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雑誌目次

雑誌文献

臨床泌尿器科58巻4号

2004年04月発行

雑誌目次

特集 イラストレイテッド泌尿器科手術

副腎摘除術―経腹膜式到達法

著者: 白木良一

ページ範囲:P.9 - P.17

 要旨:副腎腫瘍に対しては,術前に腫瘍の性状ならびに詳細な部位診断が可能である場合が多く,一般的には腹腔鏡による手術がよい適応である。しかし,多発性の褐色細胞腫,副腎皮質癌や転移性副腎腫瘍などで大きな腫瘍や郭清を必要とする悪性腫瘍では開腹手術を選択する。各手術法の特徴を踏まえて手術アプローチを決定する必要があるが,そのうえで,腫瘍の大きさ,内分泌活性,悪性腫瘍の可能性などを含めた総合的な判断が必要となる。

副腎摘除術―後腹膜式到達法

著者: 蓮井良浩

ページ範囲:P.19 - P.27

 要旨:副腎摘除術で後腹膜到達法は,小さな腫瘍に対して安全にしかも短時間で施行できる術式である。この術式について解説したが,現在施行されることは稀となっている。後腹膜到達法の中の経腰的到達法は鏡視下手術の後腹膜側方到達法と副腎【剥】離の術式は同じであるので,引き継がれた術式と考えられる。鏡視下手術から開放手術に術中に移行した場合のためにも,この術式について十分に理解することが必要である。

腎摘除術―経腹膜式到達法

著者: 冨田善彦

ページ範囲:P.29 - P.38

 要旨:根治的腎摘除術の際には腎の剝離に先立って腎血管の処理を行うことが原則で,空腸左側での後腹膜切開による左腎動静脈,大動静脈間での右腎動脈の結紮・切離が有用であることも多い。また,腎上極の腫瘍の場合には,左側では膵・脾の,右側では肝の授動が有用である。

腎摘除術―後腹膜式到達法

著者: 田島政晴

ページ範囲:P.39 - P.43

 要旨:腎への到達法には,経胸的・経腹的・経腰的の3つの方法がある。筆者が頻用している経腰的腹膜外到達法による腎摘除術の手術手技について紹介をし,注意点を解説した。

腎部分切除術

著者: 柳川眞

ページ範囲:P.45 - P.52

 要旨:対側の腎がない単腎または対側の腎機能がほとんどない機能的単腎などに発生した腎癌の場合には,腎機能温存手術としての腫瘍核出術または部分切除術が選択されることがある。本稿では,当科で行っている腎癌に対する腎部分切除術について,3術式(segmental polar resection,wedge resection,transverse resection)について,その手術のポイントを紹介する。

腎尿管全摘除術

著者: 深澤瑞也 ,   滝花義男 ,   荒木勇雄 ,   田邉信明 ,   武田正之

ページ範囲:P.53 - P.60

 要旨:本手術は切除範囲が広いため体位を的確に取ることが手術の基本になる。皮切は経腹膜的か経後腹膜的かによっても異なり,さらに連続か分割かでも異なる。リンパ節郭清の必要性などを鑑み,あらかじめ決定しておく必要がある。また膀胱のカフ切除では,今回膀胱外からの方法を紹介したが,膀胱を切開する方法もあり,腫瘍の位置などにより適宜決定する必要がある。このように本手術は多様性に富んでおり,症例に合わせた工夫が必要である。

腎盂形成術

著者: 島田憲次 ,   松本富美 ,   東田章 ,   相野谷慶子

ページ範囲:P.61 - P.71

 要旨:先天性水腎症は多くの場合には“high insertion”型をとるため,腎盂形成術の際には腎盂切開のデザインが最も重要となる。腎盂尿管吻合に際しては手術用ルーペを用いて慎重な操作を加え,腎瘻と吻合部にはステントを留置する。さまざまなvariationにも柔軟に対応できるよう,異常血管に対する処置や狭窄部が長い場合の術式にも精通しておく必要がある。

