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雑誌目次

雑誌文献

臨床泌尿器科58巻3号

2004年03月発行

雑誌目次

綜説

進行尿路上皮癌に対する化学療法:最近の話題

著者: 羽渕友則 ,   大山力

ページ範囲:P.189 - P.196

要旨

 1980年代半ばにMVAC療法の有効性が報告されて,しばらくの間,転移や隣接臓器浸潤を伴う尿路上皮癌患者への根治への期待がもたれたかと思う。しかし実際には思うような生存率の上昇に結びつかず,逆に化学療法の害が強調され,その後尿路上皮癌に対する全身化学療法はしばらく停滞していた感がある。しかし最近新規抗癌剤やその併用療法の選択肢が増えたことや,さらに全身化学療法による予後改善に関するデータが報告され,尿路上皮癌に対する全身化学療法は新たな局面を迎えているといってよい。転移や隣接臓器浸潤を伴う尿路上皮癌に対して根治は無理としても,少なくとも副作用が少なくQOLをできる限り維持しながら予後改善が目指せるか,浸潤性膀胱癌に対する周術期の多剤併用化学療法により予後改善が得られるかなど,期待される点は多い。本稿では新規抗癌剤を中心とした尿路上皮癌に対する新たな全身化学療法を紹介する。

手術手技 ここまできた泌尿器科日帰り手術 2

アメリカにおける日帰り手術の実際

著者: 篠原克人

ページ範囲:P.199 - P.206

要旨:医療費の高騰に伴い,アメリカでは保険による払い戻しの額が非常に制限されるようになった。また払戻額は手術名によって定額のため,手術後のケアーなどもできることはできる限り家庭で行うといった方向に進んでいる。そのため,アメリカでは術前入院はまずなく,術後もリカバリールームから退院する日帰り手術が過半数を占めるようになった。ここではブラキテラピーの例を用いてアメリカの日帰り手術の実際を述べる。

米国マサチューセッツ州の一地域病院における泌尿器科領域日帰り手術―特に女性腹圧性尿失禁に対する手術方法

著者: 土方允久

ページ範囲:P.207 - P.214

要旨:日帰り手術はアメリカにおいて近年飛躍的に発展している。その要因と日帰り手術を平滑に行うために注意すべき点を述べ,米国マサチューセッツ州のコミュニティー病院で行われている泌尿器科領域での日帰り手術の種類の状況を示した。さらに当地で比較的頻繁に行われている女性の腹圧性尿失禁に対するメッシュテープを用いた無緊張尿道スリング手術の手技の一つを説明した。この方法は簡潔であり,全身への侵襲が少なく日帰り手術として行えることが多い。

セミナー 泌尿器科における漢方医学 2

漢方医学の特性と病態把握法

著者: 鈴木邦彦 ,   花輪壽彦

ページ範囲:P.217 - P.222

要約:漢方医学は,その基礎を陰陽学説におき,生体の病的状態を陰陽,虚実,寒熱,表裏,気血水,五臓論,六病位などの概念で把握し,治療法(漢方薬)選択の手段としている。体質的側面を陰陽,体力的側面を虚実,自覚症状から疾病の性質を寒熱,体内における病気の部位を表裏,生体機能のバランスの失調を気血水,漢方医学的臓腑の機能状態を五臓論,主に急性熱性疾患の進行を六病位理論で把握し証を決定する。

症例

結石性膿腎症と鑑別が困難であった腎浸潤性移行上皮癌

著者: 鈴木九里 ,   西見大輔 ,   柳下次雄 ,   高波真佐冶 ,   亀田典章

ページ範囲:P.225 - P.228

 腎浸潤性移行上皮癌は通常の腎盂移行上皮癌とは異なり,腎盂内に乳頭状発育をせず,腎実質内へ浸潤性に増殖する。今回,結石性膿腎症と鑑別困難であった症例を経験したので報告する。61歳,男性で,左側腹部痛,発熱,体重減少で来院した。X線写真で左腎結石と水腎症が認められ,尿所見で白血球多数,尿細胞診はclassⅡであった。逆行性腎盂造影では腎盂尿管移行部の狭窄が見られ,コンピュータ断層撮影法でも同部以上の腎盂尿管壁の肥厚が認められた。結石性腎盂腎炎と診断し,抗生剤投与を行ったが,解熱しなかった。経皮的腎砕石術(PNL)所見で腎盂粘膜は瘢痕化白色状で,隆起性病変は認めなかった。PNL後も解熱せず,結石性膿腎症と診断し,腎摘出術を行った。病理診断は腎浸潤性移行上皮癌であった。術後癌化学療法を行ったが播種性血管内凝固症候群(DIC)を併発し,術後49日目に死亡した。

