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雑誌目次

雑誌文献

臨床泌尿器科56巻2号

2002年02月発行

雑誌目次

綜説

糖尿病性膀胱機能障害

著者: 滝本至得

ページ範囲:P.103 - P.114

 糖尿病ニューロパシーの成因と排尿障害に直結する膀胱平滑筋の病態生理につき,最近の文献を中心に解説した。臨床的には,糖尿病患者の膀胱機能障害の多くは低活動型であるが,一部に過活動型を示す症例もあり,抗コリン薬が効き難い頻尿症状を訴える症例も経験するところから,糖尿病性神経障害のある病期においては,NANC神経が関与することが推測された。その1つとしてセロトニンがあり,排尿筋過反射に関与するとともに,5-HT2Aリセプター拮抗薬が頻尿症状を緩和することを紹介した。

手術手技 目でみる泌尿器科手術のポイント・14

副腎摘除術(開腹手術)

著者: 白木良一

ページ範囲:P.115 - P.123

 副腎腫瘍に対しては,術前に腫瘍の性状ならびに詳細な部位診断が可能である場合が多く,一般的には腹腔鏡を用いた手術がよい適応である。しかし,多発性の褐色細胞腫,副腎皮質癌や転移性副腎腫瘍などで大きな腫瘍や郭清を必要とする悪性腫瘍では開腹手術を選択する。各手術法の特徴を踏まえて手術アプローチを決定する必要があるが,そのうえで,腫瘍の大きさ,内分泌活性,悪性腫瘍の可能性などを含めた総合的な判断が必要となる。

副腎摘除術(開腹)

著者: 鈴木仁 ,   中田瑛浩

ページ範囲:P.125 - P.131

 大きな副腎腫瘍に対する開放性副腎摘除術について,肋骨弓下横切開による経腹腔的到達法を概説し,その際の注意点を解説した。本法は,腹壁筋層群の切開・縫合に時間を要し,侵襲も大きくなる傾向にあるが,ほとんどの副腎腫瘍に適応できる。また,手術野が広く展開でき,大血管と腫瘍との位置関係が直視下で見えるため腫瘍の剥離,血管の処理が安全に行えることが利点である。

副腎摘除術(開腹)

著者: 高橋信好 ,   呉聖哲 ,   川口俊明 ,   鈴木唯司

ページ範囲:P.133 - P.137

 副腎摘除術(開腹)には経腹膜式到達法と胸腹式到達法がある。前者は副腎悪性腫瘍の他,両側性の病変,および術中両側副腎の検索が必要な場合に主に用い,両側褐色細胞腫がよい適応となる。後者は開胸を併用することで最も良好な視野が得られるため,巨大な副腎腫瘍の手術には最適である。

セミナー 泌尿器科医に必要な新しい医療材料の知識・2

腹腔鏡下手術におけるオクチルシアノアクリレート皮膚接着剤の使用経験

著者: 池田忠明 ,   笹屋昌示 ,   菊地浩彰 ,   上道治 ,   伊津野久紀 ,   宇山亮 ,   相田邦俊 ,   松本匡 ,   木川岳 ,   松宮彰彦 ,   真田裕 ,   熊田馨

ページ範囲:P.139 - P.143

 腹腔鏡下外科手術358例(18か月間)にオクチルシアノアクリレート皮膚接着剤(DARMABOND®)を使用し,その有用性を検討した。準汚染手術創や皮下の易出血例を除く343例(96%)は手術終了時に使用し,結腸手術の2例を除き全例で有用であった。マイクロ腹腔鏡下症例には173例に使用し,塗布後の十分な治癒組織強度や防水性ドレッシングの効用により,より早期の退院を可能とし,在院日数を短縮化せしめた。DARMABOND®は,腹腔鏡下外科手術の創閉鎖法として,有力な生体接着剤と考えられる。

