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雑誌目次

雑誌文献

臨床泌尿器科56巻8号

2002年07月発行

雑誌目次

綜説

泌尿器系癌と糖鎖

著者: 斎藤誠一 ,   佐藤信 ,   大山力 ,   荒井陽一

ページ範囲:P.571 - P.587

 糖鎖は発生,分化過程における認識機構に関与し,癌化により変化する。泌尿器系癌の糖鎖変化を悪性度との関連において調べたところ,各種癌にそれぞれ特徴的な糖鎖,糖転移酵素の変化が観察され,ある糖鎖変化は癌の浸潤および転移,担癌患者の予後に関連していた。糖鎖の具体的な働きや糖鎖の担体となる糖蛋白はまだ十分解明されておらず,癌化における糖転移酵素の変化に関する研究も端緒についたばかりである。糖鎖は臨床癌の特徴をよく反映していることから,癌化における糖鎖の役割ならびに糖鎖発現機構がさらに明らかにされれば,より一層分子レベルで癌の悪性度への理解が深まるとともに新しい治療法への道が開かれるものと思われる。

手術手技 目でみる泌尿器科手術のポイント・19

尿道下裂修復術

著者: 谷風三郎

ページ範囲:P.589 - P.596

 尿道下裂修復術には多種多様の手術法が報告されているが,現在一期的に修復することが強く求められ,さらに手術成績の向上,術後の外観をできるだけ正常に近づけるなどさらなるレベルアップを求められているのが現状である。手術法の選択には尿道下裂の程度や手技的な習熟度などが重要となるが,組織の扱いや特殊な縫合技術などは共通したもので,適切な施設でのトレーニングと十分な経験が基本である。本稿では包皮内板の遊離全層皮膚移植(full-thickness free graft of preputial skin)を用いた一期的修復術を取り上げたが,手技的には特殊な技術を必要とせず,基本技術を身につければ,比較的安全に実施できることがメリットである。ただし手術の実際を手術見学やビデオで学習したうえで実施する慎重さは必要である。

一期的尿道下裂形成術

著者: 大島一寛 ,   中島雄一

ページ範囲:P.597 - P.608

 下裂形成術は屈曲陰茎の修復,尿道ならびに亀頭先端への外尿道口形成,症例により陰嚢形成も必要となる複合手術の一つである。しかし,各ステップの手技も飛躍的に改善され,今日では初心者にも理解しやすい切開デザイン,適応範囲の広い術式への改善・工夫が進んでいる。本邦でも一期的手術が定着したが,ここでは,遠位型に対し最近普及しているSnodgrass法,有血管有茎皮弁で論理的なDuckett法,あらゆる下裂に適応できる小柳法を示す。

尿道下裂修復術

著者: 島博基

ページ範囲:P.609 - P.621

 尿道下裂は男子出生300人に1人に生じる先天性尿道奇形であり,外科的修復を要する。外尿道口の位置により遠位型(distal type)と近位型(proximal type)に分かれる。近位型は高度の尿道下裂であり,合併症として性分化異常を鑑別しなければならない。近位型・遠位型尿道下裂とも一期的手術法にて修復可能である。これまで多くの手術手技が開発されているが,今回代表的な手術手技を紹介するとともに,周術期における注意点を述べた。

セミナー ドレッシング—創傷管理の新たな展開・1

ドレッシング理論の変遷と展開

著者: 高尾良彦 ,   三浦英一朗 ,   穴澤貞夫 ,   山崎洋次

ページ範囲:P.623 - P.627

 傷ついた生体組織は,協調を保ちながら元の状態に復する生物学的治癒能力を持っている。ドレッシングは,創周囲の環境を整えるとともに,障害となる外的要因から創を防御することで治癒を促進し,内部環境を保護する生体本来の機能をより早期に回復させるために行う。ドレッシング理論は,創傷治癒理論の変遷や新しいドレッシング材の開発とともに進歩してきた。目的を明確にして適切なドレッシングを選択するためには,時代に適した標準的な基本概念を理解する必要がある。