膀胱尿管逆流症の手術

著者: 高橋悟

ページ範囲:P.72 - P.78

 要旨:通常膀胱尿管逆流症の治療には尿管膀胱新吻合術が行われるが,その目的は通過障害を起こすことなく,確実に逆流を防止することである。そのためには,1)吻合後の尿管屈曲,狭窄を防ぐ,2)十分な長さの粘膜下トンネルを作成することが重要である。一方,最近内視鏡下尿管口粘膜下コラーゲン注入が考案された。良好な長期成績を得るためには追加注入が必要な場合もあるが,低侵襲という長所を有する。

膀胱全摘除術―女性患者の場合

著者: 近藤幸尋 ,   西村泰司

ページ範囲:P.79 - P.84

 要旨:女性の膀胱癌は,男性に比べ発生頻度が低いことおよび骨盤内の静脈叢の処置が容易であることより,成書でもあまり詳述されていない。本稿では,われわれが通常行っている女性患者の根治的膀胱全摘除術について述べた。尿管の処理やリンパ節郭清などの処理は男性患者と大きな差がないため図示せず,女性患者特有の処理のみを図示した。

膀胱前立腺全摘除術―男性患者の場合

著者: 長倉和彦

ページ範囲:P.85 - P.91

 要旨:尿路再建として自立排尿型の新膀胱造設と性機能温存を目的とした膀胱前立腺全摘除術を示した。上膀胱動脈,dorsal vein complex(DVC)を処理したのち,神経血管束を温存して下膀胱動脈,前立腺動脈を含む前立腺筋膜,膀胱側方茎を切離する。本法は,より高いQOLを目指したもので,多様な選択肢の1つとして,インフォームド・コンセントを得たうえで行うべき方法と考えられる。

―尿路変向術―回腸導管造設術

著者: 米瀬淳二 ,   福井巖

ページ範囲:P.92 - P.100

 要旨:尿路変向法の標準術式ともいえる回腸導管造設術を成功させるポイントとして,(1)セルフケアのできる適切なストーマ位置の決定,(2)安全確実な回腸回腸吻合,(3)漏れや狭窄の起きにくい尿管回腸吻合,(4)高さがあり変形のないストーマ,の4点が重要と考えられる。実際の手術の流れに沿って,この4ポイントを中心に記述した。

小腸を用いた膀胱再建術―Studer法とHautmann法

著者: 岡田弘

ページ範囲:P.101 - P.106

 要旨:泌尿器科医療の充実とともに,進行性膀胱癌患者数は減少しているが,今なお膀胱全摘除術を余儀なくされる患者はなくなっていない。これらの患者にとって尿路変向・尿路再建は将来のQOLを大きく左右する大問題である。理想的な尿路再建である新膀胱造設術には様々な腸管部位が用いられてきたが,本稿では回腸導管を通じて最も扱いなれた回腸セグメントを用いた新膀胱造設術について概説する。

前立腺被膜下摘除術

著者: 三田耕司 ,   松原昭郎 ,   碓井亞

ページ範囲:P.107 - P.115

 要旨:経尿道的前立腺切除術(TURP)が全盛の現在,前立腺肥大症に対する外科的手術のうち前立腺被膜下摘除術の頻度は少ない。しかし,TURPでは対応が困難な症例に時に遭遇することから,前立腺被膜下摘除術は泌尿器科医として修得すべき手技である。本稿では前立腺肥大症に対する恥骨上式,恥骨後式,会陰式前立腺被膜下摘除術の3術式について,その手術手技を中心に概説する。

恥骨後式根治的前立腺摘除術

著者: 荒井陽一

ページ範囲:P.116 - P.122

 要旨:前立腺全摘除術では腫瘍の根治性を確保しつつ,排尿や性機能など機能温存も同時に求められる。そのためにはDVCの確実なコントロールと解剖に沿った前立腺尖部の一連の展開が最も重要である。ここではDVC処理を含めた前立腺尖部の展開と側方アプローチによる神経温存に焦点を当てて,その手技上のポイントについて議論する。

