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雑誌目次

雑誌文献

臨床泌尿器科55巻5号

2001年04月発行

雑誌目次

綜説

上部尿路結石症の再発予防に対する食事指導の功罪

著者: 井口正典

ページ範囲:P.293 - P.304

 今日,生活習慣病の予防に食事指導の必要性が強調されている。わが国における上部尿路結石症は,疫学的観点からみて生活習慣病の1つであることはいうまでもなく,近年,食事指導の重要性が認識されつつある。しかし,すべての結石患者に食事指導は有用なのか,換言すれば食事指導だけですべての結石を予防できるのか,具体的にどのような食事指導が結石の再発予防に有用であるのかなど,その内容については十分周知されたとはいい難い。患者に食事指導を行う医師は,患者に伝える何倍もの情報を知っておく必要がある。そこで,本綜説では食事指導に関する内外文献をレビューし,EBMに則って食事指導の意義を具体的に解説した。

手術手技 目でみる泌尿器科手術のポイント・4

膀胱前立腺全摘除術

著者: 長倉和彦

ページ範囲:P.307 - P.313

 尿路再建として自立排尿型の新膀胱造設と性機能温存を目的とした膀胱前立腺全摘除術を示した。上膀胱動脈,dorsal vein complex(DVC)を処理したのち,神経血管束を温存して下膀胱動脈,前立腺動脈を含む前立腺筋膜,膀胱側方茎を切離する。本法は,より高いQOLを目指したもので,多様な選択肢の1つとして,インフォームド・コンセントを得たうえで行うべき方法と考えられる。

膀胱全摘除術—女性患者の場合

著者: 近藤幸尋 ,   秋元成太

ページ範囲:P.315 - P.320

 女性の膀胱癌は,男性に比べ発生頻度が低いことおよび骨盤内の静脈叢の処置が容易であることより,成書でもあまり詳述されていない。本稿では,われわれが通常行っている女性患者の根治的膀胱全摘除術について述べた。尿管の処理やリンパ節郭清などの処理は男性患者と大きな差がないため図示せず,女性患者特有の処理のみを図示した。

膀胱全摘除術—男性患者の場合

著者: 津ヶ谷正行 ,   伊藤尊一郎 ,   線崎博哉

ページ範囲:P.321 - P.327

 膀胱全摘除術は膀胱癌に対する根治的手術を目的としているため,膀胱,前立腺と精嚢を一塊として摘除し,両側の骨盤腔リンパ節郭清を行う。骨盤腔リンパ節郭清は腹膜を切開する前に実施し,引き続き両側尿管の露出ならびに切離を行っている。骨盤腔内での手術操作は視野が狭く,また豊富な静脈叢から出血しやすいため技術を要する。したがって,狭い骨盤内で出血のコントロールができれば,本術式を習得したといえる。出血のコントロール,すなわち止血操作を中心に概説する。

セミナー 泌尿生殖器におけるバイオマーカーの新展開・4

腎細胞癌の新しいバイオマーカーMN/CA9

著者: 植村天受

ページ範囲:P.329 - P.335

 腎細胞癌は泌尿器癌のなかでも有効な治療法のない予後不良の疾患である。そのため,早期発見,早期診断の助けとなるマーカーの開発が急務である。MN/CA IX抗原は細胞膜に存在する癌関連抗原で,腎細胞癌では約90%と高率に発現しており,抗体を使った臨床試験では診断のターゲットとしてすでに有用性が証明されている。MN抗原を標的分子とした診断法は特異的で,腎細胞癌の新しいバイオマーカーとして有用と思われる。

原著

腎盂腫瘍における経尿道的超音波検査の有用性

著者: 岡聖次 ,   三木健史 ,   新井浩樹 ,   辻本裕一 ,   宮川康 ,   高野右嗣 ,   高羽津 ,   細木拓野 ,   吉岡靖生

ページ範囲:P.337 - P.342

 主に血管内に用いられる体腔内超音波診断装置を経尿道的腎盂エコー法として応用することにより,4例の腎盂腫瘍患者に対し,腫瘍の局在および進展度診断を試みた。その結果,腎盂腫瘍に対する経尿道的腎盂エコー法の有用性としては,(1)尿管鏡的な操作に比べて侵襲が小さいこと,(2)腫瘍の壁内進展度診断が可能であること,および(3)360度全周像を描出し得るため小さな腫瘍も見逃すことが少ないこと,などが考えられた。一方,経尿道的腎盂エコー法の短所としては,(1)大きな腫瘍を詳細に描出することは困難であり,CTやMRIのほうが有用であること,(2)下腎杯に存在する腫瘍の描出には限界があること,などが考えられた。

症例

腎より発生した悪性線維性組織球腫

著者: 井上洋二 ,   森山浩之 ,   中原満 ,   西阪隆 ,   福原敏行 ,   小林博文

ページ範囲:P.343 - P.346

 患者は63歳,男性。咳嗽,微熱,体重減少のため近医を受診した。腹部超音波検査にて右腎腫瘍を指摘され,ひきつづいてCT,MRI,血管造影が施行された。血管造影所見により,腎周囲より発生した悪性線維性組織球腫または肉腫が疑われた。この腫瘍の手術を目的として当科に入院となった。根治的腎摘除術を行ったところ,術後の病理診断は腎より発生した悪性線維性組織球腫であった。

膀胱腫瘍に対するBCG膀胱内注入療法にて発症した肉芽腫性肝炎

著者: 石田武之 ,   金谷二郎 ,   三田絵子 ,   西田泰之

ページ範囲:P.347 - P.349

 40歳男性が,膀胱上皮内癌の治療目的に施行されたBCGの膀胱内注入療法にて,肉芽腫性肝炎を発症した。肝生検組織の培養にて結核菌が同定されたことより,BCGの血行性播種による発症機序が考えられ,副作用と考えられた。本邦にて,病理組織学的に肉芽腫性肝炎と診断された副作用報告は,本症例が初めてであった。

腎被膜脂肪肉腫の1例

著者: 高橋さゆり ,   冨田京一 ,   田中良典 ,   本間之夫 ,   簑和田滋 ,   北村唯一

ページ範囲:P.351 - P.354

 症例は49歳男性。人間ドックのCT検査にて右腎腫瘤を指摘され当科を受診した。MRIで右腎上極に径10cmの腫瘤を認め,腫瘍内部に脂肪成分の存在が疑われた。血管造影では,血管増生に乏しく,腫瘤内部に流入する被膜動脈を認めた。以上から腎被膜腫瘍を疑い,1999年8月に根治的腎摘出術を施行した。標本は870gで腫瘍は腎被膜に連なった被膜で覆われていた。病理診断は高分化型脂肪肉腫であった。

両側大腿筋膜張筋皮弁・遊離植皮を用いて皮膚欠損部を再建したフルニエ壊疽

著者: 高沢亮治 ,   野呂彰 ,   泉谷敏文 ,   大野玲奈 ,   大和田文雄 ,   代田雅彦

ページ範囲:P.355 - P.357

 症例は70歳,男性。主訴は発熱と陰嚢部腫脹・疼痛。フルニエ壊疽による敗血症性ショックを起こしていた。厳重な全身管理と抗生剤投与,抗DIC(播種性血管内凝固症候群)療法およびデブリドマンを施行した。引き続き抗生剤投与と頻回の創洗浄を継続し,約3か月を経て創感染の消退を得た。広汎な皮膚欠損創を両側大腿筋膜張筋皮弁と遊離植皮を用いて再建した。

巨大精巣腫瘍の1例

著者: 中山恭樹 ,   山田大介 ,   陶山文三 ,   村田匡

ページ範囲:P.359 - P.361

 症例は42歳,男性。4年前より右陰嚢内に無痛性腫瘤を認めていたが放置していた。初診時,右陰嚢内に15cm大の腫瘤および右鼠径部に5cm大の腫瘤を触知した。LDH738IU/ml,HCG-β4.4ng/mlと高値で,右精巣腫瘍と診断し,右高位精巣摘除術および右鼠径リンパ節郭清術を施行した。摘除した腫瘍は12×7×8cm,重量1,250g,腫大したリンパ節は5×5×2cmであった。病理組織学的検査にてセミノーマ,pT1NOMO, stage Iであり,リンパ節は反応性の変化で腫瘍細胞は認めなかった。

術後14年目に創部筋層内腫瘤として再発した腎細胞癌

著者: 森山浩之 ,   井上洋二 ,   茶幡伸 ,   中原満 ,   福原敏行 ,   西阪隆

ページ範囲:P.363 - P.366

 14年前に右腎細胞癌に対して手術を受けた既往をもつ75歳男性が,右背部の有痛性皮下腫瘤を主訴に受診した。切除手術を行ったところ,腎細胞癌の再発であることが判明した。本患者での再発は,腫瘍細胞の創部への播種が原因であると思われた。

後腹膜腔鏡下腫瘍核出術を施行した腎血管筋脂肪腫

著者: 橋本邦宏 ,   矢野明 ,   大口泰助 ,   溝口裕昭

ページ範囲:P.369 - P.372

 症例は53歳,女性。主訴は右側腹部痛。31×26mmの腎血管筋脂肪腫に対してマイクロ波組織凝固装置を用いた後腹膜腔鏡下腫瘍核出術を施行した。術後尿溢流などの合併症はなく,経過良好である。後腹膜鏡下手術においては,腎杯との距離が十分にある突出型の腎血管筋脂肪腫であれば安全かつ容易に核出術が可能であると考えられた。

学会印象記

第25回国際泌尿器科学会(SIU)

著者: 新良治

ページ範囲:P.374 - P.375

 2000年10月29日から11月3日にかけて,シンガポールにて開催された第25回国際泌尿器科学会(SIU)へ参加する機会を得ました。通常,この学会印象記は国際学会の経験豊富な先生方が書かれていますが,私は国際学会への参加,発表とも今回がはじめてで,海外留学の経験もありません。そのような立場からみた,いわば学会体験記のようなものを書かせていただこうと思います。
 会場となっていたconvention & exhibition centerは,ショッピングモール,多くの会議場,大展示場を含む,幕張メッセが大きなビルになったような巨大な建物でした。その規模に圧倒されつつ,まずregistrationしました。しかし,もうここからうまく英語が伝えられず,身振り手振りを交えて何とか完了。先が思いやられました。

病院めぐり

小田原市立病院泌尿器科

著者: 松浦謙一

ページ範囲:P.376 - P.376

 小田原市は神奈川県の西部に位置し,室町時代後期に北条早雲により城下町が形成され,江戸時代には東西の交通の要所で,宿場町として栄えてきました。現在でも観光で有名な箱根,伊豆の玄関口として小田原駅には5つの鉄道会社が入っています。人口は約20万人ですが,足柄下郡の箱根町,真鶴町,湯河原町,南足柄市を含むと主医療圏の人口は約30万人になります。
 小田原市立病院は,昭和33年6月に9科,110床の総合病院として運営が開始されました。以後,増改築を行い,昭和35年4月に216床,昭和47年12月に300床に増床されましたが,建物の老朽化がひどく,昭和58年4月に新病院が同じ敷地に建設され417床となり,県西地区の基幹病院としての機能が整備されました。そして,昭和63年4月には厚生省の研修指定病院となりました。現在,常勤医師は64名,診療科目は19科,1日あたりの外来患者数は約1,700名になります。

静岡赤十字病院泌尿器科

著者: 置塩則彦

ページ範囲:P.377 - P.377

 静岡は徳川家康ゆかりの地です。幼少の頃,今川氏の人質として駿府で過ごした家康は,天下の実力者となったのち再び駿府に戻り将軍秀忠を後見しました。天正13年(1585年)に家康が築城した駿府城の跡は,現在,駿府公園として巽櫓と東御門が復元され,江戸時代を思わせる景観を楽しむことができます。その駿府公園の近くに,静岡赤十字病院があります。
 昭和8年6月,静岡県はもちろん,東海地方で未だ見なかった建物と内容の病院が,「堂々たる偉容は駿府城頭を圧して巍立し,開院の喜びに県都民衆が列をなし参観に雑踏を極めた」と記録にあるごとく,県民,市民の祝福を受けて開院したのでした。

基本情報

臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

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