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雑誌目次

雑誌文献

臨床泌尿器科56巻3号

2002年03月発行

雑誌目次

綜説

尿路結石の成因と再発予防

著者: 正井基之

ページ範囲:P.197 - P.207

 結石の形成は尿中における結晶核形成,結晶の成長および凝集のために起こるとされてきたが,最近は結晶の管腔細胞への付着に焦点が当てられている。高シュウ酸尿は結晶形成を促進するだけではなく,上皮細胞への障害にも影響している可能性がある。また尿中の高分子物質は結晶の成長,凝集のみならず管腔細胞への付着にも関係している。チャンネル・トランスポーターの研究により,尿細管性アシドーシスやシスチン尿症の原因はかなり解明されてきた。しかしながら結石患者にみられるmild hyperoxaluriaの原因に関しては,種々の原因が提唱されているが,いまだ明らかではない。

手術手技 目でみる泌尿器科手術のポイント・15

上皮小体摘除術

著者: 松下一男

ページ範囲:P.209 - P.215

 最近は内視鏡とビデオによる方法や片側だけのminimally invasive operationも熟練医の手で可能になったが,ここでは従来から行われている上皮小体摘除術について述べる。手技上の困難さは再手術でなければレジデントでもこなせる程度である。要は,腺腫を1個摘除しても多発していることがあるので,それだけで手術を終えず,ほかの3個の上皮小体もできるだけ露出して正常,異常を確認し,疑わしければそれも摘除することが肝要である。

上皮小体摘除術

著者: 小出卓生

ページ範囲:P.217 - P.224

 原発性・続発性上皮小体機能亢進症の頸部開放手術の実際を解説した。手術の基本は,無血手術野,正しい剥離層,上皮小体の解剖学的基礎知識,注意深い観察と丁寧な手術操作に要約できる。術前後の準備や管理についてもあわせて記載した。

小切開による上皮小体摘出術

著者: 池田佳史 ,   高見博 ,   佐々木裕三 ,   高山純一 ,   栗原英子 ,   小平進

ページ範囲:P.225 - P.231

 上皮小体機能亢進症の手術は通常上皮小体全腺の確認が行われてきた。しかし,術前の超音波や99mTC-MIBIシンチグラフィによる局在診断能の向上と術中intact-PTH assayによる病的腺腫摘出の確実性が増し,腺腫による原発性上皮小体機能亢進症の手術は腺腫の摘出のみという低侵襲性手術の方向に変遷してきた。今回,小切開による手術方法を紹介する。

セミナー 泌尿器科医に必要な新しい医療材料の知識・3

吸収性局所止血剤

著者: 浅原利正 ,   中原英樹 ,   板本敏行 ,   片山幸治

ページ範囲:P.233 - P.236

 実質臓器からの湧出性出血に対して,これまでさまざまな止血用製剤が開発されその安全性,有用性が報告されてきた。我々の用いているコラーゲン・酸化セルロース併用法は出血傾向のある肝硬変合併手術症例でも有効で,現在まで明らかな合併症も認めていない。これらの利用により止血を確保することは,手術操作進行のうえでも重要であり,今後も止血のための手術手技向上と適切な医療材料の選択で,より安全な治療を目指す必要がある。

原著

腰部脊柱管狭窄症患者における排尿障害の検討

著者: 藤内靖喜 ,   村石康博 ,   奥村昌央 ,   布施秀樹 ,   川口善治

ページ範囲:P.241 - P.244

 腰部脊柱管狭窄症に排尿障害が合併することはしばしば認められる。腰部脊柱管狭窄症男性患者28例に対して泌尿器科的自覚症状および他覚所見を検討した。自覚症状では刺激症状に比べて閉塞症状を訴えるものが多かった。整形外科的手術を受けた15例では術後自覚症状の改善は64.3%であった。他覚所見では最大尿流量率が統計学的に有意に改善した。

症例

術前診断に造影超音波検査が有用であった前立腺膿瘍の1例

著者: 五十嵐匠 ,   杉本周路 ,   平方仁 ,   川田望 ,   滝本至得 ,   小川眞広

ページ範囲:P.245 - P.247

 症例は59歳男性。尿閉を主訴に当科を紹介受診。精査加療目的のため入院した。入院時の超音波所見にて前立腺内部は低エコーの中に一部高エコーが混在しており,辺縁の壁は不整で内部に隔壁を認めた。レボビスト®による造影を行うと隔壁および周囲の壁のみ造影され内部は造影されなかった。以上より前立腺膿瘍と診断し,治療として経尿道的ドレナージ術を施行した。現在術後6か月目であるが再発を認めない。