膀胱腟瘻の手術

著者: 橘政昭

ページ範囲:P.123 - P.129

 要旨:膀胱腟瘻は産科的手術後,婦人科的手術あるいは放射線治療後および子宮癌の浸潤などによる二次的なものとして生じることが通常である。したがって,組織損傷が一度生じた部位での手術手技であり,その成功率は必ずしも良好ではない。手術手技としては経腟的と経膀胱的修復に大別されるが,いずれにしても瘻孔部分を正常に近い組織により膀胱壁と腟壁とで別々の層として閉鎖することが要点となる。ここではその実際の手技につき述べることとする。

―尿失禁の手術―尿道下吊り上げ術

著者: 井川靖彦

ページ範囲:P.130 - P.137

 要旨:尿失禁に対する手術療法は,膀胱蓄尿障害(過活動膀胱,低コンプライアンス膀胱)に対して行う膀胱拡大術と,尿道閉鎖機能不全に対して尿道抵抗を高める目的で行う尿失禁防止術の2つに大別できる。本稿では,これらのうち,特に,尿道括約筋自体の構造的または機能的障害である,いわゆる内因性括約筋不全(intrinsic sphincter deficiency:ISD)に対して筆者が行っている筋膜を利用した尿道下吊り上げ術(suburethral fascial sling procedure)の手術手技の実際について紹介する。なお,本法は,筆者が小川秋實教授から指導を受け,以降行っているものである。

―尿失禁の手術―TVT手術と尿道引き下げ操作(UPDP)

著者: 加藤久美子 ,   平田朝彦 ,   鈴木弘一 ,   吉田和彦 ,   村瀬達良

ページ範囲:P.138 - P.145

 要旨:尿道スリング手術は女性腹圧性尿失禁に対し良好な長期成績が期待できるが,過挙上すると尿閉が遷延する危険があり,尿道の支持をいかにtension-freeで行うかが重要である。TVT手術はプロリーン(R)メッシュテープを両端のニードルで腟壁側から腹壁側に通し,中部尿道をU字型に支持するスリング手術の一つで,術中ストレステストを指標にテープ位置を調節する。過挙上を防ぐ工夫としての尿道引き下げ操作(urethral pull-down process;UPDP),段階的なカバー除去と調節を中心に術式のポイントを述べた。

膀胱瘤の手術

著者: 鈴木康之

ページ範囲:P.147 - P.158

 要旨:膀胱瘤は骨盤底筋群と諸靱帯の弛緩の結果で腹圧性尿失禁と原因を同じくする。また,本疾患は性器下垂・脱出の一部分症で,治療には性器の処置も必要で術後再脱出や尿失禁を予防する術式の選択が不可欠である。膀胱瘤手術は比較的侵襲が少なく,本疾患の治癒がもたらす患者の生活の質の向上は計り知れないものがあることを考えると,高齢化社会における本手術の意義はますます高くなっている。

後腹膜リンパ節郭清術

著者: 奥村和弘 ,   寺地敏郎

ページ範囲:P.159 - P.167

 要旨:stageⅡAの症例に対しては限局的なRPLND,stageⅡB症例では,患側は腎茎より頭側を含めた広汎な郭清が必要となる。腫瘍径が小さなものでは,射精機能の温存のために腰部内臓神経と下腹神経の温存も考慮しなければならない。アプローチは,一般的には経腹的に行うが,主病変が腎茎より高い位置にある場合は経胸腹的アプローチも有効である。郭清はsplit and rollなどの手法を用い,郭清範囲の血管系を裸にする意識で行う。

陰茎部分切除術・陰茎全摘除術・鼠径リンパ節郭清術

著者: 川原元司 ,   中川昌之

ページ範囲:P.169 - P.180

 要旨:陰茎癌に対する陰茎部分切除術,全摘除術および鼠径リンパ節郭清術のポイントを述べた。陰茎切除線を想定して新しい外尿道口の位置を決定し,術後の排尿状態についても説明と同意を得る。全摘除術は陰茎根部で,部分切除術では病巣から2cm離して切除する。狭窄を避ける目的で,尿道断端は6時方向を縦切開して外翻させ,会陰部あるいは陰茎皮膚と縫合する。リンパ節郭清では可能なかぎり大伏在静脈を温存し,皮下脂肪組織を取りすぎて皮弁の血流障害を招かないよう注意する。

