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文献詳細

雑誌文献

臨床泌尿器科59巻4号

2005年04月発行

文献概要

特集 ここが聞きたい―泌尿器科外来における対処と処方 8.そのほか 【遊走腎】

93.遊走腎を呈する患者です。対処と処方について教えて下さい。

著者: 檜垣昌夫1

所属機関: 1災害医療センター泌尿器科

ページ範囲:P.336 - P.337

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1 診療の概要

 腎臓は,腎動静脈で大動脈と下大静脈につながっている以外は腎周囲の脂肪組織に包まれて後腹膜腔に浮いているように位置している。通常,呼吸によって上下に移動する(呼吸性移動)。また立位によっても下降し,その範囲(生理的範囲)は,通常,一椎体から一椎体半といわれている。この生理的範囲を超えて移動し,かつ種々の臨床症状を呈する場合を遊走腎または腎下垂(症)という。また,単に下方に移動するものを腎下垂とし,何らかの症状を伴うものを腎下垂症あるいは遊走腎(症)とするものもある1)。また,立位で2椎体以上下垂する状態を遊走腎といい,立位負荷で増悪する側腹部痛,血尿,尿路不定愁訴などの症状が生じた状態を遊走腎症と定義するものもある2)。症状を伴わない腎下垂は日常診療上よく遭遇するし,静脈性尿路造影で立位での撮影でよくみられる所見である。

 本症は内臓下垂の部分症状と考えられ,発生頻度はやせ形や出産後の女性に多く,患側は右に多い。この理由として,腎は後腹膜腔の脂肪組織のなかに存在していること,腎は生理的にも左腎より右腎のほうが下方にあり,かつ腎床が広く,そのうえ右腎動脈は長く支持組織の少ないこと,立位での肝臓の圧迫などが挙げられている1)

参考文献

1)甲斐祥生:一般外来で診る泌尿器系患.第1版,南山堂,pp123-124,1984
2)平尾佳彦:遊走腎(腎下垂).日本臨床(別冊腎臓症候群:下巻):pp697-700,1977
3)村上泰秀:遊走腎症,腹圧性尿失禁に対する補中益気湯の効果.泌尿紀要34:1841-1843,1988
4)Ogawa Y, Fuji K, Shimada M, et al:A case of renal ptosis treated with HOCHU-EKKI-TO with improvement confirmed by excretory urography. Acta Urol Jpn 47:649-652, 2001
5)深津英捷,三矢英輔,瀬川昭夫,他:遊走腎の研究,腎組織についての第2報.日泌尿会誌63:789,1972
6)前川正信:新臨床泌尿器科全書.第9巻A.第1版,金原出版,pp133-139,1982
7)Urban DA, Clayma RV, Kerbl K, et al:Laparoscopic nephropexy for symptomatic nephroptosis;initial case report. J Endourol 7:27, 1993
8)Matsuda T, Uchida J, Ashida M, et al:Laparoscopic nephropexy. A case report. Int J Urol 3:397-400, 1996

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1332

印刷版ISSN:0385-2393

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