icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床泌尿器科57巻11号

2003年10月発行

雑誌目次

綜説

泌尿器科医と医療行政

著者: 佐々木昌一

ページ範囲:P.865 - P.874

 医療は国民生活に深く関わるサービスであり,最近,その質の向上のための改革が進められている。医療機関は近代化・効率化および機能分化が求められ,その手段として,IT技術を用いた情報化や,規制緩和に基づく医療提供が行われはじめている。これらの改革に対し,泌尿器科医としても様々な対応を余儀なくされるであろう。EBMの推進,新しい臨床研修の在り方,医療安全対策の確立などのため,今後は,医師も積極的に係わっていく必要があり,泌尿器科医が学会などを通じてもっと強く行政に働きかけることにより,国民に対する医療の質の向上を可能にすることができるはずであると考える。

手術手技 泌尿器科 体腔鏡下手術 9

副腎の内視鏡下手術

著者: 福井勝一 ,   松田公志

ページ範囲:P.875 - P.884

 副腎に対する内鏡視下手術では,腫瘍の状況や手術歴により到達法が選択される。左副腎腫瘍には経腹膜的側方到達法を,右副腎腫瘍には経腹膜的前方到達法が勧められる。解剖学的位置や,注意すべき血管や臓器を理解しておく必要がある。副腎静脈をまず同定し剝離,切断し超音波駆動メスにて副腎周囲の切離を行う。左右の剝離の操作も順序を踏まえ行うとよい。また腹腔鏡における合併症にも熟知する必要がある。

後腹膜鏡下副腎摘除術

著者: 鈴木仁 ,   笹川五十次 ,   冨田善彦

ページ範囲:P.885 - P.892

 後方到達法による後腹膜鏡下副腎摘出術の手術手技,合併症について述べる。後方到達法は,操作スペースが狭く操作にはある程度の経験が必要であるが,他臓器の圧排なしにダイレクトに副腎に到達でき,右副腎腫瘍および副腎部分切除術の適応症例においては,他の術式と比較しても低侵襲手術であり,修得しておきたい術式の一つである。

腹腔鏡下副腎摘除術

著者: 高橋義人 ,   横井繁明 ,   出口隆

ページ範囲:P.893 - P.904

 副腎腫瘍に対するわれわれの行っている腹腔鏡下副腎摘除術の手術手技を紹介し,1998年から経験した42例の手術成績について検討を加え,同術式の有用性について言及する。現在では,主として経腹的到達法で手術を施行しており,従来の開放性手術より少ない侵襲で治療が可能である。消化器外科における胆囊摘除術のような手術手技の鍛錬に適切な術式のない泌尿器科領域においては,腎摘除術,根治的腎摘除術につながる基本的な手術手技であり,解剖学的理解を高めれば,安全に施行可能な手術であると考えている。

セミナー 消毒と感染予防 3

手術室および病棟での手洗い法

著者: 斎藤誠一

ページ範囲:P.907 - P.913

 手洗いは,院内感染対策の基礎となるユニバーサルプレコーションの一環として,最も基本的でかつ重要な位置を占める。その目的は,手指から有害な微生物を取り除くことであり,結果的に1)患者を手指を介した交差感染から守ること,2)医療従事者の職務感染を防ぐことに通じる。感染リスクの高低,感染経路別予防対策に応じて,日常的手洗い,衛生的手洗い,手術時手洗いを実施するべきであり,処置前後の手洗いを原則とする。

症例

前立腺組織内レーザー凝固法によると思われる精液瘤

著者: 妹尾博行 ,   高田剛 ,   室崎伸和 ,   武本征人

ページ範囲:P.917 - P.919

 症例は50歳,男性。排尿困難に対し内服加療を行ったが軽快せず,前立腺組織内レーザー凝固法(ILCP)を行った。術後1か月で無症状となっていたが,半年後,左下腹痛を認めるようになった。超音波検査などで前立腺左葉に囊胞性病変を認めた。ILCPにより形成された精液瘤と診断した。

5-フルオロウラシル尿道内注入により治癒した尿道尖圭コンジローマ

著者: 武田利和 ,   丸茂健 ,   篠田和伸 ,   古平喜一郎 ,   村井勝

ページ範囲:P.921 - P.923

 症例は19歳,男性。亀頭部腫瘤を主訴に当科を受診した。腫瘤は外尿道口と冠状溝に認められた。尖圭コンジローマと診断し切除術を施行したが,亀頭部と尿道に再発を認めた。亀頭部の病変は,液体窒素を用いた凍結療法により消失した。外尿道口から球部尿道にかけて多発した病変に対して一部に電気焼灼術を施行し,残存病変に対しては外来にて5-フルオロウラシルの尿道内注入を施行したところ,全病変の消失を認めた。

