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特集 前立腺疾患のすべて Ⅴ 前立腺疾患のトピックス
日本版前立腺癌治療のノモグラム
著者: 荒井陽一1 伊藤明宏1 斎藤誠一1
所属機関: 1東北大学大学院医学系研究科泌尿器科学分野
ページ範囲:P.323 - P.327
文献購入ページに移動前立腺全摘術では,病理学的病期が強力な予後因子である。従来より直腸診によって見つかってくる限局性(T2/3)癌については病理学的病期に関する情報には一定の積み重ねがある。近年,PSAスクリーニングの普及で,限局性前立腺癌の発見される機会が増加し,なかでも触知不能(T1c)前立腺癌が急増している。これに伴い,90年代以降,根治療法の機会の顕著な増加がみられた。前立腺全摘術についてのわれわれの調査でも1998年時点ですでにT1c癌が手術症例の約半数を占めるに至っている1)。T1c前立腺癌はPSAの導入により,「触知不能」といういわば発見契機の違いから定義された経緯があり,その生物学的特性に関する臨床的evidenceに乏しい。「T1c」は未成熟なカテゴリーであり,臨床の現場で多くの混乱を生じている。
一方,早期癌の治療オプションは多彩である。治療方針決定にあたっては,患者年齢,合併症の有無,根治の可能性,再発のリスク,治療後のQOLなどが総合的に検討される。患者・医療者双方にとって治療成績を含めたアウトカムに関する詳細な情報が不可欠になっている。このような背景のもとで病理学的病期やPSA再発を予測する各種ノモグラム作成の試みが盛んに行われるようになってきた。
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