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雑誌目次

雑誌文献

臨床泌尿器科57巻1号

2003年01月発行

雑誌目次

綜説

腎移植におけるウイルス性慢性肝炎とそのマネジメント

著者: 徳本直彦 ,   田邊一成 ,   秋葉隆 ,   東間紘

ページ範囲:P.7 - P.17

 腎移植後の合併症のうち肝機能障害は,発症頻度の高い合併症の一つであるが,その原因では薬剤性肝障害,ウイルス肝炎によるものが大部分を占めている。その中でウイルス性慢性肝炎は,致命的な合併症に進展し患者の生命予後を悪化させる重大な要因となり得るため,腎移植の適応を含め移植前後におけるそのマネジメントは大変重要である。HCV感染症は,現在その頻度は世界的には分布差があるが概ね血液透析患者および腎移植患者においては2~50%である。HCV陽性腎移植患者の短期の生存率はHCV陰性血液透析患者より優れている。しかし,長期の検討ではHCV陽性腎移植患者の肝臓に起因する死亡率が増加しているとの報告もなされている。これらの結果から,移植前にHCV感染を撲滅する試みが必要であるとの指摘もされている。IFN-αは末期腎不全(ESRD)患者には一般より効果は高いが,一般で使用可能な抗ウイルス剤(リバビリン)は高度な溶血を起こし腎クリアランス機能も低下するため使用禁忌となっている。しかし腎移植後のIFN-α療法は比較的高い効果がある一方で,IFNに関連した急性拒絶反応などによる移植腎喪失となるリスクがあり,まだその投与は慎重に行う必要がある。HBV感染症は,現在その頻度は世界的に血液透析患者や腎移植患者においてもワクチン接種や感染予防により減少しているが,一部アジア環太平洋地域,アフリカなどではいまだに高発生率である。HBs抗原陽性血液透析患者に対しての腎移植は著明に生存率が低下するが,HBs抗原陽性血液透析患者に対してのIFNや抗ウイルス剤(ラミブジン)投与下では移植前後ともに安全かつ効果的であり予後を改善可能である。さらにラミブジンは移植時術後早期のreactivationやその後の肝硬変への進行や晩期肝不全を予防するためにもこれら患者には投与すべきである。ラミブジン抵抗性になった場合免疫抑制剤により病状がさらに加速し重篤な肝再生不良な肝炎が再燃することがある。また治療の中止により重篤なlamivudine-withdrawal hepatitisになる可能性も指摘されている。しかし腎移植患者におけるHCVおよびHBV慢性肝炎は,一般と違って無治療のままでは罹患率や死亡率は高いが,治療によりかなり予後を改善し得るものと考えられる。これら患者に対する最も重要な予後の指標は,移植時における肝炎自体の進行であるため,肝生検を臨床的にも画像上でも肝硬変のないHBs抗原陽性やHCV-RNA陽性の腎移植希望者に対し行うことは重要であろう。活動型ウイルス感染に伴う進行性肝硬変では,現在においても相対的に腎移植は適応がないと考えられる。

手術手技 泌尿器科 体腔鏡下手術 1

体腔鏡下手術を始める人のために―主にトレーニングについて

著者: 加藤司顯 ,   松田公志 ,   鈴木和雄 ,   東原英二

ページ範囲:P.19 - P.26

 腹腔鏡手術は,従来の開放手術や尿路内視鏡手術とはまったく異なる手法によるものである。その特徴は,①内視鏡下手術,②気腹操作,③鉗子操作といえよう。安全に腹腔鏡手術を行うためには,用いる機器の扱いに慣れ,基本手技に習熟するとともに,特有の合併症とその予防法をよく理解することが大切である。

腹腔鏡下手術の技術の向上のために

著者: 寺地敏郎

ページ範囲:P.27 - P.33

 腹腔鏡下手術のスキルを習得する方法を認知科学の観点からみると,1)解剖の新たな認識(認知),2)解剖の新たな認識に基づく,新たな到達法の確立(地図的操作),3)的確な機械,器具の選択とその使用の習熟(移動),4)周囲への援助依頼(援助依頼),の4点が必要である。手術をステップごとに分け,それぞれのステップのスキルの向上にこれらのうちの何が重要かを分析し,対処していくことが手技の確立には必要である。

