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雑誌目次

雑誌文献

臨床泌尿器科58巻6号

2004年05月発行

雑誌目次

綜説

小児泌尿器科疾患診断・治療の実際と今後の展望

著者: 近田龍一郎

ページ範囲:P.361 - P.375

要旨

 超音波検査の進歩と普及は,飛躍的に無症状の小児泌尿器科疾患を増加させた。画像的には水腎症という形で発見されるが,速やかな外科治療が必要なものから特に治療を要しないものまで多様な疾患が含まれており,その鑑別診断の進め方が重要となる。また,小児期・青年期の腎不全の原因として先天性腎尿路奇形が重要な位置を占めているが,基礎疾患の治癒は治療の終了ではない。腎機能を中心とした長期経過観察が,良好な腎機能の保持に必須である。先天性水腎症や膀胱尿管逆流症が小児泌尿器科疾患の多くを占めるが,発生頻度,診断・治療の進め方,保存的観察例の長期経過,腎機能の予後などについて多施設が参加した共同研究が必要である。

手術手技 ここまできた泌尿器科日帰り手術 4

包茎手術(包皮環状切除術)

著者: 神崎正徳 ,   木下佳久 ,   神崎政裕

ページ範囲:P.377 - P.381

要旨:当院で行っている包皮環状切除術の術式について説明した。特に新しい手技はないが,患者がどのような手術方法,結果を希望しているかをよく理解してから執刀する必要があると思われる。

小児の包茎に対するデイ・サージャリー

著者: 藤村敬 ,   岸本裕一 ,   滝本至得

ページ範囲:P.383 - P.388

要旨:当院における小児の包茎に対する全身麻酔下でのデイ・サージャリーを紹介する。小児の精神的ストレスを軽減させる意味でもデイ・サージャリーは有意義であるが,限られた時間で安全に治療を進めるためには,ていねいで確実な処置とスタッフや設備の確保,医療システムの体制が整っていることが重要である。

セミナー 泌尿器科における漢方医学 4

尿路不定愁訴と漢方医学

著者: 石橋晃

ページ範囲:P.391 - P.395

要約:尿路不定愁訴は,西洋医学的な治療では治りにくい疾患である。西洋医学的診断法では治療の根拠となる所見が把握しにくいことが,その一因と思われる。東洋医学,特に漢方では,これらの症状を一種の機能的障害と捉え,漢方的診断の下に漢方製剤を選び治療すれば,多くの有効例が得られると考える。患者のために,西洋医学同様に正しく漢方を用いれば,さらに多くの治療例が得られるはずである。

トピックス Aging male

男 面倒見ます 泌尿器科―男性の更年期/熟年期,さらに思春期にも視野を広げて

著者: 熊本悦明

ページ範囲:P.397 - P.405

 要旨:現在の医学領域のなかで,男性の解剖・生理全般を含めて,臨床上,男性学を十分カバーし得るのは,わが泌尿器科のみである。最近とみに“男の一生”に関する医学的問題が注目され始めている社会的背景からいっても,今や,その泌尿器科の特色を明確に主張し,また臨床上,積極的に尽力すべき時が来ている。ところが現在のわが泌尿器科は,ロゴマークが象徴するようにアメリカ式の泌尿器外科志向が強すぎていると言ってよい。女性医学に婦人科が積極的に対応しているように,男性医学に,わが泌尿器科がしっかり対応すべきであろう。そのためにもわれわれはUrology/Andrologyの旗を高く掲げねばならないと信じている。そしてわがロゴマークも,それにマッチしたものに改めて,今後大きく発展することを期待して止まない。

男性更年期障害(PADAM)の問題点と将来展望

著者: 奥山明彦

ページ範囲:P.407 - P.412

 要旨:男性更年期障害は社会的な認知も少しずつ広がり,実際に泌尿器科を受診する患者数も増え,医療の必要が高まっている。しかし現実は,ようやく診断・治療におけるガイドラインの作成などの検討を開始した段階である。保険診療での医療が不可能という根本的な問題に加え,質問票策定に関する対応やテストステロン測定における諸問題,テストステロン補充療法に対する条件,さらに除外基準など検討課題は多い。新しいテストステロン製剤の導入を含め,現況と今後の課題を概説した。

Agingと男性性機能障害

著者: 丸茂健 ,   村井勝

ページ範囲:P.413 - P.418

 要旨:勃起機能は加齢またはそれに伴って発生する内分泌環境と陰茎局所の変化,種々の疾病とその治療,外傷,生活習慣などによって影響を受けることが知られている。加齢に伴う性機能の低下は避けられないものの,中高年になってからの男性性機能を良好に維持するためには危険因子となる疾病の予防と管理も重要である。疾病の治療に際しては,個々の患者に応じて治療を選択することにより勃起障害を避けることも可能となってきた。勃起障害の危険因子については,さらなる疫学的な調査を発展させることは勃起障害の予防と治療に役立つものと考えられる。

原著

急性腎盂腎炎入院例の臨床的検討―複雑性腎盂腎炎,結石性腎盂腎炎を中心に

著者: 吉田宗一郎 ,   中込一彰 ,   後藤修一

ページ範囲:P.423 - P.426

 過去6年間に当院泌尿器科および救急部に初診入院加療を行った急性腎盂腎炎98例を対象にその治療内容を検討した。複雑性腎盂腎炎患者83例中,57例(69%)が第2世代セフェム・ペニシリン系薬にて反応治癒し,尿培養にて46%より大腸菌が検出され,初発時には単純性腎盂腎炎同様に各種抗菌薬に高い感受性を示すと考えられた。また結石性腎盂腎炎患者23例中,15例(65%)は抗菌化学療法のみにて治癒したが,5例(21%)が平均1.8日にて敗血性ショックに陥っており,特にCRP≧15mg/dlの症例では早期に尿路管理を施行すべきであると考えられた。