急性上腸間膜動脈塞栓症と腎梗塞同時発症の1例

著者: 羽賀宣博 ,   宍戸啓一 ,   高橋則雄 ,   梅田弘幸 ,   村上房夫 ,   山口脩

ページ範囲:P.249 - P.252

 56歳,男性。腹痛,背部痛を主訴に来院し,腎機能障害,白血球およびトランスアミナーゼの上昇を認めるため,腎梗塞の疑いで当科に紹介された。血管造影上,上腸間膜動脈と腎動脈の閉塞を認めた。抗凝固療法を施行し,上腸間膜動脈の血流は一時的に改善したが,腸管壊死が生じ,小腸部分切除を施行した。腎機能障害は遷延し,週1回の血液透析を施行中である。両疾患を生前に診断し得たのは本邦で2例目である。

腎摘除術後10年を経て小脳転移した腎細胞癌

著者: 岩動一将 ,   工藤茂高 ,   尾形昌哉 ,   松下靖 ,   丹治進 ,   藤岡知昭

ページ範囲:P.253 - P.255

 腎摘後10年を経て小脳へ孤立性に転移した症例を経験したので報告する。症例は75歳,男性,歩行障害を主訴に受診した。MRIにて小脳半球に円形で均一に造影される2cmの腫瘍が認められ,腎癌小脳転移の診断で腫瘍摘出術が行われた。組織学的にはclear cellから成ることから,腎癌の脳転移と診断した。術後,症状は消失し,QOLが得られた。今回の症例では小脳のみに転移が認められたことより,肺動脈循環を経由しないバトソン静脈叢を経由して起こったものと考えられた。

腹壁原発と考えられた悪性線維性組織球腫

著者: 福原慎一郎 ,   辻畑正雄 ,   三浦秀信 ,   西村憲二 ,   辻村晃 ,   松宮清美 ,   奥山明彦

ページ範囲:P.257 - P.259

 症例は63歳,男性。2000年5月臍左下部に6cm大の腫瘤を指摘され,尿膜管腫瘍を疑い同年7月19日,尿膜管摘除術に準じて手術を行った。病理組織学的にはMFHであった。術後8か月目に骨盤腔内への再発を認め,術後15か月目に死亡した。自験例を含め,腹壁に発生したMFH6例を集計した。腫瘤摘除術を試みた6例中4例は再発が報告されており,初回切除時に広範囲切除術を行うことが重要であると考えられた。

膀胱褐色細胞腫の1例

著者: 菅谷真吾 ,   長谷川倫男 ,   川島淳 ,   林典宏 ,   塩野裕 ,   大石幸彦

ページ範囲:P.261 - P.264

 症例は47歳,女性。主訴は排尿時痛および肉眼的血尿。既往に高血圧はなし。膀胱腫瘍の診断にて経尿道的膀胱腫瘍切除術を施行したが,術中高度な血圧上昇をきたし,腫瘍も筋層への浸潤が疑われたため,姑息的切除にとどめた。病理学的検査にて褐色細胞腫と診断され,後日,膀胱部分切除術を施行した。術後11か月の現在,再発の徴候は認められていない。

腹腔鏡下に摘除した副腎神経節神経腫

著者: 望月英樹 ,   石光広 ,   森山浩之 ,   中原満 ,   福原敏行 ,   繁田正信

ページ範囲:P.266 - P.267

 症例は40歳,男性。入間ドックで腹部超音波検査上,右副腎腫瘍を指摘され当院紹介受診。内分泌非活性型右副腎腫瘍の診断で,腹腔鏡下右副腎摘除術を施行。病理組織学的に,神経節神経腫と診断された。副腎神経節神経腫は副腎偶発腫瘍として小さな腫瘍径で発見される傾向にある。これらの腫瘍に対しては低侵襲である腹腔鏡手術の適応を検討すべきであると思われた。

