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雑誌目次

雑誌文献

臨床泌尿器科59巻11号

2005年10月発行

雑誌目次

綜説

前立腺全摘後のPSA再発に対する診断と治療

著者: 三股浩光 ,   佐藤文憲

ページ範囲:P.805 - P.810

要旨 限局性前立腺癌症例の発見が増えるとともに前立腺全摘も増加しているが,前立腺全摘後のPSA再発は20~40%の頻度にみられる。PSA再発は局所再発と遠隔転移に分けられ,治療は局所再発に対しては救済放射線療法を,遠隔転移に対しては内分泌療法を中心に行われている。しかし臨床的に再発部位を診断するのは非常に困難であり,治療の適応と方法については十分に確立されていない。本綜説では最近増加している前立腺全摘後のPSA再発について概説する。

手術手技 尿路変向・膀胱拡大術 5

Goldwasser式尿路変向術

著者: 原勲 ,   守殿貞夫 ,   山中望

ページ範囲:P.813 - P.819

要旨:Goldwasser式尿路変向術は上行結腸を利用した自排尿型代用膀胱形成術である。上行結腸を遊離し脱管腔化した後に尿道および尿管との吻合を行いパウチを完成させる。本術式は脱管腔化操作が単純であるため,自排尿型代用膀胱形成術の黎明期においては比較的よく用いられた手法であったが,Bauhin弁(結腸弁)の消失や腸管蠕動運動に伴う夜間尿失禁の頻度が高いなどの理由により,現在では本術式を第一選択としている施設は少ないのが現状である。

Reddy式尿路変向術

著者: 上領頼啓

ページ範囲:P.821 - P.834

要旨:腸管を利用した自然排尿型膀胱において尿失禁がなく,排尿効率の良い理想的な膀胱は内圧が低圧で不随意収縮がなく,形状が球形に近く,骨盤の中央に位置し,適度な容量をもつパウチを形成することである。S状結腸を利用するReddy法は,尿禁制は回腸利用に比べてやや劣るものの,パウチの過伸展がなく,排尿時には腹圧とともに結腸壁の圧も加わってパウチ内圧を高め,機能的にも形態的にも良好な排尿効率獲得の条件を満たしている。

セミナー 泌尿器科領域における重症・難治性感染症とその対策 5

臓器障害(肝・腎機能低下)時の感染症

著者: 石川清仁

ページ範囲:P.835 - P.842

要約:臓器障害(肝・腎機能低下)を持つ患者の尿路感染症に対する抗菌薬の使用法について検討した。原則的に,腎機能低下患者に投与不可能な抗菌薬はない。個々の腎機能,薬剤の種類に応じた調節を行い投与可能となる。また,肝機能低下時の指標は存在しないため,肝代謝・排泄薬剤は代替薬を考慮する必要がある。さらに,薬物動態・薬力学を理解し,副作用出現を最小限にとどめることも大切である。

原著

表在性膀胱癌の再発予防に対するピラルビシン術後早期短時間連日膀胱内注入療法

著者: 川口俊明 ,   高橋淳 ,   岩渕郁哉 ,   津久井厚

ページ範囲:P.851 - P.854

表在性膀胱癌26例に対するTUR後の再発予防を目的として,ピラルビシン(THP)30mgを生食50mlに溶解し,術翌日から連日7日間5分間貯留を行った。コントロールとしてTURのみの37例と非再発率を比較した。THP注入群の非再発率は1年83.7%,2年67%,コントロール群は1年77.6%,2年54.6%で統計学的に有意差は認められなかった。しかし多発腫瘍例では,THP注入により再発予防効果が認められた。THP注入による膀胱刺激症状の副作用は26例中3例(11.5%)と少なく,THP術後早期連日短時間注入療法は安全で有効な治療法であることが示された。