陰囊内手術

著者: 山本泰久 ,   平川真治

ページ範囲:P.181 - P.191

 要旨:陰囊内手術の5種を述べた。いずれも解剖学的知識に基づいた操作と確実な止血がポイントである。あまり施行する機会のないものもあるが泌尿器科医として必修であるので,1例1例を大切にすることが重要である。

尿道下裂修復術

著者: 谷風三郎

ページ範囲:P.192 - P.199

 要旨:尿道下裂修復術には多種多様の手術法が報告されているが,現在一期的に修復することが強く求められ,さらに手術成績の向上,術後の外観をできるだけ正常に近づけるなどさらなるレベルアップを求められているのが現状である。手術法の選択には尿道下裂の程度や手技的な習熟度などが重要となるが,組織の扱いや特殊な縫合技術などは共通したもので,適切な施設でのトレーニングと十分な経験が基本である。本稿では包皮内板の遊離全層皮膚移植(full-thickness free graft of preputial skin)を用いた一期的修復術を取り上げたが,手技的には特殊な技術を必要とせず,基本技術を身につければ,比較的安全に実施できることがメリットである。ただし,手術の実際を手術見学やビデオで学習したうえで実施する慎重さは必要である。

腎移植術

著者: 田邉一成

ページ範囲:P.201 - P.213

 要旨:腎移植術で大事な点は,1)安定した良好な視野を確保すること,2)自然な血流を確保するための最適な血管吻合部を選ぶこと,3)確実な手技により血管吻合すること,4)脆弱な膀胱粘膜への確実な尿管吻合,である。腎移植では血管が立体的に複雑に走行しているところで血管吻合を余儀なくされることや萎縮膀胱への尿管吻合なども多く,単一の方法にとらわれずに,場面に応じた血管吻合や尿管吻合を行うべきである。

ドナー腎摘除術

著者: 石橋道男 ,   平尾佳彦 ,   鈴木和雄 ,   大園誠一郎

ページ範囲:P.215 - P.224

 要旨:生体腎移植におけるドナーは健常者であることから生命の危険となる方法は避け安全で確実に機能温存できる手術を行う。開放創での腎摘除術と腹壁吊り上げ法による鏡視補助下ドナー腎摘除術の例を示したが,前記の原則を満たす術式であれば選択は自由である。脳死あるいは心停止ドナーからの腎摘出は虚血再灌流障害を防ぐよう腎をまず冷却灌流し,標準的な方法によって両腎を摘出し血管吻合に有利なように両腎を切離する必要がある。

内シャント造設術

著者: 野村芳雄 ,   三股浩光

ページ範囲:P.225 - P.232

 要旨:ブラッドアクセスとしての内シャントの良否は慢性維持透析患者のQOLをはじめ生命予後にも影響を及ぼす可能性がある。このため初回から長期間良好に機能するシャントを作製することが重要である。本稿では標準的な内シャントである橈骨動脈・橈側皮静脈間のシャント造設術の術式を中心に概説し,さらに解剖学的たばこ盆での内シャント造設術,また大伏在静脈をグラフトとしたシャント造設術についても言及した。

CAPDカテーテル挿入術

著者: 水政透 ,   平方英樹

ページ範囲:P.233 - P.244

 要旨:CAPDカテーテルのコネクトロジーが発達した現在では,出口部感染からの腹膜炎やカテーテル位置異常による除水不良がCAPD継続を断念する要因として重要となっている。その意味で,CAPDカテーテル挿入の際には慎重な対応が必要となる。本稿ではCAPDカテーテルの標準的な挿入方法,近年,出口部からのトンネル感染を防止する方法として注目されている段階的腹膜透析導入法(SMAP法)について述べる。

