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雑誌目次

雑誌文献

臨床泌尿器科55巻13号

2001年12月発行

雑誌目次

綜説

限局性前立腺癌に対する低侵襲療法—経直腸的高密度焦点式超音波(high-intensity focused ultrasound:HIFU)療法

著者: 内田豊昭

ページ範囲:P.1169 - P.1178

 限局性前立腺癌の患者さんにとって,理想的な治療法とはどのようなものであろうか。身体に傷をつけずに治療し,かつ高い臨床効果と副作用のない,あるいは少ない治療法ではないだろうか。さらに簡便で安価であればなおさらである。経直腸的高密度焦点式超音波(HIFU)療法は,上記の点を達成できる可能性を持っている。本法の有用性の確立には,さらに多くの症例の蓄積と長期成績が必要であるが,さらなる機器の改良に伴って,より治療時間は短縮し,かつより安全な方法になっていくものと思われる。近い将来,限局性前立腺癌治療が外来で局所麻酔下に1時間ほどで終了し,その日のうちに帰宅できる,ということが可能になるかもしれない。

手術手技 目でみる泌尿器科手術のポイント・12

膀胱腟瘻の手術

著者: 橘政昭

ページ範囲:P.1179 - P.1185

 膀胱腟瘻は産科的手術後,婦人科的手術あるいは放射線治療後および子宮癌の浸潤などによる二次的なものとして生じることが通常である。したがって,組織損傷が一度生じた部位での手術手技であり,その成功率は必ずしも良好ではない。手術手技としては経膣的と経膀胱的修復に大別されるが,いずれにしても瘻孔部分を正常に近い組織により膀胱壁と腟壁とで別々の層として閉鎖することが要点となる。ここではその実際の手技につき述べることとする。

膀胱腟瘻の手術

著者: 白木良一

ページ範囲:P.1187 - P.1192

 膀胱腟瘻および尿管腟瘻は骨盤内手術による損傷やその後の膿瘍形成および放射線障害,癌の浸潤などにより発症する。手術では,個々の症例における注意深い術前workupが必須である。排泄性腎盂造影,膀胱造影,膀胱鏡および,水腎症が合併する場合は逆行性腎盂尿管造影も必要となる。癌の浸潤例や放射線障害例では,局所への手術療法が合併症を招くこともあり,尿路変向術の適応となることも多い。

原著

前立腺全摘除術後の術後早期尿失禁に関する検討

著者: 鈴木一実 ,   村石修 ,   森田辰男 ,   小林裕 ,   徳江章彦

ページ範囲:P.1197 - P.1200

 1993年8月より2001年4月までの間に当科において前立腺癌の診断で根治的前立腺全摘除術を施行し,術後の早期の失禁尿量を確認し得た76例を対象に臨床的検討を行った。尿失禁の程度は尿失禁率(%)(失禁尿量/(自排尿量+失禁尿量)×100)で示した。尿道カテーテル抜去後2日目,5日目および10日目の尿失禁率を算出し,臨床病理学的因子との関連を検討した。平均尿失禁率は尿道カテーテル抜去後2日目38.4%,5日目27.1%,10日目21.0%であった。尿道カテーテル抜去後2日目の尿失禁率は患者年齢,臨床病期および病理学的分化度と,5日目の尿失禁率は臨床病期と有意な相関を認めた。根治的前立腺全摘除術後患者に対するインフォームド・コンセントをする上で本研究結果は参考になるものと思われた。

症例

腎盂内に発生した炎症性偽腫瘍

著者: 勝田真行 ,   岩村正嗣 ,   松本和将 ,   藤城貴教 ,   久保星一 ,   馬場志郎

ページ範囲:P.1201 - P.1203

 25歳,女性,主訴は肉眼的血尿。尿細胞診はClassll,排泄性腎盂造影,逆行性腎盂造影で右腎盂内に腫瘤性病変を認めた。腫瘤は画像上急速な増大傾向を示した。悪性腫瘍を否定できず,腫瘤が大きく腫瘤のみの切除が困難であったため右腎摘出術を施行した。病理組織学的診断は炎症性偽腫瘍であった。腎盂に発生した炎症性偽腫瘍は筆者らが検索した限りでは本邦2例目である。

