文献詳細
特集 前立腺疾患のすべて
Ⅴ 前立腺疾患のトピックス
文献概要
1 はじめに
最近,前立腺癌の前立腺全摘手術において,神経移植を行って勃起機能を温存しようという試みが始められている。神経温存前立腺全摘が1981年Walshによって開発されるまでは,勃起は前立腺全摘を行う患者にとって諦めざるをえない機能であった。神経温存術式の開発により勃起機能の温存が可能になると,米国では前立腺全摘を受ける患者が一気に増加し,患者がいかに勃起機能の温存を望んでいたかが如実に示された。しかし,神経温存術式の開発は画期的ではあったが,温存するべき神経血管束が前立腺に接して走行しているため,神経血管束と前立腺とを分離することに対する癌の根治性への危惧が現在でも解決されない問題として残されている。「機能の温存」と「根治性」という,癌の治療ではどの領域においても直面する相反する問題である。癌が前立腺の周囲へ細胞レベルで浸潤しているかどうかは術後の病理検査を待たねばならないのが現実である。
「神経血管束への浸潤が疑われる場合にはこれを摘除し,欠損部に神経を移植して勃起機能を温存する」という術式が可能となれば,「機能の温存」と「根治性」という相反する問題に一つの解決法が呈示されることになる。最近始められたこの術式について概説する。
最近,前立腺癌の前立腺全摘手術において,神経移植を行って勃起機能を温存しようという試みが始められている。神経温存前立腺全摘が1981年Walshによって開発されるまでは,勃起は前立腺全摘を行う患者にとって諦めざるをえない機能であった。神経温存術式の開発により勃起機能の温存が可能になると,米国では前立腺全摘を受ける患者が一気に増加し,患者がいかに勃起機能の温存を望んでいたかが如実に示された。しかし,神経温存術式の開発は画期的ではあったが,温存するべき神経血管束が前立腺に接して走行しているため,神経血管束と前立腺とを分離することに対する癌の根治性への危惧が現在でも解決されない問題として残されている。「機能の温存」と「根治性」という,癌の治療ではどの領域においても直面する相反する問題である。癌が前立腺の周囲へ細胞レベルで浸潤しているかどうかは術後の病理検査を待たねばならないのが現実である。
「神経血管束への浸潤が疑われる場合にはこれを摘除し,欠損部に神経を移植して勃起機能を温存する」という術式が可能となれば,「機能の温存」と「根治性」という相反する問題に一つの解決法が呈示されることになる。最近始められたこの術式について概説する。
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