妊娠中に発症し治療に難渋した尿管結石の1例

著者: 藤田哲夫 ,   荒川孝 ,   久保星一 ,   設楽敏也 ,   馬場志郎

ページ範囲:P.269 - P.272

 症例は34歳,女性。妊娠4か月目に右尿管結石を発症し,超音波ガイド下に経尿道的尿管砕石術(TUL)と尿管ステント留置術を施行した。その後,急性腎盂腎炎を併発し,再度TULと尿管ステント交換術を施行し,無事出産に至った。妊娠中の尿路結石は,診断・治療に際し各種制限が関係する。胎児へのX線被曝などの影響を十分に考慮したうえで,治療上の有益性が上回る方法のみ選択すべきであると考えられた。

画像診断

超音波ガイド下生検により診断した両側腎盂周囲に発生した後腹膜線維症

著者: 杉本浩造 ,   落合厚 ,   大江宏

ページ範囲:P.275 - P.277

 患者 58歳,男性。
 主訴 右腰背部痛。

病院めぐり

関東労災病院泌尿器科

著者: 黒崎剛之

ページ範囲:P.278 - P.278

 関東労災病院は,東京都心から約20km離れた神奈川県川崎市に位置します。川崎は,江戸時代には東海道の宿場町として,戦後は京浜工業地帯の中核として栄えている人口123万人(平成13年1月現在)の都市です。
 当院は,現在全国に39か所設置されている労働福祉事業団が設立した労災病院の1つとして,昭和32年6月に開院しました。労災病院とは,労働災害を受けた勤労者の治療およびリハビリテーション医療の設置を目的として発足した病院です。現在24診療科,病床数660床を有し,地域の中核病院としての役割を担っています。付属施設に健康管理センターと看護学校(全日3年課程)があります。

社会保険神戸中央病院泌尿器科

著者: 源吉顕治

ページ範囲:P.279 - P.279

 当院は昭和23年に神戸市生田区(現中央区)にて5診療科,45床で開院しました。その後,社会保険病院としての使命を果たすべく地域医療の一翼を担い発展を続けましたが,病院の建物の老朽化が進むとともに挟隘となり,高度な医療を提供することが困難となったため,昭和61年に現在の神戸市北区に標榜診療科目15診療科,病床数 424床で新築移転しました。北区は六甲山系の北側に広がる市内最大の区であり,近年,阪神エリアのベッドタウンとして住宅開発が進み,人口が急増している地域です。病院は高台の上に建ち,冬期の寒さは厳しいですが,眺望は素晴らしく,天気のよい日には大阪湾も望めます。移転後も,健診センター,老健施設,緩和ケア病棟などの諸施設を拡充し,地域の中核病院として現在に至っています。
 泌尿器科は昭和43年に皮膚泌尿器科より分離し,三品輝男先生が初代泌尿器科部長を勤められました。その後,一時常勤医不在の時期を経て,昭和49年に寺杣一徳部長が就任し,昭和54年に伊藤部長に引き継がれました。現在は伊藤登副院長,源吉顕治,中野雄造の常勤医師3名が勤務しています。

交見室

電子カルテシステムへの取り組み—第27回日本診療録管理学会へ参加して

著者: 北島清彰

ページ範囲:P.281 - P.281

 患者さんへ診療録の情報提供を考え電子カルテシステムの導入を検討してきました.中小病院に合った4社の電子カルテシステムを実際に1週間ほど使って,システムの使い勝手や価格などを検討し,その結果2000年の暮れに富士通の電子カルテシステム,HOPE/Dr' noteに決定しました。3か月間でLAN工事とカルテ運用の訓練をして,2001年4月2日より実際の診療が始まりました。パソコンは外来診療室5台,医療事務に4台,病棟に4台など計21台でスタート,しばらくは病院全体が電子カルテに振り回されて外来を中心にどたばたしました。1か月半くらい経ったある日,すべてのカルテが机上のディスプレーの中にあり,見たいときにカルテが見られることに気が付きました。無駄なカルテの搬送がなくなり,外来診療業務の流れが完全に変わっていることに気付きました。他の部署,例えば薬剤部でカルテを見たいときにすぐに見ることができて,医師の考え方,治療方針が判り処方と比較することができます。そのためにも医師はカルテをPOSに従って正確に日本語で誰にでも判るように作製する必要があります。最近では医師が診療後の空いた時間にパソコンの画面を見ながらカルテを作製している姿が見られるようになりました。患者さんと電子カルテの画面を見ながら検査結果,その時系列のグラフ,血圧の経時的な変動を見ながら,病気の状態,治療経過,治療計画,注意事項などの話ができます。

基本情報

臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

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