症例

尿道カテーテル挿入困難を契機に診断されたカウパー腺嚢胞

著者: 元森照夫 ,   松岡啓 ,   野田進士

ページ範囲:P.631 - P.633

 症例は66歳男性で,主訴は排尿後尿滴下と排尿困難である。耳鼻科にて副鼻腔炎手術時,導尿困難との依頼にてカテーテル留置を試みるも通常の操作では挿入困難で,スタイレットを使用し尿道力テーテルを挿入した。耳鼻科の手術後,膀胱尿道鏡,尿道膀胱造影にて球部尿道に比較的大きな憩室様所見を認めた。カウパー腺嚢胞の診断で経尿道的嚢胞壁切除術を行った。術中,カウパー管導管への開口部を認めた。術後,排尿後の尿滴下症状は軽減した。

術中超音波検査が有用であった後腹膜鏡下腎部分切除術

著者: 座光寺秀典 ,   齋藤延治 ,   椎木一彦 ,   荒木勇雄 ,   武田正之

ページ範囲:P.635 - P.637

 症例は75歳,男性。肝硬変の経過観察中撮影した腹部CT検査にて径1cm大の左腎腫瘍を指摘され当科を受診した。腫瘤は左腎外側,やや上極の位置で突出はごく軽度であった。後腹膜鏡下にエコーを用いて内視鏡では同定困難な腫瘍を求め,腎部分切除術を遂行しえた。

外傷による巨大水腎症破裂

著者: 石井雅昭 ,   杉平宣仁 ,   山村剛司 ,   増田亨 ,   矢野秀 ,   坂倉究

ページ範囲:P.639 - P.641

 患者は39歳,男性。既往歴として高血圧を指摘されていた。交通事故にて腹部打撲し当院救急外来に搬送された。CTにて左腎破裂が疑われ,血圧も低下しており緊急手術を施行した。血腫に覆われた巨大水腎症を認め,左腎摘除術を施行した。術後血圧は正常化した。

外傷性精巣脱出の1例

著者: 貫井昭徳 ,   菅谷泰宏 ,   徳江章彦

ページ範囲:P.642 - P.643

 56歳,男性。工事中に仰向けに転倒したところに,鉄パイプが腰から下腹部に落下し,当院へ救急搬送された。右陰嚢上部の裂創より鞘膜が裂けた状態で右精巣および精巣上体が脱出していた。局所麻酔下に整復固定した。術後3か月目の超音波検査にて,右精巣の萎縮などの異常を認めなかった。

十二指腸乳頭部癌を合併した前立腺癌

著者: 高木康治 ,   橋本純一 ,   金井茂

ページ範囲:P.645 - P.647

 症例は,69歳,男性。排尿困難を主訴に当科を受診した。前立腺癌と診断し,入院後前立腺全摘除術を施行した。術後,発熱のため施行した腹部CT,内視鏡的逆行性胆管造影の結果,十二指腸乳頭部癌と診断され幽門輪温存膵頭十二指腸切除術が施行された。現在まで検索しえた限りでは前立腺癌と十二指腸乳頭部癌との重複癌の報告は本症例が本邦3例目である。

小さな工夫

インデフレーターを用いた晶質物質による腎瘻カテーテル閉塞の解除

著者: 石津和彦 ,   内藤克輔

ページ範囲:P.649 - P.649

 経皮的腎瘻カテーテルは,特に悪性腫瘍や尿路結石の症例では,尿管ステントの場合1)と同様に,早期に内腔が閉鎖することがある。特に晶質物質の析出2)により閉塞した腎瘻カテーテルでは,腎盂洗浄やガイドワイヤー挿入が全く不可能になり,カテーテルの交換が必要となる場合もある。腎瘻留置から長期間が経過し,瘻孔が十分に形成されている場合は交換は容易であるが,瘻孔が十分に形成されていない場合で,交換に失敗した時には,新たに腎穿刺から腎瘻留置を行う必要がある。わわわれはバルーンによる冠動脈形成術(PTCA)に用いるインデフレーターが晶質物質による腎瘻カテーテルの閉塞解除に有用であった2症例を経験したので報告する。

