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雑誌目次

雑誌文献

臨床泌尿器科55巻7号

2001年06月発行

雑誌目次

綜説

表在性膀胱癌の再発と進展について

著者: 蓮井良浩

ページ範囲:P.503 - P.512

 表在性膀胱癌の問題点は,経尿道的手術後に再発と進展を起こしてくることである。再発の診断のために,尿中の腫瘍マーカーであるBTA,NMP22,テロメラーゼなどが報告されているが,高異型度の腫瘍や上皮内癌の診断は尿細胞診の感度で満足できるために,いまだに尿細胞診を中心として再発の診断を行っている。再発と進展を予測するために,T1の細分化,ウロキナーゼ,p53,血管内皮増殖因子などが検討されているが,いまだ普及しないのは簡便性の問題と思われる。また,治療における抗癌剤とBCGの注入療法は確立されているが,効果と副作用に問題があるため,今後は免疫賦活作用のある薬剤との併用が検討されると思われる。

手術手技 目でみる泌尿器科手術のポイント・6

—尿路変向術—回腸利用膀胱再建術

著者: 黒川泰史 ,   金山博臣 ,   香川征 ,   山本晶弘

ページ範囲:P.513 - P.521

 膀胱全摘除術後の膀胱再建術としては,種々の方法が報告されているが,本稿では主に回腸利用による方法を概説する。当科においては,回腸利用による膀胱再建術の方法として,主にKock pouchによる禁制型尿路変向法とそのpouch部を応用したileal neobladder作成を行っており,これらについてその手術手技を特に原法からの改良点(尿管とpouchの吻合法)を中心に概説した。

—尿路変向術—回盲部利用膀胱再建術

著者: 松浦健

ページ範囲:P.523 - P.529

 回盲部利用膀胱再建術の1つであるマインツパウチは,同所性膀胱置換として新膀胱形成術,また非失禁型尿路変向術,膀胱拡大術へ応用可能である。その特徴は,十分な容量を持つ低圧レザバーを作成できるほか,大腸を使用することで粘膜下トンネル法による確実な逆流防止術が可能なことである。マインツパウチを利用した新膀胱形成術,非失禁型尿路変向術の手術手技について述べた。

—尿路変向術—胃利用膀胱再建術

著者: 村石修

ページ範囲:P.531 - P.537

 放射線治療後などで回腸・結腸の使用が困難な場合,あるいは合併症の危険が大きい場合に,尿路再建・尿路形成を目的とする手術に胃を利用することができる。実際に経験のある胃利用膀胱拡大術と代用膀胱造設術,および尿路再建手術としての胃管使用Boari手術変法,細径胃管利用禁制導尿路作成などの術式につき,その手術手技のポイントを述べた。

セミナー 泌尿生殖器におけるバイオマーカーの新展開・6

前立腺癌のバイオマーカーの現況と展望—PSAの時代におけるバイオマーカーの意義

著者: 那須保友 ,   倉繁拓志

ページ範囲:P.539 - P.544

 癌研究における解析方法の進歩に伴い種々のマーカーが研究されてきたが,前立腺癌では臨床的有用性においてPSAを凌駕するものは未だにない。ポストゲノムの時代,さらにはPSAの時代といわれている昨今,分子遺伝学的手法によって得られた前立腺癌のバイオマーカー研究の現況と今後の展望について臨床的観点から述べる。

原著

両側性精巣腫瘍の臨床的検討

著者: 田代和也 ,   簗田周一 ,   古田昭 ,   滝沢明利 ,   岩室紳也 ,   鈴木正泰 ,   波多野孝史 ,   近藤直弥 ,   大石幸彦

ページ範囲:P.549 - P.552

 最近23年間に治療した精巣腫瘍は229例で,経過中に両側性精巣腫瘍をみたものは8例(3.5%)であり,同時発症が2例(0.9%),異時発症が6例(2.6%)であった。初発年齢は平均30.5歳,続発までの間隔は平均66.6か月であった。病期は続発例の1例を除きすべて病期Ⅰであった。続発例6例中1例のみ初発時に化学療法と放射線療法が行われた。組織型は両側セミノーマが4例,セミノーマと非セミノーマが3例,両側非セミノーマが1例であった。予後は良好で全例生存(平均54.4か月)している。患者に対側発生の危険性があることを十分に説明し,自己触診により早期に対側発症を発見することを教育することが最も重要と思われた。

