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雑誌目次

雑誌文献

臨床泌尿器科57巻4号

2003年04月発行

雑誌目次

特集 前立腺疾患のすべて

企画・編集にあたって

著者: 郡健二郎

ページ範囲:P.9 - P.9

 社会は今,「前立腺」に関心が向いている。

 これと言うのも,天皇陛下が前立腺癌手術を受けられたからだろう。その報道後,多くの中高年の男性が前立腺癌を心配して,受診された。その人たちの前立腺の予備知識は医学生並みで,PSAの正常値や治療法の特徴をすでに知っていることも稀ではない。前立腺癌に限ったことではないが,セカンドオピニオンと称しての受診が増えている。前医で検査を終え,手術直前のこともある。多くの資料を用意して頂いた前医に「悪いな」と思いつつ,返事を書いている。翻って,私たち自身の診療にも,患者さんは満足していない時もあるのではと自省している。最近の患者さんは医療知識が豊富である。加えて,医師と患者の信頼関係が大きく変化している。この傾向はさらに進むだろう。私たちは医術のみならず,人間性を高めねばと思う。

Ⅰ 前立腺疾患診療の基本

前立腺とその周辺の局所解剖

著者: 秋田恵一 ,   坂本裕和 ,   佐藤達夫

ページ範囲:P.13 - P.18

 1 はじめに

 前立腺の形態,動脈系,静脈系,神経系,リンパ系について,周囲構造との関係を踏まえながら概観した。

 2 前立腺の形態

 前立腺は,さかさまにした栗の実に例えられ,側方に膨れ,前後にやや扁平,下外側面は丸みを帯びている。上面を底といい,膀胱に接して内尿道口周辺の筋と移行している。下端の前立腺尖は尿生殖隔膜と結びつく。

画像診断はどこまで役立つか―超音波を中心に

著者: 小島宗門

ページ範囲:P.20 - P.24

 1 はじめに

前立腺の病態生理を明らかにし,正しい診断を下す過程において,画像診断が果たす役割は大きい。前立腺は骨盤深部に位置するため,一昔前までは,画像診断には不適な臓器の1つであった。しかし,1960年代後半に始まる経直腸的超音波断層法(transrectal ultrasonography:TRUS)の開発1)により,この分野には画期的な進歩がもたらされた。

 ここでは各種前立腺疾患について,超音波検査を中心とした画像診断の有用性とその限界について概説する。

Ⅱ 前立腺肥大症

前立腺肥大症は増加しているか―疫学

著者: 伊藤直樹

ページ範囲:P.27 - P.30

 1 はじめに

 「前立腺肥大症は増加しているか」という問いに答えることは非常に難しい。その理由としては,第一に前立腺肥大症の定義が明確ではないことがある。前立腺肥大症(benign prostate hyperplasia:BPH)とは前立腺肥大(benign prostate enlargement:BPE)により生じる膀胱出口閉塞(bladder outlet obstruction:BOO)により自他覚的排尿症状が出現するものである。しかし周知のとおり,BPEがあるからといって必ずしも排尿障害が出現するわけではない。BOOをきたす病態は様々であるし,自覚症状の出現にも個人差がある。前立腺肥大症の診断に用いられる自覚症状評価のための国際前立腺症状スコア(International Prostatic Symptom Score:IPSS),前立腺推定重量測定の経直腸前立腺超音波検査がルーチンに行われるようになったのはここ10年ほどであり,過去と現在を比較することは不可能である。

 第二に前立腺肥大症の自然史がほとんど解明されてないことがあげられる。前立腺肥大症が本当に増えているかどうかを検討するには優れた疫学研究が必須である。多くのバイアスのかからない対象を定点観測するような横断的研究(cross sectional study),縦断的研究(longitudinal study)が求められる。最近10年ほど,自然史に関する優れたcommunity-based studyやlongitudinal studyの検討が徐々に行われつつある。前立腺肥大症自然史全容の解明にはほど遠いが,断片的ではあるにせよdataは出始めている。本稿ではそれらを基にして「前立腺肥大症は増加しているか」という質問に対する回答を試みてみたい。

前立腺肥大症の自然史と発生病理

著者: 杉村芳樹

ページ範囲:P.31 - P.35

 1 はじめに

 前立腺はアンドロゲンに依存して増殖成長するが,加齢とともにアンドロゲン値が低下するにもかかわらず,前立腺肥大症あるいは癌といった増殖性の病変をきたすユニークな臓器である。前立腺肥大症の自然史と発生病理を明らかにすることは,本疾患の診断と治療にも重要な関連を持つ。本稿では,臨床病理学的検討より得られた前立腺肥大症の自然史と発生病理学について述べるとともに,最近話題となっている増殖因子の関与について文献的考察を加えた。

病因解明の進歩―解剖・生理の進歩(αレセプターの分布)

著者: 荒木勇雄 ,   古谷泰久 ,   小室三津夫 ,   滝花義男 ,   武田正之

ページ範囲:P.36 - P.41

 1 はじめに

 前立腺肥大症(BPH)における閉塞症状の発症機序は,機械的閉塞と機能的閉塞の2種類であり,後者は交感神経系α受容体を介していると考えられている1)。確かに,交感神経系α受容体遮断薬(αブロッカー)はBPH患者の下部尿路症状の改善に有効であるが,必ずしもすべての症状の改善をもたらすわけではないし,前立腺摘除術を受けた患者のなかで蓄尿障害症状の改善しないものもみられる2,3)。このような症状は,閉塞によって二次的に生ずる膀胱平滑筋の障害(肥大,除神経),知覚情報の中枢での伝達障害,および求心性・遠心性神経の活性の変化などから起こると考えられている3)。中枢神経系のなかでも,脊髄におけるα受容体は排尿調節に重要な役割を果たしているとされる。本稿では,前立腺肥大症におけるα受容体の役割と,BPH治療における前立腺以外のα受容体の役割についても述べる。

Symptom scoreと重症度・治療効果の判定基準と問題点

著者: 冨田善彦

ページ範囲:P.42 - P.44

 1 はじめに

 前立腺肥大症に伴う症状がいかに生じるかを考える場合,最も単純な機序としては,傍尿道に局在する前立腺の移行域に発生する腺腫の腫大(hyperplasia)により,膀胱排出閉塞(bladder outlet obstruction:BOO)をきたし,下部尿路症状(lower urinary tract symptoms:LUTS)を引き起こすということが考えられる(図1)。しかしこれら3つの因子がそろわない症例も多く,その程度も必ずしも相関しない。また,前立腺肥大症による症状は多岐にわたるが,治療効果の判定や,症状からの重症度の判定,ひいては治療法選択の基準として客観的な症状インデックスの必要性から,種々の症状スコアが考案されてきた。

 最も最初に導入されたのはBoyarsky Symptom Indexである。その後,いくつかのスコアが提唱されたが,現在頻用されているInternational Prostate Symptom Score(I-PSS)のもととなるAUA Symptom Indexが1992年に提唱された1)。IPSSはこれにquality of life(QOL)の質問を一つ加えたものである2)(図2)。またInternational Continence Society(ICS)は,さらに詳細な症状スコアを開発している3)

 本稿では,現在最も頻用されているI-PSSについて述べる。

検査法のテクニックとコツ

直腸内触診・残尿検査

著者: 杉山高秀

ページ範囲:P.45 - P.49

 1 直腸内触診

 直腸診により診察できる器官は,男性では腹水貯留時の直腸膀胱窩,前立腺,精囊,尿道隔膜部内の留置カテーテル,尿貯留時の膀胱などがあるが,特に前立腺疾患の診断で直腸診は最も重要な診断方法の一つである。

 現在,超音波,CT,MRIなどの機器の性能向上,普及率の増加により直腸診を侮る傾向にあるが,直腸診の最大の特徴である「硬度」をこれらの機器では病的所見として得ることはできない。特に前立腺癌の好発部位は直腸隣接部である辺縁領域(peripheral zone)であるので,それぞれの検査を行うに先立って,直腸診によって前立腺の性状を把握することは重要である。前立腺癌のスクリーニング検査としてPSAが用いられ,PSA単独での癌診断陽性率は高いが,直腸診単独異常で発見される癌も少なからず存在し,やはり直腸診は重要な診断法といえる。そこで直腸診の方法,手順,前立腺の特徴的所見を述べる。

前立腺超音波検査

著者: 木村剛 ,   木全亮二 ,   斉藤友香 ,   西村泰司

ページ範囲:P.50 - P.56

 1 はじめに

 経直腸的超音波断層法(transrectal ultrasonography:TRUS)は前立腺疾患の質的診断のみならず,前立腺肥大症の治療方針の決定にも有用である。他方,前立腺体積を測定することにより,体積当たりの前立腺特異抗原(PSA)の密度,PSA densityが算出可能で,前立腺癌と前立腺良性疾患の鑑別に利用されている。さらに,いまやgold standardとなった経直腸的系統的前立腺生検には必須の機器となっている。他の画像診断法と比較して,外来で直ちに施行でき,迅速・簡便であり,非侵襲的で,かつ経済的である。

