文献詳細
特集 ここが聞きたい―泌尿器科外来における対処と処方
2.神経因性膀胱障害と尿失禁 ■神経因性膀胱障害 【蓄尿障害】
34.膀胱容量は100mリットル未満で,強い無抑制収縮が生じる脊髄損傷(高位胸髄レベル)の男性患者です。残尿はなく,抗コリン薬の内服でも改善しません。対処と処方について教えて下さい。
著者: 中川晴夫1
所属機関: 1東北大学大学院医学系研究科泌尿器科学分野
ページ範囲:P.125 - P.127
文献概要
核上型の脊髄損傷による神経因性膀胱は,多くの場合,尿流動態検査では排尿筋過活動と排尿筋括約筋協調不全が合併していることが多い。無抑制収縮の存在は,切迫性尿失禁・反射性尿失禁の原因となるだけではなく,蓄尿中の膀胱内の高圧環境を引き起こすことから,水腎症や膀胱尿管逆流などによる腎盂腎炎,腎不全などの上部尿路合併症の原因となることも多い。また,この高圧環境は主に第6胸髄以上の脊髄障害の場合,自律神経過反射の原因ともなり,発作性の高血圧,徐脈などが引き起こされる。高血圧による脳出血,徐脈による心停止などが起こる場合もあり,自律神経過反射の予防が重要である。無抑制収縮に対する治療法としては抗コリン薬の内服が基本であるが,全例に対して十分な効果を示すとは限らない。また,口渇などの副作用,緑内障などの禁忌疾患の既往のために抗コリン薬の内服できない症例においてもその対策を検討することが重要である。
抗コリン薬無効例・使用不能例に対しては,以下のごとくさまざまな治療法が行われている。すなわち,(1)電気・磁気刺激療法:a 仙骨部皮膚表面,b 干渉低周波,c 磁気刺激,d 仙骨部植え込み型,(2)膀胱注入療法:a オキシブチニン,b カプサイシン,c レジニフェラトキシン,d ボツリヌス毒素,(3)手術療法,などである。
参考文献
掲載誌情報