経直腸的前立腺生検後に発症した敗血症

著者: 遠藤雅也 ,   木内利明 ,   垣本健一 ,   目黒則男 ,   前田修 ,   宇佐美道之

ページ範囲:P.229 - P.231

 患者は57歳,男性。PSA高値のため当科に紹介された。前立腺生検前に浣腸を行い,LVFX 100mgを検査2時間前に,さらに,検査終了直後と6時間後にそれぞれ100mgを内服。生検翌日の晩より39℃台の発熱,血圧低下,尿量減少,血小板の著明な減少,FDPの増加を認め,敗血症によるDIC,多臓器不全と診断した。動脈血より大腸菌が分離同定され,MEPM 1g/day,AZT 2g/dayを生検後5日目より投与し軽快した。

陰茎結核疹の1例

著者: 桑原守正 ,   武村政彦 ,   金子新 ,   中村晃二 ,   安芸雅史 ,   藤﨑伸太

ページ範囲:P.233 - P.235

 近年,陰茎結核疹はきわめて稀である。患者は52歳,男性。陰茎亀頭部腹側の赤い痼を主訴に来院した。陰茎癌を疑い生検を施行したところ,病理組織像は結核結節を示していた。ツベルクリン反応は強陽性であったが,組織内に結核菌は証明できず,先行する結核感染巣は特定できなかったことなどから,陰茎結核疹と診断した。抗結核剤リファンピシン,イソニアジド,ピラジナミドの3剤を用いた初期化学療法で寛解を得た症例を報告する。

後腹膜に発生した悪性線維性組織球腫

著者: 井上省吾 ,   大原慎也 ,   嘉手納一志 ,   水谷雅巳 ,   松木暁 ,   元井信

ページ範囲:P.237 - P.240

 患者は62歳,男性。右側腹部痛のため近医を受診した。CT,MRIにて右後腹膜に巨大な腫瘤を認めた。腫瘍摘出術を施行し,病理診断では後腹膜に発生したpleomorphic typeの悪性線維性組織球腫であった。術後3か月目に施行した腹部CTにて局所再発を認め,右後腹膜腫瘍摘出術を施行した。ordinary type;pleomorphic subtypeの悪性線維性組織球腫で,再発との病理診断であった。

原発性尿管扁平上皮癌の1例

著者: 二宮郁 ,   田上隆一 ,   滝川浩

ページ範囲:P.243 - P.245

 症例は76歳,女性。右尿管腫瘍にて右腎尿管全摘除,膀胱部分切除が施行された。摘出組織の病理組織検査では,高分化型扁平上皮癌(pT1,INFα,pL0,pV0)と診断された。その後再発なく経過良好であったが,1年後胃印環細胞癌,その2か月後には腹腔内腫瘍(悪性線維性組織球症)を続発,死亡した。尿管原発の扁平上皮癌は比較的稀で,自験例は本邦68例目の報告にあたると思われた。

尿路と交通した化膿性腎扁胞

著者: 森川文雄 ,   堀田満喜男 ,   澤田重樹 ,   伊藤裕康 ,   池内隆夫

ページ範囲:P.247 - P.249

 症例は38歳,女性。主訴は頻尿,発熱,右背部痛。急性腎孟腎炎で入院加療するも改善しなかった。右腎の化膿性腎囊胞を疑い,超音波下穿刺ドレナージを施行し,貯留液は膿液で,約640ml排出,培養でE. coliを検出した。囊胞造影で尿路との交通を認めたが,保存的加療にて改善した。治療後3か月のCT像で,囊胞は著明に縮小していた。化膿性腎囊胞の報告は,調べ得た限りにおいて,本邦で92例を認めるのみであった。

