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雑誌目次

雑誌文献

臨床泌尿器科56巻9号

2002年08月発行

雑誌目次

綜説

腎細胞癌:第3版取扱い規約に基づく病理所見と臨床像の関連

著者: 大西哲郎

ページ範囲:P.665 - P.673

 腎癌取扱い規約第3版(1999年)に規定された病理組織像と臨床病態,特に予後との関連を概説する。各subtype別頻度を当科において腎細胞癌(RCC)と病理学的に診断された768例についてみると,clear-cell carcinoma(662例:86.2%),papillary RCC(43例:5.6%),chromophobe cell carcinoma(36例:4.7%),それにcyst-associated RCC(27例:3.5%)であった。collecting-duct carcinoma,spindle cell carcinomaそれにgranular cell carcinomaは頻度が1%以下ときわめて低く,本綜説内容から除外した。その結果,予後からみるとclear-cellcarcinomaとpapillary RCCがほぼ同様であり,これらsubtypeに比較してchromophobe cellcarcinomaおよびcyst-associated RCCが有意に予後良好であった。しかし,papillary RCCにおいてもbasophilic variantはeosinophilic variantに比較して有意に生存率が良好で,chromo-phobe cell carcinomaにおいてはeosinophilic variantに1例も癌死例がなかった。

手術手技 目でみる泌尿器科手術のポイント・20

腎移植術

著者: 吉田克法

ページ範囲:P.675 - P.682

 腎移植術は,時代とともに若干の変遷があり,施設間によっても術法にいくらか違いがある。我々の施設における腎移植術も,他の施設とほとんど変わらないが,尿管膀胱吻合については膀胱外よりの吻合術を選択している。腎移植術は,基本的には血管と血管,尿管と膀胱の吻合術であり,丁寧な縫合操作が成績の向上につながるものと判断される。本稿では,手術法に関して我々の施設で施行している術法を紹介する。

腎移植術

著者: 田邉一成

ページ範囲:P.683 - P.695

 腎移植術で大事な点は,1)安定した良好な視野を確保すること,2)自然な血流を確保するための最適な血管吻合部を選ぶこと,3)確実に血管吻合すること,4)脆弱な膀胱粘膜への確実な尿管吻合,である。腎移植では血管が立体的に複雑に走行しているところで血管吻合を余儀なくされることや萎縮膀胱への尿管吻合なども多く,単一の方法にとらわれずに,場面に応じた血管吻合や尿管吻合を行うべきである。

腎移植術

著者: 齋藤和英 ,   谷川俊貴 ,   高橋公太

ページ範囲:P.697 - P.706

 腎移植術はほぼ完成された術式であるが,手術を成功に導くためには術前状態の把握と,慢性腎不全患者に対する手術の基本に忠実な,確実かつ丁寧な手術操作,きめ細やかな周術期管理が必要である。複数の腎動脈がある場合にはbench surgeryによる血行再建術が,長期透析に伴う高度の萎縮膀胱や尿管損傷に対しては,腎瘻造設やステンティングを併用した移植腎盂・固有尿管吻合術などの尿路再建手術の手術手技も要求される。

セミナー ドレッシング—創傷管理の新たな展開・2

一次縫合創におけるドレッシング

著者: 門田晃一 ,   公文裕巳

ページ範囲:P.707 - P.711

 一次縫合創の管理は創傷管理の基本であり,外科系の病棟では最も日常的な医療行為である。我々医療スタッフは経験的な管理に頼らず,科学的根拠に基づいた適切な創傷ドレッシングを心がける必要がある。近年,創傷治癒に関する種々の局所因子が解明されたことにより,創傷治癒に有利な環境をつくることを目的としたドレッシング材が開発されている。それぞれのドレッシング材の特徴を理解し,創の状態に応じたドレッシング材の選択が望まれる。

原著

内シャント作成を困難にしているものは何か

著者: 奥村紀子 ,   井本卓 ,   高田聡 ,   今村正明 ,   東新 ,   奥村和弘 ,   寺地敏郎 ,   奥村秀弘

ページ範囲:P.715 - P.718

 内シャント作成術は,近年,高齢者や糖尿病性腎症の増加により困難な症例も多い。そこで,今回我々は内シャント作成を困難にしている臨床的背景を検討するとともに,血圧,年齢,性別,糖尿病歴,HbA1C,および糖尿病性網膜症の重症度において,手術成功群と再手術群とで比較検討した。年齢,性別,糖尿病歴,および糖尿病性網膜症の重症度において手術成績で有意差を認めた。