上皮小体摘除術

著者: 小出卓生

ページ範囲:P.245 - P.252

 要旨:原発性・続発性上皮小体機能亢進症の頸部開放手術の実際を解説した。手術の基本は,無血手術野,正しい剝離層,上皮小体の解剖学的基礎知識,注意深い観察とていねいな手術操作に要約できる。術前後の準備や管理についても併せて記載した。

経皮的腎(尿管)砕石術(PNL)

著者: 丹治進 ,   藤岡知昭

ページ範囲:P.253 - P.262

 要旨:Percutaneous nephro-ureterolithotomy:PNLは,腎および上部尿管結石に対し,腎瘻を介した内視鏡的手技により破砕,摘出する手術である。この治療法における成否の鍵は,第一に,内視鏡操作に適した腎瘻を安全に作成することにある。第二には,破砕機器などの結石の条件に見合った各使用機器を周到に準備し,これらを随時適応することで効率的な結石摘出を行うことにある。本稿では,これらのポイントを踏まえ,PNLにおける一連の治療方法を紹介する。

尿管鏡を用いた手術

著者: 太田信隆

ページ範囲:P.263 - P.269

 要旨:尿管鏡手術では高位截石位とし,透視を併用し手術を行う。尿管への内視鏡の挿入はガイドワイヤーを用いる。尿管鏡へのCCDカメラの接続では方向に注意する。尿管粘膜の浮腫性変化により視野が妨げられるときは灌流液を加圧するとよい。ファイバースコープの操作では第2彎曲部を有効に利用する。操作チャンネル内でレーザーファイバーを安定させるためには尿管カテーテルを被せるとよい。

経尿道的前立腺摘除術(TURP)

著者: 伊藤直樹 ,   古屋聖兒 ,   舛森直哉

ページ範囲:P.271 - P.277

 要旨:TUR-Pは前立腺肥大症治療のgold standardであり,泌尿器科医として習熟しておきたい手術である。その手順は,①12時切除,②側葉切除,③5~7時切除,④尖部切除と大きく4つに分けられる。常に全体像をイメージしながら,オリエンテーションをつけながら手術する。低侵襲手術であるためには出血のコントロールを常に行うこと,切除面を平坦にするように心掛け穿孔を避けること,できるだけ短時間で終えることが肝要である。

経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)

著者: 黒田昌男 ,   宇佐美道之

ページ範囲:P.278 - P.282

 要旨:TURBTは表在性膀胱癌の標準的治療として広く行われている外科的治療法である。手術のポイントは,1)無作為生検は切除前に行う。腫瘍も生検しておく,2)切除ループを膀胱壁に接触させた状態で電気メスのスイッチをONにすることはできるだけ避ける,3)電気凝固すると切除しにくくなるのでできるだけ避ける,4)膀胱を過伸展させた状態で切除しない,5)切除最深部は,生検鉗子で組織を採取する,などである。

腹腔鏡下副腎摘除術

著者: 川喜田睦司

ページ範囲:P.283 - P.293

 要旨:副腎への到達法は種々あるが,経腹膜的到達法のなかで右は前方到達法,左は側方到達法をとりあげる。右側の場合,左半側臥位とし4本のトロカーを使用する。肝を挙上し下大静脈外側を露出する。副腎内側を【剥】離,中心静脈をクリッピング,切断する。左側では,右正側臥位とし3本のトロカーを使用する。下行結腸の外側で後腹膜を切開し融合筋膜の間を剝離する。脾,膵を脱転して左腎静脈を露出し,中心静脈をクリッピング,切断する。

腹腔鏡下根治的腎摘除術

著者: 雑賀隆史 ,   小野佳成

ページ範囲:P.295 - P.301

 要旨:腎細胞癌に対するわれわれの行っている腹腔鏡下腎摘除術の手術手技を紹介し,1992年から筆者らの経験した200例における手術成績,長期臨床経過について検討し,同術式の有用性について言及した。現在では主として経腹的到達法で腎を遊離しており,開腹手術よりも少ない出血量で,短期間での社会復帰が可能である。長期成績においても,T1症例,T2,T3症例ともに開腹術と比較して遜色なく,腎細胞癌に対する術式として有用である。

