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雑誌目次

雑誌文献

臨床泌尿器科59巻1号

2005年01月発行

雑誌目次

綜説

泌尿器癌に対する腹腔鏡下手術

著者: 小野佳成

ページ範囲:P.7 - P.16

最近,癌の外科的治療にも内視鏡手術が広く行われつつあるが,本稿では泌尿器癌に対する腹腔鏡下手術のうち,比較的多くなされている腎癌に対する根治的腎摘除術,腎部分切除術,腎盂尿管腫瘍に対する腎尿管摘除術,前立腺癌に対する根治的前立腺摘除術について現時点での手術成績,制癌効果について概説した。

手術手技 ここまできた泌尿器科日帰り手術 10

ARTにおける泌尿器科手術

著者: 石川博通

ページ範囲:P.19 - P.25

男性不妊の手術は精子形成障害に対する手術と精子輸送路閉塞に対する手術とに分けられる。前者には精索静脈瘤手術,停留精巣手術および精巣精子採取術がある。後者には精路再建術の精巣上体精管吻合術および精管精管吻合術があり,それが不可能な場合には精巣精子採取術および人工精液瘤造設術を行う。これらを日帰り手術の範疇で考えることも可能であるが,それが難しい場合もあるのが現状である。

ART時代における生殖医療の治療および手術

著者: 岩本晃明 ,   武村宏 ,   馬場克幸

ページ範囲:P.27 - P.35

ART時代となって受精には少数の精子だけでこと足りるとの風潮に泌尿器科医としてはやり切れない。無麻酔で精巣・精巣上体に直接穿刺して精子を採取すればよいとの考えに異論を唱えるのは筆者一人であろうか。現在でも一部の施設で局所麻酔で行っている日帰り検査・治療を,筆者らは患者に気持ちよく,痛みもなく検査・治療を受けて頂くため1泊2日の入院を勧めている。本稿では無精液症,無精子症,多箇所精巣生検,精管精管吻合術について言及する。

精巣内精子回収法

著者: 六車光英 ,   日浦義仁 ,   松田公志

ページ範囲:P.37 - P.41

無精子症は精子形成障害による非閉塞性無精子症と,精路の閉塞による閉塞性無精子症に分類される。非閉塞性無精子症は以前は挙児不能とされていたが,最近では精巣内精子回収法(testicular sperm extraction;TESE)で精巣内精子を回収できれば,顕微授精で挙児の可能性がある。本稿では非閉塞性無精子症に対するmicrodissection TESEについてわれわれが行っている方法を述べた。

セミナー パソコン活用術とその周辺 4

統計解析とデータマネジメントにおける表計算ソフトの利用法

著者: 樋之津史郎

ページ範囲:P.43 - P.52

表計算ソフトはデータ入力,データチェック,簡単なデータ解析には大変有用なソフトウエアである。データの入力の際には,その後の加工を考えてデータの型に注意して入力しなくてはならない。数値型,文字列型の違いをよく理解するべきである。日付型を設定したセルは計算に便利だが,注意しなくてはならない点も多い。本格的な統計解析は専用のソフトで行うようにして,本稿ではエクセルでのデータの入力,チェックに有用な手法をいくつか紹介した。

原著

高位精巣摘除を施行した陰囊内病変の臨床統計

著者: 駒井好信 ,   漆原正泰 ,   森本信二 ,   酒井邦彦

ページ範囲:P.57 - P.61

術前に精巣腫瘍または精巣上体腫瘍と診断し,高位精巣摘除を施行した陰囊内病変についてレトロスペクティブに検討した。対象は,1986年から2003年までの間に当科で高位精巣摘除を施行した61例である。胚細胞腫瘍が45例,非胚細胞腫瘍が16例で,両群を比較すると,診断時年齢,主訴,腫瘍マーカーの有無に関して有意差を認めた。本統計の結果は,高位精巣摘除に対するインフォームド・コンセントを得るうえで一助になると思われた。

