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文献詳細

雑誌文献

臨床泌尿器科59巻4号

2005年04月発行

特集 ここが聞きたい―泌尿器科外来における対処と処方

4.尿路結石 【膀胱結石】

55.軽度の下部尿路閉塞がみられる膀胱結石摘出後の患者です。対処と処方について教えて下さい。

著者: 今井智之1 冨田善彦1

所属機関: 1山梨大学医学部腎泌尿器外科

ページ範囲:P.197 - P.199

文献概要

1 診療の概要

 下部尿路結石は,わが国では明治・大正時代に多く,1940年代までは尿路結石症の半数近くを占めていたものの,その後次第に減少し,近年,尿路結石全体の3~4%で安定している。ただし,尿路結石症全体の頻度は年々増加しているため,下部尿路結石自体の数も増加していることになる。下部尿路結石から上部尿路結石に比重が移る理由に,文明の近代化や食生活などの環境の変化がかかわっているとされる。下部尿路結石の男女比は4:1であり,上部尿路結石におけるそれが2.3:1と比べても男性の比率が高い1,2)。それは,男女の尿道長の解剖学的差のみではなく,下部尿路結石症の男性のピークが60~70歳にあることからわかるように,前立腺肥大症をはじめとする下部尿路閉塞が下部尿路結石の発生に大きくかかわっている。下部尿路結石において尿道結石はその10分の1未満で,ほとんどが膀胱結石である。

 膀胱結石の成因は上部尿路,いわゆる腎結石が下降して膀胱に落ちたものの排石されずに成長していった場合と,膀胱内で発生成長した場合がある。上部尿路から下降したとして,尿管結石で自然排石が期待できる大きさは一般的に5mm以下といわれており,正常ボランティアの膀胱頸部が8~11mmに開大すること3),尿道の太さも10mm弱には広がることを合わせて考えると,尿管を通り膀胱まで排石された上部尿路結石が,そのまま自然排石されずに膀胱にとどまったとすれば,通常その症例は排尿状態が悪いと考えられる。また,膀胱内で発生したとすれば,結石の形成初期の小さな段階で排石されていないことになり,やはり何らかの下部尿路通過障害が存在することになる。

参考文献

1)Yoshida O, Terai A, Ohkawa T, et al:National trend of the incidence of urolithasis in Japan from 1965 to 1995. Kidney Int 56:1899-1904, 1999
2)Terai A, Okada Y, Ogawa O, et al:Changes in the incidence of lower urinary tract stones in Japan. Int J Urol 7:452-456, 2000
3)矢野正隆,安田耕作:膀胱頸部の狭窄を示す疾患.臨泌53:103-111,1999
4)Ko DS, Fenster HN, Chambers K, et al:The correlation of multichannel urodynamic pressure-flow studies and American Urological Association symptom index in the evaluation of benign prostatic hyperplasia. J Urol 154:396-398, 1995
5)泌尿器科領域の治療標準化に関する研究班:EBMに基づく前立腺肥大症ガイドライン.じほう,東京,2001
6)Tubaro A, Vicentini C, Renzetti R, et al:Invasive and minimally invasive treatment modalities for lower urinary tract symptoms:what are the relevant differences in randomized controlled trials? Eur Urol 38:7-17, 2000

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1332

印刷版ISSN:0385-2393

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