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文献詳細

雑誌文献

臨床泌尿器科59巻4号

2005年04月発行

特集 ここが聞きたい―泌尿器科外来における対処と処方

1.尿路・性器の炎症性疾患 ■性感染症 【淋菌性尿道炎】

27.淋菌とクラミジアの混合感染が疑われる患者です。対処と処方について教えて下さい。

著者: 小野寺昭一1

所属機関: 1東京慈恵会医科大学泌尿器科・感染制御部

ページ範囲:P.101 - P.104

文献概要

1 診療の概要

 淋菌性尿道炎は,淋菌(Neisseria gonorrhoeae)による性感染症で,性行為あるいはその類似の行為によって感染する。主たる感染部位は,男性では尿道,女性では子宮頸管であるが,上行性に感染が拡がって男性では精巣上体炎,女性では骨盤腹膜炎を起こすことがある。また最近は,性の多様化に伴って咽頭や直腸に感染を併発することもしばしばみられる。稀に,淋菌による菌血症から播種性淋菌感染症(disseminated gonococcal infection:DGI)に進展し,発熱や全身の関節痛,関節炎を起こすことがある。

 わが国の淋菌感染症患者数の最近の動向をみると,1991年頃から1995年頃にかけて急激な減少がみられたものの,その後再び漸増傾向となり,現在でも増加が続いている。一時的な減少の原因としては,1980年代半ばにわが国でエイズで亡くなった患者がいたことや,マスコミのキャンペーンなどを通してエイズという疾患に対する恐怖感が煽られ,結果として危険な性を避ける風潮が高まったためと考えられている。1996年頃からの再増加の原因として,性風俗産業でのオーラルセックスによって感染する淋菌性尿道炎患者の増加や,ニユーキノロン耐性淋菌など薬剤耐性淋菌の蔓延などが重要視されている。さらに無症候の淋菌感染症患者の増加も大きな問題である。女性の子宮頸管炎において,多くは感染の自覚がないことはよく知られているが,淋菌性咽頭炎や直腸炎においてもほとんど症状を呈さない。したがって,性風俗店で感染する場合,咽頭に淋菌を保有するキャリアーは自身が感染源となっているという自覚がなく,男性のほうもオーラルセックスだけで感染するとは考えていない場合が多い。性感染症治療においては,感染源を明らかにし,再び同じ感染を繰り返さないように患者指導を行うことが重要であるが,直接的な性行為によらない性感染症が最近は増えていることを患者に認識させることも必要である。

参考文献

1)性感染症 診断・治療ガイドライン 2004年版:淋菌感染症.日性感染症会誌15(1)〔Supplement〕:8-13,2004
2)各務 裕,清田 浩,小野寺昭一,他:男子淋菌性尿道炎由来淋菌に対する各種抗菌薬の感受性―1999~2004年分離株の比較.日本性感染症学会第17回学術大会,2004,12月5日,東京
3)小野寺昭一:フルオロキノロン耐性淋菌,セフェム耐性淋菌.臨床検査45:827-832,2001

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1332

印刷版ISSN:0385-2393

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