糖尿病に合併した肺膿瘍を伴う腸腰筋膿瘍

著者: 兼平貢 ,   佐藤一範 ,   柏原裕樹 ,   大森聡 ,   近田龍一郎 ,   藤岡知昭

ページ範囲:P.925 - P.927

 症例は38歳,男性。左側腹部痛および食欲不振を主訴に近医受診。高血糖と,CTで両側下肺野および左側後腹膜に腫瘤性陰影を認めたため当科に紹介された。左腸腰筋膿瘍,両側肺膿瘍と診断し,インスリンによる血糖コントロールとともに,抗生剤投与,経皮的腸腰筋膿瘍ドレナージを施行し,膿瘍の消失を得ることができた。今日まで,肺膿瘍と腸腰筋膿瘍の合併例の報告はみあたらない。

頭蓋内血管周皮細胞腫の後腹膜・腎・肺・骨転移

著者: 中山恭樹 ,   村田匡 ,   野田雅俊

ページ範囲:P.929 - P.932

 症例は57歳,女性。主訴は腹痛。既往歴は1989年1月脳腫瘍手術。以後再発を繰り返し2度の摘出術とγ-ナイフを施行されていた。2002年1月腹痛を認め近医を受診し,CTにて左腎外側に20cm大の腫瘤を認め当科に紹介された。画像診断にて多発肺転移,対側腎転移,およびS1骨転移を認めた。左腎癌の診断にて経腹的左腎摘除術を施行し,病理検査にて頭蓋内血管周皮細胞腫後腹膜転移と診断された。術後1か月後小脳出血をきたし2002年3月死亡した。

透析患者に発生した腎盂腫瘍

著者: 黒田功 ,   中平洋子 ,   野中昭一 ,   塚本拓司 ,   上野宗久 ,   出口修宏

ページ範囲:P.933 - P.935

 糖尿病性腎症による慢性腎不全のため70歳より血液透析を施行している74歳,男性。肉眼的血尿を主訴に当科を受診した。CT,尿細胞診,血管造影にて透析腎に発生した腎細胞癌と術前診断し,根治的腎摘除術を施行した。病理診断では腎盂腫瘍TCC,G2,pT3N0 M0であった。現在尿細胞診,CT,膀胱鏡などで厳重に経過観察しているが,再発を認めていない。

小さな工夫

経直腸用前立腺エコープローベを利用した中心静脈穿刺

著者: 髙橋則雄 ,   高岩正至

ページ範囲:P.937 - P.937

 中心静脈ライン確保は長期間の安定した輸液ルート,中心静脈圧の測定,ブラッドアクセス用カテーテルの留置などの目的で日常的に行われている。基本的な手技の一つではあるが,個人の技量によるところが大きく,血腫や気胸などの合併症を引き起こす危険もある。泌尿器科では動脈硬化や腎不全などの合併症を持つ高齢者に対し施行することが多く,血管の走行異常などにより熟練者でも難渋する場合がある。われわれは経直腸用前立腺エコープローベを利用し,安全かつ正確に中心静脈穿刺を行っているので紹介する。

 清潔操作で滅菌済みのプローベを用い目的の静脈を描出し,穿刺を行う(図1a)。助手にプローベを固定してもらい,針先をエコーで確認しながら進めていく。静脈を穿刺した後は,型通りの操作でカテーテルを留置する。ドップラーがなくとも動脈と静脈は拍動の有無などで簡単に判別が可能である。静脈はプローベを強く押しつけると容易につぶれて穿刺が困難になってしまうので,軽く当てるのがコツである(図2)。また,内頸静脈の穿刺では患者に息こらえをしてもらうと静脈が怒張し穿刺が容易になる。穿刺方法は様々で穿刺用のアダプターやUS対応針を用いてもよいし(図1b),プローベのすぐ横から直接刺してもよい(図1a)。中心静脈は直接体表から観察することはできないため盲目的に穿刺を行うことになり,術者の技量による差が生じるが,泌尿器科であればほとんどの施設で備えてある前立腺用プローベを用いれば,静脈や併走する動脈の位置がはっきりと確認できる。中心静脈の描出には7.5 MHzの甲状腺や乳腺用プローベが適しているが1),どこにでも備えてあるわけではない。前立腺用プローベは7.0 MHz前後であり浅部の描出に非常に適している。当院ではB&K Medical社Type 2003の7.0 MHzのプローベを使用している。また,前立腺用プローベには劣るが3.5 MHzの腹部用プローベでも代用可能である(図1c)。