セミナー 泌尿器科診療とリスクマネジメント 1

外来診療および検査におけるリスクマネジメント

著者: 勝岡洋治

ページ範囲:P.35 - P.39

 医療事故の要因には,「ヒューマンエラー」,「医療従事者の知識不足や技術の未熟さ」,「規則違反」,「医療機関におけるさまざまなシステムの欠陥」が挙げられている。中でも「ヒューマンエラー」は事故の直接の原因となるため「active failure(直接的な失敗)」と,「システムの欠陥」は「latent failure(隠れた欠陥)」とよばれる。いずれも事故防止対策などの中心課題となるべきであるが,他方,医療倫理面に配慮し,インフォームド・コンセントを徹底することがより大切であり,医療の質を向上させるためのリスクマネジメントでなければならない。

原著

浸潤性膀胱癌に対する動注放射線療法

著者: 小池秀和 ,   岡村桂吾 ,   松尾康滋 ,   矢嶋久徳

ページ範囲:P.43 - P.46

 1996~2000年に浸潤性膀胱癌症例9例(T2b,n=2;T3b,n=3;T4,n=4)に抗癌剤(CDDPおよびTHP-ADM)動脈内注入+放射線療法を施行した。近接効果はCR 3例,PR 2例,NC 3例,PD 0例(1例は治療中,骨髄抑制をきたし肺炎のため死亡)で奏効率62.5%であった。動注放射線療法後4例に膀胱全摘を施行した。全体の生存率は1年75%,2年62.5%,5年41.7%であり,膀胱全摘群が非全摘群より良い傾向にあった(p<0.07)。全体の非再発率は1年58.3%,5年58.3%であった。主な副作用は骨髄抑制,食思不振,下痢,臀部痛,萎縮膀胱などであった。

膀胱癌に対する選択的膀胱動脈動注化学療法の検討

著者: 留森貴志 ,   寺田尚弘 ,   笹岡政宏 ,   荒木富雄 ,   森脩 ,   中野洋 ,   竹田寛

ページ範囲:P.49 - P.54

 膀胱癌に対する動注化学療法として,高濃度の抗癌剤を到達させる目的で膀胱動脈を選択して動注し,その治療効果について検討した。膀胱癌患者16名に対して,8例では両側の膀胱動脈から動注し,他の8例では片側の膀胱動脈から動注した。動注前後のCTによる比較で有意差はなかったが,両側から動注するほうが,片側からよりも腫瘍縮小率が高い傾向があった(62.9±31.1%vs.36.4±34.5%;p=0.16)。また,男性全例に軽度の副作用が認められたが,重篤な副作用はみられなかった。膀胱動脈を選択して動注することにより,副作用を軽減することができるが,その際は,両側の膀胱動脈から動注することが必要と考えられる。

症例

最近経験した性器結核の3例

著者: 川島淳 ,   木村高弘 ,   吉野恭正 ,   斑目旬 ,   池本庸 ,   大石幸彦

ページ範囲:P.55 - P.58

 症例は1例が72歳,2例が57歳の男性の3症例である。1例が左有痛性陰囊部腫瘤,2例が左無痛性陰囊部腫瘤を主訴とし,血液検査で,2例でCRPがやや高く,血沈は全例,亢進していた。AFP,HCG-βは正常であった。尿沈渣で1例に白血球多数を認めた。全例,肺結核の既往はない。3例とも精巣上体炎と診断され,1か月の抗生剤投与を受けたが,左陰囊の腫脹はひかず,精巣腫瘍を否定できないため,高位精巣摘除術を施行した。病理学検査で性器結核と診断された。

巨大な尿管ポリープ

著者: 栗崎功己 ,   杉本晃士 ,   原田勝弘

ページ範囲:P.59 - P.61

 症例は頻尿,残尿感を主訴として来院した29歳,女性。膀胱炎として抗菌剤を投与されたが,その後に施行した超音波検査,静脈性尿路造影,膀胱鏡で膀胱内に7×5cmの腫瘤を認めた。経尿道的切除(以下,TUR)目的にて当科へ入院した。TURにより尿管原発の腫瘍の頭部が尿管口から膀胱内に突出していることが判明した。切除部を外尿道口まで把持し結紮切断した。病理診断は尿管ポリープであった。

化学療法後外科的切除を行った精巣腫瘍骨転移例

著者: 佐藤元昭 ,   成田知 ,   長沼慎二 ,   佐々木資成 ,   和田誠之 ,   藤沢洋一

ページ範囲:P.63 - P.65

 症例は43歳,男性。主訴は右股関節痛。1999年6月4日右精巣腫瘍に対し,高位精巣摘除術施行し,セミノーマの診断を得た。StageⅠとして外来通院中であったが,術後9か月頃より血中LDH値が漸増した。術後1年経過時右股関節痛あり,整形外科を受診した。転移性骨腫瘍と診断され,当科に紹介された。BEP3コースおよび局所照射を併用した後,右大腿骨頭置換術を行った。術後18か月で再発を認めていない。