前立腺全摘除術11年後に吻合部再発を認めた前立腺癌

著者: 高木康治 ,   橋本純一 ,   黒川孝志 ,   金井茂

ページ範囲:P.251 - P.253

 76歳,男性。1991年1月20日前立腺全摘除術を施行。病理組織検査の結果,低分化型腺癌で被膜外浸潤,切除断端における癌浸潤,精囊浸潤を認めた。以後の受診は認めず,2002年9月17日血尿にて受診。膀胱鏡にて吻合部に腫瘤を認め,経尿道的生検を施行し前立腺癌の再発と診断した。ステロイド性抗アンドロゲン剤を投与し,放射線治療を行った。2003年3月14日現在PSAは3.9ng/mlである。

画像診断

腹部大動脈の蛇行が原因と考えられた腎出血

著者: 神林知幸 ,   甲斐文丈 ,   新保斉

ページ範囲:P.255 - P.257

 患者 75歳,女性。

 主訴 肉眼的血尿。

 既住歴 得記すべきことなし。

 家族歴 得記すべきことなし。

 現病歴 2002年5月1日肉眼的血尿が出現し,同日当科を受診した。

 現症 腹部所見などに異常を認めなかった。

 検査成績 血液生化学検査に異常を認めず,検尿で潜血(3+),尿沈潜で赤血球9/視野,尿細胞診は陰性であった。

 画像診断 超音波断層像では腎臓・膀胱に特記すべき所見は認められなかった。排泄性腎盂造影(図1)では著変を認めず,5月1日の腹部単純CT(図2)で左腎静脈の拡張が疑われたため5月15日造影へリカルCTを施行した。造影初期の横断像(図3)では、腹部大動脈は右方に偏移しており,左腎静脈の拡張および腹部大動脈の全面で牽引によると考えられる狭小化が認められた。なお上腸間膜動脈と腹部大動脈との間隙は十分に保たれていた。冠状断像(図4)では,腹部大動脈は腎動脈分岐部直下より右側に大きく蛇行していた。CT血管造影像(図5)では,腹部大動脈の蛇行に伴う左腎静脈の拡張,狭小化が明瞭に抽出されるとともに卵巣静脈の拡張が認められ,側副血行路の発達が考えられた。以上より腹部大動脈の蛇行による腎静脈のうっ滞が血尿の原因と考えられた。なお,約1年経過観察をしているが,肉眼的血尿の再発は認めず,尿沈さで赤血球1~2/視野認める程度である。

自然破裂した傍腎盂囊胞

著者: 川上雅子 ,   井上博夫 ,   小泉孔二

ページ範囲:P.258 - P.259

 患者 79歳,女性。

 家族歴 特記事項なし。

 既住歴 2002年11月に小脳出血を発症し,抗凝固剤を内服中。

 現病歴 1999年4月当院内科より尿潜血および腰背部痛にて紹介され,IVPおよび腹部CT(図1)を施行した。診断は両側傍腎盂囊胞であったため年1回の腹部超音波検査にて経過観察していた。2003年1月15日突然腹部正中から左背部の激痛が生じた。その際,転倒や外傷などの誘因と思われる事項はなかった。救急車にて当院救急外来を受診し入院した。

 入院時現症 上腹部正中から左にかけての圧痛を認めた。悪心,嘔吐,発熱症状は認めなかった。その他,身体の異常所見はなし。

 入院時検査所見 血液性化学検査および尿検査に異常を認めなかった。

 入院後の経過 救急外来にて急性腹症の原因精査のため,腹部CT(図2)を施行した。左後腹膜腔に腎を取り巻くように水分密度領域を認めた。腎外への造影剤の漏出は認められなかった。以上より,急性腹症の原因は左傍腎盂囊胞の自然破裂と診断した。腹痛は徐々に軽減し、翌日にはほとんど痛みを認めなかったため,入院後3日目に退院した。発症1か月後の2月20日腹部CT(図3)を再検した。入院時に認められた左後腹膜腔の水分密度領域は消失し,傍腎盂囊胞は1999年のCT所見とはほぼ同様であった。現在まで疼痛の再発,血尿などの症状を認めずに経過している。