病院めぐり

岐阜県立下呂温泉病院泌尿器科

著者: 小出卓也

ページ範囲:P.938 - P.938

 下呂町は,岐阜県の北半分を占める飛騨地方の南の入口である益田郡のほぼ中央にあります。江戸時代の儒学者 林羅山が,草津,有馬とともに天下三名泉と呼んだ下呂温泉を有する人口1万5千人の観光の町です。JR高山本線の「特急ひだ」で名古屋からは1時間半,さらに小京都飛騨高山までは40分の距離にあり,南飛騨の山々の深い緑に包まれ,木曽川の支流である飛騨川に沿って温泉街が広がっています。

 その温泉街のほぼ真ん中にある当院は,1937年に名古屋陸軍病院下呂温泉保養所として開設され,1953年に岐阜県に移譲されて岐阜県立下呂病院となり,1960年に岐阜県立下呂温泉病院と改称されました。その後,1988年に臨床研修指定病院となり,1992年には人間ドックに東洋医学を組み込んだ東西医学ヘルスドックを開設するなど充実をはかり,総病床数338床,診療科数20科,常勤医師数39名の現在に至っています。診療圏としては,益田郡全域のほか,加茂郡北部と恵那郡北部を含み,対象人口は約5万人ほどと小規模ですが,温泉を利用したリハビリには名古屋方面からも多くの患者さんが入院され,リハビリに励んでおられます。当院は地域中核病院で,臨床研修指定病院であるうえ,リハビリテーション,温泉治療などの機能を併せ持つユニークな病院といえます。

公立南丹病院泌尿器科

著者: 米田公彦

ページ範囲:P.939 - P.939

 公立南丹病院は京都府のほぼ中央,京都市から北へ約30kmの,周囲を山紫水明の豊かな自然に囲まれた船井郡八木町にあります。船井郡の周辺には京都市のベッドタウンとして発展し,さらに最近では京都観光の人気スポットになっている「保津川下り&トロッコ列車」の起点として知られる亀岡市と,豊富な森林資源に恵まれた北桑田郡があり,これらを構成する1市8町で京都府中部医療圏を形成しています。本医療圏は京都府下で最も広い医療圏で,1,363平方kmと琵琶湖の約2倍の面積を有しており,当院は本医療圏で唯一の公的総合病院であり,その歴史は昭和11年にさかのぼります。

 開院当時は9診療科,30床,医師数8名でしたが,その後,地域住民の要望に応えられるよう拡充を続け,現在は22診療科,464床(一般450床,結核10床,感染4床),人工透析70床,医師数77名となり,一般医療以外に救急医療,災害時医療,未熟児などの周産期医療,エイズ,結核,O-157などの感染症医療,僻地医療などの責務も担っています。数ある施設のうち平成15年4月に新しく開設した第二病棟は,入院患者さんが安心して療養できるように潤いのある空間設計がなされており,またこの新しい病棟と従来の施設とを接続している長さ約100mの連絡橋は,国道9号線とJR山陰本線の上を横断する全国的にもめずらしい大規模なもので,地域のランドマーク的存在となっています。附属施設としては,これまで多くの人材を育ててきた附属高等看護学院に代わって,平成15年4月に本医療圏では初めてとなる3年制の看護学校を開校し,医療の多様化に即応できる看護師の育成にも力を注いでいます。

基本情報

臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

76巻13号(2022年12月発行)

特集 これだけは知っておきたい! 泌尿器科診療でも活きる腎臓内科の必須知識

76巻12号(2022年11月発行)

特集 ブレずに安心! 尿もれのミカタ

76巻11号(2022年10月発行)

特集 限局性前立腺癌診療バイブル―このへんでキッチリと前立腺癌診療の“あたりまえ”を整理しよう!