 最近では,B-mode表示と血流表示が同時に可能なcolor Doppler ultrasound(CDU)や,CDUの弱点であった角度依存性を少なくし,エリアシングによる色の反転,シグナル/ノイズ比を改善した超音波パワードプラ法(power Doppler ultrasound:PDU)が普及するようになり,低流速の微細な血流まで描出可能となった。

 ここでは,TRUSの操作法の手順を示し,それに加え,われわれの施設で施行している超音波Fusion 3D法により得られた前立腺内外の血管構築に関する最新の知見を交え,PDUによる前立腺良性疾患と前立腺癌との鑑別診断を中心に解説する。

静脈性腎盂造影

著者: 池田龍介

ページ範囲:P.57 - P.61

 1 はじめに

 静脈性腎盂造影は,腎・尿管・膀胱に至る尿路系臓器の解剖学的所見とその機能についての情報が1枚のX線フィルム上に描出され,種々の泌尿器科的疾患の診断において日々多用される検査法である。しかしながら,前立腺肥大症の診断において,静脈性腎盂造影は必ずしも不可欠な検査とはいえない1)

 『EBMに基づく前立腺肥大症診療ガイドライン』2)の中でも,「②前立腺肥大症の診断法」において,軽症から中等度の典型的な前立腺肥大症には,上部尿路の画像診断(排泄性尿路造影もしくは腹部超音波断層診断)は原則として不要である。尿路疾患の合併あるいは種々の異常(血尿,治療に抵抗する尿路感染症,腎機能不全,尿路手術・慢性尿閉・尿路結石の既往など)がみられる前立腺肥大症患者には施行する,と述べられている。前立腺肥大症の好発年齢が高齢であることから,尿路腫瘍など,ほかに合併する泌尿器科的疾患の検索と前立腺肥大症に伴う上部尿路への影響の検索に主な検査目的が置かれていると考えるべきであろう。

 静脈性腎盂造影検査法は,成人で20~40mlの造影剤を急速に静脈内注入するIVP(intravenous pyelography)あるいは尿路全般の造影描出であることからIVU(intravenous urography)と称される方法と,100mlの造影剤を緩徐に静脈内点滴注入するDIP(drip infusion pyerography)と称される方法の2つがある。前立腺肥大症においてはIVPにより検査の目的は十分に達成できうると考える。しかし,下部尿路症状を呈し,前立腺肥大症と推測される症例の中には,Kumonら3)の提唱する「起立性鼠径膀胱瘤」の存在が考えられる症例もあり,経直腸的前立腺超音波検査などにて前立腺サイズと症状が一致しないような症例においてはDIPを施行し,立位での所見の有無を検索すべきであろう。

 静脈性腎盂造影は,決して無侵襲の検査法ではないことを銘記し,前立腺肥大症患者において何を検索し,何を鑑別診断するのかの目的に応じた検査オーダーが重要である。

ウロダイナミック検査―治療効果の予測

著者: 石塚修 ,   西澤理

ページ範囲:P.62 - P.66

 1 はじめに

 前立腺肥大症に対する外科的治療後,排尿障害や頻尿などの症状の改善が不良な症例を経験することがある。これらの症例に対して,実際に手術を施行する前に,術後の症状改善の有無やその改善程度を予測することは,手術適応の決定や患者に対するインフォームド・コンセントにおいて非常に重要である。その予測手段の一つとして,pressure flow study(PFS)をはじめとするウロダイナミック検査が位置づけられると思われる。

 本稿では,ウロダイナミック検査の手技の実際とその評価について概説する。

膀胱尿道鏡検査

著者: 山口聡

ページ範囲:P.67 - P.72

 1 はじめに

 前立腺肥大症に対する膀胱尿道鏡検査は侵襲的であるため,現在では,前立腺肥大症の診断のためには必ずしも第一選択とはならない検査法と思われる。しかし,前部尿道,後部尿道,膀胱頸部や膀胱内景を直視下に観察可能である点において,症例によっては非常に有用な情報を得ることができる。一方,この手技は,特に研修医にとって,経尿道的前立腺切除術(TUR-P)などの内視鏡手術で使用する機器取り扱いの基本にも結びつくものである。ここでは,膀胱尿道鏡の適応,種類,方法など,前立腺肥大症の診断に重要と思われる点を中心に述べたい。

膀胱頸部硬化症の鑑別

著者: 龍宮克尚 ,   安田耕作

ページ範囲:P.73 - P.77

 1 はじめに

 膀胱頸部は内尿道口周囲のことで,この部の狭窄を膀胱頸部硬化症(bladder neck obstruction:BNO)という。BNOは,器質的狭窄と機能的狭窄に分類される。基本的には先天性のものをいい,器質的要素を重視する場合はbladder neck contracture,また機能的な要素を重視する場合は膀胱頸部協調不全(bladder neck dyssynergia)と区別されて報告がなされている。しかし,両者は明確に区別されうるものとは限らないとするものも多いので,本論文では原因不明で膀胱頸部狭窄を示す疾患の代表名をBNOとする。原因が明らかになった場合には「術後の膀胱頸部硬化症」,「神経因性膀胱による膀胱頸部硬化症」と呼ぶこととする。

治療法の選択と実際 前立腺肥大症診療ガイドライン

前立腺肥大症の診療ガイドラインとは何か

著者: 後藤百万 ,   大島伸一

ページ範囲:P.79 - P.84

 1 はじめに

 診療ガイドラインの作成は,近年の世界的潮流であり,米国では1989年に,米国医療政策研究局(Agency for Health Care Policy and Research:AHCPR)が診療ガイドライン作成を目的とする国策機関として創設され,泌尿器科領域における前立腺肥大症,尿失禁,尿路結石などを含む数多くの診療ガイドラインが作成されている。本邦でも,平成11年度厚生省科学研究費補助金研究において医療技術評価総合研究事業が発足し,ガイドライン作成の支援が行われ,内科領域を中心として診療ガイドライン作成が開始された。

 泌尿器科領域においては,医療技術評価総合事業「泌尿器科領域の治療標準化に関する研究」の研究班が構成され,泌尿器科領域における診療ガイドライン作成に着手した。平成11年度に前立腺肥大症の診療ガイドライン,さらに平成12年度には女性尿失禁の診療ガイドラインが策定された1)が,本稿では前立腺肥大症の診療ガイドラインについて概説する。

前立腺肥大症診療ガイドラインの批判的検証

著者: 本間之夫

ページ範囲:P.85 - P.89

 1 はじめに

 最近は多くの疾患でガイドラインが次々と出されている。このような世界的な流れは泌尿器科領域にも押しよせてきて,前立腺肥大症についても,ガイドラインが作られている。しかし,ガイドラインそのものにも,またその前立腺肥大症に対する応用にも問題がなしとはしない。このような背景から,2002年の泌尿器科学会総会では,前立腺肥大症診療ガイドラインがシンポジウムで取り上げられ,その中でガイドラインに対する批判的な意見を求められて申し上げる機会があった。本稿ではその発表に基づき,ガイドラインの考え方そのものについては門外漢であることもわきまえず,独断と偏見に満ちた現場の医師の実感を申し上げて批判を仰ぎたい。

薬物療法

薬物治療をめぐるcontroversy

著者: 宮川征男

ページ範囲:P.90 - P.91

 1 はじめに

 前立腺肥大症に対する薬物といえば,α遮断薬,抗アンドロゲン剤,および植物製剤・漢方製剤であり,それぞれについては,この後,順次解説されることになっている。その序文として,薬物療法の際に考えるべきことを述べたいと思う。

 前提として,「患者の下部尿路症状および尿流動態検査結果は,前立腺肥大に由来するものである」とする。また,治療においては無治療経過観察,薬物治療,あるいは手術療法のいずれを選択すべきかという議論もあるが,薬物療法でと決まったところから始めさせていただくことにする。

植物製剤・漢方製剤

著者: 滝本至得

ページ範囲:P.93 - P.97

 1 はじめに

 現在のところ,前立腺肥大症の治療の基本は症状にあわせて行うということである。すなわち,前立腺肥大症の治療は,病期にあわせて適切に選択すればよいということと,多くの場合,患者の希望にそって治療が計画されるということが特徴といえる。一般的にいって,患者心理として手術を希望する人は多いとはいえない。そこで,薬物療法が期待されるが,第1期である刺激期と第2期で症状の軽い時期などが薬物療法の適応となる。

 現在,薬物療法の第一選択は,交感神経α遮断薬といって過言でない。しかし,従来から経験的に用いられてきた植物製剤,アミノ酸配合剤,漢方薬などもある程度の効果が認められるし,副作用も少ないということで使いやすい薬でもある。それらは,薬効メカニズムが判然としない部分もあるが,消炎効果や抗浮腫効果などが挙げられており,肥大腺腫によって生ずる刺激症状,愁訴などを寛解させるように働くのではないかと推測される。ここでは,パラプロスト(R)(アミノ酸配合剤),エビプロスタット(R)(植物エキス剤),セルニルトン(R)(花粉エキス剤),八味地黄丸(漢方薬)の四種を取り上げ,その薬効メカニズム,臨床効果について述べてみたい。