症例

組織学的に腎細胞癌と鑑別が困難であった腎オンコサイトーマの1例

著者: 藤方史朗 ,   丹司望 ,   大岡啓二 ,   小野栄夫 ,   横山雅好

ページ範囲:P.719 - P.722

 症例は,57歳,男性。左側腹部に腫瘤を認め近医を受診したところ,出血性腎嚢胞と診断され経過観察されていた。3年後腫瘤の増大を認めたため,CT,MRI,血管造影を施行,左腎腫瘍と診断されて当科へ紹介された。また膵尾部に結節性病変を認めたため,根治的左腎摘除術とともに膵体尾部切除と脾摘術を併せて施行した。病理組織学的に腎オンコサイトーマと膵グルカゴノーマと診断された。

6年を経過して診断された傍糸球体細胞腫の1例

著者: 前多松喜 ,   須藤裕一郎 ,   小松茂 ,   溝口良順 ,   新井義文 ,   筒井祥博

ページ範囲:P.723 - P.726

 57歳,女性の右腎に発生した傍糸球体細胞腫の1例を報告する。6年前から経過観察されていた高血圧症の精査を行つた。血中レニン値の上昇があり,CT,MRIで右腎に直径2cmの腫瘍が認められた。レニン産生腫瘍の診断で腎摘出術を施行し,組織学的に傍糸球体細胞腫と診断された。術後,血圧と血中レニン値は正常化した。

下部尿路原発悪性リンパ腫の2例

著者: 篠森健介 ,   俊野昭彦 ,   濱田斉 ,   丹司望 ,   構山雅好

ページ範囲:P.727 - P.730

 膀胱と前立腺にそれぞれ原発するnon-Hodgkin悪性リンパ腫を報告する。症例1は74歳女性,肉眼的血尿を主訴に受診し,膀胱腫瘍を指摘され,経尿道的腫瘍生検で悪性リンパ腫と診断された。CHOP療法を施行され,CRを得た。症例2は74歳男性,排尿困難を主訴に受診し,超音波検査にて異常を認めたため,経直腸的前立腺生検を施行され,悪性リンパ腫と診断された。CHOP療法と放射線治療を施行し,CRを得た。どちらの症例も現在まで再発の兆候を認めない。

エコーガイド下TURでドレナージを行った前立腺膿瘍

著者: 木村元彦

ページ範囲:P.731 - P.733

 患者は53歳,男性。糖尿病を放置していた。膀胱刺激症状,膿尿で来院し,前立腺肥大症に膀胱炎をきたしたものとして抗生剤投与を行つたが無効であつた。造影CT,MRIにて前立腺膿瘍と診断し,経直腸エコーガイド下TURでドレナージを行い,早期に治癒せしめることができた。

後腹膜に発生した気管支嚢胞の1例

著者: 高原健 ,   和辻利和 ,   日下守 ,   瀬川直樹 ,   勝岡洋治 ,   山本和宏

ページ範囲:P.735 - P.737

 65歳,男性。左側腹部痛を主訴に,1999年10月に当科を受診した。腹部US,CTおよびMRIにて,左腎上方に約11cm大の腫瘤が認められたため,後腹膜腫瘍の臨床診断で,腫瘤摘除術を施行した。病理所見では,腫瘤内面は線毛を有する円柱上皮により覆われており,壁内には平滑筋組織も認められ,気管支嚢胞と診断された。後腹膜に気管支嚢胞が発生することは比較的稀であり,自験例は本邦で41例目である。