症例

大動脈解離を契機として発見された膀胱褐色細胞腫

著者: 杉浦晋平 ,   槙山和秀 ,   鈴木康太郎 ,   藤浪潔 ,   斎藤和男 ,   野口和美

ページ範囲:P.427 - P.429

 症例は56歳,女性。急性大動脈解離で入院時のCTで膀胱腫瘍指摘され,当科を受診した。3年前より排尿時冷汗,嘔気があったが放置していた。膀胱鏡所見は左後壁粘膜下腫瘍。内分泌検査で血中および尿中カテコールアミンが高値であった。排尿時血圧測定では排尿直後の急激な血圧上昇とその後急激な低下があった。排尿時内分泌検査でも排尿直後の血中カテコールアミンの上昇を認めた。膀胱褐色細胞腫の診断で膀胱部分切除を施行した。術後8か月の現在,再発は認めていない。

膀胱内前立腺上皮性ポリープ

著者: 熊本廣実 ,   太田匡彦

ページ範囲:P.431 - P.433

 73歳,男性。両側陰嚢腫大,前立腺腫瘍マーカー高値にて当科を受診した。両側陰囊水腫と診断し両側陰囊水腫根治術,前立腺針生検を施行した。同時に施行した尿道膀胱鏡にて左尿管口内側に広茎性乳頭状の膀胱腫瘍を確認し,経尿道的膀胱腫瘍切除術を施行した。病理組織診断は前立腺組織で前立腺特異抗原染色陽性であり,前立腺上皮性ポリープと診断した。前立腺上皮性ポリープは前立腺部尿道で散見されるが膀胱内発生は稀で,自験例を含め本邦報告例は12例であった。

小さな工夫

指ガイド下経直腸的前立腺狙撃生検(directed biopsy)の手技

著者: 小野芳啓 ,   伊藤一人

ページ範囲:P.436 - P.436

 泌尿器科研修医となった1989年の頃は腎生検用バイオプシーガンが普及し,それまでの手動によるトゥルーカット針での前立腺生検からの移行期であった。指ガイド下で経直腸的前立腺生検を行う際,特に手動で生検する場合など手技の優劣がそのまま標本の採取量,直腸粘膜損傷や出血などの合併症,所要時間などに直結した。現在においても直腸診で癌病巣の局在を疑う部位に対する指ガイド下での狙撃生検(directed biopsy)が必要な場合がある1)。手技に不慣れな研修医時代に工夫し,現在でも用いている手技を紹介する。以前に西本先生らによる手技の工夫が紹介されており,併せて参考にしていただきたい2)

 手技(図を参照)

  A:滅菌手袋を着用し,生検針保護用チューブの先端を斜めに切断し角をトリミングする。約10cm長に切断し,先端の2分の1位はチューブをつぶして扁平にしておく。

病院めぐり

古川市立病院泌尿器科

著者: 沼田功

ページ範囲:P.438 - P.438

 古川市は東北新幹線で仙台から北へ一駅(約15分)のところにあり,東北自動車道,古川インターもあるため交通の便の大変よいところです。北は栗駒山を仰ぎ,江合川と鳴瀬川が流れる大崎平野の中心にあり,水のおいしさにも恵まれ,全国でも有名な「ササニシキ」や「ひとめぼれ」といったお米の誕生の地です。現在では仙台のベッドタウン化が進み,人口8万人規模の都市となっていますが,平成17年4月には周辺7市町の合併で,14万人規模の「大崎市」になり,「古川市立病院」もそれに伴い「大崎市民病院」に変わる予定です。

 当院の前身は,昭和13年12月,県下初の古川町を中心とする20数か町村の産業組合出資による「大崎医療利用組合連合会」が発足させた大崎久美愛(おおさきくみあい)病院です。以後さまざまな変遷を経て,昭和32年6月に「古川市立病院」に改称,開院当時の病床数は一般140床,結核60床,伝染病18床でした。その後,小児科,整形外科,泌尿器科などを増設し,昭和46年12月に総合病院として承認されました。現在では人工腎臓透析センター,救急医療センターも開設し,病床総数452床,診療科18科,常勤医師72名(うち臨床研修医23名),1日の外来患者数は約1,000名となっています。平成15年7月には病院機能評価の認定を受けました。

福島労災病院泌尿器科

著者: 富田健太郎

ページ範囲:P.439 - P.439

 当院のあるいわき市は,福島県の南東端に位置し,南端は茨城県に接しています。東は太平洋に面しているため,寒暖の差が比較的少なく気候に恵まれた地域です。平成15年4月の静岡市の合併まで日本で一番面積の広い市(東京23区の約2倍)であり,初めて当院に来られた方はその広さ(市境から病院までの距離)に驚かれます。

 いわき市は明治時代より炭鉱業で栄え,戦後には常磐炭鉱は隆盛を極めていました。それに伴い増加する石炭産業に従事する労働者の労災医療の充実をはかるために,昭和30年3月に開院いたしました。その後の石炭産業の斜陽化による炭鉱閉山により,病院を取り巻く環境は大きく変化した一方,地域医療のニーズが高まり,開院当初は3診療科,病床が50床であったものの,現在は17科,428床まで増加しています。

基本情報

臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

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