症例

自然破裂した嚢胞状腎細胞癌

著者: 井上洋二 ,   森山浩之 ,   中原満 ,   西阪隆 ,   福原敏行

ページ範囲:P.555 - P.558

 40歳女性が左腎の嚢胞状腫瘤の精査および治療のため受診した。この際,患者は左坐骨部痛を訴えていた。腹部CT,腎動脈造影,骨シンチなどの検査より,嚢胞状腎細胞癌の左坐骨転移と臨床診断した。当科受診前に他院で行われたCTをみると,腎細胞癌は自然破裂していたものと考えられた。術後の病理診断も腎細胞癌であった。

成人に発生した先天性中胚葉性腎腫の1例

著者: 吉岡優 ,   鹿子木基二 ,   綾田昌弘

ページ範囲:P.559 - P.561

 症例は33歳,女性。急性腎盂腎炎の疑いで原因精査中に,左腎上極に直径約8cmの腫瘍を認め,経腹的左腎摘除術を施行した。病理診断は,成人型先天性中胚葉性腎腫であった。

酸性尿酸アンモニウム結石の2症例

著者: 松崎敦 ,   小林裕 ,   熊丸貴俊 ,   森田辰男 ,   徳江章彦

ページ範囲:P.563 - P.566

 酸性尿酸アンモニウム結石の2症例を経験した。症例1は,急激な体重減少をきたした若年女性の腎尿管結石で,体外衝撃波砕石術(ESWL)にて砕石された。症例2は,脊髄症による神経因性膀胱に起因する慢性膀胱炎の既往のある高齢の女性に発生した大きな膀胱結石で,経尿道的に摘出した。両者とも緩下剤を長期にわたり服用していた。再発の予防に,緩下剤の調節と膀胱炎のコントロールが必要であると考えられた。

嚢胞形成を伴う孤立性後腹膜神経線維腫の1例

著者: 丹司望 ,   坂山憲史 ,   島本憲司 ,   大岡啓二 ,   横山雅好

ページ範囲:P.567 - P.570

 症例は53歳,女性。人間ドックにて骨盤腔内の腫瘤を指摘され,精査のために入院した。単房性の大きな嚢胞を中心に持つ6×7×9cmの腫瘍で,腫瘍核出術を施行した。摘除標本の病理学的検査により神経線維腫と診断された。後腹膜に発生した神経原性の良性腫瘍に対し,腫瘍核出術を選択することにより,術後に起きうる知覚障害や運動障害を回避できる可能性がある。

特異な臨床経過を呈した膀胱癌

著者: 南英利 ,   安達高久 ,   江崎和芳 ,   服部英喜 ,   竹田雅司 ,   岸本武利

ページ範囲:P.571 - P.573

 症例は51歳の男性。不明熱と肉眼的血尿を主訴に来院した。膀胱鏡検査にて,膀胱三角部から右尿管口に非乳頭状広基性の腫瘍を認め,病理組織学的に低分化癌と診断した。血液検査上,感染症を疑い,各種抗生剤投与を行ったが反応しなかった。骨髄穿刺にて腫瘍細胞を認め,膀胱癌の骨髄転移と診断した。化学療法を施行したところ,一時的に著明な解熱傾向と血液検査の改善を認めるものの,病勢は抑えられなかった。

停留精巣に合併した高齢発症セミノーマ

著者: 丸山邦夫 ,   麻生太行 ,   鈴木俊一

ページ範囲:P.576 - P.577

 症例は64歳,男性。有痛性の右鼠径部腫瘤を主訴に来院した。受診時に右外鼠径輪直下に,直径5cm大の可動性のない有痛性の腫瘤を触れた。陰嚢内には右精巣を認めなかった。画像診断では腫瘤内部は不均一な像を示した。右停留精巣に発生した精巣腫瘍と診断し,右高位精巣摘出術を施行した。病理組織診断はセミノーマであった。腹部CTで傍大動脈リンパ節に転移があり,PVB療法および放射線療法を施行した。

