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文献詳細

雑誌文献

臨床泌尿器科59巻4号

2005年04月発行

特集 ここが聞きたい―泌尿器科外来における対処と処方

1.尿路・性器の炎症性疾患 ■性感染症 【トリコモナス】

29.トリコモナス感染が疑われる男性患者です。対処と処方について教えて下さい。

著者: 出口隆1

所属機関: 1岐阜大学医学部泌尿器科

ページ範囲:P.110 - P.111

文献概要

1 診療の概要

 腟トリコモナス(Trichomonas vaginalis)は原生動物,鞭毛虫類に属し,ヒトのみに寄生し病原性を発揮する。女子では腟,子宮頸管,尿道,バリトリン腺などに寄生し,男子では尿道,精巣上体,前立腺,精囊腺,包皮などに寄生する。女子では,多くの場合には泡状の悪臭の強い帯下の増加,外陰,腟の刺激,強い掻痒感を呈するトリコモナス腟炎として臨床上遭遇される。一方,男子では,トリコモナスが尿路性器に寄生した場合にも,一般的には無症候のことが多い。約3年間にも及ぶ男子の長期不顕性感染例の報告もみられ,おそらくは前立腺および精囊腺に棲息し尿道へ排出されるものと考えられている1)。不顕性感染例より顕性化の割合については,その頻度は不明であるが,ときに非淋菌性尿道炎(nogonococcal urethritis:NGU)の症状を呈し2),さらに精巣上体炎,前立腺炎を引き起こす。さらに,膀胱や腎盂からのトリコモナスが検出された例が報告されている1)

 トリコモナスによる感染症は,主に性行為によるものが多く,古くから性感染症(sexually transmitted diseases:STD)として取り扱われてきた。しかし,女子では性交渉の経験のないものや幼児からもトリコモナスは検出されており,浴場,便器,タオル,手指,検診台,診察器具などを介する家庭内感染や院内感染なども想定される3)。男子については,ほとんどの場合はSTDと考えられ,男子からトリコモナスが検出された場合には,女子パートナーのほぼ100%にトリコモナスが検出される1)

参考文献

1)河村信夫:トリコモナス症:性感染症(STD)の治療学的展望―STDの流行への対策.化学療法の領域15(S-1):152-158,1991
2)Krieger JN, Verdon M, Siegel N, et al:Natural history of urogenital trichomoniasis in men. J Urol 149:1455-1458, 1993
3)保田仁介:トリコモナス.熊澤淨一(編):開業医のための性感染症―STD.南山堂,東京,pp120-126,1999
4)Krieger JN:Trichomoniasis in men:old issues and new data. J Urol 22:83-96, 1995
5)三鴨廣繁,玉舎輝彦:STDとしてのトリコモナス症.感染と抗菌薬4:74-76,2001
6)Wendel KA, Erbelding EJ, Gaydos CA, et al:Use of urine polymerase chain reaction to define the prevalence and clinical presentation of Trichomonas vaginalis in men attending an STD clinic. Sex Transm Infect 79:151-153, 2003
7)日本性感染症学会:腟トリコモナス症:性感染症―診断・治療ガイドライン2004.日性感染症会誌15(Suppl):26-28,2004
8)日本性感染症学会:非クラミジア性非淋菌性尿道炎:性感染症―診断・治療ガイドライン2004.日性感染症会誌15(Suppl):38-40,2004

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1332

印刷版ISSN:0385-2393

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