画像診断

排尿困難をきたした前立腺結石

著者: 蓮見壽史 ,   松崎純一 ,   北見一夫

ページ範囲:P.739 - P.741

 患者 64歳,男性。
 主訴 排尿困難。

小さな工夫

ポータブルトイレを応用した女子排尿造影の試み

著者: 森久 ,   竹田晃与

ページ範囲:P.743 - P.743

 女子排尿時膀胱造影は近年の尿失禁患者の増加に伴い検査件数も増えている。しかし,高値(約30万円)である排尿時膀胱造影撮影架台のない本院では,一般のX線造影台を用いて行っている。そこでの小さな工夫をここに紹介する。
 本院のX線透視装置(図1)の足場は野球で用いるホームベース様の形をしており,面積は約2,400cm2である。ポータブルトイレの底面積は1,500cm2で,その上に置いてみたところ,前方が10cmほど突き出し安定性を欠いていた。そこで,一般のX線造影台の足台に木製のテーブル様台(約120×80cm)を取りつけ,一般のポータブルトイレを置いて安定させた(図2)のち,患者を座らせ,排尿時膀胱造影をX線下で行うことができるようにした。足台の固定にはその裏面にコの字型の金属を取りつけ,元からある足場に挟み込むようにし,しかも足台の前方両側と手すりを金属製のワイヤーで固定して足場の補強にも十分な配慮をした。もし,患者の体重が100kgを越えるような場合は,安全性を考えて足台の下に机を置くなどして強化している。

学会印象記

第97回米国泌尿器科学会—The first experience of the AUA

著者: 神家満学

ページ範囲:P.746 - P.747

 AUA創立100周年と記念すべき会である第97回米国泌尿器科学会総会(AmericanUrological Association;AUA)が,2002年5月24日から30日の7日間にわたり,Florida州Orlando市のOrange Country Convention Centerとその向かいのPeabody Hotelを会場として開催されました。
 Florida州は北米大陸の南東にあり半島状で,州都は半島の付け根の中北部にあるTallahassee市です。夏時間での日本との時差は13時間で,昼夜はほぼ逆転しています。気候は1年を通し温暖で,MLBの多くの球団が春季キャンプを張っています。学会期間中は晴天続きで,気温も30℃を超えることもありました。州のニックネーム"Sunshine State"のごとく日差しは強かったものの湿度は甲府盆地ほどではなく,比較的過ごしやすい気候でした。Orlando市はFlorida半島のほぼ中心に位置する世界一のテーマパーク都市であり,Walt Disney World,Universal Studios FloridaやSea Worldなど大規模なパークが集まっています。市内の治安は良く,縦断するInternationalDriveという大通り沿いに発展しています。

病院めぐり

立川相互病院泌尿器科

著者: 一ノ瀬義雄

ページ範囲:P.748 - P.748

 立川相互病院はJR「立川駅」南口から東に徒歩12分ほどのところにあります。立川市は多摩地域の中核都市として人口16万人を抱え,近年,再開発も進み,新住民も増える一方,以前から在住の人も多く,ビル街と緑の混在した街です。
 当院は昭和26年,戦後の荒廃と貧困のなかで安心して医療を受けたいとの切実な要求と,差別のない医療を実践したいという医療人の力がひとつになって診療所を開いたのが始まりです。そのため医療不況の今でもかたくなに「差額ベッド代をとらず」という信念を堅持し,地域の方々の支援と励ましを受けながら運営されています。現在,診療科は15科,病床数は345床で,1日平均950人を超える外来患者の診療に当たっています。当院は,東京民主医療機関連合会(19病院,105診療所などの連合会)のセンター病院機能を有し,厚生労働省臨床研修病院としてプライマリ・ヘルスケアを担う医師養成を行っています。

山田赤十字病院泌尿器科

著者: 保科彰

ページ範囲:P.749 - P.749

 山田赤十字病院は,三重県伊勢市の北部,近鉄山田線の宮町駅に隣接して,伊勢市駅から約5分のところに位置しています。
 当院は,明治37年2月に日本赤十字社三重支部山田病院として内科,外科,産婦人科の80床で開設され,全国に91ある赤十字支部病院のなかで最も古い歴史を持っています。昭和18年1月に現在の山田赤十字病院と改称され,現在は20診療科,医師数101名,病床数607床(うち感染病床6床)となり,1日平均約1,850人の外来患者の診療を行っています。病院の付帯事業として看護専門学校,訪問看護ステーション,在宅介護支援センター,老人保健施設が併設され,赤十字精神を基本に三重県の中南勢地域における基幹病院としての役割を果たしています。

交見室

「根治的前立腺全摘除術後の尿道カテーテル抜去困難例」に対する意見

著者: 古家琢也

ページ範囲:P.751 - P.751

 本誌第56巻第5号に掲載された鈴木一実・他著「根治的前立腺全摘除術後の尿道カテーテル抜去困難例」に対して意見を述べたいと思います。
 根治的前立腺全摘除術後のカテーテルトラブルを経験したことのある医師は,多いのではないでしょうか。カテーテルの自然抜去,抜去困難な症例など,常に頭を悩ませることと思います。

基本情報

臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

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