症例

間欠自己導尿を施行していた脊髄損傷患者に発生した膀胱扁平上皮癌

著者: 高橋聡 ,   橋本次朗 ,   竹内基 ,   宮本慎太郎 ,   田沼康 ,   高木良雄

ページ範囲:P.855 - P.857

症例は63歳女性で,脊髄損傷による排尿障害に対して間欠自己導尿を施行していた。肉眼的血尿を認めたため精査し,膀胱癌として根治的膀胱摘除術を施行した。病理組織学的には扁平上皮癌との診断であった。膀胱扁平上皮癌は慢性炎症が発生に関与しているが,間欠自己導尿施行患者に発生するのは稀であるとされる。肉眼的血尿を認めたり,顕微鏡的血膿尿を繰り返す場合には,膀胱鏡などの精査が早期診断に重要であると考えられた。

残存尿管に発生した尿路上皮癌

著者: 成本一隆 ,   福田護 ,   伊藤秀明 ,   小林忠博 ,   布施春樹 ,   小坂哲志

ページ範囲:P.859 - P.861

症例は70歳,男性。28年前に膀胱癌に対しTURBTの既往あり。1998年に右膿腎症に対し右腎摘除術を施行された。2002年12月近医にて無症候性肉眼的血尿を指摘され当科を受診し,CT,MRIから右残存尿管腫瘍を認めた。右残存尿管摘除術およびリンパ節郭清を施行した。病理組織学的には移行上皮癌,G2,pT2bであった。術後10か月現在再発を認めず,外来通院中である。

極細径膵管ファイバースコープにより観察した前立腺貯留性囊胞

著者: 松本信也 ,   高橋悟 ,   冨田京一 ,   武内巧 ,   太田信隆 ,   北村唯一

ページ範囲:P.863 - P.866

63歳,男性。主訴は血精液症。超音波検査,膀胱鏡,精管造影,経会陰式囊胞造影で前立腺囊胞と診断した。その後外来通院中に,足を組むと初期血尿をたびたび繰り返した。経尿道的囊胞開放術を試みることとした。これに先立ち精丘奥の前立腺部尿道の小孔から極細径膵管ファイバースコープを用いて腺腔内観察を行った。管腔内に数個の結石がみられ,さらに進めると囊胞内と思われる広い空洞に至った。結石による貯留性囊胞と考えられた。

胃癌からの転移性尿管腫瘍

著者: 萱沼賢司 ,   椎木一彦 ,   松下和通

ページ範囲:P.867 - P.869

患者は73歳,男性。2001年7月18日進行性胃癌に対し胃全摘術,脾臓合併切除,リンパ節郭清,胆囊摘出術を施行されている。その後,外科に定期受診していた。2003年4月CT検査にて右水腎症を指摘され当科を初診した。その後,尿細胞診・尿管鏡検査で尿管腫瘍と診断され,2003年9月29日右腎尿管全摘術を施行した。病理結果より原発性尿管腫瘍ではなく,胃癌の転移性尿管腫瘍と診断された。その後,外科にて化学療法を施行されている。

S状結腸癌術後の精索転移

著者: 河嶋厚成 ,   野原隆弘 ,   高橋徹 ,   北村雅哉 ,   赤井秀行 ,   岡聖次

ページ範囲:P.873 - P.875

われわれは,S状結腸癌術後に右精索に転移性腫瘍を認め,切除した1例を経験したので報告する。症例は75歳,男性。70歳時にS状結腸癌にてS状結腸切除。術後経過観察中,2004年7月CEA上昇とともに右陰囊内容物の腫大を自覚した。右転移性精索腫瘍を疑い,同年8月右高位精巣摘除術を施行した。病理組織学的所見では中分化型腺癌で,S状結腸癌の転移と確診した。本例は転移性精索腫瘍の本邦報告90例目であり,リンパ行性転移であると考えられた。

副腎領域に発生した後腹膜神経鞘腫

著者: 小林将行 ,   加藤智規 ,   野村和史 ,   脇坂正美 ,   近藤福雄

ページ範囲:P.877 - P.879

症例は67歳,男性。突然の右季肋部痛を主訴に当院を受診した。画像検査上,右副腎領域に65×50mmの内部不均一の腫瘍を認めた。腫瘍は内分泌学的に異常はみられなかった。悪性腫瘍の可能性を完全に否定できなかったため全身麻酔下に経腹的腫瘍摘除術を施行した。病理学的にAntoni A型優位の神経鞘腫と診断した。後腹膜原発の神経鞘腫は比較的稀である。副腎領域より発生した神経鞘腫は,自験例で本邦36例目であった。