原著

膀胱癌におけるdThdPase,DPDの発現

著者: 福多史昌 ,   舛森直哉 ,   内田耕介 ,   三宅正文 ,   堀田浩貴 ,   門野雅夫

ページ範囲:P.147 - P.151

 Thymidine phosphorylase(dThdPase)/dihydropyrimidine dehydrogenase(DPD)比は,消化器癌などにおいてdoxifluridine(5'-DFUR)の効果を予測する上で有用であるとされているが,膀胱癌での検討は少ない。膀胱移行上皮癌13例を対象とし,癌組織(25検体)と正常組織(8検体)のdThdPase発現レベルおよびdThdPase/DPD比を検討したところ,両者とも癌組織において高値を示した。この傾向はdThdPase/DPD比においてより顕著であつた。以上より,dThdPase/DPD比は膀胱癌に対する5'-DFURの効果を予測する上でdThdPase単独よりも有用である可能性が推測された。

症例

精巣白膜嚢胞

著者: 石光広 ,   福原敏行 ,   森山浩之 ,   望月英樹 ,   中原満 ,   西阪隆

ページ範囲:P.153 - P.155

 51歳,男性が右陰嚢内容の無痛性腫大を主訴に受診した。超音波検査およびCTにて右精巣内に2個の嚢胞状腫瘤を認めた。精巣摘除術を施行したところ精巣白膜嚢胞の病理診断であった。

移行上皮癌と重複した転移性膀胱印環細胞癌

著者: 菅谷真吾 ,   後藤博一 ,   阿部和弘 ,   冨田雅之 ,   大西哲郎 ,   大石幸彦

ページ範囲:P.157 - P.159

 症例は68歳,女性。右上腹部痛精査の内視鏡検査にて胃に隆起性病変を認め,生検にて印環細胞癌が確認された。その後,肉眼的血尿が出現したため当科を受診した。膀胱鏡検査で乳頭状腫瘍を認め,経尿道的膀胱腫瘍切除術を施行した。組織学的に表在性移行上皮癌とその粘膜下に印環細胞癌を認め,原発性膀胱癌と転移性膀胱印環細胞癌の重複と診断した。5-FU内服療法にて経過を観察していたが,術後5か月後に死亡した。

膀胱原発平滑筋肉腫の1例

著者: 古賀文隆 ,   鈴木理仁 ,   石丸尚 ,   水尾敏之 ,   永松秀樹

ページ範囲:P.161 - P.163

 症例は脊髄損傷で自己導尿中の27歳男性。膀胱タンポナーデで緊急入院となる。膀胱鏡で膀胱後壁に3cm大の粘液様広基性腫瘍を認め可及的に切除。膀胱平滑筋肉腫の診断を得た。膀胱外病変の所見はなく,骨盤リンパ節郭清および膀胱部分切除術を施行。摘除標本に残存腫瘍を認めなかつた。患者は術後1年6か月経過した現在,再発・転移の所見はなく生存中である。膀胱平滑筋肉腫の予後規定因子につき若干の文献的考察を加える。

右副腎巨大褐色細胞腫

著者: 本多正人 ,   桃原実大 ,   小森和彦 ,   高田剛 ,   佐藤英一 ,   藤岡秀樹

ページ範囲:P.165 - P.167

 患者は49歳,女性。約20年前から高血圧を,約2年前から耐糖能異常を指摘されていた。CT,MRlにて右副腎部に巨大腫瘍を認め,血中ノルアドレナリンが異常高値を呈した。MIBGシンチグラフィーで同部に異常集積像を認め褐色細胞腫と診断し,右副腎摘除術を施行した。腫瘍重量1,370g。術後高血圧および耐糖能異常は速やかに改善した。

エリスロポエチン産生腎細胞癌の1例

著者: 野澤英雄 ,   猪股出 ,   金澤諭 ,   鈴木良二 ,   原啓 ,   石井延久

ページ範囲:P.169 - P.171

 症例は45歳,男性。3年前より高血圧にて加療中,1年ほど前より異常発汗,体熱感,全身倦怠感が出現した。精査にて赤血球増加症,血中エリスロポエチン(以下EPO)濃度の増加および左腎腫瘍を認めた。術前に合計1,200mlの瀉血ののち根治的腎摘除術を施行した。術後赤血球数および血中EPO濃度は正常化した。腫瘍部の組織内EPO濃度は正常部の約8.5倍であった。EPO産生腎細胞癌の報告は本邦で18例目である。

