臨床泌尿器科58巻7号

2004年06月発行

特集 前立腺生検の最前線

前立腺生検の病理診断―基底細胞の評価と境界病変を中心に

著者： 小塚祐司¹ 今井裕² 山中光規朗¹ 加藤裕也¹ 白石泰三¹²

所属機関： ¹三重大学医学部附属病院病理部 ²三重大学医学部附属病院病理学第二講座

ページ範囲：P.533 - P.539

要旨

　高分化腺癌の病理診断は，病変が小範囲にとどまる生検検体では時に診断が困難である。良性および境界性病変を，組織構築が癌に類似するために問題となる病変（AAH，篩状腺管過形成，基底細胞過形成性，萎縮腺管，肉芽腫性前立腺炎）と細胞（核）異型の点から癌との鑑別を要する病変（PIN）に大別し解説した。癌では基底細胞が消失しているため，日常の病理診断ではHE染色による弱拡大での組織構築と強拡大での核異型を含めた細胞の観察を基本に，免疫染色による基底細胞の同定を総合して行われる。しかしながら基底細胞の確認は生検標本では限界があり，再生検が必要となる場合があることを理解しておく必要がある。