アンチアンドロゲン剤

著者: 千葉裕

ページ範囲:P.99 - P.103

 1 はじめに

 前立腺はアンドロゲン依存臓器であり,前立腺上皮の分化・増殖にはアンドロゲン,特にデヒドロテストステロン(DHT)が不可欠である。アンドロゲン(テストステロン)は前立腺細胞質で5α還元酵素により5αDHTとなり,核内でアンドロゲン受容体と結合し,活性化されたDHTアンドロゲンレセプター複合体は特異的mRNAを合成させ,蛋白の合成を経て前立腺細胞を増殖させる。またアンドロゲンは前立腺間質からの成長因子分泌を刺激し,その成長因子が上皮増殖に作用するという間質-上皮相互作用によりその効果を発現している。

 本稿では,わが国で広く用いられているアンチアンドロゲン剤と,海外ですでに用いられており,わが国でも近い将来市場に出回るであろう5α還元酵素阻害薬について解説する。

α1ブロッカーによる治療

著者: 宍戸啓一 ,   横田崇

ページ範囲:P.104 - P.108

 1 はじめに

 前立腺肥大症(benign prostatic hyperplasia,以下BPH)の治療は,これまで基本的に前立腺による下部尿路閉塞を解除することを目的としてきた。すなわち,肥大腺腫の圧迫による尿道閉塞(機械的閉塞),前立腺平滑筋あるいは尿道平滑筋の交感神経 α1アドレナリン受容体(以下α1-ARとする)を介する収縮による尿道閉塞(動的または機能的閉塞)という2つの異なる機序からなる閉塞を外科的切除や薬物により解除してやることが治療の根幹を成してきたといえる。

 近年,BPHに対する治療法として従来のものに加えさまざまな低侵襲治療や新薬が開発され,BPHの重症度はもとより,患者の状態や希望に合わせた治療法の選択が可能になってきた。1980年代以降本邦でも外科的治療のgolden standardとなっているTUR-Pの手技および有効性は確立されたものであり,今後も存続していくものであると思われる。しかし,その術中・術後合併症の頻度は決して少なくないこと,高齢者の中には他の合併症のために手術適応とならない場合もあることや患者自身が身体的侵襲の少ない治療法を希望することも多いことなどから,最近では低侵襲性の治療法が選択されることが多くなってきた。そのなかでもα1ブロッカーを第一選択薬とする薬物治療は,中等症以上のBPH治療法のfirst choiceとして広く認知されるようになった1)

 本稿ではα1ブロッカーの主な作用部位である前立腺平滑筋のα1-ARとそのサブタイプ,BPH排尿障害に対するα1ブロッカーの有効性について解説する。

経尿道的治療

経尿道的治療をめぐるcontroversy

著者: 秋野裕信 ,   横山修

ページ範囲:P.109 - P.113

 1 はじめに

 高齢社会を迎え,下部尿路症状(lower urinary tract symptoms:LUTS)を訴えて医療機関を受診する中高年男性の数は増加している。しかし,LUTSの原因がいわゆる前立腺肥大症である場合,経尿道的治療をどのような症例に提供するのが妥当なのかの明確な基準はない。その背景の一つには塩酸タムスロシン,ナフトピジルなどのα受容体遮断剤(αブロッカー)の臨床使用により,薬物療法のみでLUTSによるQOL障害の改善をみる症例が多くなったことが挙げられる。多くの泌尿器科医は,まずαブロッカーを投与して症状の経過をみていることと思うが,本来手術を施行したほうが好ましい患者に対していたずらに薬物療法を行い,かえって患者のQOLを障害し,医療費の無駄となっていることも少なくない。では,どのような患者が手術療法の適応であるのか,すなわち前立腺肥大症の治療における経尿道的治療の位置づけは何なのか,gold standardである経尿道的前立腺切除術(transurethral resection of the prostate:TURP)を取り上げて考えてみたい。

 そして,前立腺肥大症の手術治療においてTURPがgold standardであることに異議を唱える泌尿器科医は少ないと思うが,QOL疾患である本疾患にTURPは侵襲的で,より低侵襲の手術療法が望ましいと考える泌尿器科医が多いことも事実である。その結果,より低侵襲の種々の手術が考案され,それらを臨床の場で試してきたのがこの十数年の泌尿器科医のチャレンジであったと思う。現在施行されている低侵襲性の経尿道的手術に関してもその意義について言及したい。

尿道ステント法

著者: 桝田周佳 ,   安本亮二

ページ範囲:P.115 - P.118

 1 はじめに

 本格的な高齢化社会を迎えている現代において,前立腺肥大症を含めた下部尿路通過障害による排尿障害を訴える高齢男子が増加している。高齢に加えて,食生活の欧米化が進み,さまざまな全身性合併症を有する症例も多く,入院が難しい症例や手術困難なpoor riskな症例に対して,前立腺高温度療法,尿道拡張バルーンによる後部尿道拡張術,尿道ステント留置術などが行われるようになってきている。

 このうち尿道ステントは,1980年頃からさまざまな形状のものが開発された。本邦でもほぼ同時期より保険治療が行われている。尿道ステントは一時留置型(temporary type)と永久留置型(permanent type)に分類され,さらに一時留置型は第一世代(first generation)と第二世代(second generation)とに細分類される。今回,一時留置型ステントの第一世代と第二世代,永久留置型ステントについてそれぞれの代表的な尿道ステントについて述べる。

温熱および高温度治療

著者: 吉田正貴 ,   稲留彰人 ,   松本賢士 ,   村上滋孝

ページ範囲:P.119 - P.123

 1 はじめに

 現在,前立腺肥大症(BPH)治療の中で,低侵襲性治療法としては表1のようなものが行われている。このうち温熱・高温度治療は前立腺を加温することによる治療法であるが,加温するエネルギー源としてはマイクロ波,ラジオ波,レーザー,超音波,加熱水などが用いられている。一般的に45℃以上の温度が得られるものを高温度治療(thermotherapy),それ未満で40℃以上のものを温熱療法(hyperthermia)とよんでいる。エネルギー源の種類にかかわらず,前立腺を加温することによるBPHの治療法は,温熱あるいは高温度治療とよんでよいと思われるが,ここでは主にマイクロ波を用いた温熱および高温度治療について概説する。

経尿道的前立腺切除術:TURP

著者: 藤田公生

ページ範囲:P.124 - P.128

 1 治療法の選択

 経尿道的前立腺切除術(TURP)は前立腺肥大症治療のゴールド・スタンダードといわれ,その治療効果の確かなことは広く認められているが,手術に伴う危険性がある。高齢者に麻酔をかけなければならないので,まず,そのための危険が生じる。筆者らの集計では術後1か月以内の死亡は0.17%(2,405例中4例)であり,その原因は心筋梗塞などの心不全,脳梗塞であった。J Urolの20世紀の代表的な論文集のトップを飾ったMebustらの3,885例の検討でも死亡率は0.2%と,ほぼ同様である1)

 TURPそのものによる死亡は,TURPの手技も機器も進歩したためにほとんどなくなっている。TURPの所要時間,出血量,TURP反応の危険性などはすべて,前立腺の大きさに依存している。つまり前立腺が大きくなると,TURPの手術侵襲は大きくなる2)。逆に,小さな前立腺に対するTURP,あるいは経尿道的膀胱頸部切開(TUI)は,低侵襲性といわれながら実際には麻酔をかける必要のある種々の治療法と比べると,むしろ治療時間の短い,侵襲性の低い治療法ということができる。

レーザー前立腺手術

著者: 松岡啓

ページ範囲:P.129 - P.133

 1 はじめに

 前立腺肥大症に対する確立された手術法は,経尿道的前立腺切除術(TURP)である。しかしながらTURPの合併症は術中8.9%,術後15.8%と決して少なくなく1),より低侵襲な手技が望まれていた。この中の一つとして経尿道的レーザー前立腺手術がある。

 レーザーを使用した前立腺治療には,バルーンレーザー高温度治療(transurethral balloon laser thermotherapy:TUBAL-T)もあるが,本稿では,レーザーを使用して前立腺を凝固または切除,蒸散し,術後に尿道前立腺部に有効な空洞が形成されて排尿症状が改善する術式に限って述べたい。