画像診断

右鼠径ヘルニア根治術後に発生した鼠径部膀胱ヘルニアの1例

著者: 神原常仁 ,   辻井俊彦 ,   吉田謙一郎

ページ範囲:P.579 - P.581

 患者 57歳,男性。
 主訴 膀胱充満時の右鼠径部腫瘤。

小さな工夫

腎移植における術中の温阻血障害予防のための工夫

著者: 王立明 ,   田邉信明

ページ範囲:P.582 - P.582

 腎移植の際の虚血再灌流障害は急性尿細管壊死(ATN),さらには急性および慢性拒絶反応にもかかわりがあり,移植腎機能に大きな影響を与える。虚血再灌流障害はドナー因子,冷保存時間,再灌流障害など多くの因子が関係している。このうちsecond warm ischemic injuryは,血管吻合時間が35分以上の場合,ATNの誘因として重要であると考えられている1)。このためATNを予防するには,腎移植手術中に移植腎の実質温度を16℃以下に保つことが必要であるとされている2)。われわれは手術中に氷入りコンドームを使うことで,second warm ischemic injuryの予防をしている。
 操作の概要は以下のとおりである。まず,3個のコンドーム,1枚のガーゼおよびクラッシュアイスを用意する(図1)。コンドームのなかに半分くらいクラッシュアイスを入れ,空気を除去して口を閉める。ガーゼの中心に直径1.5cmの穴を開ける。移植腎をガーゼのなかに置き,腎動静脈の断端を穴から外に出す。3個の氷入りコンドームを腎周囲に置き,これらをガーゼで包み込み,鉗子で挟む。助手が鉗子を保持し,移植腎の位置を調節しながら血管吻合を行う(図2)。血管吻合が終了したら鉗子を外し,ガーゼを剪刀で切り離す。

病院めぐり

いわき市立総合磐城共立病院泌尿器科

著者: 鈴木謙一

ページ範囲:P.584 - P.584

 いわき市は,福島県太平洋岸(浜通り地方)南部に位置し,すぐ隣は茨城県になります。海洋性気候のため,年間平均気温は13.8度で降雪もほとんどなく,東北地方でも最も温暖な気候といえます。昭和30年代までは常磐炭坑が産業の中心でしたが,現在では旧平地区を中心とした商業都市,また工業港を有する小名浜地区を中心とした工業都市としても発展が期待されています。
 当院は,1950年(昭和25年)11月1日に旧平市および周囲の町村合わせての共立病院として,50床の病院から出発しました。昭和41年10月1日,いわき市の誕生とともにいわき市立病院となり,現在では診療科目20科,医師数132名,入院病床数1,034床,外来患者は1日平均1,500人を超えています。当院は,いわき市35万人および浜通り地方の急性期疾患を対象とする短期療養型の中核病院としての役割を担っており,高度先進医療とともに救急医療においても大きな期待を寄せられ,平成12年には創立50周年記念式典が催されました。

静岡済生会総合病院泌尿器科

著者: 権永鉄

ページ範囲:P.585 - P.585

 恩賜財団静岡県済生会は,静岡市小鹿の23,600m2の敷地に総合病院,救命救急センター,特別養護老人ホーム小鹿苑,看護専門学校などを運営し,静岡市の医療福祉活動の中核的な役割を担っている組織の1つです。静岡済生会総合病院はその中心となる施設病院であり,昭和23年に54床で開院し,故岡本一男院長のもとで急速に充実してきました。現在は,総病床数773床,外来診療科24科,常勤医師数104名(うち研修医15名)の大きな病院となっています。
 昭和55年には救命救急センターを開設し,一次から三次救急診療を幅広く扱い,周辺地域の救急医療に多大な貢献をしています。加えて,平成11年に静岡という土地柄も考慮し,免震構造を備えた地上10階,地下1階の新「南館」が落成し,この屋上に備えられたヘリポートを利用したさらに広範囲にわたる地域医療への貢献,災害拠点病院としての機能が期待されています。センターは3階建てで,1階を外来診療部として,研修医を含む医師4名,看護婦3名の当直体制をとり,24時間,365日,1日平均80名の患者様の診療に当たっています。2階を熱傷センターおよび一次患者収容病棟として,3階をICUとして利用しており,レントゲン施設,検査施設,薬局を備えた充実した体制となっています。

基本情報

臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

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