精索転移で発見された膵癌

著者: 角野佳史 ,   山本肇 ,   田近栄司

ページ範囲:P.173 - P.175

 57歳,男性。左陰嚢内腫瘤を主訴に当科受診。触診,陰嚢エコーにて精巣腫瘍が疑われ,左高位精巣摘除術を施行した。病理組織では,精索から精巣上体にかけて多発する中分化腺癌であり,転移性の腫瘍が疑われた。CTにて膵尾部に腫瘍を認め,脾臓への浸潤が疑われた。外科にて膵尾部と脾臓を合併切除し,その病理組織はいずれも中分化腺癌であり,精索のものと同様であった。膵癌の精索転移は稀であり,本症例は本邦11例目にあたる。

画像診断

検診にて偶然に発見された後腹膜神経節神経腫

著者: 森山浩之 ,   永吉健介 ,   西阪隆

ページ範囲:P.177 - P.179

 患者 38歳,女性。
 主訴 検診にて指摘された後腹膜腫瘤の精査および治療。

右腎動脈による右腎静脈圧迫が原因と考えられた右腎出血の1例

著者: 米田文男 ,   山口邦久 ,   岡本賢二郎

ページ範囲:P.181 - P.183

 患者 39歳,女性。
 主訴 肉眼的血尿。

小さな工夫

前立腺肥大症ステント治療における前立腺尿道長の簡潔な測定法

著者: 森久 ,   安井融

ページ範囲:P.184 - P.185

 今日,前立腺肥大症の治療法の一つである尿道ステント治療は,安金性,簡便性,有効性に優れ,適応の幅を急速に広げつつある。
 治療時,ステントの長さを決定するには,一般的に尿道造影を行い,そのX線写真より前立腺尿道長を計測し決定している(図1a)。しかし,実際は三次元の尿道を二次元のX線写真に変換することや,膜様部尿道を同定するのに困難な場合もあり正確さを欠く。そこで,正確な前立腺尿道長を計測する方法が必要であると考えた。

病院めぐり

国立横須賀病院泌尿器科

著者: 小川勝明

ページ範囲:P.186 - P.186

 国立横須賀病院は明治24年3月に横須賀衛戍病院として創設され,その後,昭和11年11月に名称を横須賀陸軍病院と改め終戦に至りました。昭和20年12月1日,厚生省所管の国立病院と改称し,昭和21年12月より一般患者の診療が開始されました。昭和40年3月〜41年3月にかけ7階建の病棟と2階建の外来管理棟が新築され,本院は地域医療の中核病院としての役割を果たし,昭和53年4月には看護学校が設立されました。こうして専門医教育指定病院,臨床研修指定病院としての医療の提供,医療従事者の育成に努めてきました。また古くから地域医療を重視し,病診連携・セミオープン化に努めた結果,多数の開業医が紹介患者の診察に来院し,症例検討会,CPCなどの医局の行事に参加しています。
 当院は人口43万人の横須賀市のほぼ中央にあり,最寄り駅から徒歩10分,メインストーリートより150m奥にあり,深い緑に包まれ,上層階からは海を見渡たすことができ,病院としては最適の環境にあるといえます。病床数281床,診療科14科,医師数33名,うち泌尿器科は15床で,横須賀市はもとより三浦市,逗子市からの患者も多く訪れています。

広島市立安佐市民病院泌尿器科

著者: 上田光孝

ページ範囲:P.187 - P.187

 広島市立安佐市民病院は広島市の北部,安佐北区可部にあり,周辺は山県郡,高田郡,島根県と接しており,広島市とはいえ田舎のたたずまいを残しています。近くには広島市の水源である大田川が流れ,夏には鮎釣りの釣り人もみられます。
 当病院は昭和55年5月に診療科6科,病床数190床で開設され,昭和57年には診療科13科,病床数327床の総合病院となりました。その後,さらに増床され現在は診療科18科,病床数527床となり,地域の病院・診療所との連携のもと広島県の北西部における公的中核病院の役割を担っています。

基本情報

臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

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