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特集 ここが聞きたい―泌尿器科外来における対処と処方 1.尿路・性器の炎症性疾患 ■非特異性感染症 【精巣炎】
16.流行性耳下腺炎罹患後,右陰囊の疼痛,腫脹により精巣炎が疑われる患者です。対処と処方について教えて下さい。
著者: 佐々木春明1 島田誠1
所属機関: 1昭和大学横浜市北部病院泌尿器科
ページ範囲:P.60 - P.62
文献購入ページに移動ムンプスウイルスはパラミキソウイルスに属し,主に唾液を介する飛沫感染で,好発年齢は3~5歳である。ウイルスは耳下腺腫脹の7日前から9日後まで唾液中に排出されるが,感染性が強いのは耳下腺腫脹の1日前から5日後までとされる。また,ムンプスの潜伏期間は2~3週間で,通常は前駆症状なしに有痛性の耳下腺腫脹で発症する。約半数に顎下腺腫脹を合併する。流行性耳下腺炎としての発熱は1~4日,耳下腺腫脹は7~10日続き治癒する。ムンプス感染の85%は15歳以下の小児にみられ,感染は自然に消退するが,ムンプスウイルスは蛋白分解酵素に対して高い感受性を有しているため,耳下腺炎以外にも膵炎,卵巣炎,精巣炎,心筋炎,関節炎,甲状腺炎,乳腺炎,腎炎などの合併症を併発する。また,神経親和性であるため脳髄膜炎,内耳感染が起こりうる。聴力障害は蝸牛前提神経障害によって引き起こされ,その予後は不良とされる1)。
ムンプス精巣炎は耳下腺で増殖したムンプスウイルスが血行性に精巣に達して発病すると考えられ,思春期以前では稀だが,思春期以降のムンプス罹患男性の14~35%に発症し,罹患精巣の30~50%に萎縮性変化を起こすとされる2)。ムンプス精巣炎の好発年齢は10歳代後半から40歳までが多く,小児期男子では稀とされる。
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