前立腺肥大症に対する低侵襲治療:HIFUとTUNA

著者: 平尾佳彦 ,   大園誠一郎 ,   藤本清秀 ,   平山暁秀

ページ範囲:P.134 - P.139

 1 はじめに

 近年の医工学の進歩により前立腺肥大症に対する低侵襲治療として,高温度治療によるtissue ablativeな治療機器が種々開発されている。これらの機器を大きく分類すると,1)カテーテル型の経尿道プローブを用いたマイクロウェーブ機器(TUMT,TargisTMなど)1,2),2)経尿道的にカテーテルを介して針電極を腺腫に穿刺するラジオ波機器(TUNATM3,4),3)尿道膀胱鏡を利用してプローブを腺腫に穿刺するレーザー機器(ILCP,IndigoTM5),4)経直腸的にプローブを挿入する高密度焦点式超音波治療機器(high intensity focused ultrasound:HIFU)6)などがあり,いずれも前立腺腺腫を60~100℃に加温し,明らかな組織変性を生じ,排尿障害を改善させる特徴がある。奈良医大においては,TUNA(transurethral needle ablation)とHIFUを用いて前立腺肥大症に対する低侵襲治療を実施しており,この両者について機器の概要,治療方法および簡単に治療成績を記載する。

開放手術のテクニックとコツ

前立腺の開放手術をめぐるcontroversy

著者: 噛砂良一 ,   長田幸夫

ページ範囲:P.140 - P.143

 1 はじめに

 近年の前立腺肥大症に対する治療は,QOL改善を目的としたα-ブロッカーを中心とする薬物療法がfirst choiceである。さらに,これらの内科的治療の無効例や,効果が不十分な症例に対して手術療法が行われている。手術療法は,開放手術から経尿道的手術(TUR-P)への変遷をみた。加えてレーザー,高温度治療,HIFU,ラジオ波といった低侵襲治療が試みられており,いまやこれらの新しい治療法もほぼその地位を確立したといってよい。また,前立腺癌に目を転じると,前立腺全摘術にも鏡下手術の波が押しよせ,各医療機関でその症例の積み重ねがなされている。さらに,3Dカメラを駆使しての,遠隔操作によるロボット手術も試みられている。これらは近年の技術の発展,特に光学視管の発展によるところが大きく,今後もさらに内視鏡下手術が中心となっていくであろうことは間違いない。

 これらに伴い,もはやopen prostatectomyが前立腺肥大症の治療の中核を占めることはないというのは,泌尿器科医の一致した意見であろうと考えられる。極論を言うなら,現在のわが国の泌尿器科医療において,いかなる前立腺肥大症の外科治療でopen prostatectomyをfirst choiceと考えることは,誤った治療法であるといわざるを得ない。そこで,今回はopen prostatectomyの過去を振り返り,open prostatectomyの将来を論議したいと思う。

恥骨後式前立腺被膜下摘除術

著者: 関根英明

ページ範囲:P.144 - P.148

 1 はじめに

 前立腺肥大症の手術療法としては,TUR-Pがgold standardであることに変わりはなく,開放手術が施行される頻度は低い。しかしながら,泌尿器科専門医としては前立腺肥大症の開放手術に精通している必要があり,症例によっては,的確な判断のもとに,開放手術を積極的に選択しなければならない。開放手術の方式としては,恥骨上式,恥骨後式および会陰式があるが,本邦では恥骨上式と恥骨後式が一般的である。筆者は両方を経験したが,臨床的に恥骨後式が優れている印象を持っており,それ以後は,本術式を好んで用いているので,ここでは恥骨後式を中心に述べる。

Ⅲ 前立腺癌

前立腺癌の疫学

著者: 樋之津史郎 ,   赤座英之

ページ範囲:P.151 - P.156

 1 はじめに

 1981年以降,日本における死亡原因は悪性新生物によるものが最も多く,その割合も増加傾向にある。前立腺癌は悪性新生物の中でも増加傾向を認めているものの一つであり,1999年における男性の部位別死亡率では「気管,気管支および肺」,「胃」,「肝および肝内胆管」,「大腸」,「膵臓」に次いで「前立腺」は6番目に多いと報告されている。

 しかしながら,死亡率の国際比較を行うと,明らかに欧米に比べて日本は低い値であることから,人種による遺伝的要因や,環境による要因において差があるのではないかと考えられている。

 今回,入手できる最新のデータと,アジアを含めた国際比較を行うことで日本の現状を明確にしたい。

前立腺癌の発癌機構

著者: 三好康秀 ,   窪田吉信

ページ範囲:P.157 - P.161

 1 はじめに

 前立腺癌の発生について多くの遺伝子異常の関与が解明されつつあるが,前立腺癌の発生の第一歩となる特異的な遺伝子については明らかになっていない。前立腺癌の発生においては多くの因子,遺伝子の異常が多段階で関与していることが予想される。前立腺癌は特徴として癌としての共通した性質のほかに男性ホルモン依存性という前立腺固有の性質を保持しているため,前立腺癌の発生には癌遺伝子,癌抑制遺伝子のほかにアンドロゲンやアンドロゲン関連遺伝子の異常が関与していると考えられる。また,病理組織学的に前立腺癌の前癌病変high-grade PIN(prostatic intraepithelial neoplasia)のさらに前段階の病変としてPIA(proliferative inflammatory atrophy)が提唱されている。本稿では前立腺癌発生への関与が示唆される因子,遺伝子異常について述べる。

転移機構

著者: 市川智彦

ページ範囲:P.162 - P.166

 1 はじめに

 癌が転移に至る過程にはいくつかの段階がある。これは,①癌細胞が腫瘍から遊離する,②遊離した癌細胞が周囲に浸潤し血管内に侵入する,③癌細胞が血液の中で生存し免疫系から忌避する,④血管内皮に付着する,⑤血管外に脱出する,⑥標的臓器内で微小環境を構築する,⑦血管新生を誘導し腫瘍を形成する,などが挙げられる(表1)。これらのどの段階かに関与すれば,転移に関する遺伝子ということになる。この中には,癌遺伝子の発現や,転移抑制遺伝子の不活性化などがあり,これらを含む遺伝子異常の蓄積によって転移能獲得に至ると考えられる。また,それらの遺伝子の機能を特異的に不活性化あるいは正常化することができれば,分子標的治療となり得る。転移機構を解明するということはすなわち,進行癌あるいは末期癌に対してその治療を開発することにつながり,前立腺癌においても多くの研究成果が報告されている1,2)。前立腺癌は骨に転移しやすいという性質をもっており,この機序についてもさまざまな報告がある。本稿では,前立腺癌において報告されてきた転移に関する遺伝子変化を中心にその機構について概説したい。

前立腺癌の病理組織学的分類

著者: 古里征国 ,   菊地文史 ,   寺戸雄一 ,   平野和彦 ,   武藤朋子

ページ範囲:P.167 - P.174

 1 はじめに

 わが国において昭和60年に初めて日本病理学会と泌尿器科学会との共同作業による第1版の「前立腺癌取扱い規約」が刊行された。それ以来今日まで改定を重ね,2001年度に第3版の刊行をみるに至っている。都合3版の改定を通じて病理組織学的分類に関わってきたものとして,本稿においてそれらの内容とその変遷を紹介するとともに,WHOおよびGleason分類についても併せて紹介し,それらの分類法の抱える利点や問題点を含め包括的に議論したいと思う。

「前立腺癌取扱い規約 第3版」とその問題点

著者: 黒川公平 ,   小山徹也 ,   山中英壽

ページ範囲:P.259 - P.263

 1 はじめに

 「前立腺癌取扱い規約」は1985年に第1版が出版され,1992年に改訂第2版が出版された。しかし,その後PSAの普及によるPSA eraの到来とともに前立腺癌の診断は一変し,今回の改訂に至った。

 今回の改訂は,山中英壽委員長のもと,古武敏彦顧問,島崎淳顧問の助言をいただくかたちで,ワーキンググループ形式で実務的な作業が進められた。

 特筆すべき変更点は,腫瘍マーカーPSAの項を独立させたこと,生検に関する記載を加えたこと,組織学的分類では,WHO(第2版)およびGleason分類について記載したことである。さらに,治療効果判定として,RECIST評価法とQOL評価を加えたこと,また治療では,遺伝子治療まで言及したことなどが挙げられる。

診断のための検査と評価

直腸診

著者: 秋田英俊 ,   河合憲康 ,   橋本良博

ページ範囲:P.175 - P.179

 前立腺疾患の診断で前立腺を触診する直腸診(digital rectal examination:DRE)は,最も重要な診断方法の一つである。近年,CT・MRI・超音波診断装置などの診断装置の進歩と普及率の増加,さらには,診断,読影法も向上してきているためか,受診者のみならず医師側においても直腸診を避ける傾向にある。しかし,これら画像所見は,前立腺の形態,大きさなどについて,他覚的所見を得ることは可能であるものの,直腸診の特徴の一つである各種前立腺疾患の「硬さ」で表現される触診上の重要な病的所見を得ることはできない。以下前立腺癌の直腸診につき概説する。

腫瘍マーカーはどこまで役立つか

著者: 原啓

ページ範囲:P.180 - P.184

 1 はじめに

 前立腺癌診断の三本柱は,PSA(前立腺特異抗原),DRE(直腸指診),TRUS(経直腸エコー)であることに異論はないであろう。その中でもPSAの前立腺癌診断における役割は最大であり,単に診断のみにとどまらない発展をみせている。