76巻10号(2022年9月発行)

特集 男性不妊診療のニューフロンティア―保険適用で変わる近未来像

76巻9号(2022年8月発行)

特集 前立腺肥大症(BPH)の手術療法―臨床現場の本心

76巻8号(2022年7月発行)

特集 泌尿器腫瘍における放射線治療―変革期を迎えた令和のトレンド

76巻7号(2022年6月発行)

特集 トラブルゼロを目指した泌尿器縫合術―今さら聞けない! 開放手術のテクニック

76巻6号(2022年5月発行)

特集 ここまで来た! 腎盂・尿管癌診療―エキスパートが語る臨床の最前線

76巻5号(2022年4月発行)

特集 実践! エビデンスに基づいた「神経因性膀胱」の治療法

76巻4号(2022年4月発行)

増刊号特集 専門性と多様性を両立させる! 泌尿器科外来ベストNAVI

76巻3号(2022年3月発行)

特集 Female Urologyの蘊奥―積み重ねられた知恵と技術の活かし方

76巻2号(2022年2月発行)

特集 尿路性器感染症の治療薬はこう使う!―避けては通れないAMRアクションプラン

76巻1号(2022年1月発行)

特集 尿道狭窄に対する尿道形成術の極意―〈特別付録Web動画〉

75巻13号(2021年12月発行)

特集 困った時に使える! 泌尿器科診療に寄り添う漢方

75巻12号(2021年11月発行)

特集 THEロボット支援手術―ロボット支援腎部分切除術(RAPN)/ロボット支援膀胱全摘除術(RARC)/新たな術式の徹底理解〈特別付録Web動画〉

75巻11号(2021年10月発行)

特集 THEロボット支援手術―現状と展望/ロボット支援前立腺全摘除術(RARP)の徹底理解〈特別付録Web動画〉

75巻10号(2021年9月発行)

特集 今こそ知りたい! ロボット時代の腹腔鏡手術トレーニング―腹腔鏡技術認定を目指す泌尿器科医のために〈特別付録Web動画〉

75巻9号(2021年8月発行)

特集 ED診療のフロントライン―この一冊で丸わかり!

75巻8号(2021年7月発行)

特集 油断大敵! 透析医療―泌尿器科医が知っておくべき危機管理からトラブル対処法まで

75巻7号(2021年6月発行)

特集 前立腺肥大症(BPH)薬物治療のニューノーマル―“とりあえず”ではなくベストな処方を目指して

75巻6号(2021年5月発行)

特集 躍動するオフィスウロロジー―その多様性に迫る!

75巻5号(2021年4月発行)

特集 前立腺癌のバイオロジーと最新の治療―いま起こりつつあるパラダイムシフト

75巻4号(2021年4月発行)

増刊号特集 泌尿器科当直医マニュアル

75巻3号(2021年3月発行)

特集 斜に構えて尿路結石を切る!―必ず遭遇するイレギュラーケースにどう対処するか?

75巻2号(2021年2月発行)

特集 複合免疫療法とは何か? 腎細胞癌の最新治療から学ぶ

75巻1号(2021年1月発行)

特集 朝まで待てない! 夜間頻尿完全マスター

74巻13号(2020年12月発行)

特集 コロナ時代の泌尿器科領域における感染制御

74巻12号(2020年11月発行)

特集 泌尿器科医のためのクリニカル・パール―いま伝えたい箴言・格言・アフォリズム〈下部尿路機能障害/小児・女性・アンドロロジー/結石・感染症/腎不全編〉

74巻11号(2020年10月発行)

特集 泌尿器科医のためのクリニカル・パール―いま伝えたい箴言・格言・アフォリズム〈腫瘍/処置・救急・当直編〉

74巻10号(2020年9月発行)

特集 令和最新版! 泌尿器がん薬物療法―手元に置きたい心強い一冊

74巻9号(2020年8月発行)

特集 泌尿器腫瘍の機能温存手術―知っておくべき適応と限界

74巻8号(2020年7月発行)

特集 これが最新版! 過活動膀胱のトリセツ〈特別付録Web動画〉

74巻7号(2020年6月発行)

特集 小児泌尿器科オープンサージャリー―見て学ぶプロフェッショナルの技〈特別付録Web動画〉

74巻6号(2020年5月発行)

特集 高齢患者の泌尿器疾患を診る―転ばぬ先の薬と手術

74巻5号(2020年4月発行)

特集 ここが変わった! 膀胱癌診療―新ガイドラインを読み解く

74巻4号(2020年4月発行)

増刊号特集 泌尿器科診療の最新スタンダード―平成の常識は令和の非常識

74巻3号(2020年3月発行)

特集 泌尿器科手術に潜むトラブル―エキスパートはこう切り抜ける!

74巻2号(2020年2月発行)

特集 いま話題の低活動膀胱―これを読めば丸わかり!

74巻1号(2020年1月発行)

特集 地域で診る・看取る緩和ケア―泌尿器科医として知っておくべきこと

icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら