文献詳細
特集 ここが聞きたい―泌尿器科外来における対処と処方
5.腫瘍(外来化学療法) 【前立腺癌】
文献概要
1 診療の概要
2002年度の日本人男性の平均寿命は78.32歳と世界でも有数の長寿国となっている(厚生労働省ホームページ:http://www.mhlw.go.jp/)。さらに,近年の出生率の低下に伴い,高齢者人口がますます増加していくことが予想される。前立腺癌は高齢者にみられる癌であり,年齢とともに罹患率が増加するとされ,今後,飛躍的に患者数が増えるものと推測されている。このような状況のなかで,設問にある「80歳代のPSA高値の患者」に遭遇する機会はますます増えてくることは十分予想される。したがって,これらの患者の対処法については,今後,泌尿器科医にとって重要な課題となることは想像に難くない。
1.80歳代の前立腺癌の特徴
まず,80歳代の前立腺癌の特徴について考察する。臨床的に前立腺癌の徴候がなく,剖検によって初めて認められるラテント癌は,年齢とともに増加するといわれている。これまでの白石ら1)の検討では,臨床癌の罹患数に関しては日本人に比べて欧米人のほうがはるかに多いのにもかかわらず,ラテント癌では日本人と欧米人であまり差がないことがわかっている。彼らは,70歳以上の日本人高齢者の20~30%にラテント癌を認めると報告している。したがって,高齢者に対する積極的な生検により臨床的に意味のない癌が見つかってしまう頻度が高くなることが危惧される。一般的には高齢者の癌は進行が遅く,若年者の癌より予後が良好と思われがちであるが,前立腺癌においてはどうであろうか。
2002年度の日本人男性の平均寿命は78.32歳と世界でも有数の長寿国となっている(厚生労働省ホームページ:http://www.mhlw.go.jp/)。さらに,近年の出生率の低下に伴い,高齢者人口がますます増加していくことが予想される。前立腺癌は高齢者にみられる癌であり,年齢とともに罹患率が増加するとされ,今後,飛躍的に患者数が増えるものと推測されている。このような状況のなかで,設問にある「80歳代のPSA高値の患者」に遭遇する機会はますます増えてくることは十分予想される。したがって,これらの患者の対処法については,今後,泌尿器科医にとって重要な課題となることは想像に難くない。
1.80歳代の前立腺癌の特徴
まず,80歳代の前立腺癌の特徴について考察する。臨床的に前立腺癌の徴候がなく,剖検によって初めて認められるラテント癌は,年齢とともに増加するといわれている。これまでの白石ら1)の検討では,臨床癌の罹患数に関しては日本人に比べて欧米人のほうがはるかに多いのにもかかわらず,ラテント癌では日本人と欧米人であまり差がないことがわかっている。彼らは,70歳以上の日本人高齢者の20~30%にラテント癌を認めると報告している。したがって,高齢者に対する積極的な生検により臨床的に意味のない癌が見つかってしまう頻度が高くなることが危惧される。一般的には高齢者の癌は進行が遅く,若年者の癌より予後が良好と思われがちであるが,前立腺癌においてはどうであろうか。
参考文献
1)白石泰三,松崎 宏,矢谷隆一:前立腺癌ラテント癌.前立腺研究財団:前立腺癌診療マニュアル.pp13-24,金原出版,1995
2)Suzuki H, Akakura K, Ueda T, et al:Clinical characteristics of prostate cancer in elderly Japanese patients 80 years of age or older. Eur Urol 41:172-177, 2002
3)加藤晴朗,西沢 理:高齢者(75歳以上)前立腺癌の特徴と課題.日本臨床60(増刊号11:前立腺疾患の臨床―良性疾患から前立腺癌まで):304-308,2002
4)Ito K, Yamamoto T, Kubota Y, et al:Usefulness of age-specific reference range of prostate-specific antigen for Japanese men older than 60 years in mass screening for prostate cancer. Urology 56:278-282, 2000
5)金山博臣,香川 征,宇都宮正登:徳島市前立腺がん検診について.第一報:平成13年度初年度の結果に対する解析.日泌尿会誌95:596-603,2004
6)栃木達夫,川村貞文,桑原正明:PSA density,PSATZ,PSA velocityおよびPSA倍加時間.日本臨床60(増刊号11:前立腺疾患の臨床―良性疾患から前立腺癌まで):107-111,2002
7)Carter HB, Pearson JD, Metter EJ, et al:Longitudinal evaluation of prostate-specific antigen levels in men with and without prostate disease. JAMA 267:2215-2220, 1992
8)Gretzer MB, Partin AW:PSA markers in prostate cancer detection. Urol Clin North Am 30:677-686, 2003
9)Oesterling JE, Kumamoto Y, Tsukamoto T, et al:Serum prostate-specific antigen in a community-based population of healthy Japanese men:lower values than for similarly aged white men. Br J Urol 75:347-353, 1995
10)Ku JH, Ahn JO, Lee CH, et al:Distribution of serum prostate-specific antigen in healthy Korean men:influence of ethnicity. Urology 60:475-479, 2002
掲載誌情報