icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床泌尿器科55巻6号

2001年05月発行

雑誌目次

特集 泌尿器科領域におけるクリニカルパスとその周辺

クリニカルパスとは何か

著者: 大石幸彦 ,   浅野晃司

ページ範囲:P.389 - P.392

 医療におけるクリニカルパスは,診断群分類/定額支払い方式(DRG/PPS)の導入を契機として,1983年にアメリカで導入された新しい医療管理手法である。この手法は在院日数の短縮といった単なる医療経済上の効果をもたらすのみならず,医療の標準化,医療業務の効率化,インフォームド・コンセントの充実,チーム医療の推進など,数多くの効果を生みだす可能性を秘めている。クリニカルパスは,今後日本においてもEBM(evidence-based medicine)を実践するためと医療安全対策の1つの手段として普及すると考えられる。

いまなぜクリニカルパスなのか—病院経営戦略からみたクリニカルパス—泌尿器科疾患の場合

著者: 池田俊也 ,   小林美亜 ,   池上直己

ページ範囲:P.393 - P.398

 クリニカルパス(CP)とは,多職種からなる医療チームが協働で実践するための行動計画を時系列で描き出したものである。CPの病院マネジメントへの利用可能性として,在院日数の短縮,医療の質およびコストのコントロール,原価計算に基づく収支分析のためのツールとしての活用が考えられる。本稿では,米国の大学病院におけるCPを用いた質管理の方法を紹介するとともに,筆者らが実施した原価計算手法について概説した。

いまなぜクリニカルパスなのか—医師の立場からみたクリニカルパス

著者: 平野大作 ,   斎藤忠則 ,   岡田清己

ページ範囲:P.399 - P.403

 現在,本邦においてはDRG/PPS(diagnosis related groups/prospective payment system)の導入について検討中であるが,そのいかんにかかわらず,クリニカルパスの意義と効用は受け入れられつつある。すなわち,クリニカルパスを導入することにより,在院日数の短縮,医療の質の保証,チーム医療の推進に伴う医療業務の効率化,インフォームド・コンセントの充実,さらにリスクマネージメントの充実などの効果が得られる。今後,クリニカルパスは医療経営戦略面のみならず,医師をはじめ現場の医療従事者にとっても必須のものになると考えられる。

クリニカルパスのつくり方

著者: 浅野晃司 ,   大石幸彦

ページ範囲:P.405 - P.410

 クリニカルパスを作成する際には,参加する医療スタッフ全員がクリニカルパスの理論を正確に理解し,明確な目的を持つことが必要である。また,クリニカルパスは作成する過程が最も重要であり,他施設のクリニカルパスをそのまま利用するのではなく,各施設で独自のものを作成することに大きな意味がある。本稿では,啓蒙から導入に至るまでの手順を,われわれの施設の経験も踏まえて解説した。

クリニカルパスの導入と活用—TURにおけるクリニカルパス

著者: 大口尚基 ,   川端和史 ,   室田卓之 ,   川喜田睦司 ,   松田公志

ページ範囲:P.411 - P.416

 経尿道的手術(TUR-P,TUR-Bt)においてクリニカルパスを作成し,その有効性を検討した。クリニカルパス導入により在院日数は5日および2.9日それぞれ短縮し,入院費用(保険請求点数)ではそれぞれ約20%,約13%減少した。クリニカルパスの導入は在院日数の短縮,費用の低減,医療の標準化および効率化をもたらし,ひいては医療の質の向上にも有効である。今後の課題として,クリニカルパスに対する患者の理解度の向上,常にヴァリアンスの評価を行うことが大切であると思われる。

クリニカルパスの導入と活用—TUR-Pにおけるクリニカルパス

著者: 岩井哲郎 ,   黒岡公雄 ,   永吉純一 ,   永井園美 ,   上地智架子 ,   江崎昌代

ページ範囲:P.419 - P.424

 1999年4月から1年の間にTUR-P症例73例にクリニカルパスを導入した。この症例と前年度のTUR-P症例51例の間で平均入院日数,保険請求点数を比較検討した。術後平均入院日数はパス導人前には7.3日であったが,パス導入後には6.2日となり1.1日短縮した。また,パス導入前には平均保険請求点数は35,019点であったが,パス導入後には30,200点になり4,799点減少した。パスより1日以上術後入院日数が延長した症例は18例(24.6%)であった。延長理由としては患者希望10例,術後合併症5例,転院先事情によるものが3例であった。脳梗塞などの症例にパス逸脱症例が多いという結果であった。患者特性に応じたパス(copathway)を作成すべきであると考える。