ハンドアシスト法を用いた後腹膜鏡下根治的腎摘除術

著者: 河内明宏 ,   藤戸章 ,   三木恒治

ページ範囲:P.303 - P.310

 要旨:1999年11月より腎腫瘍に対してハンドアシスト法を用いた後腹膜鏡下根治的腎摘除術を施行している。その治療成績を検討した。腎腫瘍110例,T1 102例,T2 8例であった。手術は,全身麻酔下に患者を腎摘位とし,7cmの傍腹直筋切開をおき,ここにLAPDISC(R)を装着し,3本の12mmポートを設置した。LAPDISC(R)より助手が手を入れ,術者は両手で体腔鏡用器具を操作し,後腹膜鏡下根治的腎摘除術に準じて手術操作を行った。手術時間は平均205分,出血量は平均184mlであった。合併症は,7%(8/110)に認めた。1例において腎静脈からの出血のため開放手術に移行した。ハンドアシスト法を用いた後腹膜鏡下根治的腎摘除術は,低侵襲で有用な術式と考えられた。

腹腔鏡下腎尿管全摘除術

著者: 溝口裕昭 ,   三好みどり ,   牟田口和昭 ,   矢野明 ,   大口泰助

ページ範囲:P.311 - P.316

 要旨:腎盂・尿管癌に対する腹腔鏡下腎尿管全摘除術についてイラストを用いて解説する。原則としてpurely laparoscopicにまず腎摘除術を行い下腹部に加えた斜切開創から腎尿管をen blocに摘出する。本術式は従来の開放手術に比べ腰部斜切開創がないことから術後の創痛が軽減されうる。T1までの腎盂癌および尿管癌(特に下部)に対しては開放手術に代わりうる安全で有用な術式であると思われる。

腹腔鏡下腎盂形成術

著者: 岩村正嗣

ページ範囲:P.317 - P.326

 要旨:腹腔鏡下腎盂形成術は,従来の開放手術の高い成功率に内視鏡手術の低侵襲性を併せ持つ術式として注目されている。われわれは1998年より本術式による治療を開始し,初期は成人における一次的狭窄例のみを適応としたが,現在では10歳以下の小児例や二次的狭窄例にも積極的に応用し良好な治療成績を得ている。本術式は体腔内での結紮・縫合技術の習得に時間を要するものの,従来の開放手術に比べると明らかに低侵襲であり,腎盂尿管移行部狭窄の外科的治療法の有用な選択肢となり得る。

腹腔鏡下前立腺全摘除術

著者: 中川健

ページ範囲:P.327 - P.336

 要旨:1998年に確立された腹腔鏡下前立腺全摘除術の導入,改良から良好な結果が得られている。難易度の高い腹腔鏡下手術であるが,疼痛軽減に加え,腹腔鏡の良好な視野が安全性,確実性に大きく貢献し,自己血貯血を不要とし,カテーテル留置,術後入院期間を短縮した。3時間以内で終了可能となり,手術および術後短期成績は満足できるものとなってきている。ここでは,われわれが行っている腹膜外到達法の術式を紹介する。

内視鏡下副甲状腺摘除術

著者: 加藤司顯 ,   奴田原紀久雄 ,   東原英二

ページ範囲:P.338 - P.341

 要旨:近年,頸部手術に内視鏡下手術が応用されるようになり,副甲状腺手術も内視鏡下に行われるようになってきている。鎖骨下前胸壁斜切開法,腋窩アプローチ法,前胸部アプローチ法など種々の方法が報告されているが,ここでは当院で行っている前胸部アプローチ法についてその手術手技につき報告する。

基本情報

臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

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74巻2号(2020年2月発行)

特集 いま話題の低活動膀胱―これを読めば丸わかり!

74巻1号(2020年1月発行)

特集 地域で診る・看取る緩和ケア―泌尿器科医として知っておくべきこと

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