文献詳細
特集 ここが聞きたい―泌尿器科外来における対処と処方
8.そのほか 【腎梗塞】
89.突然の腎部疼痛・肉眼的血尿で腎梗塞が疑われる患者です。対処と処方について教えて下さい。
著者: 武藤智1 堀江重郎1
所属機関: 1帝京大学医学部泌尿器科
ページ範囲:P.322 - P.324
文献概要
腎梗塞とは,片側あるいは両側性に腎動脈本幹またはその分枝が塞栓や血栓により閉塞し,その末梢での循環障害が起こり腎組織が壊死に陥った状態である。腎梗塞は突然発症し,側腹部痛を主訴とする場合が多く,初診時には尿路結石を疑われる確率が高い。しかし,患者の約70%に心房細動,心弁膜症などの心血管系合併症を伴うため1),心血管系合併症を有する患者が側腹部痛にて来院した場合には,腎梗塞を念頭に置かねばならない。本邦の集計では,平均年齢51歳,男性に多く,患側に左右差を認めない2)。
腎梗塞は腎動脈閉塞のため血行が遮断され生じるが,他臓器からの血栓による塞栓症と,腎動脈自体の異状による血栓症に大別できる。塞栓症の原因としては前述した心血管系疾患のほかに,人工弁置換術後,血管手術,血管造影時のカテーテル操作などの医療行為が挙げられる。塞栓症の場合,同時性あるいは異時性に両側性,または他臓器にも梗塞が生じることが少なくない3)。特に心房内血栓に関しては,経皮心エコーにて異常を認めない場合でも経食道心エコーにて心房内血栓を確認できることが少なくない。また血栓症の原因としてはアテローム硬化,線維筋性増殖,大動脈炎症候群,外傷,動脈瘤,結節性多発性動脈炎,解離性動脈瘤などが挙げられる。
参考文献
掲載誌情報