 2001年に改訂された「前立腺癌取扱い規約(第3版)」でも,腫瘍マーカー―前立腺特異抗原として,PSAについての詳細な記載が追加されている1)

 はたしてPSAを中心とした腫瘍マーカーは,前立腺癌の臨床の現場で,どこまで役立つのであろうか。その現状,今後の展望について概説する。

超音波法および前立腺生検

著者: 大森聡

ページ範囲:P.185 - P.188

 1 はじめに

 前立腺癌に対する超音波診断の意義は,癌検索のスクリーニング検査,浸潤度判定,他疾患との鑑別診断にある。走査法として経腹的走査,経会陰的走査,経直腸的走査が挙げられる。このうち経腹的走査は特別な探触子を要さず容易に施行でき前立腺の横断像から縦断像まで比較的自由な断面を描出できる点でスクリーニング検査として有用といえる。しかし,膀胱を音響窓として利用する必要があり恥骨後面が死角になることから,前立腺の内部変化の描出には限界がある。よって前立腺癌の早期発見や癌病変の質的診断まで求めるとなると経直腸的走査を用いる必要が生じる。

 日本泌尿器学会・日本病理学会編集の「前立腺癌取扱い規約」(2001年4月・第3版)における超音波断層法所見記載法においても経直腸的走査に基づいた記載がなされており,本稿では経直腸的走査を用いた前立腺癌の超音波所見および経直腸的超音波ガイド下生検について概説する。

前立腺癌:X線造影

著者: 西尾俊治

ページ範囲:P.189 - P.191

 1 尿道膀胱造影

 1.目的

 前立腺自体のおおまかな大きさの把握,前立腺部尿道の圧迫および浸潤の程度,膀胱頸部への浸潤の有無をみるために行う。また,尿道狭窄の有無を確認するのにも有用である。

 2.前立腺癌における特徴的な所見

 第3版の「前立腺癌取扱い規約」では尿道膀胱造影に関する記載法はなくなったが,参考までに以下に記載した。

 0:尿道造影で異常所見なし

 1:前立腺部尿道の変形が認められる

 2:尿道粘膜に充溢欠損が認められる

 3:膀胱壁に浸潤を疑う所見が認められる

 前立腺部尿道の変形は前立腺が腫大しているために生じる変化であり,癌特有の変化ではない。2,3の変化は癌が尿道または膀胱に浸潤していると判定する。

前立腺癌のCT・MRI診断

著者: 津田恭 ,   鳴海善文 ,   高橋哲 ,   中村仁信

ページ範囲:P.192 - P.196

 1 はじめに

 非侵襲的に生体の断層画像を得ることのできるCT,MRIは泌尿器科領域を含む腫瘤性病変の質的診断,拡がり診断に欠くことのできない検査方法となっている。前立腺癌に関しても,病変の局所進展の程度,リンパ節転移および遠隔転移巣の評価が可能である。

 しかしながら,空間分解能およびコントラスト分解能の限界により,CT,MRIの前立腺癌検出能は現時点では血清PSA測定や生検には及ばない。CT,MRIの主な役割は組織学的診断のついた前立腺癌症例における局所の病期診断および遠隔転移の判定である。

骨転移の診断

著者: 住吉義光

ページ範囲:P.197 - P.200

 1 はじめに

 前立腺癌は骨転移をきたしやすい代表的な癌種である。進行癌においてはほとんどの症例で骨転移が認められ,疼痛や病的骨折などの症状を呈する。一般に前立腺癌の骨転移は造骨性病変として観察されるが,病理組織学的にはosteoblastic changeのみでなくosteolytic changeと混在している場合が多い1)。通常,骨転移の診断には骨単純X線写真,骨シンチグラフィー,MRIなどが用いられる。本稿では,骨シンチグラフィーを中心に骨診断の進め方,骨転移巣の拡がり,治療効果判定や最近の話題などを述べる。

治療法の選択と予後

QOLの観点からみた治療選択の分岐点

著者: 筧善行

ページ範囲:P.201 - P.206

 1 はじめに

 PSAによる前立腺癌スクリーニングの普及は,本疾患の明らかなステージシフトをきたし,早期癌患者数の激増をもたらした1,2)。一方,これら早期前立腺癌患者のための治療選択肢はその幅を広げ,なおかつ各々がほぼ同等の治療効果を得られるようになりつつある。そのため,治療選択にあたっては各々の治療方法について根治率や生存率といった情報以外に,患者のQOLが治療によってどの程度損なわれるかについての情報がよりいっそう求められるようになっている。転移を有する進行期症例に対しても,長期間のアンドロゲン抑制がもたらす負の側面が注目されるようになった。また,再燃癌の発生をどれだけ遅延させるかといった癌の生物学的観点だけでなく性機能の面からも間欠的内分泌療法の是非が論議されているが,ここでもQOLが大きな治療アウトカムの指標となりつつある。本稿では,前立腺癌患者が治療を選択するにあたって,QOLの観点からどのようなエビデンスが明らかになっていて,どのような部分が不透明であるかを中心に概説したい。

内分泌療法のプロトコール

著者: 前田修 ,   宇佐美道之

ページ範囲:P.207 - P.210

 1 はじめに

 半世紀前に米国のHugginsらにより内分泌療法の歴史はスタートした。その後欧米においては,女性ホルモンによる心血管障害や性機能低下が問題となり,姑息的な治療法と位置付けされた。しかしながら近年,より副作用の少ないLHRHアゴニストや抗アンドロゲン剤が開発され,また内分泌療法自体が予後延長に寄与することも証明され,進行前立腺癌治療におけるgold standardとなった。ここでは内分泌療法の適応,種類および方法について,現状と将来の方向性について述べる。

新しい化学療法

著者: 野々村祝夫

ページ範囲:P.239 - P.243

 1 はじめに

 前立腺癌は周知のとおりホルモン療法に非常によく反応するため,進行癌に対しては副作用の軽微なホルモン療法が選択されることが多く,化学療法についてはあまり進んだ臨床研究がなされていなかったように感じられる。しかし,高齢化に伴い,ホルモン療法抵抗性となった後の生活などが問題にされる機会が増えたために,「ホルモン抵抗性前立腺癌に対する治療」としての化学療法が取り上げられるようになってきた。したがって,ここでは「ホルモン抵抗性前立腺癌(hormone-refractory prostate cancer=HRPC)に対する新しい化学療法」に限って論じることにする。

再燃癌に対する集学的治療

著者: 水谷陽一 ,   三木恒治

ページ範囲:P.244 - P.248

 1 はじめに

 前立腺癌はアンドロゲン依存性の癌であり,特に転移性前立腺癌に対しては内分泌療法が主に用いられている。初回内分泌療法の治療効果は一般に良好であるが,多くの症例の場合,再燃が認められる。この再燃前立腺癌に対する治療が,前立腺癌に対する治療の中で最も大きな課題の一つであるのが現状である。本稿では再燃前立腺癌に対する種々の治療法に関して概説する1)

腹腔鏡下前立腺全摘除術

著者: 羽渕友則

ページ範囲:P.251 - P.257

 1 はじめに

 従来の恥骨後式前立腺全摘除(以下RRPと略す)の問題点は癌の根治性,出血,尿失禁,性機能に集約できるかと思われる。腹腔鏡下前立腺全摘除術1)(以下LaPと略す)は本邦でも多くの施設で導入されつつある2~5)。LaPはこれらの諸問題に対してどのような結果をもたらすのであろうか。本稿では,これらの点も踏まえ本術式の現時点での概略を記すことにする。

前立腺全摘除術の適応とテクニック

恥骨後式根治的前立腺摘除術

著者: 頴川晋

ページ範囲:P.211 - P.216

 根治的前立腺摘除術には会陰式,恥骨後式(小切開術式,標準術式)などのほか,最近では腹腔鏡下のアプローチ法などさまざまな手術法が存在する。従来より幾多の術式の改良,改善が行われ,それぞれの利点,欠点が報告されている。この意味では唯一無二の絶対術式というものはなく,術者が自分の技量に応じた,最も自信を持っている術式を選択するべきである。本稿では恥骨後式術式の実際につき北里大学病院での方針を概説する。