小さな工夫

乳幼児の膀胱尿管新吻合術における膀胱内開創器として創縁保護具の使用経験

著者: 坂本亘 ,   石井啓一 ,   井口太郎

ページ範囲:P.881 - P.881

小切開手術における切開創の開創および創縁保護具として各種の製品が開発されている。これらの製品の特徴は,素材が持つ張力によって切開創を開口させ,切開創全体に均一な力が加わるため,開創による組織の挫滅や損傷を起こしにくい利点がある。われわれは,この創縁保護具の一つであるラッププロテクターTMレギュラ-100FFタイプ(八光メディカル)を,直接膀胱内に挿入することで,良好な視野のもと,乳幼児の膀胱尿管新吻合術を行っている。この方法を紹介する。

 型どおり,5cmの皮膚切開(Pfannenstiel incision)をおき,腹直筋を分けて膀胱前腔に入る。膀胱壁に3cmの縦切開をおき,創縁保護具をこの膀胱壁切開創より直接膀胱内に挿入する。つまり,創縁保護具の上リングは皮膚切開の外側で,下リングは膀胱内で開いた状態で固定された状態となる(図1)。この操作のみで膀胱内の観察,尿管口の確認,尿管内へのスプリントの挿入などが可能である。このあとの手術は,他の開創器(リングリトラクター)を併用し行っているが,創縁保護具ごと膀胱粘膜を牽引するため,膀胱粘膜の損傷は軽度である(図2)。

病院めぐり

筑波学園病院泌尿器科

著者: 塚本定

ページ範囲:P.883 - P.883

筑波学園病院は茨城県つくば市内に広がる通称「つくば研究学園都市」の南西に位置します。筑波大学からは車で15分程度であり,医局構成員の多くが筑波大学の卒業生です。つくばというと,1985年開催の科学万博EXPO'85を連想する方も多いと思いますが,当時から計画されていた第2常磐線こと,つくばエキスプレス(TX)が平成17年8月にようやく開通します。今までは陸の孤島と揶揄されていた当地ですが,つくば-秋葉原間が最短45分で結ばれることになります。沿線の開発も急ピッチで進行しており,特に終点のつくば駅周辺はショッピングモールや高層マンションなどの建設ラッシュで様変わりしています。広大な学園都市には,産官学の研究機関をはじめ整備された公園や基幹道路,周辺に広がる田園地帯やシンボルの筑波山などもあり,科学技術と自然,さらに利便性と調和した街へと発展することが期待されています。なお,当院はTX終点より2つ手前の万博記念公園駅より約3kmの位置にあります。

 筑波学園病院は昭和50年に開設され,現在,病床数は331床で,日本医療評価機構の認定病院です。平成17年4月現在,泌尿器科は塚本定科長,遠藤文康医長の2名の常勤医と,筑波大学病院からの非常勤医2名により診療を行っています。外来は月~土曜日の午前,手術日は火・水曜日です。ESWL,透視下処置,前立腺生検,ウロダイナミクス検査などは午後に行っています。膀胱鏡検査やRP,尿管ステント挿入・交換などの透視下手技はほぼすべて無麻酔膀胱ファイバースコープ下で行っています。1日外来患者数は平均40人余で,年間入院患者数は約300人です。平成16年度の手術件数は162件で,主な疾患は膀胱癌40例(TUR-BT 36例,膀胱全摘術4例),腎臓癌13例(根治的摘除9例,部分切除1例,内視鏡下手術3例),前立腺肥大症27例,尿管結石(TUL)11例などでした。常勤医が2人なので,手術日には外科をローテートしている初期研修医に助手を依頼することもたびたびという状況です。ESWLは平成16年10月にエダップ・ソノリスプラクティスを導入し,半年で約50件施行しており,日帰りまたは1泊入院で行っています。

基本情報

臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

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