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雑誌目次

雑誌文献

臨床泌尿器科56巻7号

2002年06月発行

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特集 腹腔鏡下前立腺全摘除術

腹腔鏡下前立腺全摘除術—われわれの方法とコツ

著者: 中川健 ,   村井勝

ページ範囲:P.473 - P.478

 腹腔鏡下前立腺全摘除術は,1998年にフランスにおいて術式が確立され,1999年に本邦に紹介されて以来,その導入が試みられてきた。腹腔鏡下の良好な視野は,安全かつ確実な手術操作を可能とし,自己血貯血の準備を不要とし,尿道カテーテル留置期間の短縮が達成されつつある。50例の経験をへて,learning curveを克服し,安定した結果が得られるようになってきたと同時に,より良い手術の確立,一般化を考慮し,いくつかの改良,機器の導入を試みてきた。現在,われわれが行っている腹腔鏡下前立腺全摘除術の術式とコツ,さらには本手術の導入にあたって,有用な手技,機器などについて述べる。

腹腔鏡下根治的前立腺摘除術—われわれの方法とコツ

著者: 頴川晋 ,   岩村正嗣 ,   馬場志郎

ページ範囲:P.479 - P.483

 腹腔鏡下根治的前立腺摘除術は局所限局性前立腺癌に対する低侵襲性根治療法のオプションの一つである。手技の習得は難しく,あらかじめ腹腔鏡手技に精通していることが必要である。北里大学病院においても2000年2月以来,本術式を取り入れ実地に用いているが,解剖の理解,手技の理解が進むとともに術式は常時変化し,試行錯誤,改良を繰り返している。現時点では,本術式を通じてのポイントは「疎な結合織剥離層の同定とピーリング手技」であると認識している。

腹腔鏡下前立腺全摘除術—われわれの方法とコツ

著者: 戸澤啓一 ,   河合憲康 ,   永田大介 ,   郡健二郎

ページ範囲:P.485 - P.489

 腹腔鏡下前立腺全摘除術の利点はdorsal venous complex(DVC),前立腺尖部が拡大視野で見られるため,その処理が正確な切断線で行えることである。それに伴い出血量,術後尿失禁は減少する。しかし,狭い骨盤腔内での腹腔鏡下の操作,特に膀胱頸部の切離,膀胱—尿道吻合という難易度の高い技術の習得には時間を要する。また,手術時間が開放手術に比べ長いという欠点も指摘されている。我々の施設では,この欠点を解決すべく無結紮法によるDVCの処理,エンドステッチとラプラタイスーチャークリップ使用による吻合時間の短縮を行っており,本稿では,そのポイントとコツを述べる。

腹腔鏡下前立腺全摘除術—われわれの方法とコツ

著者: 寺地敏郎 ,   奥村和弘

ページ範囲:P.491 - P.496

 腹腔鏡下前立腺全摘除術は形成術を必要とする癌の手術であり,癌の根治と術後のQOLの維持の両者の両立を必要とする。また,開放手術においてはしばしば輸血を必要とするような多くの出血を伴うことも稀ではない。このような手術を安全確実,かつ短時間で行うには的確な器具の選択と使用法,正確な解剖の理解,さらに十分なトレーニングに基づいた緻密な手技の積み上げが要求される。すなわち,各ステップの一つ一つの過程でのピットフォールの認識とその回避,チームプレイとしての器具のハンドリングを十分に理解しておくことが重要である。

腹腔鏡下前立腺全摘除術—バルーンによるRetzius腔の展開

著者: 川喜田睦司 ,   室田卓之 ,   松田公志

ページ範囲:P.497 - P.501

 Guillonneauらが確立した腹腔鏡下根治的前立腺全摘除術(Montsouris法)はすべての操作を腹腔内より行うが,腹腔内の合併症や膀胱損傷の危険がある。そこで経腹膜的に精嚢を剥離した後は腹膜外で操作する方法を考案した。Retzius腔を腹膜外よりPDBTM system dissec-tion balloon(タイコ ヘルスケア ジャパン社製)にて剥離し,穿刺部位を変えずにトロカーを腹膜外へ挿入し直す。以後の操作はMontsouris法に準じて行う。この方法により長時間にわたる過度のTrendelenburg体位を避け,腹腔内合併症を少なくすることができる。

腹腔鏡下前立腺全摘除術—Montsouris法とわれわれの工夫点

著者: 川端岳 ,   原勲 ,   守殿貞夫

ページ範囲:P.503 - P.509

 本邦における限局性前立腺癌に対する腹腔鏡下前立腺全摘除術は,1999年12月から開始された。我々の施設でも2000年4月から本法を開始し,現在までの間に37名の患者に行っている。手術法は後腹膜到達法で行った1例以外Montsouris法に準じ,2本の10mmと3本の5mmの計5本のトロカーを用いて経腹腔的に手術を行った。全例において開腹手術への移行はなかったが,1例のみ術後2か月目に絞扼性イレウスのため再手術を行った。術後の回復や術後排尿状態は満足できる状態であった。本稿では現在われわれが行っている手術手技といくつかの重要な工夫点を述べる。

