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雑誌目次

雑誌文献

臨床泌尿器科57巻12号

2003年11月発行

雑誌目次

トピックス 過活動膀胱の最近の話題

過活動膀胱の定義

著者: 西沢理 ,   井川靖彦 ,   石塚修 ,   加藤晴朗 ,   関聡

ページ範囲:P.951 - P.954

 最近,下部尿路症状の中で蓄尿症状を重視して,頻尿と尿意切迫感とがあれば膀胱内圧測定を省いてoveractive bladder(過活動膀胱)と診断し,積極的に治療に取り組むとする考え方が国際尿禁制学会(ICS)を中心として普及してきている。症状のみでの過活動膀胱の診断には検討を要する問題点はあるものの,過活動膀胱に対する診断と治療とをシステムとして確立することは重要かつ急務な課題である。

過活動膀胱の臨床的側面

著者: 本間之夫

ページ範囲:P.955 - P.959

 過活動膀胱とは,尿意切迫感を必須とし切迫性尿失禁・頻尿を呈する機能性障害である。最近の疫学調査では,過活動膀胱の定義を週1回以上の尿意切迫感と1日8回以上の排尿回数とすると,それは40歳以上の日本人の12.4%(実数で830万人)にあった。症状の評価には,排尿日誌による排尿回数・失禁回数や症状質問票が提案されている。排尿日誌からは,多尿(1日尿量が体重kgあたり40ml以上),夜間多尿(夜間尿量が10ml/kg以上または夜間/一日尿量比が35%以上),低膀胱容量(最大1回排尿量が4ml/kg以下)などが診断できる。QOLの評価には,キング健康調査票が使える。

過活動膀胱の最近の基礎研究

著者: 窪田泰江 ,  

ページ範囲:P.961 - P.969

 超高齢化社会を迎える中,過活動膀胱の概念の浸透により患者数は増加の一途をたどっている。過活動膀胱による頻尿,尿失禁は生活の質を著しく損なう。しかし病態はまだ解明されておらず,薬物療法は十分に満足の得られるものではない。過活動膀胱の病態を解明し,新たな治療薬開発につなげるため,この分野における基礎的研究は現在世界的にさかんに行われている。本稿ではこれらの研究の中から進歩著しい3つのテーマ,膀胱平滑筋細胞の電気生理学的研究,膀胱における求心性神経支配の研究,神経伝達物質による膀胱平滑筋の収縮反応の研究を中心に概説する。

手術手技 泌尿器科 体腔鏡下手術 10

精巣腫瘍後腹膜リンパ節郭清術

著者: 加藤司顯 ,   奴田原紀久男 ,   東原英二

ページ範囲:P.971 - P.976

 より侵襲の少ない治療法の選択が現代医療の趨勢となり,泌尿器科領域でも腹腔鏡を用いた手法が発展し,その範囲が拡大している。精巣腫瘍後腹膜リンパ節転移に対する腹腔鏡下後腹膜リンパ節郭清術は1992年にHulbertらによって初めて報告されて以来,報告例はあるものの広く行われてはいない。今回われわれは7例の腹腔鏡下後腹膜リンパ節郭清術を試みたので,自験例の成績などを報告するとともに,今までの報告例と合わせて考察した。

ステージⅠ精巣腫瘍に対するガンマプローベガイド下後腹膜リンパ節郭清術

著者: 佐藤信 ,   伊藤明宏 ,   荒井陽一

ページ範囲:P.977 - P.983

 ガンマプローベガイド下のステージⅠ精巣腫瘍,腹腔鏡下後腹膜リンパ節郭清術の手術手技に関して述べる。本術式の利点はfirst landing siteのリンパ節の取り残しの確率が減ること,腹膜外到達法であること,腹膜自体をリトラクターに使うため視野の確保が容易であること,術後の回復が早く患者の早期離床が可能であることなどが重要なポイントと考えられる。

精巣腫瘍に対する鏡視下後腹膜リンパ節郭清術:後腹膜到達法

著者: 奥村和弘

ページ範囲:P.985 - P.995

精巣腫瘍に対する体腔鏡下後腹膜リンパ節郭清術(RPLND)はStageⅡAの疑われる症例およびStageⅡA症例に対しての限局的なRPLNDが適応と考えている。特に後腹膜アプローチは,腹膜自体がリトラクターの役割をするため,良好な術野の展開ができる。またlow stage症例が対象であるため,全例に神経温存を意図しなければならない。郭清は側方および後方から行うため,大血管後方や大動静脈間の郭清も可能である。

セミナー 消毒と感染予防 4

剃毛,術野の消毒とドレープ

著者: 仲野正博 ,   小松秀樹

ページ範囲:P.999 - P.1003

 剃毛,皮膚消毒,滅菌ドレープは手術部位感染の予防策と位置づけられてきたが,手術前のカミソリによる剃毛は,感染率を上げるためかえって有害である。必要な症例に限り,電気クリッパー(バリカン)での除毛が推奨される。皮膚の消毒は消毒部位,持続効果,過敏症の有無などを考慮して選択すべきである。滅菌ドレープは撥水加工がされたもので細菌を透過させにくいものを使用すべきである。