症例

ダウン症候群に発生した精巣腫瘍

著者: 角野佳史 ,   平田昭夫

ページ範囲:P.63 - P.65

症例は32歳,男性。生下時よりダウン症候群と診断されていた。左陰囊内容の腫大を主訴に当科受診。触診・陰囊エコーにて精巣腫瘍が疑われ,左高位精巣摘除術を施行。病理組織では,セミノーマ,pT1であった。明らかな転移を認めなかったため,追加治療は行わなかった。ダウン症候群に合併した精巣腫瘍報告例は少なく,本症例は本邦32例目にあたる。

クリッピングにより止血した前立腺生検後の直腸出血

著者: 作間俊治 ,   小宮仁 ,   古賀有希

ページ範囲:P.68 - P.69

74歳の男性が,排尿困難と残尿感を訴え来院した。PSAは0.66ng/mlであったが,前立腺は鶏卵大で左葉で硬結を認めた。仙骨麻酔下に系統的経直腸的前立腺生検を行ったが,生検3時間後に高度の直腸出血を呈した。大腸内視鏡にて動脈性出血を認め,クリッピングにて完全に止血された。生検標本の病理組織学的検査では,悪性所見は認められなかった。

精巣鞘膜を用いて整復術を施行したペイロニー病

著者: 今井篤 ,   米山高広 ,   梶原哲 ,   橋本安弘 ,   古家琢也

ページ範囲:P.71 - P.73

患者は67歳の男性。2003年1月,屈曲による性交不能を主訴に当科を初診した。勃起能,射精能は正常。屈曲は約60度。硬結は背側環状溝付近より陰茎根部まで広範に認められた。約1年間経過観察するも変化なく,手術目的に2004年1月入院した。手術法は陰茎海綿体白膜切除,および右陰囊より採取した精巣鞘膜による補塡術が施行されたが,軽度屈曲が確認されたため,Nesbit法が追加された。

拡大手術を施行した腎浸潤性移行上皮癌

著者: 漆原正泰 ,   駒井好信 ,   森本信二 ,   酒井邦彦

ページ範囲:P.75 - P.77

63歳男性が肉眼的血尿で来院。画像上,腎実質および腎周囲組織に浸潤する右腎盂腫瘍と診断した。術中,腫瘍が下大静脈に浸潤していたため腎尿管全摘とともに下大静脈合併切除術も行った。病理組織学的に腎浸潤性移行上皮癌であった。術後,後腹膜腔再発によると考えられるイレウスが遷延し再手術を行った。その後,うつ状態や腸瘻も加わり追加治療を行えないまま術後6か月目に癌死した。

小さな工夫

女性の間欠自己導尿練習を進めるにあたっての一工夫

著者: 大野玲奈 ,   山田拓己

ページ範囲:P.78 - P.78

当院は,救命センターを持っていることもあり,リハビリテーション科,整形外科より,自己導尿指導の依頼を受ける機会が多い。このような患者の場合,外来通院患者に比べて,四肢の運動や,導尿の姿勢を保持することに問題があり,特に女性の場合,手鏡を使ってカテーテルをなんとか挿入できるようになったものの,カテーテルが短いので尿を取りこぼしてしまう局面にたびたび遭遇する。

 トイレなどで盲目的にカテーテルを挿入できるようになるまでの習得期間が長い場合など,患者が少しでも快適に練習でき,なおかつ習得を助けるような方法を考案したので紹介する。

学会印象記

第27回国際泌尿器科学会(SIU)印象記―初めての国際学会

著者: 東浩司

ページ範囲:P.80 - P.81

第27回SIUはハワイ,ホノルルのハワイコンベンションセンターにて10月3日から7日までの5日間にわたり開催されました。10月といえどもやはりハワイは暑く,そしてやはり日本人観光客の多い島でした。

 今回の学会は私にとって初の国際学会であり,不安と緊張を抑えながらハワイ入りしたのを覚えています。10月3日にホノルル空港よりホテルに入り少し休憩した後に4日より本格的に行われる会場の下見にハワイコンベンションセンターに向かいました。コンベンションセンター内でいきなり「Can I help you?」とガードマンの方に声をかけられ,「私は日本から来た泌尿器科医で明日からの学会の会場の下見に来ました。」と心では思ってはいましたが,結局口にすることができず,「SIU, here?」となんともお粗末な英語を披露することになりました。さらには「Registration?」と聞かれ「Yes!」と答えたため,事前登録表もその時持ちあわせていないにもかかわらず,登録会場に連れて行かれ何もせずにその部屋から出てくるはめとなったという,前途多難な学会の始まりでした。

第27回国際泌尿器科学会(SIU)印象記

著者: 長尾一公

ページ範囲:P.82 - P.83

今回のSIUはハワイ,ホノルル島のハワイ・コンベンションセンターで,10月3日から7日までの5日間にわたり開催されました。常夏の島の印象が強いハワイですが,10月の気温は最高30℃,最低22℃で,湿度も低く,風も適度に吹くため比較的過ごしやすいものでした。私が滞在していたホテルでは,(1年中のことかもしれませんが)時期的に日本人の新婚旅行客や海外ウェディングが多いためでしょうか,日本人であふれている印象を受けました。

 SIUへの参加は前回のストックホルムに続いて今回が2回目でしたが,前回と同様に今回も参加者はアメリカ,ヨーロッパはもとより,アジア,アフリカの国々からも多くの泌尿器科医が集まって来ており,また熱帯疾患や発展途上国における泌尿器科診療と教育の問題に関するセッションもあり,本学会はAUAと比較して,より国際色豊かで教育性に富んだ学会だということを再認識致しました。

病院めぐり

東京医科大学霞ヶ浦病院泌尿器科

著者: 伊藤貴章

ページ範囲:P.84 - P.84

東京医科大学霞ヶ浦病院は茨城県稲敷郡阿見町というところにあります。阿見町は茨城県南部の土浦市とつくば市の南側に位置します。東京から60kmあまり,車で1時間ほどですが,静かな農村部にあります。また隣には茨城大学,県立医療大学などもあり,農村部の割には若者の姿も多く見かけます。われわれ教職員はこれらの大学の医療関係の講義も担当しており,交流をはかっています。周囲にはゴルフ場がたくさんあり,東京からの多くのゴルファーで賑わっています。隣の美浦村にはJRAのトレーニングセンターがあり,競馬関係の人も多く住んでいます。現在,阿見町と美浦村の合併案が進行中で,市に移行する予定です。普段は静かな農村部でありますが,最近は凶悪犯罪が起きることもあり,時代の流れを感じさせます。また,陸上自衛隊武器学校および武器庫があり,天気のよい日は,塀越しに大砲が天日干しされているのが見えます。また,一般開放されるときには,先着順で戦車に乗ることができます。

 当病院の歴史は古く,昭和24年9月に旧海軍予科練医務室の跡地の建てられました。その後発展を続け,現在,急性期病床480床,療養病棟45床を有する総合病院として地域の中核を成しております。また当院の診療圏は阿見町,美浦村などの稲敷郡をはじめ,土浦市,つくば市南部,南側は鹿島市,千葉県佐原町,東側は谷和原町,下妻市などから通ってこられる方も多くおられます。しかし,近隣の公共交通機関の便は悪く,多くの方が自動車で通院されており,職員のものも合わせると7か所の駐車場を確保しておりますが,それでもすぐに満杯になるのが現状です。

市立枚方市民病院泌尿器科

著者: 増田裕

ページ範囲:P.85 - P.85

市立枚方市民病院は昭和25年に開設され,次第に病床数を増やし,現在は約350床の総合病院となっています。昭和57年の泌尿器科常設以来,20年間部長を務められた岡野准先生が退職されたため,平成14年9月から大阪医科大学より和辻利和主任部長,筆者(副部長)が派遣され2人体制となりました。

 当科の特徴は,患者様本位の泌尿器科を目指し,不必要な点滴や抗生物質の投与をせず,入院当日手術を原則とし,TUR-Pを2泊3日で実施しているところです。TUR-Pにかかる費用は,約2週間の入院期間を要する医療機関と比較すると,医療費の患者様負担は「1割負担」の場合は半額に近い2万8千円ほどです。私たちが赴任して2年を超え,その間のTUR-P施術件数は200件を数えています。2泊3日で退院されても,退院後1か月以内の再入院率は5%以下です。術後は手術のビデオを家族の方にお見せして,解説しています。また,TUR-BTは1泊2日で行っています。

基本情報

臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

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