小さな工夫

腎瘻造設術時ガイドワイヤーシースによる順行性腎盂造影

著者: 鈴木一実 ,   小林実

ページ範囲:P.262 - P.262

 われわれ泌尿器科医にとって腎瘻造設術は比較的頻度の高い泌尿器科的処置であり,その多くは緊急性を有するため,安全かつ確実に施行することが重要である。緊急時などには全ての操作を単独で行わざるを得ず,処置中にガイドワイヤー(以下GW)の遠位部が清潔なエリアを越え不潔になる場合がある。また操作の最終ステップであるが,GWに沿わせてカテーテルを挿入したところでGWを抜去する前に,その先端が腎盂,腎杯内の適切な部位に位置しているかを造影にて最終確認したい場合が多いと思われる。しかしこのような場合GWがカテーテル内に挿入されたままであるため,シリンジがカテーテル遠位部にしっかりと接続できず,造影剤をうまく注入できず,不都合を感じることも多い。このような悩みに対し,われわれは以下のように対処している。腎瘻カテーテル〔CLINYシリコーン瘻用カテーテル(マレコットカテーテル先穴型,クリエートメディック社製)〕挿入後,GW(ラジフォーカスガイドワイヤーM,ストレート,0.035'',テルモ社製)のカテーテル外に出ている遠位部を付属のGWのシース(ワイヤーイーサーパー)内に収め,そのシース先端をカテーテル遠位部に接続する(図)。シース先端のコネクター部(チップ)とカテーテルの遠位部の接合性は良好であり,造影剤をシース遠位部から漏れることなく注入可能である。こうすることでGWの遠位部を清潔に保ったまま,GWをカテーテルより抜去することなく効率よく順行性腎盂造影が施行可能である。

内視鏡下小切開(ミニマム創)根治的前立腺全摘除術におけるLAPDISCTMを用いた創展開の工夫

著者: 長井辰哉 ,   田中篤史

ページ範囲:P.263 - P.263

 われわれは2002年より前立腺癌に対し内視鏡下小切開前立腺全摘術を開始した。本手術は下腹部正中に4~5cmの小切開創をおき,この単一創から内視鏡を挿入するとともに,すべての手術操作を行い,鏡視下に前立腺全摘を行う手術である。本手術は低侵襲性という点では,腹腔鏡手術に匹敵する一方,基本的な手術操作が通常の恥骨後式前立腺全摘術の延長上にあるため,容易にその手技を獲得できるという特徴がある。また内視鏡観察下に手術を行うため,通常の開放手術では観察しにくい深部の操作時に良好な視野が得られ,より正確な前立腺全摘ができるという利点もある。しかしながら,本手術を円滑に行うためには,やはりいくつかの通常の開放手術にはない工夫が必要である。特に,狭い創からいかに膀胱前腔を開放し,良好な視野を得るかが本手術を的確に行う最も重要なポイントであると思われる。木原は専用の鉤を開発し,助手がこれを用い創の展開を行うとしている1)。しかし狭い創から鉤を入れ約3時間に及ぶ手術中,常に一定の力で手術野を十分に展開することは助手にとってかなりの負担になると思われる。また助手一人が鉤引きのみに専念しなければならないことは,比較的少人数で手術をせざるを得ない市中病院においては本手術導入の障害にもなりうるともいえる。われわれはこの点を改善するため種々のリトラクターを用いて本手術を行ってみた。ProtractorTM,Applied wound retractorTMはともに小切開創にはめ込むリング状のリトラクターで数種のサイズのものが市販されている。これらのリトラクターは小切開創を円型に広げる作用を持つが,実際に使ってみるとこのようなポリウレタン製の製品では張力が不十分のようで本手術のような創にはめると楕円形になってしまい,思ったほどの効果が得られない。また手術中に時間とともに段々変形が生じる傾向もあり本手術のような比較的長時間の手術には不十分のようである。一方本来はhand assist手術に用いるLAPDISCTMはラバー製で本手術の創展開に十分な張力を有している。また創内に挿入するインナーリングが比較的大きいこともあり,本手術における視野の確保にちょうどよいと思われた。また単に創を円型に開大するのみではなく,インナーリングが腹膜に外向きに適度な緊張を与えるため手術操作に必要な空間が自動的に得られるという利点がある。われわれは主として,このLAPDISCTMからアイリス部を外して本手術に用い,良好な結果を得ている(図)。またこのようなリトラクターを用いることは創縁の保護,腫瘍摘出時の腫瘍と創の接触の防止の効果もあると思われる。小切開手術をこれから始められる,あるいは小切開手術施行時の創展開に悩んでいる諸兄においては是非試してみることをお勧めする。