膀胱拡大術を施行したループス膀胱炎

著者: 廣部恵美 ,   柳瀬雅裕 ,   石井安彦 ,   笹尾拓己 ,   伊藤直樹 ,   塚本泰司

ページ範囲:P.67 - P.70

 症例は28歳女性,全身性エリテマトーデス発症3年後より頻尿,尿意切迫感が出現した。抗コリン剤を投与されたが症状は改善せず,両側水腎症を呈し当科を受診した。著明な膀胱容量の低下と両側Ⅳ度のVURを認め,ステロイドパルス療法・DMSO膀胱内注入療法も効果なく,膀胱拡大術を施行した。内科的治療に抵抗するループス膀胱炎に対しては,膀胱拡大術も治療法の一つであると考えられた。

左乳房転移を生じた前立腺癌

著者: 石川公庸 ,   内田博仁 ,   丸山邦夫

ページ範囲:P.71 - P.73

 患者は78歳,男性。偶然CTで前立腺癌が疑われ,諸検査で前立腺癌・骨転移と診断した。両側精巣摘除術を施行し,内分泌療法にて外来で経過観察としたが,ホルモン耐性となった。左乳房の腫大に気づき受診し,針生検で腺癌と判明し,左乳房腫瘤摘出術を施行した。乳房腫瘤組織は腺癌で,免疫組織学的染色でPSA(+),エストロゲンレセプター(-),プロゲステロンレセプター(-)であった。前立腺癌の転移性左乳癌と診断した。

画像診断

透析患者に発生した腎細胞癌に対する造影超音波検査

著者: 原口貴裕 ,   古川順也 ,   山中望

ページ範囲:P.75 - P.77

 患者 57歳,男性。

 主訴 肉眼的血尿。

 既往歴 慢性糸球体腎炎(1973年血液透析導入),aquired cystic disease of kidney(ACDKと略す)。

 現病歴 2000年3月に肉眼的血尿を認めたが自然軽快。7月に再度肉眼的血尿を認めたため,8月15日当科を受診した。

 画像所見 腹部超音波では,ACDKに加え左腎に内部不整な嚢胞性腫瘍を認めた。カラードプラでは,腫瘍内に血流シグナルを確認できなかったが,レボビスト(R)による造影検査では腫瘍内に血流シグナルを確認でき,さらにこの部位のパルスドプラで拍動波を確認できた。なお血液透析患者のため,カラードプラでは腎実質の血流シグナルも比較的微弱であったが,造影することにより腎実質の血流シグナルも増強した(図1)。CTでは,囊胞壁の石灰化を認め,内部は不均一にhigh densityであった(図2)。MRI T1強調画像では辺縁がiso intensityで内部は不均一にhigh intensity,T2強調画像では内部が概ねlow intensityで一部high intensityが混在しており,陳旧性の出血性囊胞を疑わせる所見であった(図3)。腎動脈造影では腫瘍はavascularであった(図4)。

 経過 左腎癌の診断の下,9月5日左腰部斜切開にて左腎摘除術を施行した。

 病理組織学的診断 肉眼的には囊胞壁に直径8mmの黄色調の腫瘍を認め,囊胞内は凝血塊で満たされていた(図5)。組織学的にはRCC,common type,mixed subtype,G2であった(図6)。

両側副腎悪性リンパ腫

著者: 米山高弘 ,   神村典孝 ,   古家琢也

ページ範囲:P.79 - P.81

 患者 82歳,男性。

 主訴 食欲不振。

 家族歴 特記すべきことなし。

 既往歴 1993年大腸癌で手術。

 現病歴 2001年8月中旬より食欲不振,全身倦怠感を自覚,2か月で8kgの体重減少を認めたため,近医を受診した。CTにて両側副腎に腫瘤を認めたため,2001年10月25日当科に入院した。

 入院時現症 血圧84/58mmHg,脈拍110/分,体温36.7℃。腹部に手術痕を認めたが,平坦で圧痛などは認めなかった。表在性リンパ節は触知しなかった。

 検査所見 末梢血生化学検査;ヘモグロビン11.6g/dl,血小板12.3×104/mm3と軽度低下を認めた。血液生化学検査では異常は認めなかった。内分泌学的検査;ACTH 320pg/ml(正常7~56)と高値を認め,コルチゾール1.2μg/dl(正常4.5~21.1)と低値を認めた。他のホルモンも低値もしくは正常下限であった。Rapid ACTHテストでは,反応は認なかった。