会陰式前立腺全摘除術

著者: 中原満 ,   浅野耕助 ,   石光広 ,   望月英樹

ページ範囲:P.217 - P.222

 1 はじめに

 会陰式前立腺全摘除術(以下,会陰式)は1905年にYoung1)により前立腺癌の根治的手術術式として確立され,その後のBeltら2)による術式の改良により普及したが,出血,尿失禁,勃起障害などの合併症が存在した。Walshら3,4)は骨盤内解剖の研究に基づいて恥骨後式前立腺全摘除術(以下,恥骨後式)の術式を改良し,合併症を軽減させるとともに神経血管束の温存で勃起能の維持が可能であることを報告した。恥骨後式の普及で病期診断のための骨盤内リンパ節郭清術が同一術野でできない会陰式は衰退した。しかし,Weldon & Tavel5)の会陰式の術式の改良により神経血管束の温存手術,根治的拡大手術が可能となり,恥骨後式と同等の術式となった。さらに腹腔鏡下骨盤内リンパ節郭清術でリンパ節転移が評価可能となり,転移のない症例の前立腺全摘除術に会陰式が再び注目された。筆者ら6)も腹腔鏡下リンパ節郭清術を先行させ,リンパ節転移の認められない症例に二期的に会陰式を施行していたが,病期B,高・中分化癌,prostate specific antigen(PSA)20ng/ml未満ではリンパ節転移症例はなかった。PSAの臨床応用で早期癌の発見が急増したが,PSA導入以降の前立腺全摘除術の適応症例ではリンパ節転移症例が減少していることが判明した7)。またPSA,臨床病期,前立腺癌の病理学的分化度からリンパ節転移を予測するノモグラム8)が作成され,リンパ節転移の確率の低い症例ではリンパ節郭清をせずに前立腺全摘除術がなされるようになった9)。このような前立腺限局癌に対する前立腺全摘除術に,比較的低侵襲な会陰式が再評価されている。

放射線照射方法のプロトコール

前立腺癌に対する放射線外部照射治療

著者: 赤倉功一郎

ページ範囲:P.223 - P.227

 1 はじめに

 放射線療法は前立腺癌に対する根治的治療法の一つとされているが,本邦においてはこれまであまり行われてこなかった。しかし,スクリーニング検査としての前立腺特異抗原(prostate specific antigen:PSA)測定の普及などにより,本邦における早期前立腺癌の診断頻度は近年急増している。今後は,前立腺全摘除術とともに局所前立腺癌に対する根治療法の選択肢として,放射線療法が広く施行されるようになるものと予測される。本稿では,最も普及しているX線(リニアック)による外部照射を中心に最近の放射線療法の技術の進歩や問題点とその克服へ向けての試みなどを概説する。

密封小線源療法

著者: 門間哲雄 ,   斉藤史郎

ページ範囲:P.228 - P.233

 1 はじめに

 米国において前立腺癌に対する小線源治療を受ける患者は,1996年には限局性前立腺癌患者のうち4.2%に過ぎなかったものの,近年急速に増加しており2005年には約半数にまで増加すると推定されている1)。米国におけるヨード(125I)やパラジウム(103Pd)の永久留置法は,日本では法的規制により実施することが今のところできないため,本邦では主にイリジウムを用いた一時留置法による小線源治療法が施行されている。本稿では米国での現状および本邦で施行されている方法について述べる。

前立腺癌の粒子線治療

著者: 辻比呂志 ,   柳剛 ,   森田新六

ページ範囲:P.234 - P.238

 1 はじめに

 放射線医学総合研究所(以下,放医研)・重粒子医科学センター病院では,重イオン線の一つである炭素線を用いた臨床研究を1994年に開始した。前立腺癌に対する臨床試験も1995年4月に開始され1,2),2002年7月までに188症例の治療が行われた(表)。この臨床研究は,泌尿器科医と放射線治療医による研究グループ(泌尿器腫瘍臨床研究班)が中心となって,厳密なプロトコールに従って実施されている。プロトコールの作成にあたっては,従来の光子線(X線やγ線)による放射線治療はもとより,これまでに行われた各種粒子線治療の結果が参考にされた。以下,これまでに前立腺癌に用いられた各種粒子線治療の紹介と放医研における臨床試行の現状を解説する。

Ⅳ 前立腺炎

前立腺炎をめぐるcontroversy

著者: 門田晃一 ,   公文裕巳

ページ範囲:P.267 - P.272

 1 はじめに

 従来,前立腺炎の病型は,急性細菌性,慢性細菌性,慢性非細菌性に加え前立腺局所に明らかな炎症所見を伴わない前立腺痛(prostatodynia)の4型に分類1)されてきた。一方,1998年に前立腺炎の診断方法の確立や病態解明を推進するためにNational Institutes of Health(NIH)が中心となり新しい病型分類が提唱され2),現在多くの臨床研究で活用されている。表1にNIH分類とその定義を示すが,現実的にはこれまでの分類と大きな差異はない。

 Ⅰ型前立腺炎(急性細菌性前立腺炎)は細菌感染による急性炎症性疾患であり,臨床症状や局所所見より泌尿器科医であればその診断は比較的容易である。治療についても抗菌性化学療法の絶対的適応であり,抗菌薬に対する反応性も比較的良好である。すなわち,Ⅰ型前立腺炎に関しては,その病態や病因は明解で,診断および治療方法も概ね確立されており,議論の余地は少ない病型といえる。

 一方,Ⅱ型およびⅢ型前立腺炎(慢性前立腺炎)は多彩な臨床症状を呈する疾患群であり,しばしばその治療に難渋する。特にⅢ型(chronic prostatitis/chronic pelvic pain syndrome)では病態や病因の解明も不十分であり,治療方法も確立されていない。したがって,さまざまな治療が試みられているものの,必ずしも病因に則した治療が選択されているとは言い難く,一定の効果が得られていないのが現状である。加えて慢性前立腺炎患者のQOLに与える影響は,心筋梗塞,不安定狭心症,活動性のクローン病とほぼ同程度と報告されており3),臨床的に課題の多い疾患といえる。

 近年,こうした背景から,北米では前立腺炎に関する議論が活発化している。NIH分類もその一環であるが,その多くは慢性前立腺炎(特にⅢ型)の病因の解析や診断・治療方法の評価に関するものである。

前立腺炎の定義と分類

著者: 松本哲朗

ページ範囲:P.273 - P.276

 1 前立腺炎の定義

 前立腺炎は泌尿器科の外来で最も多くみられる疾患の一つであるが,その病態には不明な点が多く,診断・治療において混乱がみられている。前立腺炎には種々の病態が混在しており,前立腺炎症候群として広い意味に捉えられている。男性の前立腺関連領域に,疼痛をはじめ種々の症状を来す良性の疾患と定義され,多くの周辺疾患を含んだものである。原因として,細菌をはじめとする病原微生物の関与や前立腺液の前立腺組織内への溢流,高圧排尿による尿の前立腺組織内への流入,自己免疫,さらには,骨盤内の血流うっ滞,骨盤内の筋肉痛・神経痛などの関与も考えられている。このように,必ずしも前立腺に基因する疼痛ではないこともあり,前立腺炎との鑑別は容易ではないが,将来にわたって前立腺の炎症とそれ以外の疾患を区別する努力を行わなければならない。前立腺炎の古典的な分類として,1978年以来,Drachら1)の分類が用いられてきた。すなわち,急性細菌性前立腺炎,慢性細菌性前立腺炎,非細菌性前立腺炎,前立腺痛(プロスタトディニア)とする分類である(表1)。これらの分類はEPS(前立腺圧出液),VB3(前立腺マッサージ後尿)などを得るMeares & Stameyの4検体分割採取法(4杯分尿法)に基づいて診断されてきたものである2)(図1)。しかし,4杯分尿法は煩雑であり,通常の臨床で行うには無理があり,必ずしもDrachの分類に基づいた正確な診断は行われていない。最近,米国NIHを中心に,新しい分類が提唱され,広く用いられつつある3,4)

前立腺液の採取と針生検の意義

著者: 荒川創一

ページ範囲:P.277 - P.280

 1 前立腺液の採取

 前立腺液は,一般に経直腸的に前立腺マッサージを施行し,いわゆる前立腺圧出液として出てくる液体を外尿道口から採取する(図1)。この前立腺圧出液(expressed prostatic secretion:EPS)は,前立腺炎の診断に重要な情報を与えてくれる。ただし,この方法で必ず十分量の前立腺液が採取されるとはいえず,むしろ多くの場合,前立腺マッサージにより後部尿道に少量押し出された前立腺液を排尿でウォッシュアウトした形で得られるその初尿(前立腺マッサージ後尿)を検体として用いる。

細菌性前立腺炎の薬効評価基準

著者: 石原哲 ,   出口隆

ページ範囲:P.281 - P.284

 1 はじめに

 前立腺炎は急性症と慢性症に分類される。急性症は通常,細菌感染に限定されるが,慢性症は細菌性と非細菌性に分類される。急性細菌性前立腺炎(NIH categoryⅠ)に対する抗菌薬の適応は疑いないものである。一方,慢性細菌性前立腺炎(NIH category Ⅱ)でも抗菌薬が第一に投与されるが,急性細菌性前立腺炎に比べ奏効率は低い。慢性非細菌性前立腺炎(NIH category Ⅲ)でも抗菌薬の効果は認められるとする論文は多く,慢性前立腺炎では若干状況は複雑である。

