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雑誌目次

雑誌文献

臨床泌尿器科58巻5号

2004年04月発行

雑誌目次

綜説

蓚酸カルシウム結石の発生は予防可能か?―最近の知見と今後の展望

著者: 高山達也 ,   大園誠一郎

ページ範囲:P.277 - P.286

要約

 蓚酸カルシウム結石の成因に関する研究は,蓚酸カルシウム結晶と腎上皮細胞との相互反応,蓚酸そのものによる腎上皮細胞障害,蓚酸分解菌の重要性が認識されている一方で,本疾患が生活習慣病として,環境因子や遺伝的因子からのアプローチも進んでいる。セリン:ピルビン酸/アラニン:グリオキシル酸トランスアミナーゼ(SPT/AGT)の種特異的,食習性依存性細胞内局在に関連して,ヒトでは総蛋白質の約4%を占めるL-ヒドロキシプロリンの摂取は高蓚酸尿により尿路結石のリスクファクターとなる可能性が示された。そして,原発性高蓚酸尿症ではないmild hyperoxaluriaにおいては蓚酸代謝に関わる酵素の遺伝子多型や突然変異がその発症に関与することが示唆されている。

手術手技 ここまできた泌尿器科日帰り手術 3

小児日帰り手術の麻酔

著者: 木内恵子

ページ範囲:P.289 - P.293

 要旨:当施設では小児外科,耳鼻科,口腔外科,泌尿器科などで,全身麻酔下に年間約330の小児の日帰り手術を行っている。泌尿器科の手術では片側精巣固定術,陰囊水腫根治術,縫線囊胞切除術,包茎手術などを対象としている。当日退院できずに1泊入院となるのは嘔吐,発熱などで年間数例である。日帰り手術の普及のためには安全な手術,麻酔の遂行と家族の受け入れが必要である。

日帰り手術の麻酔

著者: 井上哲夫

ページ範囲:P.295 - P.299

 要旨:当院での泌尿器科の日帰り手術は,経直腸的超音波ガイド下前立腺生検のほぼ全例とTURP,TURBTの一部について行っているが,麻酔法は全身麻酔(吸入ないし静脈麻酔)を第一選択としている。日帰り麻酔がルーチン化していない現状では,実施するうえで患者選択から周術期管理までにいたる安全を確保するために,病院体制の周到な整備はもちろん,特に手術担当科と麻酔科の2者間の連携を密にしておく必要がある。

セミナー 泌尿器科における漢方医学 3

漢方薬の基礎研究と臨床応用―頻尿に対する牛車腎気丸の効果

著者: 後藤章暢 ,   白川利朗 ,   日向信之 ,   和田義孝 ,   守殿貞夫

ページ範囲:P.301 - P.306

要約:われわれは,牛車腎気丸の作用機序が排尿反射中枢刺激時の膀胱収縮力に影響せず,膀胱進展により誘発された律動的膀胱収縮の頻度を減少させることを基礎的研究により明らかにし,その効果は下行性抑制系を介した膀胱知覚の抑制に起因する可能性を示唆してきた。この知見を元に,頻尿を主訴とする前立腺肥大症に対する牛車腎気丸の治療効果を検討した。その結果,牛車腎気丸は頻尿を主訴とする前立腺肥大症患者に使いやすい治療法と考えられた。

症例

尿膜管に発生した扁平上皮癌

著者: 関田信之 ,   須賀喜一 ,   斉藤博子 ,   神谷直人

ページ範囲:P.311 - P.313

 84歳の男性に発生した尿膜管扁平上皮癌の1例を経験した。主訴は肉眼的血尿と下腹部痛。腹部CT,MRIにて膀胱頂部から前壁に囊胞様領域を伴う8×7×6cmの腫瘍を認め,膀胱部分切除による腫瘍摘除を施行した。発生部位・発育形態から尿膜管腫瘍と考えられ,病理学的には扁平上皮癌と診断された。癌細胞は敷石状配列し,その一部にはsingle cell keratinizationが認められた。この症例の臨床経過を報告するとともに,尿膜管扁平上皮癌につき文献的考察を行った。

