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雑誌目次

雑誌文献

臨床泌尿器科55巻9号

2001年08月発行

雑誌目次

綜説

上部尿路上皮癌の手術療法—腎尿管全摘除術を中心として

著者: 五十嵐辰男 ,   伊藤晴夫

ページ範囲:P.707 - P.714

 上部尿路上皮癌に対する腎尿管全摘除術は切開創の大きな術式であり,これまで根治性の向上を目指すために腎筋膜外剥離リンパ節郭清が行われてきた。一方根治性を損なわず,より小さい皮膚切開で行うことを目的としてさまざまな術式が試みられている。最近では鏡視下手術も行われている。本稿では腎尿管全摘除術の術式の変遷と問題点を概略し,鏡視下手術の現況と意義を述べる。

手術手技 目でみる泌尿器科手術のポイント・8

経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)

著者: 有馬公伸

ページ範囲:P.715 - P.719

 TURBTによる膀胱温存手術の適応が拡大されつつある。そのためのneoadjuvant chemotherapyとしての阻血動注療法と,造影MRI T1強調像のsubmucosal enhance-mentを利用した画像診断による評価法の有用性について述べるとともに,TURBTの初心者を対象とした手術手技のポイントをいくつかあげ,また,大きな腫瘍における高周波スネアの有用性についても言及した。

経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)

著者: 黒田昌男 ,   宇佐美道之

ページ範囲:P.721 - P.725

 TURBTは表在性膀胱癌の標準的治療として広く行われている外科的治療法である。手術のポイントは,1)無作為生検は切除前に行う。腫瘍も生検しておく,2)切除ループを膀胱壁に接触させた状態で電気メスのスイッチをONにすることはできるだけ避ける,3)電気凝固すると切除しにくくなるのでできるだけ避ける,4)膀胱を過伸展させた状態で切除しない,5)切除最深部は,生検鉗子で組織を採取する,などである。

浸潤性膀胱癌に対する膀胱温存療法におけるTURBT

著者: 住吉義光

ページ範囲:P.727 - P.731

 浸潤性膀胱癌に対し膀胱温存療法を施行する際,visible tumorを完全に切除するcomplete TURBTを行う。切除範囲は腫瘍より2バイト位までとし,深さは筋層より膀胱周囲脂肪組織までで,脂肪が膀胱内に突出するまで切除する。最深部ではpT3aが診断可能となるようにcold cup biopsyを行う。膀胱頸部,前立腺部尿道,尿管口部位でも同様に切除する。術後のカテーテル留置期間は5〜7日間とする。

セミナー 泌尿器科領域における形成外科的再建手術・2

薄筋皮弁を用いた再建手技

著者: 百澤明 ,   朝戸裕貴 ,   多久嶋亮彦 ,   波利井清紀

ページ範囲:P.733 - P.739

 薄筋皮弁は泌尿器科や産婦人科などの外科領域で遭遇する会陰部・骨盤内の深達性組織欠損に対して,有用な再建材の一つである。手術手技上の注意点などを中心に薄筋皮弁について概説した。正しく薄筋筋体の直上に皮弁をデザインし,筋体と皮弁との接触面積を少しでも大きくするように皮弁を挙上することが血行の安定した薄筋皮弁を作成するためのポイントである。

原著

ミニラパロトミー恥骨後式前立腺全摘除術の経験—従来法との比較検討

著者: 三股浩光 ,   佐藤文憲 ,   笠木康弘 ,   大野仁 ,   住野泰弘 ,   藤井猛 ,   秦聡孝 ,   田崎義久 ,   野村芳雄

ページ範囲:P.743 - P.747

 限局性前立腺癌に対してミニラパロトミー恥骨後式前立腺全摘除術を施行し,従来法と比較検討した。平均手術時間と平均出血量はミニラパロトミー法は249分,1,108mlで,従来法では229分,1,155mlであった。ミニラパロトミー法の術後の創部痛は軽度であり,10例中9例で術翌日に無理なく歩行を開始できたが,従来法では12例中3例のみが術翌日より歩行していた。ミニラパロトミー法は従来法に習熟した泌尿器科医であれば安全に施行でき,しかもより低侵襲の術式と考えられた。