 本稿では急性細菌性前立腺炎と慢性細菌性前立腺炎に対する抗菌薬の薬効評価について解説するが,薬効評価と治癒判定は異なることをあらかじめお断りしておく。

特異性前立腺炎(クラミジアなど)の治療法

著者: 小野寺昭一

ページ範囲:P.285 - P.289

 1 はじめに

 慢性前立腺炎は,旧分類では慢性細菌性と慢性非細菌性に分類されていたが,新分類では,慢性細菌性前立腺炎はカテゴリーⅡに,慢性非細菌性前立腺炎はprostatodynia(前立腺痛)を含めてカテゴリーⅢ(慢性前立腺炎/慢性骨盤痛症候群)に区分され,それがさらに,カテゴリーⅢA:炎症性,カテゴリーⅢB:非炎症性に分けられた。慢性前立腺炎のなかで細菌が分離されるのは5~10%にすぎず,大多数が慢性非細菌性前立腺炎の範疇に入ってしまうことを考えれば,今回の分類は前立腺炎の症状を重視し,症候群としてとらえたものともいえ,より臨床的な分類になったと考えられる。

 さて,今回筆者に与えられたテーマは,特異性前立腺炎(クラミジアなど)ということであるが,特異性前立腺炎とは,本来,結核菌,真菌あるいは梅毒などにより特異的な炎症像を呈する前立腺炎を指す。クラミジアやウレアプラズマなどによる前立腺炎を特異性前立腺炎として扱うかどうかは定まっておらず,クラミジアによる前立腺炎が特異的な炎症像を示すかどうかも明確になっていないのが現状と思われる。このような状況から,今回与えられた特異性前立腺炎(クラミジアなど)というテーマのなかで論じなければならないことは,慢性前立腺炎における一般細菌以外の微生物の関与の可能性について言及し,その微生物が原因となった場合の治療法について触れることであると解釈して話しを進めることとする。

 最初に,特異性前立腺炎とよばれる疾患について触れておくが,まず,結核性前立腺炎についていえば,結核菌(Mycobacterium tuberculosis)による全身的な感染症に伴って起こるものであり,現在では稀な疾患といわざるを得ない1)。近年,問題になっているのはむしろ,表在性膀胱癌に対するBCG(bacillus of Calmette-Gue´rin)膀胱内注入療法後の肉芽腫性前立腺炎であると思われるため,この点については別項で述べる。また,真菌による前立腺炎に関しては,blastomycosis,coccidioidomycosis,あるいはcryptococcusなどによるものが報告されているが1),これらもきわめてまれな疾患であるためここでは触れない。

 本稿では,慢性前立腺炎におけるChlamydia trachomatis(クラミジア)やUreaplasma urealyticum(ウレアプラズマ)などの関わりについて文献的に考察し,治療法について述べるとともに,併せてBCG膀胱内注入療法後の特異性前立腺炎についても簡単に触れることとする。

前立腺痛の診断と治療法

著者: 石川清仁 ,   名出頼男

ページ範囲:P.290 - P.295

 1 はじめに

 Prostatodynia(日本語訳では前立腺痛,もしくは前立腺症)は,1978年Drackによる前立腺炎様症候群の分類で非細菌性・非炎症性と定義された疼痛と骨盤周囲の不定愁訴を中心とする病態である。最近の米国NIHのガイドラインでは,Ⅲ Chronic prostatitis(Chronic pelvic pain syndrome)b)Noninflammatoryの範疇に入り,痛みを最も重要な症状と位置づけている。NIHの今回の新分類が,要因論を考える方向性を出した点は評価に値し,今後の基礎的研究の進展を待って現在の経験に基づいて行われている治療方針に理論的根拠が与えられると信じたいが,今もって呼び方すら統一化できないのは,その病態に不明な点が多く,診断・治療に混乱が生じているからである。

 また,この範疇に属する患者の頻度は慢性非細菌性前立腺炎を呈する症例の半数程度を占め,境界領域にある患者も多く,移行型や合併型の存在も含めれば全体の50%近くに達すると思われる。さらに,この患者群が若年層にまで広く分布しているのも特徴で,患者はもとより外来担当医も日常診療での対応に苦慮しているのが現状である。

 この項ではpelvic pain syndrome(以下,前立腺痛と訳す)を病態別に分類し,それぞれの病因論を展開し,それに対応する形で治療方針を検討する。

Ⅴ 前立腺疾患のトピックス

前立腺癌のホルモン耐性メカニズム

著者: 大東貴志

ページ範囲:P.299 - P.304

 1 はじめに

 1940年代にHuggins & Hodges1)が,アンドロゲン除去が前立腺癌患者の症状を改善することを報告して以来,ホルモン療法は進行前立腺癌に対する標準的な治療法となっている。初期の内分泌療法の奏効率は約80%と高いものの2),その半数以上は5年以内にホルモン耐性となり,再燃に陥るとされている。いったんホルモン耐性となった前立腺癌に対しては現在のところ有効な治療法がなく,ほぼ全例癌死する。前立腺癌がホルモン耐性を獲得するメカニズムはまだ完全には解明されていないが,近年の研究により徐々に新しい知見が加わってきた。これを解明し,再燃前立腺患者に対する新たな治療法を開発することが,前立腺癌の研究に残された最も大きな課題である。

前立腺癌と遺伝子

著者: 溝上敦

ページ範囲:P.305 - P.309

 1 はじめに

 前立腺癌は組織学的に非常に多様性のある癌で,同一患者でも様々な分化度,組織型をもった細胞が混在している。したがって前立腺癌に関与する遺伝子について考える場合,多くの発癌遺伝子や癌抑制遺伝の関与を考慮しなければならないが,同一患者でもその組織型に応じて異なった遺伝子が働いていると考えられる。さらに,前立腺癌の浸潤・転移は多くの過程を経て成立するので,そこでも様々な遺伝子が関与していることが容易に推測できる。したがって,前立腺癌においてある特定の遺伝子のみについて述べることは無理があるが,前立腺癌との関連で(発癌機構,転移機構については別項で詳しく記載されているので,)個人的に興味のあるいくつかの遺伝子について述べたいと思う。

前立腺癌家族内発生

著者: 鈴木和浩 ,   大竹伸明 ,   中田誠司 ,   山中英壽

ページ範囲:P.310 - P.315

 1 はじめに

 前立腺癌の発症リスクに前立腺癌の家族歴が関与しているという報告が以前よりなされ,家族性・遺伝性前立腺癌という概念がJohns Hopkinsのグループから提唱された1)。家族歴をもつ男性における早期からのスクリーニング勧告と前立腺癌の責任遺伝子および遺伝子座の検索の点から注目を集めている。

 本稿では,家族性・遺伝性前立腺癌に関する欧米からの報告をまとめ2),われわれが収集した本邦における家族性・遺伝性前立腺癌の臨床病理学的特徴を述べる。さらに,家族性・前立腺癌に関わる遺伝子解析の現状をわれわれのデータを交えて概説する。

血清中総PSA測定の標準化に関する考え方―PSA検査標準化専門委員会作業部会による試案

著者: 加野象次郎

ページ範囲:P.316 - P.322

 1 はじめに

 臨床検査の医療における重要性が増すなかで,それが診断指針や治療指針の判別値や目標値に組み込まれ,広く利用される指標としてその真価を発揮するには,標準化が必須である。すなわち,正確さを基盤にした測定体系に沿って測定値の施設間差やキット間差を解消し,検査データを相互に共有し共通化する課題である。今日,検診や医療の現場で広く利用されている日本動脈硬化学会による動脈硬化性疾患診療ガイドラインも,わが国における血清コレステロール測定の標準化の達成という土台の上に成り立っていることはいうまでもない。

 前立腺特異抗原(PSA)についてはどうであろうか。わが国においては過去2回,日本泌尿器科学会と日本臨床検査医学会が中心となって解析的なサーベイを行い,血清中総PSA測定のキット間差の現状とその誤差要因を明らかにするとともに,望ましい免疫反応性への方向づけを促してきたのであるが,標準化への本格的な取り組みには至っていなかった。そこで,2002年1月に日本泌尿器科学会が日本臨床検査標準協議会(JCCLS)へ加入したことが契機となって,4月にPSA検査標準化専門委員会が山中英壽群馬大学医学部泌尿器科学教授を委員長として組織され(表1),血清中総PSA測定の標準化についての検討を開始した。本稿においては,標準化と測定体系や免疫学的測定の特徴,これまでの経緯や問題点などに触れた後,当作業部会で検討し立案した「血清中総PSAの基準測定体系(案)」について解説し,われわれの標準化に関する考え方を提示して,ご批判を請いたい。

日本版前立腺癌治療のノモグラム

著者: 荒井陽一 ,   伊藤明宏 ,   斎藤誠一

ページ範囲:P.323 - P.327

 1 ノモグラムの背景

 前立腺全摘術では,病理学的病期が強力な予後因子である。従来より直腸診によって見つかってくる限局性(T2/3)癌については病理学的病期に関する情報には一定の積み重ねがある。近年,PSAスクリーニングの普及で,限局性前立腺癌の発見される機会が増加し,なかでも触知不能(T1c)前立腺癌が急増している。これに伴い,90年代以降,根治療法の機会の顕著な増加がみられた。前立腺全摘術についてのわれわれの調査でも1998年時点ですでにT1c癌が手術症例の約半数を占めるに至っている1)。T1c前立腺癌はPSAの導入により,「触知不能」といういわば発見契機の違いから定義された経緯があり,その生物学的特性に関する臨床的evidenceに乏しい。「T1c」は未成熟なカテゴリーであり,臨床の現場で多くの混乱を生じている。