手術手技 目でみる泌尿器科手術のポイント・18

陰嚢内手術

著者: 金山博臣

ページ範囲:P.513 - P.522

 陰嚢内手術において,高位精巣摘除術では腫瘍細胞の播種を防ぐために血流およびリンパ流を完全に遮断した後内鼠径輪まで確実に摘除する。去勢術では低侵襲を心がける。陰嚢水腫根治術および精巣上体摘除術は止血を確実に行い,術後の陰嚢内血腫を作らないように心がける。いずれにしても,陰嚢内手術の基本は陰嚢内の解剖,特に膜構造を熟知すること,止血および出血予防に留意することである。

陰嚢内手術

著者: 山本泰久 ,   平川真治

ページ範囲:P.523 - P.533

 陰嚢内手術の5種を述べた。いずれも解剖学的知識に基づいた操作と確実な止血がポイントである。あまり施行する機会のないものもあるが泌尿器科医として必修であるので,1例1例を大切にすることが重要である。

陰嚢内容の手術

著者: 小島祥敬 ,   戸澤啓一 ,   林祐太郎

ページ範囲:P.535 - P.542

 陰嚢内容の手術は,泌尿器科医にとっては比較的初歩的な手術で,定石どおり行えば術後のトラブルも少ない。本稿では日常臨床でよく遭遇する陰嚢水腫と,比較的稀ではあるが必ず習得すべき手術である精液瘤摘除術および精巣上体摘除術について,当科で行っている手術手技を踏まえて解説した。

セミナー 泌尿器科医に必要な新しい医療材料の知識・6

創傷被覆剤の使い方

著者: 田澤賢次 ,   竹森繁

ページ範囲:P.543 - P.548

 創傷に対する考え方は,以前の受動的な治療から,積極的に治す能動的治療に移りつつある。創傷被覆剤もポリマー工学に基づいた様々な人工ドレッシング材が市販されている。それぞれの製品には特徴があり,すべてに対応しうる理想の被覆剤はいまだない。各々の製品の特徴をよく理解し,創傷を正しく判断し,適切な材料を選択することがより良い創傷治癒につながる。

症例

金属片による陰嚢への貫通外傷の2例

著者: 久保田恵章 ,   西野好則 ,   高橋義人 ,   出口隆 ,   竹内敏視 ,   酒井俊助

ページ範囲:P.551 - P.553

 作業中,金属片により陰嚢への貫通外傷をきたした2例を経験したので報告する。症例1:26歳,男性。金属片は右精巣,精巣上体を損傷し精管および精索の間に留まっていた。症例2:28歳,男性。金属片は右精巣上体,右精索を貫通し左陰茎海綿体根部まで達していた。いずれも陰嚢皮膚貫通創に比べて広範囲な損傷を受けていたが,精巣を摘出することなく,術後勃起機能,射精機能は温存された。

In situでの体外衝撃波砕石術により治療に成功した後部尿道結石

著者: 石津和彦 ,   内藤克輔

ページ範囲:P.555 - P.557

 症例は49歳,男性で,右側腹部痛を訴え受診し,KUBにより右尿管結石と診断された。翌日,排尿困難および会陰部不快感を訴えた。KUB,超音波検査およびCT検査により結石が後部尿道に下降したことが判明した。後部尿道結石は,鎮痛剤なしで,EDAP LT-02®を用いたin situでの体外衝撃波砕石術(in situ ESWL)で治療した。焦点合わせは,患者を仰臥位にし,X線透視で行った。骨盤骨による衝撃波の遮断を最小限にするため,衝撃波は片側臀部外側から発射した。ESWLによる治療後,破砕された結石は疼痛なく自然に排出された。本症例により,in situ ESWLは,後部尿道結石の治療の選択肢の一つとなる可能性があることが示唆された。

小さな工夫

簡便な仙骨麻酔法

著者: 田中学 ,   米田健二 ,   林睦雄 ,   宮崎東洋

ページ範囲:P.558 - P.559

 仙骨麻酔の標準的手技は,仙骨裂孔中央部で針をやや立てぎみにして刺入し,仙骨靱帯を貫いたら針を仙骨管と平行に倒して奥に進める,とされている。欠点として局所麻酔薬による中毒症状があるが,その頻度は低いとされている。針をS2より頭方向へ進めると硬膜を破るので注意を要する。
 近年は全身麻酔,硬膜外麻酔のみならず,腰椎麻酔も麻酔科医に依頼する施設が少なくないと思われるが,仙骨麻酔は経尿道的操作を日常的に必要とする泌尿器科医にとって,自ら習得しておくべき身近な麻酔法である。しかしながら,非習熟者による奏功率は高いものではなく,習熟者の施行でも1割程度の症例には十分な除痛効果が得られないのが現実である。施設,施行者により,仙骨麻酔を活用する頻度,適応はかなりばらつきがあるものと考えられる。

基本情報

臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

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