膀胱肉腫様癌の1例

著者: 黒川孝志 ,   加藤範夫 ,   森川史朗 ,   金井茂 ,   高木康治 ,   橋本純一

ページ範囲:P.315 - P.317

 排尿時痛を主訴として来院した73歳,男性。尿路感染症を認め,まずこの治療を施行した。その後施行した膀胱鏡検査にて,膀胱後壁から左壁にかけて非乳頭状広基性腫瘍を認めた。病理検査結果は肉腫様癌であった。根治的膀胱全摘除術,代用膀胱造設術を施行したが,2年後に再発し死亡した。

子宮外妊娠治療中に偶然発見された膀胱nephrogenic adenoma

著者: 益田良賢 ,   川上享弘 ,   金哲将 ,   若林賢彦 ,   吉貴達寛 ,   岡田裕作

ページ範囲:P.319 - P.321

 症例は37歳,女性。2003年1月子宮外妊娠の疑いで当院産婦人科に入院。子宮内掻爬術後の経腟的エコー検査で膀胱内に腫瘤を認め,当科に紹介された。膀胱鏡検査で後壁に約2cmの非乳頭状広基性腫瘍を認め,経尿道的切除術を施行した。病理組織診断はnephrogenic adenomaであった。泌尿器科手術や尿路感染症など誘因となる既往はなく,無症候性で子宮外妊娠の治療中に偶然発見された。術後5か月再発は認めていない。

尿閉をきたした前立腺貯留性囊胞

著者: 二宮郁 ,   滝川浩

ページ範囲:P.323 - P.325

 症例は49歳,男性。2002年12月16日,突然排尿困難が出現,翌日尿閉となり当科を受診した。尿閉以外の自覚症状はなく,直腸診,尿検査に異常はなかった。腹部エコーにて膀胱頸部に内尿道口を塞ぐ形で,約2.5cmの多房性の内部低エコーの腫瘤を認めた。膀胱鏡では,腫瘤は前立腺部尿道12時から発生し内尿道口を塞いでいた。血清PSAは3.7ng/mlであった。12月20日,内視鏡的囊胞壁切除術を施行,病理結果は前立腺貯留性囊胞との診断であった。

術後13年目に回腸導管に変更したKock pouch造設例

著者: 安藤忠助 ,   江本昭雄 ,   平田裕二 ,   田崎義久 ,   三股浩光 ,   野村芳雄

ページ範囲:P.327 - P.329

 患者は76歳,男性。62歳時に膀胱腫瘍に対し膀胱全摘除術,Kock pouch造設術を行った。その後Kock pouchに度々トラブルが生じ,今回輸入脚部狭窄症に対し内視鏡的切開を試みるも不可能であり,術後敗血症および播種性血管内凝固症候群をきたしKock pouch摘出回腸導管造設術を行った。Kock pouch造設術は最初に報告された禁制型尿路変向術であるが,合併症と他の優れた術式が存在する現在では主流ではない。

自然破裂により急性腹症を呈した副腎皮質腺腫

著者: 栗村雄一郎 ,   青木正治 ,   安達秀樹 ,   三宅正文

ページ範囲:P.331 - P.333

 症例は49歳,女性。検診のエコーで直径約6cmの左副腎腫瘍を指摘され,精査目的に当科を受診した。受診12日後左上腹部痛が出現,CTにて副腎腫瘍周囲に血腫を認め,左副腎腫瘍破裂の診断で左副腎摘除術を施行した。摘出標本は235g,病理学的診断はadrenal cortical adenomaであった。術後2週間目の採血では,末梢血検査,内分泌学的検査で異常を認めなかった。

既往に移行上皮癌を有する膀胱原発小細胞癌

著者: 黒川孝志 ,   加藤範夫 ,   森川史郎 ,   金井茂 ,   大村政治 ,   高羽秀典

ページ範囲:P.335 - P.337

 膀胱原発小細胞癌の1例を報告する。症例は,64歳,男性。既往歴に右腎盂癌,同膀胱再発を有する。定期的受診を自己中断し,右腎盂癌術後8年目に無症候性肉眼的血尿を自覚,当科を再診した。精査にて膀胱小細胞癌(pT2,N0,M0)と診断,根治的膀胱全摘除術,ハウトマン式代用膀胱造設術を施行した。術後強化化学療法としてEP療法を施行後,1年10か月現在再発,転移を認めていない。