術前剃毛と術野の消毒

著者: 大森聡 ,   藤岡知昭

ページ範囲:P.1005 - P.1009

 術前剃毛や消毒の文献的考察と当教室における術前剃毛と術創の消毒の実際を概説する。術前剃毛は術後創感染のリスクを高め,従来考えられてきた感染予防のメリットはない。術中から術後の管理に障害のない程度の剃毛処置が現実的と思われる。消毒法は消毒薬の特性に沿った使用法をあらためて見直す必要がある。また,術後の閉鎖創に漫然と消毒を行うことは慎むべきであり,「無駄な消毒処置は極力省く」といった検討が必要と考える。

症例

経皮的骨セメント局注療法が有効であった腎細胞癌骨転移

著者: 中本貴久 ,   池田洋 ,   内藤晃

ページ範囲:P.1013 - P.1016

 症例は71歳,男性。主訴は歩行時の右大腿部痛。右腸骨転移を伴う右腎細胞癌と診断,腎腫瘍に対してエタノールを用いた腎動脈塞栓術,腸骨転移巣に対してスポンゼルを用いた動脈塞栓術とCTガイド下の経皮的骨セメント局注を施行後,シメチジンとインターフェロンにて加療した。さらに,腎腫瘍に対しラジオ波焼灼を追加した。治療開始後1年の現在,自力歩行可能で,CT上腎腫瘍の大部分は壊死に陥り,骨盤に腫瘍なく,骨硬化像が出現している。

陰部マダニ刺症の2例

著者: 作間俊治 ,   行徳隆裕

ページ範囲:P.1017 - P.1019

 12歳の陰囊のマダニ刺症と,79歳の陰茎のマダニ刺症を経験した。ともに患者本人は医師から指摘されるまでマダニ刺症とは気づいていなかった。ともにマダニを皮膚とともに摘除した。ミノサイクリンあるいはドキシサイクリンの予防投与を1週間行い,紅斑熱などの合併症を起こすことなく治癒した。

膀胱炎症性偽腫瘍の1例

著者: 上床典康 ,   鈴木雅子

ページ範囲:P.1021 - P.1023

 患者は34歳の女性。不妊治療目的に当院産婦人科を受診し,経腟超音波検査で膀胱腫瘍が偶然に見つかり当科を受診した。腫瘍は,腹部超音波,CT,MRI,膀胱鏡検査上,膀胱前壁正中よりやや右側よりに膀胱粘膜下腫瘍の形態をとっていた。膀胱粘膜下腫瘍の診断で可及的に腫瘍を経尿道的切除(TUR)した。病理組織診断は膀胱炎症性偽腫瘍であった。術後1年4か月経過した現在,再発所見は認めていない。

レーザー治療が有効であった小児膀胱血管腫

著者: 田中孝直 ,   加藤香廉 ,   丹治進 ,   近田龍一郎 ,   藤岡知昭 ,   石川健

ページ範囲:P.1025 - P.1027

 症例は5歳,男児。無症候性肉眼的血尿の精査中,膀胱鏡検査で右側後壁に4mm大の暗紫色腫瘤を2個認め膀胱血管腫と診断した。病変部に対し,全身麻酔下,経尿道的にKTPレーザー照射を施行し,術後24か月を経過した現在,血尿および再発を認めていない。本症例は,小児膀胱血管腫の本邦報告例の18例目にあたる。

CEA・CA19-9・SCC産生腎盂腫瘍

著者: 丹司望 ,   久保信二 ,   松下仁 ,   宮崎龍彦 ,   日浅陽一 ,   横山雅好

ページ範囲:P.1029 - P.1031

 症例は81歳,女性。発熱を主訴に内科を受診したが改善せず,腎盂腎炎の疑いで当科に紹介された。血清CEA,CA19-9,SCC抗原の上昇を認めた。消化管を精査するも,異常を認めなかった。逆行性腎盂造影で左腎盂腫瘍を認めたため,左腎尿管全摘除術が施行された。病理組織学的には腎盂移行上皮癌を示し,免疫組織学的検索では,腫瘍組織がCEA,CA19-9,SCCに陽性を呈した。術後腫瘍マーカーは正常化した。

病院めぐり

利根中央病院泌尿器科

著者: 田村芳美

ページ範囲:P.1032 - P.1032

 利根中央病院は,勇壮な谷川連峰を背景に,尾瀬への玄関口でもある群馬県北部山間部の沼田市の中心部にあります。上州のチベットとも呼ばれる高原地帯で,夏は涼風が吹き,冬は谷川岳から粉雪が舞ってきます。診療圏の人口は約10万人で,経営母体は診療圏の世帯数の約70%が加入する利根保険生協です。病院の前身は昭和29年,地域医療の向上を願う有志によって設立された利根中央診療所で,昭和37年,現在の利根中央病院が誕生しました。現在は一般病床数282床の利根沼田地区の中核病院です。

 泌尿器科は昭和46年より群馬大学からの非常勤派遣施設として開設されました。その後,昭和62年に,現在,国立ガンセンター東病院泌尿器科医長である鈴木孝憲先生が初代医長として着任され常勤化となり,以降,医師体制は群馬大学からの派遣による2人常勤制です。一般外来は月曜から土曜までの午前に,特殊検査や癌告知を行う特別外来を火曜,木曜の午後に行っています。平成14年度の1日平均外来患者数は48名でした。一方,病棟は整形外科との混合病棟で,1日入院患者数は12名,平均在院日数は10日でした。

基本情報

臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

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