クリニカルパスとチーム医療

著者: 柑本康夫 ,   森本鎮義

ページ範囲:P.425 - P.429

 医学の進歩が医療職の分化をもたらし,さまざまな職種による専門性の高い治療が可能となった一方で,個々の患者の全体像を把握するためのチーム医療が求められている。クリニカルパスは,チーム医療を推進するためのツールとして最適である。その導入により職種間の連携,コミュニケーションが促進されるとともに,各職種の役割と責任が明確にされる。治療の標準化により業務が単純化されることは,リスクマネージメントにもつながるであろう。また,バリアンスを分析することでチームの課題が明らかとなり,効率的にチーム体制の改善をはかることができる。患者ケアを担うチームがよりよく機能するために,クリニカルパスを積極的に活用することが望まれる。

クリニカルパスと電子カルテ

著者: 國武剛

ページ範囲:P.431 - P.436

 近年の医療はクリニカルパスに沿った形での効率的な実施が求められている。しかしクリニカルパスそのものは固定的なものではなく,常に患者情報に基づきより最適な形を求めて変更されるべきものである。このためには,医療行為の速やかな入力と閲覧が可能な電子カルテシステムとの連携が不可欠と思われる。一例として亀田総合病院の電子カルテシステムのなかの,ナビゲーションケアマップというクリニカルパスを含む診療ナビゲーション機能を紹介する。

手術手技 目でみる泌尿器科手術のポイント・5

—尿路変向術—回腸導管造設術

著者: 米瀬淳二 ,   福井巖

ページ範囲:P.439 - P.447

 尿路変向法の標準術式ともいえる回腸導管造設術を成功させるポイントとして,(1)セルフケアのできる適切なストーマ位置の決定,(2)安全確実な回腸回腸吻合,(3)漏れや狭窄の起きにくい尿管回腸吻合,(4)高さがあり変形のないストーマ,の4点が重要と考えられる。実際の手術の流れに沿って,この4ポイントを中心に記述した。

—尿路変向術—回腸導管造設術

著者: 岩田英信

ページ範囲:P.449 - P.454

 回腸導管造設術の最も重要なポイントは「ストーマ管理の容易さ」である。ストーマ用受尿器が適切に装着できることを中心として,術後の合併症をできるだけ少なくするために,(1)ストーマの位置と皮膚切開,(2)回腸導管の遊離,(3)尿管と回腸導管の吻合,(4)ストーマの形成と閉創,の4つのポイントを選び解説した。

—尿路変向術—尿管皮膚瘻術

著者: 平塚義治 ,   有吉朝美

ページ範囲:P.455 - P.462

 尿管皮膚瘻術は,無カテーテル,シングルストーマを行うべきである。これを成功させるためには,(1)術前にマーキングを行うこと,(2)尿管周囲組織を十分に付けて剥離すること,(3)ストーマの腹壁穴は十分に,しかも閉創の状態で皮膚に垂直に開けること,(4)術後のストーマがピンホールになっても狭窄の診断は腎盂造影で診断すること,さらに(5)狭窄に対する処置は軽・中等度の水腎症では放置し,高度のときのみカテーテル挿入でなくストーマを切開することが大切であることを強調した。

セミナー 泌尿生殖器におけるバイオマーカーの新展開・5

前立腺癌の新しいバイオマーカー

著者: 中島淳 ,   村井勝

ページ範囲:P.463 - P.469

 前立腺癌の早期診断,病期診断,治療後の病勢の評価や予後の予測において,新しい血液マーカーの有用性が検討されている。PSA molecular formやhuman glandular kallikrein 2,prostate-specific membrane antigenなどの前立腺マーカーならびに骨マーカーやchromogranin A,サイトカインなどの新しいバイオマーカーの臨床的意義の解明や臨床応用が期待される。

原著

LH-RHアナログと放射線外照射併用による前立腺容積の変化

著者: 三方律治 ,   今尾貞夫 ,   深澤立

ページ範囲:P.473 - P.475

 前立腺癌症例をLH-RHアナログによる単独治療を行った群35例と,LH-RHアナログと放射線外照射を併用した群11例に分けて,経腹的超音波走査による前立腺容積を計測し,その経時的変化を両群で比較した。併用群では治療前の容積に対する治療後の容積減少率は,36か月までは単独治療群に比べ有意に低値であったが,48か月以降は両群に有意差はなかった。LH-RHアナログに放射線外照射を併用することで,より早期に原発巣の縮小効果が出現した。