膀胱原発悪性黒色腫

著者: 米田文男 ,   山口邦久 ,   岡本賢二郎 ,   山師定 ,   關伸光 ,   菅政治

ページ範囲:P.1205 - P.1207

 68歳,男性。1985年より膀胱腫瘍の再発を繰り返している。1997年12月,膀胱頂部に小指頭大,黒色の腫瘍がみられた。TURBTにて悪性黒色腫と病理診断された。1998年4月15日悪性黒色腫の腫瘍再発があり,膀胱全摘,リンパ節郭清,回腸導管造設術を施行した。膀胱に原発した悪性黒色腫と考えられた。膀胱原発の悪性黒色腫はきわめて稀であり,本邦においては3例目である。

レックリングハウゼン病を合併した無症候性褐色細胞腫

著者: 内田健三 ,   松本真一 ,   石田俊光 ,   上谷恭一郎

ページ範囲:P.1209 - P.1211

 症例は42歳,女性。生来café-au-lait斑が認められた。1998年10月の人間ドックの超音波検査にて,左副腎に腫瘤を認めた。高血圧の既往はなかった。CT,MRI,131I-MIBGシンチ,および内分泌検査で褐色細胞腫と診断された。左副腎腫瘍摘出術を施行した。病理組織学診断では褐色細胞腫であった。レックリングハウゼン病と褐色細胞腫の合併例は35例の報告があるが,無症候性褐色細胞腫の場合は3例であると思われる。

インターフェロン療法中にパーキンソン症状を呈した腎細胞癌

著者: 垣隆之 ,   山根明文 ,   濟昭道

ページ範囲:P.1214 - P.1215

 症例は63歳,女性。主訴は構音障害。全身倦怠感があり,施行されたCTで右腎に径5cmの充実性腫瘤を認め,右腎摘除術施行。腎細胞癌と診断された。23病日目より術後補助療法としてα型IFNを600万単位連日5日間筋注,29病日目に錐体外路症状が出現した。患者は10年来,脳循環不全のためフルナリジン塩酸塩(flunarizin:FZ)を内服継続していた。FZ内服のみ中止し,上記症状は消失した。パーキンソン症状はフルナリジン塩酸塩とIFNの相乗作用によるものと考えられた。

前部尿道穿孔および膀胱穿孔をきたした尿道異物

著者: 橘田岳也 ,   藤田信司

ページ範囲:P.1217 - P.1219

 57歳,独身男性。自慰目的にて尿道内に木製マドラーを挿入中に自己抜去困難となり当科を受診した。異物は尿道内にとどまり前部尿道を穿孔しており,経尿道的な抜去は困難と考え,経腹手術にて異物を除去した。異物は膀胱を穿孔していたが,腹膜内への穿孔はなかった。同時に膀胱瘻造設を行った。本邦において膀胱尿道異物の報告は多いが,前部尿道および膀胱穿孔を同時にきたした症例は自験例が1例目と考えられた。