 一方,早期癌の治療オプションは多彩である。治療方針決定にあたっては,患者年齢,合併症の有無,根治の可能性,再発のリスク,治療後のQOLなどが総合的に検討される。患者・医療者双方にとって治療成績を含めたアウトカムに関する詳細な情報が不可欠になっている。このような背景のもとで病理学的病期やPSA再発を予測する各種ノモグラム作成の試みが盛んに行われるようになってきた。

80歳以上の前立腺癌の治療

著者: 久松浩 ,   金武洋

ページ範囲:P.328 - P.331

 1 はじめに

 欧米諸国においての前立腺癌の罹患率,死亡率は高い。米国では男性の癌では罹患率は第1位,死亡率は第2位である。わが国では罹患率,死亡率は欧米に比べ低いといえども,最近では食生活の欧米化とPSAの普及も手伝い増加傾向にある。今後,高齢化社会の到来とともに今回のテーマである80歳以上の高齢者前立腺癌も当然増加するものと思われる。高齢者に対する前立腺癌の治療指針としては,癌細胞の完全なる除去が最終目標ではなく,以下の点を考慮して治療が選択されねばならない。まずは潜在癌である。前立腺癌は臨床的に意義のない潜在癌が多く,80歳で40~50%の頻度で認められるといわれている。そのような癌をわざわざ発見して治療を行い,QOLを悪化させることは避けなければならない。もう1つは余命である。平成13年厚生労働省白書によると80歳男性の平均余命は8.13年であり(表1),余命を考慮した対処が必要であると思われる。それには限局癌と進行癌,そして分化度で分けて考える必要がある。

米国における前立腺癌に対するクライオサージェリーの実際

著者: 篠原克人

ページ範囲:P.332 - P.336

 1 はじめに

 前立腺癌は米国では男性における最も罹患率の高い癌であり,また肺癌に次いで男性における癌死の原因の第2位にランクされている。2002年には30,200人が前立腺癌で死亡すると推定されており1),米国民の間で最も関心の高い疾患の1つである。近年,前立腺癌がことさら注目されている理由には,PSAの普及と経直腸超音波(以下,TRUSと略す)ガイド下の前立腺生検手技の確立により,発見される症例が増大していることも挙げられる。TRUSの導入により前立腺生検が安全により正確に行われるようになり,またPSAの普及により,より多くの患者が生検されるようになった。これにより早期の癌の発見が増え,患者の平均年齢や診断時の前立腺癌の病期の配分は大きく変わってきた2)。かつては前立腺癌は発見時にはすでにStage C,Dの症例が大半を占めるといわれてきた。しかし現在ではStage C,Dの症例の割合は激減しており,またStage A2(T1b)も減っている。代わりにStage B(T2)や触診上正常なT1cの症例が増えている。また同じStage Bであってもかつてのものより早期の症例が増えている。

 TRUSの普及により,これを用いた前立腺癌の治療も注目されつつある。クライオサージェリー3)と密封小線源によるブラキテラピー4)がそれである。クライオサージェリーもブラキテラピーも以前に行われた経緯のある治療法であるが,TRUSとの併用で近年再注目されているのが特徴である。

前立腺癌に対する高密度焦点式超音波(HIFU)療法

著者: 内田豊昭

ページ範囲:P.337 - P.341

 1 はじめに

 近年,本邦における前立腺癌の頻度は急激に増加し,泌尿器科領域では最も高頻度の悪性腫瘍となっている。ちなみに,人口10万人当たりの前立腺癌死亡率は1985年の4.5人に対し,1999年は11.4人に増加している1)。現在,前立腺癌に対する標準的な治療法として,開腹による根治的前立腺摘出術が最も広く施行されているが,術中の出血とそれに伴う輸血,術後の尿失禁,男性機能不全などの合併症,さらに長期の入院期間,高額な医療コストなどの問題から,より低侵襲的な治療法が望まれてきた。

 高密度焦点式超音波(HIFU:high-intensity focused ultrasound)療法は,強力超音波によって焦点領域を80~98℃に加温することによって,ある限局した領域(ここでは前立腺)に熱凝固壊死を起こし治療する方法である。この際,介在する組織の損傷なしに身体内部の目的部位の凝固壊死を導く,つまり身体に傷をつけずに治療できるのが特徴である。われわれは,約4年前から限局性前立腺癌に対する治療法として本療法を施行し,良好な成績を得ている1~3)。HIFUの原理,治療方法とともに,これまでの臨床成績ついて述べることとする。

前立腺肥大症に対するエタノール注入療法―経尿道的および経会陰的方法

著者: 合谷信行 ,   東間紘

ページ範囲:P.342 - P.347

 1 低侵襲治療としての無水エタノール注入療法

 前立腺肥大症(BPH)の治療においては,薬物療法と根治療法の間を埋める中間的治療としていくつかの低侵襲治療が登場した。BPHに対する低侵襲手術の条件としては,1)麻酔が低侵襲である,2)術中術後合併症が少ない,3)性機能が保持できる,4)入院期間が少ない,5)成績が良好である,が挙げられる。すなわち日帰り手術が可能で,合併症がなく成績が良い方法が求められる。われわれは,BPHに対する新しい低侵襲手術として無水エタノール(dehydrated ethanol,absolute ethanol)を前立腺に直接注入する治療を行っている(前立腺エタノール注入療法ethanol injection therapy of the prostate;EIP)。前立腺へのエタノール注入は,主として経尿道的に施行しているが,経会陰的方法でも行っている。ここではそれぞれの方法について,われわれの経験を中心に解説する。

前立腺全摘除における神経移植

著者: 木原和徳

ページ範囲:P.348 - P.353

 1 はじめに

 最近,前立腺癌の前立腺全摘手術において,神経移植を行って勃起機能を温存しようという試みが始められている。神経温存前立腺全摘が1981年Walshによって開発されるまでは,勃起は前立腺全摘を行う患者にとって諦めざるをえない機能であった。神経温存術式の開発により勃起機能の温存が可能になると,米国では前立腺全摘を受ける患者が一気に増加し,患者がいかに勃起機能の温存を望んでいたかが如実に示された。しかし,神経温存術式の開発は画期的ではあったが,温存するべき神経血管束が前立腺に接して走行しているため,神経血管束と前立腺とを分離することに対する癌の根治性への危惧が現在でも解決されない問題として残されている。「機能の温存」と「根治性」という,癌の治療ではどの領域においても直面する相反する問題である。癌が前立腺の周囲へ細胞レベルで浸潤しているかどうかは術後の病理検査を待たねばならないのが現実である。

 「神経血管束への浸潤が疑われる場合にはこれを摘除し,欠損部に神経を移植して勃起機能を温存する」という術式が可能となれば,「機能の温存」と「根治性」という相反する問題に一つの解決法が呈示されることになる。最近始められたこの術式について概説する。

前立腺疾患に対するクリニカルパスの導入

著者: 浅野晃司 ,   大石幸彦

ページ範囲:P.354 - P.359

 1 はじめに

 医療を取り巻く環境は急速に変化してきている。医療の透明性や倫理性,リスクマネジメント,経済効率の向上など,今までわれわれが無頓着であった問題に今後は積極的に取り組まなければならない。クリニカルパス(以下,パス)は,こうした諸問題を改善あるいは解決するための一つの手段として大いに期待されている。

 わが国におけるパスは,1998年頃から全国的な広がりをみせはじめ,現在では約9,300ある病院の30~40%がパスを使用しているといわれている。泌尿器科においても2~3年前からパスの導入が活発になってきた。

 本稿では,前立腺肥大症に対するパスを中心に筆者らのデータを交えて解説する。

非細菌性前立腺炎の診断と治療

著者: 津江裕昭 ,   田中正利 ,   内藤誠二

ページ範囲:P.360 - P.365

 1 はじめに

 慢性前立腺炎の病態はきわめて複雑であり,診断,治療に難渋することも少なくない。米国では過剰な抗菌薬の投与が医療経済上問題になっていることもあって,NIH(国立衛生研究所)が中心になり,前立腺炎について再検討する機運が高まり,1999年に前立腺炎の新しい分類,The NIH prostatitis classification systemが提唱され(表1),またNIH chronic prostatitis symptom index(NIH-CPSI)が導入された1)

 慢性前立腺炎については現在いくつかの病因論が展開されており,検査所見を基礎としたNIHの分類は,病因論に立つとその境界が不明瞭となり,今後,前立腺炎の分類に関しては再検討が必要になる可能性があると思われる。非細菌性前立腺炎の診断と治療に関してもそれぞれの病因論の立場からさまざまな試みがなされている。

基本情報

臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

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