症例

血中CA19-9が高値を示した水腎症

著者: 平石攻治 ,   大森正志 ,   中西良一 ,   林義典 ,   熊谷久治郎

ページ範囲:P.477 - P.480

 53歳の男性が,検査にて血中CA19-9が306.6U/mlと高値を示し,消化器系に異常はなく右腎に嚢胞状病変を発見された。この病変は腎嚢胞か水腎症か鑑別が困難であった。病変部の穿刺液中CA19-9は220×104U/mlと異常高値で,ミノサイクリンの注入にて血中CA19-9は正常値となった。しかし嚢胞状病変の再発とCA19-9の再上昇,さらに右背部の圧迫感も出現したため腎摘出術を行い,水腎症と判明した。CA19-9免疫染色にて腎盂粘膜は強く染色された。今までに血中CA19-9が高値を示した水腎症は5例報告されており,検討を加えた。

腫瘤形成性白血病による水腎症を呈したと考えられた馬蹄鉄腎

著者: 鈴木常貴 ,   松村剛 ,   小林美希 ,   田中正士

ページ範囲:P.481 - P.483

 症例は47歳,男性。慢性骨髄性白血病にて内科入院中,左腰痛にて当科を紹介され受診した。CTでは馬蹄鉄腎,左水腎症と左腎から腎盂にかけて長径2.0cmの腫瘤性病変を認めた。2週間後のCTにて急速な腫瘤の増殖を認め,骨髄穿刺にて急性転化を確認したため腫瘤形成性白血病と考え,内科にて化学療法を開始した。化学療法終了後,腫瘤と水腎症は消失し,腰痛も訴えていない。

末梢血幹細胞移植術併用大量化学療法と手術との併用で完全寛解を得た精巣腫瘍の1例

著者: 安部崇重 ,   橘田岳也 ,   竹山吉博 ,   関利盛 ,   富樫正樹 ,   大橋伸夫

ページ範囲:P.485 - P.488

 30歳,男性。左陰嚢内容の硬結を主訴に当科を初診した。Β-hCGは2,000ng/m/と異常高値を示し,画像上,多発性肺,肝転移,および後腹膜リンパ節転移を認めた。精巣の病理所見は奇形腫の成分のみであった。進行性精巣腫瘍としてPVeBV療法3コースを施行後,末梢血幹細胞移植術併用大量化学療法2コースを引き続き施行した。残存病変の切除にて生存癌細胞の残存を認めなかった。術後14か月現在再発を認めていない。

腎細胞癌の膀胱転移

著者: 高橋英二 ,   池上修生 ,   住友誠 ,   浅野友彦 ,   早川正道 ,   池田直昭

ページ範囲:P.489 - P.491

 患者は73歳,男性。左腎腫瘍に対し根治的左腎摘除術を施行,病理診断はRCC,clear cell subtypeであり,腎盂粘膜および尿管への浸潤が認められた。術後5か月目に顕微鏡的血尿が出現し,膀胱鏡検査の結果膀胱内に径約3cmの腫瘤性病変を認めた。膀胱切開にて腫瘍切除術を施行したところ,病理組織学的には腎細胞癌の膀胱転移と診断された。

基本情報

臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

76巻13号(2022年12月発行)

特集 これだけは知っておきたい! 泌尿器科診療でも活きる腎臓内科の必須知識

76巻12号(2022年11月発行)

特集 ブレずに安心! 尿もれのミカタ

76巻11号(2022年10月発行)

特集 限局性前立腺癌診療バイブル―このへんでキッチリと前立腺癌診療の“あたりまえ”を整理しよう!

76巻10号(2022年9月発行)

特集 男性不妊診療のニューフロンティア―保険適用で変わる近未来像

76巻9号(2022年8月発行)

特集 前立腺肥大症(BPH)の手術療法―臨床現場の本心

76巻8号(2022年7月発行)

特集 泌尿器腫瘍における放射線治療―変革期を迎えた令和のトレンド

76巻7号(2022年6月発行)

特集 トラブルゼロを目指した泌尿器縫合術―今さら聞けない! 開放手術のテクニック

76巻6号(2022年5月発行)

特集 ここまで来た! 腎盂・尿管癌診療―エキスパートが語る臨床の最前線

76巻5号(2022年4月発行)

特集 実践! エビデンスに基づいた「神経因性膀胱」の治療法

76巻4号(2022年4月発行)

増刊号特集 専門性と多様性を両立させる! 泌尿器科外来ベストNAVI

76巻3号(2022年3月発行)

特集 Female Urologyの蘊奥―積み重ねられた知恵と技術の活かし方

76巻2号(2022年2月発行)

特集 尿路性器感染症の治療薬はこう使う!―避けては通れないAMRアクションプラン

76巻1号(2022年1月発行)

特集 尿道狭窄に対する尿道形成術の極意―〈特別付録Web動画〉

75巻13号(2021年12月発行)

特集 困った時に使える! 泌尿器科診療に寄り添う漢方

75巻12号(2021年11月発行)

特集 THEロボット支援手術―ロボット支援腎部分切除術(RAPN)/ロボット支援膀胱全摘除術(RARC)/新たな術式の徹底理解〈特別付録Web動画〉

75巻11号(2021年10月発行)

特集 THEロボット支援手術―現状と展望/ロボット支援前立腺全摘除術(RARP)の徹底理解〈特別付録Web動画〉

75巻10号(2021年9月発行)

特集 今こそ知りたい! ロボット時代の腹腔鏡手術トレーニング―腹腔鏡技術認定を目指す泌尿器科医のために〈特別付録Web動画〉

75巻9号(2021年8月発行)

特集 ED診療のフロントライン―この一冊で丸わかり!

75巻8号(2021年7月発行)

特集 油断大敵! 透析医療―泌尿器科医が知っておくべき危機管理からトラブル対処法まで

75巻7号(2021年6月発行)

特集 前立腺肥大症(BPH)薬物治療のニューノーマル―“とりあえず”ではなくベストな処方を目指して

75巻6号(2021年5月発行)

特集 躍動するオフィスウロロジー―その多様性に迫る!

75巻5号(2021年4月発行)

特集 前立腺癌のバイオロジーと最新の治療―いま起こりつつあるパラダイムシフト

75巻4号(2021年4月発行)

増刊号特集 泌尿器科当直医マニュアル

75巻3号(2021年3月発行)

特集 斜に構えて尿路結石を切る!―必ず遭遇するイレギュラーケースにどう対処するか?

75巻2号(2021年2月発行)

特集 複合免疫療法とは何か? 腎細胞癌の最新治療から学ぶ

75巻1号(2021年1月発行)

特集 朝まで待てない! 夜間頻尿完全マスター

74巻13号(2020年12月発行)

特集 コロナ時代の泌尿器科領域における感染制御

74巻12号(2020年11月発行)

特集 泌尿器科医のためのクリニカル・パール―いま伝えたい箴言・格言・アフォリズム〈下部尿路機能障害/小児・女性・アンドロロジー/結石・感染症/腎不全編〉

74巻11号(2020年10月発行)

特集 泌尿器科医のためのクリニカル・パール―いま伝えたい箴言・格言・アフォリズム〈腫瘍/処置・救急・当直編〉

74巻10号(2020年9月発行)

特集 令和最新版! 泌尿器がん薬物療法―手元に置きたい心強い一冊

74巻9号(2020年8月発行)

特集 泌尿器腫瘍の機能温存手術―知っておくべき適応と限界

74巻8号(2020年7月発行)

特集 これが最新版! 過活動膀胱のトリセツ〈特別付録Web動画〉

74巻7号(2020年6月発行)

特集 小児泌尿器科オープンサージャリー―見て学ぶプロフェッショナルの技〈特別付録Web動画〉

74巻6号(2020年5月発行)

特集 高齢患者の泌尿器疾患を診る―転ばぬ先の薬と手術

74巻5号(2020年4月発行)

特集 ここが変わった! 膀胱癌診療―新ガイドラインを読み解く

74巻4号(2020年4月発行)

増刊号特集 泌尿器科診療の最新スタンダード―平成の常識は令和の非常識

74巻3号(2020年3月発行)

特集 泌尿器科手術に潜むトラブル―エキスパートはこう切り抜ける!

74巻2号(2020年2月発行)

特集 いま話題の低活動膀胱―これを読めば丸わかり!

74巻1号(2020年1月発行)

特集 地域で診る・看取る緩和ケア―泌尿器科医として知っておくべきこと

icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら