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特集 泌尿器悪性腫瘍の治療指針―私たちはこうしている
文献概要
精巣腫瘍の治療方針は,腫瘍の病理組織像と病期に基づいて決定される。当科では,転移を有しないⅠ期のセミノーマは大動脈周囲リンパ節に30Gy程度の放射線療法を行うか,外来において厳重に経過を観察する。Ⅰ期の非セミノーマは,後腹膜リンパ節郭清術は行わず同様に経過を観察する。ⅡA期のセミノーマは放射線療法か化学療法のいずれかを行う。ⅡB期以上のセミノーマおよびⅡA期以上の非セミノーマに対しては化学療法を行う。初回化学療法としては,まずブレオマイシン,エトポシド,シスプラチンによるBEP療法を行う。本療法に必要に応じて救済外科療法などを併用することによって進行性精巣腫瘍の70~80%は完治するが,残りの20~30%は治療に抵抗性を示す。このような難治例に対しては,当科では救済化学療法として二次療法では塩酸イリノテカン・シスプラチン併用療法を,三次療法ではパクリタキセル,イフォスファミド,シスプラチンによるTIP療法を行っている。しかしこれらの新規抗癌剤を中心とした難治性精巣腫瘍に対する救済化学療法の有効性は50%程度であり,より有効な治療法の開発を目指して今後も臨床的検討を続ける必要がある。
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