文献詳細
特集 ここが聞きたい―泌尿器科外来における対処と処方
5.腫瘍(外来化学療法) 【癌性疼痛】
68.前立腺癌の腰椎転移により腰痛をきたした患者です。対処と処方について教えて下さい。
著者: 佐藤威文1 早川和重2 馬場志郎1
所属機関: 1北里大学医学部泌尿器科 2北里大学医学部放射線部
ページ範囲:P.246 - P.249
文献概要
前立腺癌のnatural historyにおいて,骨転移はリンパ節と合わせて最も一般的な好発転移部位であり,同疾患を死因とした癌死症例のうち,その80%に骨転移を認めたautopsy studyも報告されている1)。また,前立腺特異抗原(PSA)測定が臨床導入された1990年以来,前立腺癌検出効率は飛躍的に向上し,欧米のみならず本邦においてもその発症頻度は急激に増加してきている。1994年における本邦での罹患数は10,940人であったが,2015年には30,285人へと著しい増加が予測されており,同じく米国においても,2004年度は230,110人が新たに罹患するとされ,成人男性における最も罹患率の高い癌として大きな社会問題となっている。このような早期発見を目的としたPSAスクリーニングが普及してきている現在,骨転移による疼痛を主訴に前立腺癌が診断される症例が減少してきている印象はあるものの,日常診療においては依然として多く認められる病態である。
また術後再発から,内分泌療法不応性(hormone refractory prostate cancer:HRPC)に移行し,その後,骨転移を併発する病態も一般的な経過であり,症例母集団の増加も加わり,その対応に苦慮することが少なくない。さらに骨転移病巣は,疼痛のみならず,病的骨折,神経圧迫症状などの合併症を引き起こすことで患者のQOL(quality of life)を著しく低下させ,かつ同疾患の生命予後が比較的長いこともあり,その早期対応,初期治療の選択がその後の患者QOLを左右するといっても過言ではない。
参考文献
掲載誌情報