 画像所見 腹部CTでは両側副腎に径5cmの内部が比較的均一で辺縁平滑,造影剤で軽度造影効果を示す充実性腫瘤を認めた(図1)。腹部MRI検査では,T2強調画像で大部分が低信号を示し,周囲組織と接しているはものの明らかな浸潤は認められなかった(図2)。

 入院後経過 内分泌学的検査所見からアジソン病を呈していると考えられたが,原疾患が特定できなかったため,確定診断目的にCTガイド下左副腎生検を施行した。病理組織学的に,非ホジキンリンパ腫,びまん性大細胞型,B細胞型と診断された(図3)。肝逸脱酵素の急激な上昇を認めたため,腹部超音波検査を施行したが,肝の著明な圧排,ならびに肝への直接浸潤が疑われた(図4)。腹部CTでは右副腎に一致して低密度の辺縁不整な腫瘍が下大静脈を内側に圧排しており,また肝との境界が不明瞭で腫瘍の直接浸潤が疑われた(図5)。直ちにビンクリスチンによる化学療法を施行したが,肝への直接浸潤が急速に進行し,肝不全のため2001年12月6日永眠された。

前立腺囊胞が原因と考えられた血精液症

著者: 田中達朗 ,   橘宏典 ,   鈴木孝治

ページ範囲:P.83 - P.85

患者 47歳,男性。

 主訴 血精液。

 家族歴・既往歴 特記すべきことなし。

 現病歴 2001年4月22日より血精液を認め4月25日受診した。排尿時痛,排尿困難などの症状はなく,肉眼的血尿も認めなかった。

 現症 174cm,88.8kg。直腸診では,前立腺はくるみ大で,弾性軟,硬結,圧痛は認めなかった。

 初診時検査成績 PSA:7.42ng/ml,F/T比:0.02で,他の血液生化学検査は正常範囲であった。

 画像所見 経直腸的前立腺超音波検査にて正中よりやや左に直径1cmの囊胞様陰影を認めた(図1)。MRIでは前立腺直腸側にT1強調像で内部均一な低信号,T2強調像で高信号を呈する腫瘤陰影を認めた。精囊には出血を疑わせる変化は認めなかった(図2)。入院後の尿道鏡では精丘の腫大を認め,精管精囊造影では射精管が内側より外側に圧排されていた。同時に行った経会陰的超音波下囊胞穿刺,造影にて精管精路系とは交通のない囊胞と診断した(図3,4,5)。

 臨床経過 初診時のPSAの高値から,前立腺生検を行ったが,悪性所見は認めなかった。5月31日に行った囊胞穿刺にて得られた液は1.5ml,無色透明であった。穿刺液の細胞診はclassⅠで,PSA濃度は360ng/mlであった。囊胞液を吸引後ミノサイクリン100mgを注入した。6月11日まで血精液を認めていたが,それ以後改善した。治療後の超音波検査では囊胞を認めなかった。

小さな工夫

上皮小体全摘出術に対する甲状腺用開創器システムの使用経験

著者: 児島康行 ,   三宅修

ページ範囲:P.87 - P.87

 腎性上皮小体機能亢進症の手術に際し,甲状腺と気管の間や,食道近傍など異所性に存在する場合,甲状腺を十分剥離して手術を施行しなければならない機会によく遭遇する。われわれはこの手術を通常2人で施行しているため,助手は主に筋鉤操作に追われてしまう。このため結紮などの操作をする場合,一旦筋鉤を緩めて手術に参加しなければならない。

 今回われわれは,ドイツ・エースクラップ社で甲状腺手術に開発されたフランクフルト甲状腺用システム(R)を上皮小体全摘出術に応用した。これは角度可変ギヤーの付いた甲状腺用フレームに,術野の必要な位置にコネクションクランプを用い専用のリトラクターを取り付けて術野を確保するシステムである(図)。