学会印象記

第97回米国泌尿器科学会(AUA)印象記

著者: 鈴木和浩

ページ範囲:P.650 - P.651

 昨年の9月に起きた同時多発テロ以来,アメリカへの渡航に関してはさまざまな不安や憶測が付きまとうなか,フロリダ州オーランドにおいて第97回AUA Annual Meetingが5月25日から30日に開催されました。ニューヨークのブルックリン橋や自由の女神が攻撃の対象となっているといったニュースが流れるなど,渡米する前から不穏な雰囲気でした。実際に,アメリカ国内の空港ではセキュリティーチェックが非常に厳しく,手荷物の検査では筆箱の中にいたるまですべてチェックされ,bottled waterは実際に少し飲んでみろ,という要求もありました。身体検査では靴を脱ぎ,検査官は靴のなかもスキャンするという念の入れかたです。これまでのアメリカ国内線といえば,チェックインの際に,「見知らぬ人から何かあずかったりしなかったか」などの数個の質問に,首を横に振りながら"no"と返事をしていれば,バス感覚で乗れたものでしたが,今回は簡単にはいかず2時間前にチェックインしていないと本当に不安になるという具合でした。しかし,こうした厳しいチェックのおかげで何事もなく帰国できたので感謝しています。
 AUAのAnnual Meetingは世界最大と称されている学会で,世界中の泌尿器科医の祭典となっています。

病院めぐり

国立札幌病院北海道がんセンター泌尿器科

著者: 永森聡

ページ範囲:P.652 - P.652

 当院は,明治29年に豊平町(現在の札幌市豊平区)月寒の地に札幌陸軍病院として創設されたものが,終戦とともに厚生省に移管され,昭和20年12月1日に国立札幌病院として発足したことに端を発します。そして昭和32年には現在の白石区菊水の地で総合病院として診療を開始し,昭和42年には現在の基盤となる北海道地方がんセンター(現在,国立の地方がんセンターは4か所)が併設され550床となり,昭和63年には5つの研究室を柱とした臨床研究部が設置されました。さらに平成7年には,厚生省の指導で全国のがんセンターをネットワークで結んでリアルタイム画像でカンファレンスの可能なシステムが構築され,現在,毎週木曜日に各科の最もホットな癌診療上の話題をテーマにテレイメージカンファレンスが行われています。
 当科は皮膚泌尿器科より昭和38年に分離,独立し,医師は北海道大学より派遣され,現在第4代目の主任医長である小生のほか,柏木明,安部祟重の3名の常勤医で診療を行っています。外来診療は主に癌患者さんを中心に1日平均46名となっています。また入院は25床で運営しており,昨年度の入院の88%は癌患者さんであり,手術も癌を中心に行われ,手術件数は236件でした。主なものは前立腺全摘が11件,膀胱全摘が1件,根治的腎摘(腎尿管全摘を含む)が19件でした。経尿道的手術はTUR-Btが47件,TUR-Pが41件でした。

姫路赤十字病院泌尿器科

著者: 小川隆義

ページ範囲:P.653 - P.653

 姫路市は兵庫県の南西部に位置し,羽柴秀吉,池田輝政により築かれた国宝姫路城(白鷺城)を中心に発達した城下町であり,人口は現在約48万人とされています。また周辺には飾磨郡,神崎郡,宍粟郡,佐用郡などを配し,医療対象人口は約60万人と考えられています。
 当院の歴史は古く,明治41年,兵庫県より日本赤十字社への県立病院の寄贈により発足しました。全国92の赤十字病院の中でも8番目の病院とされています。発足当時は内科,外科,眼科のみでしたが,婦人科,耳鼻咽喉科などを増設し,平成7年より現在の15診療科体制となっています。建物の老朽化,駐車場不足などの問題から,平成13年11月にこれまでの龍野町より約4km西の夢前川沿い下手野に移転し,敷地面積約23,000m2,地上9階建て,503床の新病院となりました。病院は平成7年の阪神淡路大震災の教訓を生かし,屋上ヘリポート,救急患者受け入れのための広いエントランスホール,救急外来の設置など西播磨地域の災害救護拠点となりうるように,様々な工夫がなされています。

交見室

小児包茎のインフォームド・コンセント

著者: 岩室紳也

ページ範囲:P.655 - P.655

 勝岡洋治先生の「小児包茎手術の適応」(本誌第56巻第5号「交見室」)を読ませていただき,泌尿器科医の中で,できれば学会として「小児包茎」をどう扱うかについて議論が必要な点はいくつかあると思いました。
 1)どのような状態の包茎(真性包茎,嵌頓包茎,埋没陰茎などを含む)であっても非手術的に容易に翻転し嵌頓の恐れのない仮性包茎の状態にできるか否か。

基本情報

臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

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