都済生会中央病院泌尿器科

著者: 中村聡

ページ範囲:P.1160 - P.1160

 東京都済生会中央病院は,東京都港区,東京タワーのすぐ近くに位置しています。東京の中心地にありながら,これまでは交通の便にいささかの難があったのですが,2000年に大江戸線,南北線の2本の地下鉄が開通したおかげで,東京城南地区のみならず,都内全域,神奈川,埼玉からのアクセスも容易になりました。
 病床数は450床,1日平均外来患者数は約1,600名で,関連施設としては乳児院,三田訪問看護ステーション,また港区立特別養護老人ホーム「白金の森」と「港南の郷」の受託経営も行い,地域に根差した医療と福祉の充実に努力しています。さらに,隣接する東京都立民生病院の受託経営も行っていますが,これは生活保護法による医療扶助受給者のみを対象にした全国でも唯一の医療施設であり,当院の特徴の1つと思います。

福井県済生会病院泌尿器科

著者: 菅田敏明

ページ範囲:P.1161 - P.1161

 福井県済生会病院は,移転前は福井市(人口約25万)のJR福井駅の近くの繁華街にありました。便利な場所でしたが,病院の敷地が狭く,駐車場がないことが最も大きな悩みでした。平成5年に現在の場所(福井市街の東,JR福井駅から市内バスで15分)に移転・新築され,病院とともに駐車場も車620台を収容できる大きなスペースとなりましたが,現在さらに拡張中です。
 当院は昭和16年8月に内科単科の恩賜財団済生会福井診療所として開設されました。昭和25年9月に内科,外科に加えて産婦人科を増科し,福井県済生会病院と改称し,病床数も50床となりました。平成5年5月,永年の念願だった新病院が完成して移転し,病床数は417床(開放型ベッド20床含)となりました。平成10年10月には緩和ケア(ホスピス)病棟(20床)が開設され,現在,診療科数20科,常勤医師数77人,病床数470床となりました。

基本情報

臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

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