病院めぐり

済生会神奈川県病院泌尿器科

著者: 中島洋介

ページ範囲:P.264 - P.264

 恩賜財団済生会は,明治天皇が施薬救療の済生勅語に添えて,お手元金150万円をご下賜になり,これを基金に総理大臣 桂太郎が全国から寄付を募り,明治44年に創立されました。当院はその全国1号病院として大正2年に開設され,関東大震災や横浜大空襲の被害を受けつつ昭和24年に現在地に移転し,昭和27年,社会福祉法人となって現在に至ります。JR横浜駅より一駅東京寄りの東神奈川駅前に位置し,横浜市神奈川区,鶴見区などを医療圏とする400床の総合病院です。

 神奈川県は昭和30年代後半からの交通戦争に対処するために,昭和40年に全国で初めて神奈川県交通救急センターを当院に併設しました。その関係で,当院は外傷外科,救急医療の分野では先駆的施設であり,過去に日本救急医学会総会も主催しています。重度の交通外傷は年々減っているようですが,年間の救急患者数約24,000人,救急車搬送約6,000台,CPA患者数約250件と救急関連部門は超多忙です。

長浜赤十字病院泌尿器科

著者: 南舘謙

ページ範囲:P.265 - P.265

 当院は滋賀県湖北地区の人口約6万人の長浜市に昭和7年4月に「日本赤十字社滋賀支部病院長浜診療所」として発足し,昭和12年12月に「日本赤十字社滋賀支部長浜療院」と改称,現在地に移転しました。開設当初は35床の病院でしたが,地域住民より“日赤さん”の呼び名で親しまれ,現在は23の専門診療科と584床の入院設備を有するまでとなりました。また20年前,湖北地域が救急医療の空白地域であったことから,当院は救急救命センターを率先して開設し,現在は屋上ヘリポートを有する県下に2施設ある3次救急病院の1つであり,また未熟児センター,NICU,さらには陰圧装置を備えた感染病床など県下有数の設備を誇り,24時間体制で地域のさまざまな救急ニーズに対応しています。

 泌尿器科は,昭和54年に湖北地方の初の常設泌尿器科としてスタートしました。初代部長として鄭漢彬部長が赴任し以来20余年,地域に密着した医療を行ってきました。現在は原田吉将副部長,南舘謙医師の両名とともに3人体制で診療を行っており,病床数は18床,1日の平均外来患者数は約80人です。以前は1診午前中のみであったのですが,平成15年4月からの週休2日制導入に伴い,1診制では外来を十分に診療できないため,予約制の2診を始めざるを得ない状況となりました。特殊外来としてはED外来,尿失禁外来を行っております。また鄭部長が漢方に非常に造詣が深く,科として漢方治療にも力を入れています。手術日は月,水,金曜日の3日で,平成14年の手術件数は304例で,開放手術は99例でした。内訳は腎摘除術が12例,前立腺全摘除術が6例などでしたが,前立腺全摘除術は平成15年に入って急増し,今年は20例近くなる予定です。

交見室

剖検の希少化を憂える

著者: 勝岡洋治

ページ範囲:P.266 - P.266

 昨今,学内で剖検実施の報告を聞かない。また,CPC開催の案内文も久しく受け取っていない。筆者の若い頃は遺族から剖検の承諾を得るのに相当の労力を費やした。先輩たちからは,「剖検が取れて医者として一人前だ」と叱咤激励されたものである。剖検の諾否は,患者さんの生前における信頼とその家族の絶大なる信用が得られているかどうかが試されることになるといわれた。

 今でも病院で死期をむかえる患者さんは少なくないはずであり,死因もすべて解明されているとは限らない。近時,診断学が格段に進歩したとはいうものの,生前に病名が確定できないままに,あるいは治療中に思いがけず急死する症例にもしばしば遭遇する。その際,死因についてどのように説明しているのであろうか? その説明に遺族は十分に納得しているのであろうか? 事実確認のない説明には疑義を生み,不信感だけが残る。そして,医療訴訟に発展する要因にもなりかねない。剖検例の希少化の背景には,臨床医の怠慢と病理医の責任転嫁が存在していると思えてならない。剖検の意義を改めて論ずる必要はないと思われるが,「死体は真実を語る」とは至言であろう。必ず新事実の発見と現代医療の限界を再認識することになる。

基本情報

臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

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