症例

膀胱全摘除術後,腎動脈塞栓術後に肺塞栓症にて急死したと考えられる2例

著者: 長濱寛二 ,   加美川誠 ,   眞田俊吾

ページ範囲:P.749 - P.752

 症例1は膀胱全摘除術翌日に,症例2は腎動脈塞栓術翌日に,体位変換時に突然の呼吸困難を訴え,発症より1時間以内に呼吸停止,心停止をきたした。双方とも深部静脈血栓症より肺塞栓を生じたと考えられる。肺塞栓症は致命的な疾患であり,予防,早期診断が重要である。欧米では合併症としての肺塞栓症が多く予防的前処置が当然になっている。日本でも肺塞栓症の頻度が急増しており,泌尿器科手術の前にも予防処置が必要と考える。

PSAが急激に上昇した前立腺癌

著者: 中田誠司 ,   西井昌弘 ,   齋藤佳隆 ,   高橋溥朋 ,   清水和彦

ページ範囲:P.753 - P.755

 症例は77歳,男性。1994年7月,前立腺右葉の硬結を指摘された。PSAは1994年4.6ng/ml,1995年4.5ng/ml,1996年4.5ng/ml,1997年5.0ng/mlで,触診はほぼ同様の所見であった。生検を勧めたが,拒否していた。1999年5月,呼吸困難,血痰,鼻出血のため内科入院。諸検査にてDlC,多発性骨・骨髄転移を伴った前立腺癌と診断された。PSAは4,810ng/mlで,3年間ほぼ横ばいであったPSAが,その2年後に急上昇した。

前部尿道へ転移した前立腺癌

著者: 森山浩之 ,   井上洋二 ,   望月英樹 ,   中原満 ,   西阪隆 ,   福原敏行

ページ範囲:P.757 - P.759

 世界で第3例目の前立腺癌の前部尿道転移例を報告した。患者は59歳,男性で尿道出血のため受診した。19か月前に前立腺の低分化型腺癌ため膀胱前立腺全摘除術を受けており,術後の病期はpT3N2MOであった。尿道鏡では数個の黄色の半球状腫瘤を認め,内視鏡下生検を行うと低分化型腺癌の組織診断であった。自験例での尿道転移の機序は,リンパ性逆行性播種であると考えられる。

排尿困難をきたした膀胱神経線維腫

著者: 天野慎二 ,   大谷正樹 ,   河野明 ,   平川栄一郎

ページ範囲:P.761 - P.763

 79歳,男性。排尿困難を主訴に当科を受診した。直腸診にて前立腺の肥大を認めた。膀胱鏡検査にて膀胱頸部2時の方向に膀胱頸部を閉鎖するような直径1cm台の腫瘤を認めた。腫瘤を経尿道的に切除した。病理組織検査にて膀胱神経線維腫と診断された。術後排尿困難は改善した。

心タンポナーデにて発見された腎癌術後再発の1例

著者: 天野慎二 ,   大谷正樹 ,   河野明 ,   岡内泰弘

ページ範囲:P.765 - P.767

 52歳,男性。1994年9月左腎癌に対し,腎摘除術を施行した。1999年7月腹部膨満感を主訴に受診した。心エコー検査にて心タンポナーデと診断された。エコーガイド下に胸骨下心嚢ドレナージを施行した。CTにて多発性の肺転移,縦隔リンパ節の腫大を認めた。腫大する頸部リンパ節に針生検を施行した。病理組織像は腎細胞癌と同様であり,腎癌術後再発と考えられた。

後部尿道に発生した内反性乳頭腫の1例

著者: 渡部明彦 ,   木村仁美

ページ範囲:P.769 - P.771

 症例は25歳,男性。排尿困難,肉眼的血尿を主訴に当科を受診した。尿道鏡にて後部尿道より発生した腫瘍を認めたため,経尿道的腫瘍切除術を施行した。病理組織学的に内反性乳頭腫と診断された。自験例は後部尿道に発生した内反性乳頭腫の本邦報告29例目と思われた。