硝酸銀注入療法が著効を示した異所性前立腺組織

著者: 橘田岳也 ,   佐々木真由美

ページ範囲:P.339 - P.341

 46歳,男性。肉眼的血尿を主訴に受診した。膀胱鏡にて前立腺部尿道に非乳頭状で比較的広範囲に発生した異所性前立腺組織を確認した。入院のうえ経尿道的切除術を施行するも血尿の再発をきたした。前立腺部尿道に対して硝酸銀注入療法を施行したところ,再発・副作用もなく治癒することができた。

小さな工夫

IPSSの認知度を高める解析方法

著者: 高岩正至 ,   酒井多喜夫

ページ範囲:P.344 - P.345

 国際前立腺症状スコアー(IPSS)は排尿に関する自覚症状を点数化したものである。7つの質問事項ついて,無症状0から重篤な症状5までの6段階のいずれかを選択し,総合評価は0点から35点までに分かれ,0点から7点までが軽い,8点から20点までが中程度,21点以上が重いと判定する(図1)。IPSS質問項目の中でQ1,Q2,Q4,Q7は膀胱刺激に関するものであり(図 1,斜字),Q3,Q5,Q6(図1,太字)は尿排出に関するものである。両者を区別して解析することで,患者・医療者ともに認知しやすくなった。

 膀胱刺激に関する4つの質問の合計点数を満点20から引いた数字を20で割り膀胱刺激満足率として%表示する。同様に尿排出に関する3つの質問事項の合計点数を満点15から引いた数字を15で割り尿排出満足率として%表示する。QOLも同様に%表示する。別表を利用すると計算の手間が省ける(図2)。

腎囊胞穿刺における経皮的胆管ドレナージチューブの有用性

著者: 白石晃司 ,   上領頼啓

ページ範囲:P.346 - P.346

 超音波ガイド下の囊胞穿刺,吸引および硬化剤注入は,腎囊胞に対する治療の第一選択となることが多い。22G穿刺針やピッグテールカテーテルを留置して行う場合が多いが,22G穿刺針のみだと内容液の排出が不十分であったり,ある程度内容液を吸引してくると囊胞壁を損傷する危険がある。一方,ピッグテールカテーテルやsingle Jカテーテルを使用すると吸引,造影および硬化剤は確実にできるものの手技的にも煩雑でガイドワイヤーなどの材料費もかさむ。経皮的胆管ドレナージチューブ(図A)は弾力があり囊胞内に留置した際に囊胞壁損傷の危険性はなく,先端3cmの部まで多孔式となっており(図B),ドレナージ性にも優れている。本来は胆管ドレナージ用に開発されたが腎囊胞穿刺に使用しても非常に有用である。

 患者を仰臥位とし上腕を頭側に伸ばし,腹部に枕を入れ,皮膚をイソジンにて十分に消毒する。1%キシロカインによる局所麻酔後,3.5 MHz超音波ガイド下に22G穿刺用針にて嚢胞を穿刺する。囊胞液の性状を観察し約10mlを細胞診に提出する。囊胞のサイズにもよるが可及的に囊胞液の吸引を行い(この時点で完全な吸引は目指さない),吸引した量と同量の造影剤を注入し囊胞造影を行い,壁の不整や尿路との交通の有無をチェックする。0.018インチガイドワイヤー(ピアノ鋼線)を挿入する。皮膚刺入部に抵抗があるため18G針にて皮膚を切開する。PTC-D用のドレナージ針(19G×270mm)(八光商事)をX線透視下に挿入し内針を抜去する。内容液を造影剤が完全に消失するまで吸引し(ピッグテールカテーテルと同様に大きな囊胞内ではドレナージチューブ先端の位置を微調整しながら吸引する),硬化剤を注入し(われわれはミノサイクリン100~200mgを使用),ドレナージチューブを抜去する。

交見室

寺島和光先生の意見に対して

著者: 津ヶ谷正行

ページ範囲:P.350 - P.350

 本誌第57巻13号の「交見室」で,寺島和光先生は「包茎に対する保存療法の一つとしてのステロイド軟膏の塗布は,今日最もホットな話題である。……」と述べられ,座談会での「(ステロイド療法とはいっても)包皮翻転の拡張効果がどこまで加味されているのかが問題であり,…翻転だけでその効果がでているのではないか」ということに対し,6論文を紹介してステロイド療法の有効性と安全性についてご意見を述べられました。この指摘されたことに対して私の意見を述べさせて頂きます。

 寺島先生の引用された6論文についてまずコメントさせて頂きます。

基本情報

臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

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