学会印象記

第26回国際泌尿器科学会(SIU)印象記

著者: 高橋悟

ページ範囲:P.88 - P.89

 さる2002年9月8~12日の5日間,スウェーデンのストックホルムにて第26回国際泌尿器科学会が開催されました。通常ストックホルムはこの時季すでに秋の気配が色濃く朝晩は肌寒いことが多いようですが,今年は観測史上最高とも言われるほど暑く,半袖でも汗ばむほどでした。会場となったInternational Fairは,街の中心からcommuter trainで10分ほどの郊外にあり,やや不便な印象がありましたが,学会参加者には期間中公共の乗り物(地下鉄,バスなど)のfree passが配布されました。しかしストックホルムに到着するまで会場がどこなのか分からず(announcementや学会home pageで探したのですが,私には最後まで見つかりませんでした),SIUならではの(?)casualな感じがしましたが,実際はなかなか首尾よく運営されていると思いました。国際学会に参加して感じることですが,欧米では適度にルーズでありながら,そう不足なく淡々と運営されているのにいつも感心させられます。

 Main hallでは主にState-of-Art LectureやDe-bateなどが行われました。もちろんすべてのsessionsを聞いたわけではありませんが,印象に残ったものとしては,“The Role of Robotic Surgery in Urology”,“Medical Management of BPH”などがありました。前者はDr.Abbouが行いました。まだ改良の余地は多いと思いますが,すでに腹腔鏡手術が泌尿器科手術の多くにおいてstandardになりつつある現状を考えると,昨年までの「へえー。こんなこと自分たちがするのか」といった感じではなく,現実感を持って聞き入っている自分に,改めて昨今の技術進歩の速さを痛感しました。一方後者には,ここ10年間α1-blocker一色であったBPH治療法に新たな変化を感じました。すなわち,BPHの自然史を考慮した治療法といった概念です。「ずっとα1-blockerで治療を継続すると最後はどのような転帰をとるのか?」,「将来尿閉になったり,手術が必要になる患者はどれくらいなのか?」,「ではどんな患者がそうなるのか?」など,多くの泌尿器科医が漠然と感じていた疑問が,10年余り経過して共通の問題として認識されてきたわけです。具体的には5α-reductase inhibitorとα1-blockerとの併用療法が挙げられます。現在ある症状(LUTS)はα1-blockerで改善させ,将来有意に排尿障害が進行すると予測される症例(例えばPSA高値,前立腺体積が大きい症例)には5α-reductase inhibitorを併用して尿閉や手術が必要になるリスクを軽減しようとする方法です。興味深い方法論ですが,さらに客観的な長期観察が必要と思われます。

病院めぐり

諏訪赤十字病院泌尿器科

著者: 栗崎功己

ページ範囲:P.90 - P.90

 7年に一度,寅年と申年に行われる天下の奇祭「諏訪大社御柱祭り」や毎年8月15日に開催される「諏訪湖湖上花火大会」で全国的に知られ,周囲に諏訪湖をはじめ,霧ヶ峰高原,上諏訪温泉,蓼科高原など数々の観光名所にも恵まれる長野県諏訪市。諏訪赤十字病院は,その諏訪湖畔に平成11年9月に移転新築し,地域の中核病院として新たなスタートをきりました。

 当院の歴史は古く,明治13年に組合立高島病院として発足し,その後,郡立病院を経て大正12年に日本赤十字社に移管され,日本赤十字社長野県支部病院諏訪分院となりました。昭和18年に諏訪赤十字病院と改称し,現在に至っています。旧病院の老朽化と,地域住民のより多くのニーズに応えるために移転新築構想が持ち上がり,目の前に諏訪湖を,西方には北アルプス槍,穂高連峰を,東方には富士山,八ヶ岳を望む現地に移転新築しました。現在,ベッド数480床,23診療科を持つ県内有数の病院となっています。

日生病院泌尿器科

著者: 黒田昌男

ページ範囲:P.91 - P.91

 日生病院は昭和6年に日本生命済生会の附属病院として創立されました。泌尿器科は,昭和22年に皮膚泌尿器科として開設され,昭和45年に皮膚科と泌尿器科に分割されました。

 大阪大学医学部泌尿器科教室と連携し,地域の基幹病院として泌尿生殖器疾患全般の検査および治療を行っています。現在,3名の常勤医師で診療を行っていますが,この6月から研修医が1名配属される予定になっています。

交見室

経皮的腎瘻カテーテルの閉塞解除について

著者: 工藤惇三

ページ範囲:P.93 - P.93

 「小さな工夫」(臨泌56:649)の石津先生へ。

 経皮的腎瘻カテーテルの閉塞解除に対してのインデフレーターの使用はすばらしいアイディアです。機会がありましたら,早速試みたいと思います。

 小生は,腎瘻カテーテルの閉塞時には血管造影用イントロデューサーのシースを利用しています(図)。

基本情報

臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

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