画像診断

急性腹症との鑑別に苦慮した尿膜管膿瘍の2例

著者: 藤田哲夫 ,   青輝昭 ,   小柴健

ページ範囲:P.773 - P.775

【症例1】
 患者 13歳,男性。
 主訴 腹痛,発熱。

トピックス

腹腔鏡下腎部分切除術

著者: 鈴木和雄

ページ範囲:P.777 - P.782

 腹腔鏡下腎部分切除術の手技,合併症と問題点,今後の課題と展望などにつき概説した。腹腔鏡下腎部分切除術はトロカーポートからの腫瘍摘出が可能であり,腹腔鏡下手術の低侵襲性を損なうことなく手術が可能である。腎を阻血せずに腎実質の凝固・切開,尿路の閉鎖が確実に施行可能な新しい手術手技・機器が導入されれば,腹腔鏡下腎部分切除術は4cm以下の腎腫瘍に対する低侵襲手術として広く普及していくものと思われる。しかし,腎癌に対する外科治療としての有用性を証明するためには,多数例の長期成績に関して開放性腎部分切除術との比較検討を行う必要があるのはいうまでもない。

小さな工夫

右腎腫瘍に対する腹腔鏡補助下手術

著者: 古野剛史 ,   榊原尚行

ページ範囲:P.784 - P.785

 腎上極の比較的大きい腫瘍に対し腎摘除術を行う場合,腎上極の処理が困難なことがある。先に腹腔鏡下に肝を授動し開腹時に良好な視野を得ることができたので,その術式を紹介する。
 症例は62歳男性。内科CTにて右腎上極に径7.5×5.0cmの腫瘍を認め当科に紹介された。肺転移も認めたが,原発巣の摘除後インターフェロン療法を行うこととし,2000年5月29日,右腎摘除術を行った。

病院めぐり

川口市立医療センター泌尿器科

著者: 賀屋仁

ページ範囲:P.786 - P.786

 川口市は,埼玉県の最南端に位置し,荒川を隔てて東京都に接しています。人口は47万人を超え,県下第2位の人口(平成13年1月現在)を有しています。主な産業は,古い歴史を持つ鋳物や釣竿生産,植木ですが,現在,21世紀の産業として映像産業を育成するための拠点都市(SKIPシティ)を建設中です。
 当医療センターは,昭和22年に川口国民健康保険組合直営病院として発足しましたが,昭和26年4月に川口市に移管され,川口市国民健康保険川口市民病院として診療科7科,90床で開設されました。昭和32年3月には12科,228床に増床され,平成元年4月に川口医師会から移管された川口市民病院神根分院(診療科6科,病床数200床)と統合しました。そして,それらの経緯を経て平成6年5月に現在の地に,川口市立医療センターと名称を変え新しくスタートして今日に至っています。

国立西埼玉中央病院泌尿器科

著者: 木戸晃

ページ範囲:P.787 - P.787

 国立西埼玉中央病院は,池袋駅より西武池袋線で約40分,小手指駅よりバスまたはタクシーで10分の場所,所沢市の西の端にあります。小手指の地名が歴史の教科書に登場するのは鎌倉時代から室町時代にかけてで,鎌倉街道に沿った小手指ヶ原における二度の大きな合戦があります。1つは,1333年(元弘三年)に後醍醐天皇の命を受けた新田義貞軍と鎌倉幕府軍の戦で,鎌倉幕府の滅亡のきっかけとなりました。また1352年(文和一年・正平七年)には南朝・宗良親王を総大将とした新田軍と北朝・光明天皇の足利尊氏軍の戦があり,足利軍の勝利に終わりました。病院近くの北野天神社には「君のため世のため何かをしからむ捨ててかひある命なりせば」という宗良親王の歌碑があります。近年では当地・所沢は西武ライオンズ球団の本拠地として知られ,狭山丘陵の森は「トトロのふる里」として知られています。病院の玄関前の防火用水池には,数年前からカルガモが住み着いており,病院一の人気者です。
 当院は1973年に国立所沢病院と国立豊岡療養所の統合により誕生した国立病院としては比較的新しい病院です。初代院長が熊本大学の産婦人科教授でしたので,泌尿器科も熊本大学から派遣された右田先生が医長をされており,学会発表は熊本地方会での報告が多かったと聞いています。

基本情報

臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

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