画像診断

腎破裂外傷例にみられた血管造影剤の代償性胆道排泄

著者: 安士正裕 ,   越智雅典 ,   徳江章彦

ページ範囲:P.1221 - P.1223

 患者 17歳,男性。「エホバの証人」を信仰している。
 主訴 右側腹部激痛,肉眼的血尿

尿閉を契機に発見された仙骨前方髄膜瘤

著者: 尾山博則 ,   御厨裕治 ,   木戸晃

ページ範囲:P.1225 - P.1227

 患者 22歳,女性。
 主訴 尿閉。

同側無形成腎を伴った精嚢嚢胞

著者: 敦川浩之 ,   小村秀樹 ,   平田輝夫

ページ範囲:P.1229 - P.1231

 患者 23歳,男性。
 主訴 発熱,右陰嚢部腫大。

特異な画像所見を示した膀胱原発浸潤性印環細胞癌

著者: 山口旭 ,   平山暁秀 ,   三馬省二

ページ範囲:P.1233 - P.1235

 患者 54歳,女性,主婦。
 主訴 肉眼的血尿,頻尿,残尿感。

鼠径部に異時性に発生した脂肪腫と脂肪肉腫のMRI画像

著者: 岡崎浩 ,   鈴木光一 ,   鈴木孝憲

ページ範囲:P.1237 - P.1239

 患者 70歳,男性。
 主訴 左鼠径部腫脹。

腎腫瘍で発見された悪性リンパ腫

著者: 稲原昌彦 ,   永嶌薫 ,   松嵜理

ページ範囲:P.1241 - P.1243

 患者 61歳,男性。
 主訴 肉眼的血尿,左側背部痛。

小さな工夫

尿失禁患者に対する自己診断ソフトのプログラミング

著者: 奥井識仁 ,   奥井まちこ

ページ範囲:P.1244 - P.1245

 日本では,尿失禁は本人の羞恥心が先行してなかなか病院には来院せず,家庭で一人だけで悩んでいるケースが多い。また,せっかく来院しても,途中で治療を中止してしまうケースもしばしば見られる。このため,一人で悩んでいる患者に対して,何らかの情報伝達をすることで,尿失禁に対する認識と対策を,それぞれのケースに対して行うことができれば,より多くの患者は円滑に通院が可能である。
 個々の患者に対して,その人にあう診断や生活上の注意を促す方法としては,パンフレットや本といった媒体を利用する方法が挙げられるが,これらは患者自身が情報を正確に読み取らなければならないうえ,誤解が生じる危険がある。したがって,患者自身が簡単に病状を理解できるようにするには,今までにない媒体が必要である。ここで,現代社会にていまや多くの家庭でも普及しているインターネットはきわめて多くの可能性を秘めている1)

病院めぐり

同仁会 耳原総合病院泌尿器科

著者: 永井信夫

ページ範囲:P.1246 - P.1246

 仁徳天皇稜をはじめとする古墳群,中世では黄金の自由貿易都市。輝かしい歴史を持つ堺市は,今や工業都市かつベッドタウン,大阪市に隣接する巨大な地方都市である。その中心地,南海高野線の堺東駅から南に2km,バス停4つめ。工場,商店,住宅,団地が混在するなか,小公園の隣に当院は立っている。「耳原」は,今の地図にない古い地名である。
 昨夏,セラチア菌による院内感染事件で,当院の名が大きく報道された。泌尿器科は当事者でないにせよ,無関係ではすまない。一時期,患者数は激減し,病院経営も深手を負った。それでもその後,急速に信頼を回復し,感染対策で他院をリードする立場となったのは,当院の底力かと思う。

中国労災病院泌尿器科

著者: 桝知果夫

ページ範囲:P.1247 - P.1247

 呉市は,広島県の西南部,瀬戸内海に面した温暖な気候と自然環境に恵まれた都市です。歴史的には,海軍の基地,軍港として栄えた街でしたが,戦後,平和産業港湾都市へのイメージ刷新を目指し,造船,パルプ産業などの企業が進出し,新たな臨海工業都市に変貌を遂げました。
 そこで,これらの事業所における労働災害医療の万全を期すために,広島県および呉市が中心となって,厚生労働省(旧労働省)に対して中国地方における労災医療基幹病院の設置を強力に要請し,昭和30年3月,現在地の呉市広多賀谷に,中国地方における労災医療基幹病院として,内科・外科・整形外科の3診療科,病床50床をもって中国労災病院が開院しました。その後,医療の高度化と多様化に対応して,逐次診療科の増設と増床を重ね,現在では20診療科,病床数410床を擁する総合病院に発展し,勤労者や住民のための地域の中核病院としての役割を担っております。

基本情報

臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

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